Lostbelt No.5+『残滓異聞海域ブルースフィア』 ー青杯の想いー 作:ユーホー腐れ男子
描写力や設定、至らぬところあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
――何時間。何年。
――今回のゼロセイルはいつもより長い気がする。
――いや、これは長いより重い、か。
――レムレムのやつに近い気がする。
――あぁでももうすぐトンネルを抜けていくみたいだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
異聞深度_None ロストデブリ
青杯の想い
AD.2019 残滓異聞海域 ブルースフィア
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全身が重い。
けれどすぐに虚数要素は除外されて、安定化が促されていく。
沼の底から引きずり出されているみたいだ。
駄目だ、いつの間にか寝てた。
異聞帯に赴いているのに気が抜けているぞ、俺。
「異聞残域――ダ・ヴィンチ、君はそう呼んだね」
『あー待って待って、まだ船内を安定化できてないんだ。タイミングってのを――ううん、君に言わせてみればこのタイミングしかないのかな』
「そう、到着してからでは遅いのだよ。今がベストタイミングではないが、異聞残域について皆と知識と認識のすり合わせをしておきたい」
『うーん、そうだね。今回は特異点とも異聞帯とも違う異称を付けるくらいには特殊な事例だったから、緊急で動き出したんだ。その旨はまず皆にもわかってもらいたい』
『今回の異聞残域はギリシャ異聞帯の残滓を含有している――主要構成要素として空想樹マゼランが挙げられるけれど、それだけならまだ特異点規模で収まるはずだった。異聞帯としての空想樹を育てる機能は最早消失しているからね』
『率直に言ってもっとも異常なのは――ブルースフィアはギリシャ異聞帯の続き物なんだよ。それもギリシャ異聞帯の消滅が確定した時の状態で、人理を必要とせず、ただ空想樹に『異聞帯の固定』だけをさせている。役割が逆転しているんだよ』
「は、はぁ――それってつまり誰も彼もがいなくなった街だけが残り続けてるってことかね? まるで、ジオラマみたいに……」
『そうだね。ジオラマ、IFの世界設定だけが永遠に続いている、まるで奈落に落ちているかのようだ。ゼウスやデメテル、ヘファイストスにディオスクロイ、マカリオスとアデーレ、彼らの戦いも正義もその跡だけが残されて、本人たちは消失してしまっている。星間都市山脈、その全土一千万人規模の生命反応もなし……ここは人理すらなくなった異聞残域だ』
「ゆえに異聞残域……なるほど」
人理の消えた異聞帯――異聞残域。
確かにこれには大掛かりな謎がある。
ホームズは外套の胸ポケットにしまっていたキセルに指を当てながら、深く頷いて推理を始める。
大きく分けてこの事件の謎は三つに分けられるだろう。
フーダニット?
ホワイダニット?
ハウダニット?
WHO――これは絞れつつはあるが、如何せん決め手に欠けることも多い。
WHY――これは今のところ当てようがない。ただギリシャ異聞帯を残滓だけでも残そうとしているところがこの謎を解くとっかかりにはなるだろう。それは同時にフーダニットを解くカギにもなるかもしれない。
HOW――空想樹を『保存』したのか或いは『継続』したのか。いずれにせよ、この異聞残域を仕立て上げた黒幕はそういう規格外のストレージを持っているように思われる。
三つが三つともに影響を与えている分謎がヒントとして機能している。もし一つでも解くことができたならこれらは互いに共鳴しあいその正体を白日の下に晒すだろう。名探偵の手助けも相まって。
と、ホームズが思索を巡らせているその時だった。
「こちらキャプテン・ネモ。ブルースフィア内部に突入した。ブルースフィア内部はあのオリュンポスそのものだ。ダ・ヴィンチが言ったみたいに『残域』って呼ぶにふさわしいね――って! 急速に接近してくる魔力を感知!」
「や、やはり残党がいるじゃないかね――! しかし! すごいぞ僕らのストーム・ボーダーはあのゼウスの大雷霆すら躱した高性能マシーン! 今回も華麗に避けられるんだよね?」
『飛翔体の解析結果:神霊級のサーヴァントと判明! でも、属性も神話体系も緊急じゃ暴けなかった! 恐らくはアサシンクラスの持つ気配遮断、情報抹消のようなスキルを持っているみたい! 外部魔力障壁に魔力を回してみる!』
外部から迫る飛翔体。
黒きヴェールに覆われた暗黒の流星のようなソレは敵意を持って、報復心を持って、天翔けるストームボーダーを自ら撃ち抜こうとしていた。
それはあの黒のアヴェンジャーそのもの。
サーヴァントの攻撃や宝具ではなく、己が手であの白銀の戦艦を真っ二つに轟沈させてやらねば、霊基のうちでくすぶる大熱海の如き復讐心が収まらない
ストーム・ボーダー内部ではネモ、ダ・ヴィンチ、そしてマリーンズとの連携によって魔力障壁その他回避に向けた行動が取られている。しかし、アヴェンジャーの捨て身の流星報復は、例えるならば、第七特異点でケツァルコアトルがビーストⅡに与えた大衝突に近い威力を持っていた。
「 怨敵カルデアァァァァアア――!!!! 」
黒き流星から地の底すら震え上がらし、空の星々すら落とさんとする咆哮が木霊した。
身に纏った煙幕の羽衣から憤怒の炎が漏れ出してロードクロサイトのように輝きを放つ。
間違いなく、凶兆の証。
この時、霊基の解析を断念し、直接被弾の威力を演算していたダ・ヴィンチにとっては絶望的なことであったろう。それはどんなに魔力障壁を積み重ねようとも、直撃すれば轟沈は免れないからだ。
神の一撃。
神の怒り。
それの届くもの、聖書にも神話にも、全てこともなげに人の命は散りゆくのだ。
色彩もなく、逆光もなく、躍動もなく。
ただ散る。
さァ! 今こそカルデアの命運、散らす時であるッ!
黒き神は猛々しく吠える!
激突まで、後500m、400m、300m、200m――――
星々は輝く、一番星はオリュンポスでも変わらず金星か――
「アヌ神に捧げましょう――さぁ、ひれ伏しなさい!」