上県で合流じゃあああ!!!
「で?何か言い訳はあるのかい?聞く耳なら持とうじゃないか」
「申し開きもございません」
上県(かみあがた)からこんにちは、竜三です。開口する間もなく般若面を被ったまま近づいてきた巴に殴られて気を失いました。見事な右ストレート。それもグーだったよ!グー!!
志村城の蒙古100人斬りチャレンジの影響か、疲労も溜まってたらしく目が覚めたらどこかの安宿……だった場所でした。隣に座っていた政子様曰く、上県の方はすでに蒙古の手に落ちている集落や村が多々あるらしく、さらに島を北上した先にある港は壊滅的。コトゥン・ハーンは虎視眈々と本土上陸の準備をしているようだ。
その後、対馬でやらかした数々の蛮族ムーブのことや、それで息子の繁里と繁成が頭を抱えていたことや、果ては家来時代に屋敷を抜け出して野盗をぶった斬ってたとこまで淡々と政子様に説教を頂きました。
一族皆殺しは回避できたので、口調は終始穏やかだったけど目が笑ってませんの、政子様。当方、このまま腰に差されている本差でぶった斬られるんじゃないかと戦々恐々していました。
正座での説教が数刻行われ、やっと解放されたあたりで見回りに出ていた巴が戻ってきた。藁の外套と菅笠には雪が積もっていて、それを払い落としてから暖へと上がってきた。
「巴、追っ手はおるか?」
「いえ、それどころか上県に巣食う蒙古の相手で志村様の陣営はこちらに追手を放つ余裕もないようですね」
そうか、と政子様は暖に薪をくべる。どうやら俺は丸一日寝入っていたようだ。割と自分でも無茶したし、巴に殴られた瞬間思い出したように身体中に激痛が走ったからなぁ。体に巻かれていた包帯も新しくなってるから、俺が眠ってる間に色々と助けてくれたらしい。やはり政子様と巴には頭は上がらないな。
「我々の目的は蒙古ではなく、安達家襲撃の黒幕にけじめをつけさせることです。蒙古討伐は実質的に追加のようなものです」
「そう言って貴様は壱の島で蒙古の野営地を見つけ次第叩き潰しておっただろうが」
だってしょうがないじゃあーん!街道進めば馬で5分圏内で野営地が点在してるし、対馬の民も蒙古に襲われてるんだからさぁ!!蒙古はぶった斬るための練習台なんて思ってませんよ?ええ、思ってませんとも。だから政子様、そんな目で見ないでもらえませんか?
「安達の家におるときから破天荒な奴だとは思ってはいたがな……野放しにするとろくな事にならんと言っていた夫のいう通りだったな」
そうため息を吐いてつぶやく政子様の言葉を聞いてないフリをする。というか、殿ってばそんな理由で俺を家来にしたのかい。
まぁ仁との刀比べに負けた後、浪人になってたら今よりも人ぶった斬ってスキルガンガン上げることしか考えてない殺人マスィーンになってても納得しかできないから言い訳できんのやけども!!
「巴もこいつと共に居て大変だっただろう」
「ええ。まぁ事が落ち着きましたら、どこかに安宿でも構えてのんびり暮らしますよ。腕のいい用心棒もいますし」
「えっ、巴?それって俺の意見……」
「何か言ったかい?裏切りの竜三殿?」
「イエッ!何デモゴザイマセン!!」
「よろしい」
怖えよ怖えよ。まじ弓持たずに眼力で相手殺せる目だったよアレ。美人を怒らせると怖いとか言うけど、巴を次マジギレさせたら殺されるまである。生きたまま吊るされて矢の練習台にされるか、頭をゼロ距離からぶち抜かれるかの二択だわ。
そんなこんなで夕餉という運びとなった。ん?なんで夕餉にありつける食材があったかって?それはここが元蒙古と菅笠衆のアジトだったからさ!俺が寝てる間に政子様と巴のツータッグで安宿跡地を根城にしてる敵を襲撃。全員仲良くあの世へ叩き込んだ後、一つの部屋を整理して俺を寝かしてくれたんだと。うむ、俺居なくても二人いればなんとかなるんじゃないかな?
蒙古から奪った飯で作った粥は格別だぜぇ!!と舌鼓を打ちながら、俺と巴はこれまでの経緯を政子様に説明した。とりあえず黒幕のことは伏せながらね!すると、政子様から「回りくどい説明など不要だ」とお叱りを受けました。うーん。一応濁してはいたんだけどやっぱり気付くよね。俺は巴とアイコンタクトしながら今回の安達家襲撃の絵を描いた首謀者についてなんと言おうか迷っていた。
「政子様……件の襲撃の件……黒幕は……」
「姉なのだろう?」
ファっ!?なぜ知っておられるのか!!巴がびくりと肩を動かしたが、俺は驚愕を出さないように細心の注意を払いながら口を開く。
「……知っておられたのですか?」
「いや……というよりも、姉直筆の書状が届いた」
アッウーン、この。開幕からすげぇことやらかす人だと思ってたけど、わざわざ死を偽装してまで隠していた相手に直筆の書状を送るとは予想してませんでしたわ!!
「曽元という僧が書状を安達家に届けにきたのだ。宛名を見て我ながら取り乱したものさ。書を持ってきた僧を問い詰めようと思ったのだが、その前に奴は目の前で腹を斬って自害してな」
坊主のくせに肝が据わったやつだったよ、と政子様はなんとも言えない表情でそう言っていた。どうやら後ろには繁成と繁里の嫁らや孫もいたらしく、玄関先で坊主が割腹自殺したのでそりゃあ驚いたらしい。いや迷惑すぎるだろ。やるなら敷地外でやってほしいものだ。後始末が大変だったと政子様も愚痴っていたし。
「竜三。姉上と会ったな?」
「はい」
「そうか……姉上はなんと?」
「私が欲しいと。安達家を取り潰せば、必然的に私は路頭に迷う……という言い分で」
「阿呆か」
「阿呆ですね」
間をおかずに姉の所業を一言でぶった斬る政子様と頷きながら同意する巴。まぁ普通に考えてもぶっ飛んでるわな。好みの男を手に入れるために、その男が勤めてる先を皆殺しにしようとしたんだし。
兎にも角にも、その一報を受けた政子様も個人で動き出したわけだった。繁成たちは志村様の要請に応じるのと安達家に加わった兵士たちの面倒を見るので手一杯だし、嫁たちもそっちの手伝いに行かせて単身で豊玉までやってきたんだとか。
え、その間に遭遇した蒙古とか菅笠衆はどうしたんですか?そう問いかけると「斬って捨てたが?」と対馬のバーバリアンらしい回答が返ってきました。さす政子様。誰も貴女を止めることなどできぬぅ!!
んで、志村城奪還の時に俺の猿ムーブ蒙古百人斬りの話を聞いて、鬼の形相の巴と共に安達家のいる陣地に突撃。全員を震え上がらせて俺の救出に協力させたんだって。もうマジで安達家の兵のみんなには申し訳がない。
あと、繁成からは一発ぶん殴るというお言葉を頂きました。
夕餉も終えて、お互いの状況を確認し合った頃合い。雪がしんしんと降る中で多くの馬や人の足音が聞こえてきた。
「蒙古か」
傍に置いてあった刀を帯刀して立ち上がる。巴はすでに身を隠しながら高台へ移動。政子様も刀を装備して臨戦態勢となっていた。屋敷の物陰に隠れて様子を窺っていると、松明を持った蒙古兵が部屋へと侵入してきているのが見えた。
「どうする?竜三」
「無論、押し通ります」
丸一日も寝たんだから、もしかすると仁も上県へと入ってきているかもしれない。とすれば、さっさと花様との因縁にケリをつけて蒙古の方へと意識を向けたい思いも俺の中にはあった。無論、蒙古<花様へのけじめ案件なんだけどね!!
「よし。静かに殺すぞ、竜三。奴らに増援を呼ばれたら余計な足止めになる」
おっけぇー隠密作戦ね。何回も繰り返した背後からの一刺しの準備をしていると、隣で屈んでいた政子様がスッと立ち上がって刀を抜いた。ちょっ、政子様。そこで立ち上がったら隠れてる意味が……。
「対馬を汚す蛮族どもが!!はらわたを引き抜いてやる!!」
政子様待たれよ!ぁあーー政子様ぁ!!俺の制止する声も聞かずに抜刀した刀を振りかざして中を調べていた蒙古たちに襲いかかる政子様。あかん!あの人の辞書に隠密作戦なんて言葉はなかったんや!!上に陣取る巴も目をむいてるし!!ああー蒙古の軍勢に勇猛果敢に挑んでらっしゃる!!落ち着いてくださ!政子様!!あぁーー困ります!!政子様ぁ!!困りますぅ!!
なら俺も我慢しなくていいな!!久々にF覚竜三だぞぉ★覚醒ゲージは充分に溜まってるからなぁ!!青色の服着たちょっと硬めの蒙古相手なら存分に格闘振れるぞ!!おら!!その程度の動きでチンパンを止められると思ってんのか!!もっと暴力には暴力をぶつけるんだよぉ!!
「ヴァアア゛ア゛ア゛ア゛っ!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ァイッ!!」
「猿が二人に増えたよ」
え?巴なんか言った!?