Lostbelt No.5+『残滓異聞海域ブルースフィア』 ー青杯の想いー   作:ユーホー腐れ男子

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泥を見るか、星を見るか

 

  ガンド。

  敵単体にスタンを付与(1T)

 

   ――カルデア戦闘服。『スキル2:ガンド』より引用

 

 

「なん、だと―――――ッ!」

 

 アヴェンジャーが空中で固まる。

 鼻先ならぬ背先で止まった踵への大衝突。

 大蛇のように蠢いていた柱火の残滓も、チリチリと掻き消えて、踵に籠った焦土の熱も緩やかに消え始める。

 

 痺れる霊基では浮遊を保つこともできず沈むようにチェルノボーグは下に落ち始めた。

 

「イシュタル!」

 

「イシュタルさん!」

 

 ストーム・ボーダー甲板に上がった二つの人影がアヴェンジャーの残り火に照らされて現れる。

 金星の女神は硬直するアヴェンジャーをしなる弓のような足で蹴り飛ばし、跳ねあがった。

 

「くッ――!!」

 

 イシュタルの鮮やかな蹴りを背で受けたアヴェンジャーは難破船が沈没するように高度千六百メートル地点から急速に墜落していく。

 

 離れていく天の神霊。

 己は地の果てすらない奈落に落とされ、暗闇に閉じ込められていく。

 

 不落。

 不沈。

 絶対なる太陽のようにある。

 それが神という存在だというのに。

 

 離れていく……空が自分の足元から、手元から、突き放されるように……ッ!

 

 天を仰いで、目端に怒りが宿る。

 

 ベロボーグとの戦いで奈落の底に落とされた日をチェルノボーグは思い出した。

 

 あの時も、このように、純白の……宝石を散らしたような夜空を見たぞ……!

 あぁ、墜落させられたッ……!

 

 憎い。憎い。

 いつだって天にて輝くのは白き衣のやつだけだ。

 

 我は神霊、神霊()()()()()()()だというにッ!

 

 何故私が地に落ちなければならない。

 

 汎人類史や憎きかなッ!

 我が憤怒はアレを見て痛むように燃ゆるというのにッ!

 

 再び胸の火が鼓動する。

 

 一筋の光として、願いは見えた。

 自ら手を下す機会を得て、冷静でいられるわけがない。

 一種の狂化状態のようにチェルノボーグはなっていた。

 手を伸ばす、汎人類史の揺籃から離れ、今こそあの世界の希望を焼き尽くさんとする。

 

 あの人類最後のマスターを我が炎の薪としてくれるッ!

 

 神霊・チェルノボーグの胸部の孔で燃ゆる炎が勢いよく噴出した。生命の息吹が戻るように炎は吹き出し、チェルノボーグの体を落ちないように支えた。

 

 暗き虚空は冥界の如く。

 異聞残域に生命はなく、途方もなく静か。

 故にそこは冥界に似ていた。

 そこに吹き込まれる獅子の毛並みの如き炎。

 その炎を命に見立てて、チェルノボーグは己が冥界から這い上がらんとする。

 

 多分な魔力を含んだそれは黄金の炎上回廊となって、ストーム・ボーダーの方へと魔の手を伸ばす。あの星を掴むように、白銀の方舟を掴んで天に返り咲くために。

 

 熱波が歪める天上、チェルノボーグが甲板に捉えたのは三人の人影であった。

 

 三、人――?

 

「藤丸、バックアップ頼んだわよ!」

 

 藤丸はその右手に宿った令呪をイシュタルの背中に翳しながら、しっかりと彼女の行いを見護る。

 

 そう、訂正しよう。

 二人と一柱である。

 

 その神の名前こそ、神霊チェルノボーグにいざやと宣言されるのだ。

 

 金星の女神、天の女主人。

 チェルノボーグはその姿を仰ぎ見るしかない。まるで草原に寝転んで星を見上げるように。炎を漏らす胸の内さえ須臾のまにまに、涼やかさを覚えた。

 

 天の神の手に握られた短剣が空へと捧げられ、門の鍵となりて天への道を切り開く。

 

 切り裂かれし空間から星が覗く。

 人も神も圧倒する彼方に翳すはずのそれがイシュタルの手が届きそうなほど近くに来た。

 突如として現れたそれは途轍もない暴風を吹き荒れさせ、チェルノボーグの頬をも撫でた。

 

 しかして、それこそ金星。

 イシュタルを象徴する天体、明星の一番星である。

 

 そしてそれは、開戦には相応しく今至宝の如き輝きを放つ――!

 

「私は天の女主人、イシュタル! スラブの黒き神よ、今ここに金星の真意を示しましょう」

 

 イシュタルはその赤き目を金色に塗り替えて言った。

 そして、マアンナに金星をセットして詠唱する!

 

「大いなる天から大いなる地に向けて! 山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)!!」

 

 霊峰エピフ山を蹂躙し、神々の王すら恐怖させたイシュタルの大山宝具。

 あれ程までに手が届きそうなまで巨大だった金星が彼女の手に概念として落とし込まれ、圧縮された。

 宝石魔術の如く惑星の概念を射出すればそれは先ほどチェルノボーグを消耗させた宝石の光弾を遥かに凌ぐ一撃になるのは必定。

 

 

 打ち出されし、一射―――――

 

 

 チェルノボーグは手を突き出し、火炎を噴出させる。まるで大山の噴火の如き焔の昇竜。炎の回廊に続き、イシュタルの宝具を防ごうとはや天を駆け上る。

 

「させませんッ!」

 

 円卓の盾がその一射御した。

 歯噛みするチェルノボーグ。

 

 小娘がッ!

 

 炎は逸れ、回廊は陽炎の揺らぎのように崩れてしまった。

 

 再度充填するにも空を縦横無尽に渡らせられるほどの魔力は徐々につき始めている。ストーム・ボーダーとの直線距離だって、100mは離れているだろう。そこに向かって火柱を矢継ぎ早に撃ったのが誤算だったか。

 

 それでも充填し、放つほかなしッ!

 

 けれど、次に放たれた焔の二重螺旋は美しくも、宝具と拮抗するには威力が足りなかった。燃え盛る双頭の昇竜は打ち下ろされる金星の裁定の前に共に顎を砕かれ、喉を砕かれ、尻尾の先まで串刺しになり、チェルノボーグまで突き抜かれたッ――!

 

 くッ、直撃はまずい――

 

 こちらも宝具で迎え撃つか?

 不可能。己の宝具はアレに拮抗できるほど直線的には撃てない。

 そして、魔力の充填率が奇しくも足らない。

 

 であるならば、アレを使うしかあるまい。

 しかし、それも好ましい手段とは言えない。

 それでもここで倒れては強襲した意味がなくなる。

 

 刹那の間にチェルノボーグは目いっぱい己の思考回路を滾らせた。

 多岐にわたる可能性と選択肢。軍略の神でもないゆえにそんなことをするのは性分ではない。

 

 憤怒に燃える頭に細やかな戦略など立てられないからだ。

 故にそれは何とも蛮勇なる行動であった。

 

 チェルノボーグはヴェールをといて、初めてその姿を世界に晒した。

 黒き長髪に隠れた口角が少し上がったと思いきや、その目には必殺の殺意が込められていた。

 

 迫りくる一撃に如何な英雄さえも震え上がらせそうな睨みを返す。

 直後その身は黒から黄金の焔に裏返った!

 

 

 身体を燃え上がらせ、迎え撃つ――ッ!

 

 

 チェルノボーグは魔力放出をした。

 一瞬にして自身が炎に包まれ、文字通り爆発的な瞬間火力を得る。

 それを以てして己が拳で天の女主人の渾身の一撃を砕こうというのであろう。

 

 拳が矢じりに触れる。

 接地面は急速に温度を上昇させ、二つの炎波が波紋のように広がっていく。熱の壁が生成され、波紋となって逃げた熱は即座に周囲をプラズマ化させていく。

 

「危ないッ、マスター!」

 

 炎と星のぶつかり合い。

 高温はストーム・ボーダーにまで届くが、カルデア戦闘服にはある程度の熱耐性があるため藤丸はジッとその行方を見守ることができた。それでも体感温度は百度を超えるだろう。

 

 チェルノボーグの右拳の表面が蒸発し始め、肉がめくれ上がる。

 血などは吹き零すことすらなく、視界も逆光に埋もれつぶれた。

 それでも、その右手は復讐の誓いを立てる。

 

 我々を忘れた汎人類史を許さない。我々を改ざんした汎人類史を許さない。

 その拳は最早咆哮すらできないチェルノボーグの代わりに金星に突き立てる。

 

「くッ、往生際の悪い神ね、いい加減ぶっつぶれなさいッ――!」

 

 

 押し返せる道理はなく、燃え盛る復讐心だけが金星の前に慟哭する。

 チェルノボーグは流れ来る氷山に豪華客船が潰されるようにゆっくりと追い詰められていき――

 

 

 熱波の境界面から劫火が零れ落ち、やがて琥珀のようになっていた右腕にひびが入る。

 そして、その右腕が砕けたその時――

 

 

 爆散。

 

 

 宙に山脈にさえ届きそうな焔が伸びる。

 

「物凄い熱量……! 皮膚が焼けそうです……ッ!」

 

 盾を構えたマシュも熱波の勢いに驚嘆の声を漏らす。

 しかし、その隣で金星を打ち下ろしたイシュタルは確信しながら、微動だにせず見下ろしていた。

 

 アレは確実に霊核砕いてやれたでしょう。

 そうであろうとも。神霊サーヴァントの宝具直撃。それ必然として対象の消失を意味する。

 

 甲板の上から未だに渦巻く煙と熱のグラデーション。

 髪を靡かせながら満足げに見守るイシュタル。

 マシュも熱波の収まりを感じ、バイザーを取って目下広がる炎の乱気を見続けた。同じく藤丸も。

 

 時を同じくしてストーム・ボーダー内部でも、キャプテン・ネモがチェルノボーグの宝具直撃を艦内で知らせていた。

 

「イシュタルの宝具は完全に直撃した。まぁ、直撃してなくてもアレだけの距離で爆発したんだ。霊核は破壊できたはず」

 

 あの直撃を相殺するのは並みの技ではできやしまい。

 キャプテン・ネモは残熱が消えたのを確認しようと計器を見るとおかしなことに気づいた。いやさ、何故かまだ反応があるじゃないか、と。

 

 爆炎が冷め、煙が退き、夜空に渦巻く星空すら明確にその姿を映し出す。

 

「な、なんで」

 

 一番に驚いたのは宝具を撃ったイシュタルであった。

 全身全霊の一撃に変わりない。マスターとのパスも繋がり、魔力伝導率も良好だった。

 最善の一撃をもってしてあの神霊を撃ち落としたに決まっていた。

 

「ヒハ……カルデアァ、カルデアァア……汎、人類史ィ……!」

 

 我は許さぬ。

 我を追いやったあの汎人類史を、我が神話のように燃え滓なく燃やし尽くすことこそ、我が悲願……ではあるが……

 

 我を召喚したマスターのためにもここで奴らを倒さねばならぬのだから

 

 眼下、チェルノボーグは恨めしそうにイシュタル、藤丸、マシュを見ていた。

 ストーム・ボーダーに乗った全ての汎人類史を見据えていた。

 

 彼の体、右半身は焼けただれ、右腕は消し飛んでいた。

 まずそれだけで済んだことが奇跡だろう。腐っても神霊の器ということか。一つ要因としてそれもあろう。逸話として、創世後にもう一柱との創世神と戦ったことに由来し耐久に秀でたおかげであったか。

 

 もう一つの要因として、青きライダーのサーヴァント召喚術はカルデア召喚式よりも霊基が特殊な作りになっていることだ。奴が器にまつわる神霊故にそんな外法並みの高等技術が使えたのだ。

 

 そうして、さらにもう一つはその彼の体から湧き上がる泥の効力だった。

 

 ドロドロとチェルノボーグを原点として注がれし黒く暗く悍ましき泥。イシュタルはその泥に見覚えがある。それは母にして地母神、メソポタミアの地の神、ティアマトより発せられた創世の泥に似ていたからだ。

 藤丸もマシュもその絶望的な威力、人類のみならず全てをマグマの如く飲み込んでは新たな命に作り替えてしまう光景を何万人規模で見てきた。あの第七特異点で。

 

『この反応は――ッまずい! これは第七特異点でティアマトが使用した創世の泥、ケイオスタイドと同質のものだ!』

 

 アナウンスで流れるダ・ヴィンチの言葉に数名の職員が小さく悲鳴を上げた。

 

『そして、それを扱う彼はつまり――創世を成した神霊!』

 

「ミスター・ムニエル、藤丸へ通信で艦内に退避するよう指示を!」

 

「了解!」

 

 急ぎムニエルが藤丸たちの通信端末を通じて帰還命令を発する。

 ゴルドルフはモニターに映し出された砕かれた復讐神と流れ落ちていく滝のような泥の映像を見る。

 

「なんとも悍ましい、あれが創世の神だとはな」

 

 ゴルドルフは神霊の睨みにも冷や汗こそ流せども毅然と司令官の態度を崩さない。

 冷静に判断すると、ゴルドルフにも疑問となる点がいくつか思い当たった。

 

「いやいや、これまで私たちは幾柱の神と相まみえてきた。例えばインド異聞帯のアルジュナ・オルタ。例えばギリシャ異聞帯のゼウス。しかし、彼奴はどうみてもそれに匹敵するには見えなかった」

 

 そうである。

 神たるアルジュナは見ただけで動けなくなる気迫を持ち、世界そのものを転輪させた。

 異聞帯ゼウスは言葉一つに精神的な重量を感じさせるほどの魔力があった。

 

 しかし、この復讐に滾る泥の神はこうして宝具は地の力で防いで見せたが、まさしく風前の灯である。とても創世神とはゴルドルフには思えなかった。

 

「恐らくですが、零落した神でしょう。ディオスクロイ・カストロのように人の風説や認識によって零落させられた神は少なくない。豊穣の神バアルやダゴンも信仰が失われた今では悪魔や水怪などに例えられることも多いですから」

 

 ホームズが言うように神話や伝説には風説、弾圧、焚書、二次創作がつきものであり、ゆえにその神性を零落させるものが多い。

 信仰を失った神というのはいとも簡単にその姿と力を老いさらばえる。

 

「とはいえ、創世の神が零落したとなると、それは神話規模の零落でしょう。そして、創世期に泥を扱う神話」

 

「おぉ、随分絞れてきたじゃないか……いや、何か疑問があるような」

 

「えぇ分かります。ですが、ここで暴きましょう。彼の正体は、スラブ神話が創世の一柱、黒き邪神と呼ばれしチェルノボーグ!」

 

「なるほどな。……いや、なんでスラブの神がここに?」

 

「……それはまだ、明かす時ではないでしょう」

 

「何故! 歯がゆいなぁ!」

 

 しかして、黒き神はカルデアをにらみ続ける。

 己が夢の先走りの星を見つめるように。

 

 憎い。憎い……

 

 覚めぬ悪夢に疲れたように……

 

 

 

 

 

 

 

 





 カルデア側にチェルノボーグがむざむざやられ、負け犬の如くにらみ返す状況。
 一撃にて決めるはずだったのに、長期戦になり、あわや横やりまで入る始末。しかもその横やりに矢で射られるという。

 イシュタルを野放しにしていたのは間違いであろうて。

 一応資料設定です。
 漫画版でガンドは対魔力CのサーヴァントにはじかれたらしいのでC-相当に引き下げています。
 イシュタルとの戦闘を基準にしたため、イシュタルとエレシュキガルのステータスを参考にしながら作りました。


【元ネタ】スラブ神話
【CLASS】アヴェンジャー
【マスター】――――
【真名】チェルノボーグ
【性別】男
【身長・体重】190cm・59kg
【属性】悪・混沌
【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷B+ 魔力D 幸運D 宝具B

【クラス別スキル】
忘却補正:B
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。自身の神話体系を弾圧の名の下に人々が手放したことをアヴェンジャーは許すことはできなかった。

復讐者:C~A
復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。
アヴェンジャーは復讐者ではあるが、それはスラブ神話を弾圧するものに対する復讐である。ゆえにとある宗派に対しては強力な力を発揮する。

神性:D
神霊適性を持つかどうか。
アヴェンジャーは神話体系ごと断片的に焚書されてしまっているがために神性が低くなってしまっている。

自己回復(魔力):A
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。
アヴェンジャーの場合単独行動も複合されているため、現界を維持するだけの魔力を得ている。

対魔力:C-
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
 ただし常に一定の魔力を消費しなければC相当の対魔力は得られず、魔力を消費しない場合はC未満である。


【固有スキル】
魔力放出(炎):B-
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、
瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
身体に炎を纏わせ、熱と火炎と己が一撃で穿つもの、全てを灰燼に帰す……しかし、スラブ神話を壊されたという復讐が一心で憎悪の火を燃え上がらせているアヴェンジャーにとっては、権能とミスマッチであるため威力が高いとは言えない。

ケイオスタイド:D
スラブ神話における創世を白き神と共に担った時に世界の基盤として救い上げた泥。
創世の泥。それはティアマトのそれや聖杯の泥の如く世界を汚染してしまう。
ゆえにチェルノボーグは自らの創世権能を縮小させ、ケイオスタイドの侵食率を下げている。

故に黒き邪霊なり:A
このスキルの効果の一部は復讐者のスキルと合併している。
邪精霊としての側面をスキル化させたモノ。冥界権能の如く邪霊を召喚したり、または気配遮断と情報抹消を兼ねた煙幕上のヴェールを纏うことができる。魔術による攻撃も軽減する機能も備わっている。


【宝具】
『汝、泥中を照らす太陽(チェルノ・ソルセン)』
ランク:B 種別:対地宝具 レンジ:10~999 最大捕捉:1000人

 その身を黒き太陽に変え、大地を全て泥に変え、創世の再演をする。
 全ての生物は泥に飲み込まれ、その上から黒き炎が降り注ぐ。
 最後は唯一明確にされた神話の通りチェルノボーグ自身が地に落とされ全てが灰となる。
 この宝具は白き神との共同でなくては真なる創世へと至ることはなく、ただ既存の地に住まう生命を焼いてしまうだけなのだった。
 宝具名に匹敵する効果は得られず、それゆえにチェルノボーグはこの一撃を嫌った。

【Weapon】
炎、或いは素手。

【解説】
スラブ神話の創世神の一柱。黒き神、冥府の神、夜闇を司る悪神とも。しかし、スラブ神話は九世紀から十二世紀に至るまでの間に宗教的な弾圧をくらい、スラブ神話に関する記述や信仰は殆ど失われてしまった。それどころか一部の考古学者がギリシャ神話に出てくるオリンポス十二神と習合しようとしたためにどれが本当のスラブ神話かも判別が難しくなった。神話は過去に向かって伸びる枝、最早その過去さえ有耶無耶の暗闇にされたチェルノボーグの怒り、悲しみは彼を復讐者とするに至った。異聞残域でのみ召喚できる霊基であるがゆえ、汎人類史の人類とは決別し、新たな神話の一部になろうと夢を見る。

捕捉。此度召喚されたチェルノボーグは失われた神話に対する怒りを強調して召喚されたために悪神としての側面があまりない。黒き神、冥府の神、として、そう……エレシュキガルとかマンドリカルドとかと同じ方向性なのである。
アクティブだけど、それは夢の為だから。本当は土いじりしながら木陰で本読んでたいから……
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