暇を出しておくれ!!!
小茂田の戦いから3日。
対馬の壱の島の大部分に展開した蒙古による脅威は、今もなお民草を苦しめ、占領された村や、街道に敷かれた野営も数知れず、蒙古による被害は増えるばかりだ。
そんな中、黄金寺から日吉村にかけては安達家の武装した兵力が残っており、そこは対馬の人々にとって残された最後の防衛線と言えた。
当主である安達晴信の死を悼む間もなく、残された兵をまとめ上げた安達家は、来る蒙古への反撃の狼煙をあげるべく雌伏の時を待つことになる。そんな日々がある程度、落ち着きを見せ始めた時だった。
「…なんだと?もう一度言ってくれないか、竜三?」
「政子様、私に暇を出して頂けないでしょうか?」
安達家の屋敷。
小茂田の戦いで鬼神めいた戦い振りを魅せた家来、竜三は当主となった安達繁里や、政子の前でそう言葉を吐いた。
話をしたいと言われ、安達家の重鎮が集まった中、迷いのない竜三の言葉に政子や繁里は言葉を失った。しばらくの沈黙の後、声を出したのは政子だった。
「つまり、お前はこう言うのか?安達家の家来を辞めると」
「竜三!お前…なんで…!」
政子の言葉で、竜三の言った言葉の意味を理解したのか、小茂田で自分達を身を挺して守り抜いた家来に、次男である繁成も動揺を隠せない様子であったが、それを上座に座る繁里が手で制した。
「訳を聞かせてもらいないか?竜三殿」
「私は…家来の身分です。晴信様に…殿に認めて頂き、安達家の家来として召し抱えて頂きました。しかし、小茂田の戦いで私は殿が蒙古に討ち取られる瞬間を、ただ見ていることしか出来なかったのです」
竜三の言葉で、繁里と繁成は思い出す。
勇猛に蒙古の陣へ一人で乗り込み、一騎討ちを申した父が、油をかけられ、火に炙られた後、なすすべなく斬首された瞬間を。
「殿より先に先陣をきるのが、本来の家来の役目。私はその役を放棄し、あまつさえ殿が討ち取られる様を見ていることしかできなかった無能者なのです」
「そんな!馬鹿なことを言うな、竜三!父上は私たちの身を案じ、竜三殿にそばに控えるように命じたではないか!」
「地頭への示しと言うことか?竜三」
繁成の言葉の後に、政子が静かに言う。たしかに、感情的、もしくは二人の視点から見れば竜三は晴信の命を守りぬいた家来ではある。だが、側からみればそうはならないのも事実だ。
「おっしゃる通りです、政子様。いくら殿の命とは言え、殿が討ち死に、家来が生き残ったとなれば周りの武家へ示しがつきませぬ。強いて言うならば地頭のみならず、鎌倉に対しても」
これは安達家が取るべき〝筋〟なのだと、竜三は言う。他の武家の長も多く死んだ。志村の長の身もわからない今の状況だからこそ、この戦いが終わった後のことを考えなければならないと。
「本来ならば、腹を切って詫びるべきなのでしょうが、今は蒙古が蔓延っています。それに、安達家を襲った賊。それを出した黒幕についても」
その言葉に安達家の面々の顔つきは険しくなった。小茂田の戦いの裏で襲撃されたこと。あれは蒙古ではなく、自分達側の問題だ。蒙古の脅威に手を取られ、それを無かったことにすれば、後の遺恨となるのは確実だ。
故に、竜三は言うのだ。
自分に暇を出し、安達家を亡き者にしようとした不埒者を追わせて欲しいと。
「安達家は小茂田で生き残った侍の武家です。蒙古を打ち倒すにしろ、その決起には旗印が必要となります。安達の名を以ってして兵を募り、来る蒙古への反撃へ備えるべきかと、具申致します」
深々と頭を下げる竜三に、誰も何も言うことはできなかった。たしかに筋は通っている。現時点で多くの兵たちが安達家の指揮内へと入っている上に、逃れてきた民たちの避難場所を確保、管理しているのも安達家だ。この戦いの土台を支える自分達が、個人的なもので襲撃者を追うという余裕も今はない。
政子はため息を吐いて、伏する竜三へと問いを投げた。
「…竜三。安達家の家来をやめてまで、何故にそのように尽くすのだ」
政子の言葉に、竜三は頭をゆっくりと上げる。その眼を見て、政子や繁里たちは、背筋にゾッとした何かを感じ取った。
「……すべては、対馬国のために」
彼の並ならぬ覚悟ゆえ、か。その眼はあまりにも鋭く、そして熱く燃える信念を宿しているように政子には思えたのだった。
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祝★冥人冒険、はっじまるよー!
と言っても、政子様の唄ルートが主ルートになりそうだけどな!!どうも、浪人に戻った竜三です!!
政子様の了解と、繁里や繁成も渋々と言った様子で了承してくれた結果、馬と当面の金銭をもらい暇を出してもらうことになった。
腹切るとは勢いで言ったけど、もうしそうなってたらゾッとしないな!まぁそうなった時は蒙古や野盗けしかけて乱戦の中で行方不明になるつもり満々だったけどね!
というか、屋敷や安達家ゆかりの地から出るまで何人もの兵や民から出立の挨拶を受けたのだが…え、そんなに俺って慕われてたの?暇な時は家事とかして、夜は野盗狩をこっそりしてたような蛮族なのに?
繁成には男泣きされるし、繁里も「お前が居なくなるのは辛い」と苦しそうな顔で言ってくるし。やめてよぉ、決意が揺るぎそうじゃんかよぉ。特に繁里はこれから安達家を切り盛りしていくんだから、付いてきたそうな目をしたってダメだかんな!
俺のゴーストオブツシマはここから始まるんやで!!
「で?武家の家来を自分からやめて、これからどうするつもり?竜三さま?」
後ろに付いてくる馬に乗った巴がそう言ってくる。というか、なんで付いてきてんのさ?弓の腕と、喧嘩別れしたとは言え石川先生の教え子もあって、政子様が召抱えてくれるって言ってくれてたじゃん?武家の家来とかそうそう無い優良職だよ?
「アンタが居ないとこにいても、私じゃ長続きしないからね。弓が絡むなら特に」
まぁ、巴さんほっといたら対馬の人たちを的にして蒙古に弓術教えるくらいの人だからね。コテコテの武家である安達家に長々と仕えるにも、まだ考え方や人格形成が間に合ってないと言ったところでしょ。
付いてきてくれて嬉しいんですけどね!!後方支援してくれる味方ほど心強い存在いないし!!雄叫びあげて敵陣に無謀に突っ込む真似もしないだろうし!!
ただ蒙古相手に情けない姿を見せたら、下手すると後ろから矢でぶち抜かれそうでヒヤヒヤするんですよね。ほんと頼みますよ?
「これからどうする?」
「ひとまずアテはある。安達家を襲った野盗ども。その前に寺の僧が来たらしい。まずは黄金寺に向かおう」
まぁゲームから輸入した知識ですけどね!黄金寺の近くにもまだ蒙古の野営はある。そこを叩き潰して、最低限の安全を確保してから安達家襲撃の犯人(すでに知ってる)に探りを入れるしかないだろう。
そんなわけで蒙古狩りの時間じゃあああ!!!
気力を回復したいので拠点には正面から突っ込んで一騎討ちを挑みます。迂闊に近づいてきた三人を惨殺して、野営内の敵の掃討に入るべく、陣の中へと足を踏み入れた時だった。
「待っていたぞ、竜三」
そこには、なぜかラスボスが座して待っていました。え?最初からクライマックスですか?
あかん。
白目を剥いて卒倒したい。