上県にて政子様と猿の呼吸の修行をしている竜三です。
ただいま上県の拠点の上ノ岳砦にいます。
え?何故、花のいる菊池家にまっすぐ向かわないのかって?そりゃあオメェ上ノ岳砦が蒙古の拠点となってるからですよ。ゲーム内でも花をぶち殺しに行くミッションが開放されるのも砦開放した後だからね!!
まぁ本当はそんなメタイ話じゃなくて、真面目に上ノ岳砦をどうにかせんと菊池家に向かう前に蒙古に捕捉される危険があったからだ。
俺としては蒙古と斬った張ったのズンバラ劇場を開場しながら菊池家に突撃しても良かったんだけど、花の様子からして菊池家は当主の指揮下にあった武士によって要塞化してるらしいし、蒙古で消耗した状態で相手にできるほど、甘い相手ではないと言うことだ。
そんなわけで、まずは上ノ岳砦を牛耳ってる蒙古をぶち倒して道中の安全を確保したのち、首謀者である花にけじめをつけさせる方向で政子様や巴と合意しました。
でも、さすがに3人で砦を制圧できるわけ……え?できそう?猿ムーブでF覚竜三ブッパすれば余裕っしょ?あれはほら……力技だからね!!ぶっちゃけ今のスキルの巴と政子様いれば、どうにでもなるような気はするんだけど、この拠点の制圧は後のハーン討伐に対して大きな意味を持つことになる。
ゲーム内でもメインミッションだからね!!仁が志村様の後継になるルートに進んじゃったから正直どう転がるか皆目検討が付かなかったけど、砦の様子を見に来てその判断が割と正しかったことを痛感した。
「竜三!?何をしにここにいる!!」
崖をするすると登って砦の偵察に来ると、そこには仁とゆなの姿が。後ろにはゆなの旧友である狩人の人たちが何人かいた。ふむ、仁がルート変更しても、物語的にはそんなに差は出てないのね。
ていうか、ゆなは何故ここにいる?タカと一緒に本土に渡る船を志村様から……あぁー、また〝本土に渡りたければ仁に協力し上県に逃げた蒙古を打て〟とか理不尽なこと言われたのね。顔見りゃだいたい想像はつく。
「菊池家の行きすがら、この砦をどうにかせんとならんのでな」
「竜三!ちょうど良かった!今から私たちは……」
「ゆな!」
上ノ岳砦を攻める算段を話そうとしたゆなを仁は諌めた。おかしいな、以前の仁なら俺がこのタイミングで現れたら迷うことなく砦の制圧への協力を頼んでくるはずだったのだが……そう思いながら仁を見ると、その目には明らかな敵意が混ざっていた。
そこで察した。
仁がここにいるもう一つの目的を。
「……なるほどな、仁。あくまで俺は咎人であり、お前は追手の命を志村様……いや、幕府から拝命していると」
後ろで巴が弓を構える音が聞こえたんですけど!?早い!早いよ、巴さん!!まだ推論の域だし、仁の答え聞いてないのよ!?え?敵になる可能性が少しでもあるなら頭を打ち抜いた方が早いだろう?ってバッカお前、相手はゲームの主人公やぞ!!そう言うことやっていいのは野盗か菅笠衆か蒙古だけです!!
「仁!今蒙古はすぐそこの砦にいるんだよ!!こんなとこで竜三と仲違いしてる場合じゃないだろう!?」
ゆなも仁の行動に驚きを隠せない様子だった。これまで仁とは何度も肩を並べて蒙古を打ち倒してきた。それが立場が変われば一変。蒙古と不穏分子は絶対にぶち殺すマンと化した俺を捕らえる方針に舵を切ったのだ。驚くのも無理はない。
「黙れ、ゆな!これは俺と竜三の問題なのだ!!」
反論するゆなを一喝した仁は、鋭い目つきのまま俺を視界にとらえる。
「竜三……今ならまだ、なんとか出来る。共に来るんだ」
いや、無理やろ。どう考えても。
「どうにもならんさ、仁。幕府が動いている以上、俺を庇うような真似をすれば顔が潰れるのは志村様と……お前自身だ」
ゲームシナリオでもこの時点で、幕府は〝冥人〟を危険視している。そりゃそうだろう?頭目でもない一介の侍が蒙古や野盗をぶち殺して対馬の民から支持されてんだからよぉ。目の上のタンコブか、目障りな存在でしかないので、一国の頭目の言葉程度ではどうにもなりません!!残念!!閉廷!!
そんな俺の言葉に、仁はさらに顔つきを怒りに変えて吠えた。
「竜三!!志村家を愚弄するか!!」
「事実を言ってるんだ、仁」
まさに一触即発。巴はまだ弓を構えたままだし、政子様は黙ったままだがきっちり手は刀の柄に掛かってる。ゆなは戸惑ったまま、仁は今にも腰に下げた刀で切り掛かってきそうな雰囲気。やだぁこわぁい。ただし刀を抜いてみろ、この場で猿式の抵抗の極意を文字通り体に刻みつけてやるからな!!
「仁!蒙古だ!豊玉から上がってきた奴らだよ!!」
そんな空気をぶち壊したのは皮肉にも蒙古だった。ゆなが指差す先には、砦間にかかる橋の向こう側だ。目を凝らすとたしかに豊玉から上県へ合流するために上がってきた蒙古の一団が見える。ありゃあ。あの数が上ノ岳砦の蒙古どもと合流すると少し面倒だな。
「話は後だ、仁」
それだけ言って、俺は踵を返す。上ノ岳砦の上県側は任せるから、俺は豊玉方面につながる関所を陥落させてくるわ。仁の応答を待たずにするりと断崖を鉤縄を使って降りる。
降りた先はちょうど関所の内部で、俺が到着したと同時に遠目に見えていた蒙古の一団が関所に入ってきていた。
「く、冥人だ!?」
先頭にいた蒙古の兵が俺の姿を見るなりそう言ってきたが、二の次の言葉は出なかった。なぜなら次の瞬間には頭に矢が突き刺さっていたからな!!バカめ!!地の利を得た巴の後方支援があれば貴様らなど目ではな……あの巴さん?早くない?半分くらいもう矢が刺さってるんですけど。あ、政子様も援護に加わってくれてるの?あの人が弓を使ってるシーンってば、プロモーショントレーラーの動画内くらいで
「この畜生どもめ!!対馬の民の恨みを受けよ!!ヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
あぁあーー!!あの人もう敵陣に突撃してらっしゃる!?政子殿待たれよ!!これだから対馬のバーバリアンは扱いに困る!!竜三も突★貫します!!
物資と蒙古のオブジェクト渡せやオラァァア!!
ドーモ=蒙古スレイヤーです!!ショギョウムッジョ!!オラァッ!!サヨナラっ!!
俺と政子様のチンパンプレイに終始ビビりっぱなしの蒙古ども。というか政子様常に冥人覚醒モードじゃね?すげぇ勢いで人殺してるんだけど!!とりあえず背後から政子様に近づこうとしている奴の首に刀をブッパァッ!!うわははは!!どこへ行こうと言うのかね!?残念ながら貴様らの行先は冥土か地獄かあの世しかないのだ!!死ねぇい!!
タンク的な大型蒙古をあらかた殺して、あ!テメ!暗器使うとか卑怯だろ死ね!!ビューティフォー。
クナイが頭に突き刺さって崩れ落ちた蒙古の手から暗器を回収。人呼んで暗器ストックです。石川先生の頭に矢刺してストックするとかいう鬼畜ムーブはさすがにね!!巴さんなら喜んでやりそうだけどな!!
そして憤怒の舞と紫電一閃のオンパレードじゃ!!今日も今日とて覚醒技を吐きます。F覚竜三だぞ★ウッキィイーー!!!!
ア゛ァア゛ァァーーイ゛ッ!!!!エ゛ィッ!!!!
そんなこんなで上ノ岳砦の関所にいた蒙古は全て皆殺しとなりました。状況終了!!オールクリア!!とりあえず政子様や巴が高台から他の蒙古がいないか探しに行ってる間に、関所の中を適当に散策する。根無草竜三一行の物資の補給は大事だからね!!
「これで豊玉方面はなんとかなったな。あとは砦内の奴らを……」
ムッ!殺気!!青ゲージ攻撃見切った!!
後ろから襲いかかってきた相手に刀を抜いて応じようとしたら、すでに生き残り蒙古の首には段平が突き刺さっていたでござる。ゴエェっと声にならないうめき声を上げて昇天した蒙古の死体を横に振り払ったのは、俺と同じく血濡れの仁だった。
「仁?」
おめぇ、ここで何してんの?砦内の蒙古を殺しに行ったんじゃ……あ、ほとんど倒した?あとはゆなと狩人に任せてこっちにきたと。ほーん?じゃあなんで殺気がビンビンなんですかねぇ!!
ぶち殺した蒙古の死体を中心に、俺と仁は距離を取って睨み合う。あぁ、これ、あれだ。イベントシーンってやつか。仁さんマジで激おこやん?段平ぶら下げたまま睨みつけてくるのやめてもらえません?
「竜三、こちらに降らぬというなら相当のことを構えさせてもらう」
「……本気か?〝志村〟仁」
「……無論だ」
それだけ言って、仁は刀を構えた。
おいおいおい、死んだわ俺。相手はゲームの主人公やぞ!?
と思いながらも対馬で生きてきた習慣からか、心の内で少し楽しんでる俺がいます。はぁーーん、すっかり鎌倉武士に染まっちゃいましたわぁ!!構える仁に応じるように、俺も愛刀を構えた。こうやって向き合うのって、仁と刀比べした時以来やな。
「俺にはやらなければならん事がある。ここで大人しく捕まる気はない」
「知っているさ」
「だろうな」
ならば押し通させてもらいます!!仁が動き出した瞬間に青ゲージジャスガでカウンターじゃボケェ!!なにぃ!?防いだだとぉ!?このやろ!!やるじゃあないか!!ならば紫電一閃じゃあ!!この攻撃が躱せるかぁ!?はぁあああ!?お前受け流しの極意とかいつのまに身につけたん!?あ、教えたの俺か!!
そして憤怒の舞!!炎刀まで出しての斬り合い。お猿ムーブ特有の正面と見せかけて横格もきっちりガードされました。んんんん!この主人公、お強いですわぁ!!
「腕を上げたな……仁!!」
「共に蒙古を屠ってきたのだからな……!!」
鍔迫り合いながらそんな軽口を叩いてると、離れ際に仁からグーのパンチを一発。咄嗟に抜いた鞘で仁の胴をぶっ叩く。互いに口から血が出て、雪が鮮血に染まった。ハッハッハッ、もう仁ってば容赦ないんだからぁ!!
はぁーあ。
ブチ飛ばす。
「一度、その生真面目な顔に一発ぶち込んでやりたかったところだ!!」
さらに鞘で刀を押さえて距離を詰めて格闘じゃボケェ!!やはり最終的に物理でどうにかするしかあるまい!!古事記にも書かれている!!
「……っ!奇遇だな!いつも俺の一手先を行くお前が気に食わなかった!!」
すると、仁さんも俺の手を押さえて殴り返してきた。そこからは拳の殴り合いよ。刀ってある程度距離使うんだけど、その距離潰されたら近接格闘が最強なんだわ。俺も何度か蒙古投げ飛ばしてから脇差でトドメ刺したりしてたから、その動きを仁もきっちり見稽古していたらしい。
数発の拳の応酬と体術の競り合いを続けること数刻。綻びが出てきたのは仁だった。
そりゃあね!!蒙古襲来の時からこう言った泥沼戦闘法を使い出したんだから、刀比べ以前から野山徒歩で踏破しながら野盗をぶち殺して回ってた俺とは経験の差がありますよ!!付け焼き刃程度の暴力ではこの竜三を超えることなどできぬぅ!!
ふらついた仁の懐に抱え込むようにタックルを決めて、持ち上げてから間髪入れずにノーザンライトボムをぶちかましたら、ようやく仁は大人しくなった。
「言っただろう、仁。格闘で相手を制すなら暴れる力を最優先しろとな」
片手で鼻の穴の片方を塞いで勢いよく鼻息を出す。すると奥に詰まっていた鼻血が吹き出した。あぁーーイッテェ。身体中が悲鳴を上げてるけど気合いで誤魔化す。
寝そべって息も絶え絶えな仁は俺を睨みつけるように見上げながら小さく言葉を吐いた。
「はぁ……はぁ……斬れ、竜三……」
「はぁ〜!?やだね。懇願されたって斬ってやるものかよ」
落っこちていた愛刀を拾って鞘へと収める。ぶっちゃけ仁との斬り合いなんてごめんだったからステゴロの喧嘩に持ち込んだのもあったしな!!すると、仁は寝そべったまま呆れたように笑った。
「わかっていたさ……お前のやりそうなことだ……」
気がつくと仁の表情は、どこか悲しげなものに変わっていた。
「竜三……なぜだ……」
なぜ、俺を一緒に連れて行ってくれなかった。
か細い声で聞こえてきた仁の本音。あの時、志村の城を攻めるときに何故、自分を連れて行ってくれなかったのか。何故、一人であれほどのことをやってしまったのか。仁の中にあったのは、ともに肩を並べていたはずの親友が、ずっと先に行ってしまったことへの焦りだった。
そんなことを勝手に想像しながら、俺は寝そべる仁の横に腰を下ろした。
「……その答えは、俺が言うまでもなくわかっているだろう?仁」
「……そうだな……」
仁が〝もし〟、俺と一緒に志村城に乗り込んでいたらどうなっていたか。俺が幕府から追われる身になっていることが全てだ。いや……俺よりも酷いことになる。仁は境井家の男であり、志村様が認めた地頭の後継者なのだ。そんな男が浪人でしかない俺と一緒に蒙古100人を単身で切り殺したとなれば、仁を後継者に選んだ志村様の面目は丸潰れになる。そして仁も……俺と同じく追われる立場になっていたのかもしれない。
それだけは避けなければなかった。毒に手を出させなかったことも、俺が率先して蒙古の拠点を潰して回っていたのも、仁に修羅道へ落ちてほしくなかったからだ。俺はすでに〝安達家襲撃の首謀者〟と〝当主を殺した蒙古の首領〟、この二つの首をとる修羅道を爆進してる。だから、その役目を俺が背負うのも……必然だったのかもしれない。
だから俺は、あえて仁に告げた。
「仁、これだけは言っておく。俺は安達家襲撃の下手人を殺す。そしてハーンも殺す。幕府がどうだとか、志村家がどうだとか、武士道がなんとか知らん。それはそれ、これはこれだ。下手人は俺の仕えた家を愚弄し、ハーンは俺の仕えた殿の首を取った。故に殺す。蒙古がどうなろうが知ったことではない。奴らだけは……確実に殺す。地の果てまで追ってでもだ」
それだけは譲らない。決定事項だ。俺が志村城で蒙古を惨殺したのも、これまで蒙古の拠点を潰して回り、安達家の襲撃に関わった下手人たちを斬り殺してきたことも、その結論に集約されている。
「下手人とハーンを殺したのち、俺を処刑するなり好きにしろ」
「……ああ、そうさせてもらおう」
仁も諦めたのか、さっきまで漂わせていたギスギスとした感じは飛散していた。俺は寝そべったままの親友へ手を差し伸べる。
「ほんじゃまぁ、仲直りというわけで」
「……馴れ合いは断る」
一瞬手を取りかけたくせに、仁はハッとした顔でそう言うとき痛みに顔を歪めながら立ち上がった。フラつきながらも歩き、上ノ岳砦の中へと向かってゆく。
「頑固だなぁ、仁は」
「頑固ではない」
「頑固」
「違う!」
「頭でっかち」
「違うと言っ……まて、なんだその言葉は」
「うるせぇ、さっさとゆなとくっついちまえ」
「なっ!それは今関係ない話だろう!?そっちこそ、巴殿となぁ!!」
「あーあー!!聞こえんなぁ!!聞こえんなぁ!!」
ギャーギャー騒ぎながら砦へと入ってゆく。政子様の一喝がくるまで、俺と仁はまるで子供の頃に戻ったような喧嘩をするのだった。