ソレスタルビーイングのガンダム。それは主人公たちガンダムマイスター4人が駆ける4機のガンダムのことを指す。
1つ。それは刹那・F・セイエイの近接に特化させた機体。ガンダムエクシア。
2つ。それはロックオン・ストラトスが狙い撃つスナイパー。ガンダムデュナメス。
3つ。それはアレルヤ・ハプティズムが駆ける高機動可変機。ガンダムキュリオス。
4つ。それはティエリア・アーデが質量によって飲み込む、ガンダムヴァーチェ。
どれも強力、というか1機のみで隊1つを壊滅に追いやるほどの戦力を有するガンダムたち。伊達に「戦争を根絶する」という目標を掲げているわけではないらしい。
わたしが乗っているガンダムファインダーの元、ケルディムガンダムもソレスタルビーイングの機体ではあるのだけど、今はその説明を割愛しておく。
問題はどうやってわたしたちみたいないびつなパーティで4機を殲滅するかだ。
接近すればエクシアとキュリオスが。離れればデュナメスとヴァーチェに狙い撃ちされる。
だからどうするかわたしたちはそれぞれの知恵を集めた。
「ここは私が斬り込んでヴァーチェとデュナメスを無力化。そのスキに2人で残りを始末する。いけるね」
「セツいなーい!」
「どんだけ自分の腕に自信があるのさ。却下」
「まー、ヴァーチェ以外ならなんとでもなるんだけどさー。ぶっちゃけGNフィールドナツキチしか突破できなくね?」
「ナ、ナツ……まぁいいや。それもそうなんだよね」
この戦いではナツキのガーベラ・ストレートで強引に突破することが可能だ。
GNフィールドはその性質上ビーム兵器を、フィールドが保ちうる飽和限界まで無力化する。だがこれはビームにのみ有効で、実体剣であるガーベラ・ストレートはこれを両断することができる。だから相性自体は悪くない。悪くはないけれど、スナイパー職が2人であることに問題があった。
「ナツキチがヴァーチェの相手をするとして、問題はエクシアとキュリオスよなー」
「セツが接近戦に回るのは?!」
「あんた、そんな器用な真似できるの?」
「んー、無理!」
そんな太陽のギラついた笑顔で誤魔化そうとしても……。いや、誤魔化す気さえしてないむしろ開き直ってる。
「セツはハモニカ砲打てればそれでいーの!」
「ぶっちゃけそれありじゃね?」
「どーゆーこと?」
「ヴァーチェは、ちびっこが相手するっつー事!」
◇
そして今である。出撃後、わたしとモミジは狙撃ポイントへと移動する。
わたしの機体には特殊な機能が積んである。
GNミラージュコロイド。装甲部分に特殊な金属を使用しており、機体全身にGN粒子を付着させることで、擬似的に透明にする、という設定だ。
実際にはミラージュコロイドと同様の機能なので、水中や砂塵の中では使えないけれど、ここは市街地。視界が開けた屋上だろうが空き地だろうが、その身を隠すことができる。これであの初心者狩りと戦った時、モミジに見つからず接敵してみせた、というトリックだ。これには彼女も驚いてたっけ。
そしてモミジの機体にはドローンとレドーム。ドローンがフィールドをスキャンしつつ、レドームはこれを処理。加えて自身でもセンサーで感知するので、探索機能は個々の数値を上回っている。要するに、この3つのドローンとレドームさえ死守できれば、わたしたちに死角はない。
「来たよ。先頭はヴァーチェ。後続にエクシアとキュリオス。デュナメスはその辺で待機してるっぽい」
「了解。作戦通り行くよ」
「りょーかい!」
「りょ」
最初に飛び出したのは誘導役であるナツキのブルースカイ。それを追うようにキュリオスとエクシアがエンゲージ。でもトランザムを使ってないそのキュリオスはおろか、エクシアではハイマットモードを自在に操るナツキには追いつくことはできない。
わざとヴァーチェの射線上に入るように動きながら、その時を待つ。
わたしたちの作戦はまず牙城の砦であるヴァーチェを叩き潰すことに他ならなかった。
どんなゲームでもタンク役がやられれば、チームの役割は瓦解する。
ヴァーチェを火力役兼タンク役と考えたわたしたちは、どうするか。
逆にGNフィールドを臨界まで飽和させちゃえ。
そしてもう1つ。きっと飽和させるためにセツがむき出しになった所を、必ずデュナメスが狙い撃つこと。これに関してはモミジがどうにかしてくれる。要するに。
「セツ! モミジ!」
「りょーかい! バトルスキャンの実力、舐めんなよ!」
「うん! ダブルハモニカ砲、はっしゃー!」
ダブルハモニカ砲の混乱に乗じて、デュナメスも狙い撃つ。
フィールド全体を支配するハイザック・バトルスキャンに死角はない。
ダブルハモニカ砲でゴリ押しするガンダムダブルディバイダーに壊せぬものはない。
即席のパーティだからこそ、それぞれの強みを生かした戦い方をしなくてはならない。なればこそ、このパーティは最高だ。
両腕を平行線に構えるセツのハモニカ砲はGNフィールドに直撃。GN粒子リソースを操作するなんてことはさせないと言わんばかりに、限界以上のフルパワーを叩きつけられたヴァーチェはGNフィールドが飽和状態となりエネルギーが臨界値を迎える。
そして同時にダブルディバイダーに狙いを定めたデュナメスは、文字通り狙い撃ち返しされる。普通のゲームならヘッドショットを決めてそのままデータの海に叩き落とす一撃がデュナメスに襲いかかる。
フィールド端からフィールド端への大規模狙撃はデュナメスの頭部カメラ破損という形で幕を下ろした。
「ハル!」「ハルお姉ちゃん!」
「っ!」
目標はヴァーチェの胸部。いくら装甲が厚かろうが、こちとらそっちのデュナメスのお兄さん、進化したスナイパーライフルだ。だったら、打ち貫く!
引き金を引いた瞬間、桜色のビームが空中を駆け抜け、ヴァーチェのコックピットへと直撃する。ヴァーチェと、その中にいるナドレは突然の不意打ちに為す術もなく爆発四散した。作戦勝ちだ。
「残り3機!」
「ちびっこ、デュナメスは任せた!」
「ちびっこ言うな、デカお姉ちゃん!」
「わたしも行くよ!」
そこからは電撃作戦にように瞬く波状攻撃を仕掛ける。
AIとは言え、この状況には混乱せざるを得ないだろう。動きが鈍ったエクシア、キュリオスをわたしとナツキで奇襲。
残ったエネルギーを使って大型ビームソードを展開。デュナメスの息の根を止めに行くのがセツ。そしてそれを近づけさせず、分断させるのがモミジの役目。
そう、完璧にガンダム狩りに成功するはずだった。ただ1つだけ、抜け落ちていた大事な大事な大きな出来事に気配りするのを忘れて。
「なんかガンダム赤くなったんだけど!」
「あー、やっば。トランザム使うんだっけ」
「やばくなったから3機ともトランザムってる!」
「わたしら、やばくない?」
そう、彼らもトランザムを使ってくる。出力を3倍まで引き上げたガンダムの機体は悲鳴を上げているものの、そんなことで彼らの機体が落ちるわけがない。おおよそ臨界時間まではおそらく3分。3分間耐えなければならない。
ナツキならトランザム機体1機ぐらいならどうとでもできるが、高機動型のキュリオスがいるなら、格闘戦特化のエクシアがいるなら話は変わってくる。
「ちょっ! こっち来んな! ちょこまかちょこまか……小バエかよ!」
「ナツキお姉ちゃんキャラ変わりすぎ……」
「ってよそ見してる場合じゃないじゃんちびっこ!」
「え? うわー!」
ディバイダーでとっさに盾を構えれば、極大のビームが飛んできて受け止める。
そのダメージは臨界まで迎えているのか、四肢は無事であるもののディバイダーは今の攻撃で使い物にならなくなっている。
「セツ、大丈夫?」
「……っばいかも」
空中では2機のトランザムで翻弄されるブルースカイ。
地上では相手は次弾装填中で、ブーストもロクに吹かせられないダブルディバイダー。
どっちに救援に行けばいいんだ。
「ハルはナツキチの方行って! あとはなんとかする!」
「なんとかするって?!」
「あたしが撃たれるってこと! ほら、こっち見ろー!」
狙撃用ビームライフルでわざとデュナメスに気付かせるように挑発する。
もちろんデュナメスはこれに気付き、迎撃を開始する。
目まぐるしく変わる戦場で、わたしは何をすればいいか。答えは分かっている。
「トランザム!」
桜色だったボディが紅色を映し始める。
やっと操縦できるようになったトランザムで、この窮地から脱出する!
3倍の高速移動とともに、両手にはスナイパーライフルではなく、ビームハンドガン2丁をハンドアックスモードへと移行させて、同じく3倍で動くエクシアにぶつける。
結果はGNソードへの直撃で、なんとかブルースカイを救出させることに成功した。
「ナツキ、後はなんとかして!」
「だったらちょっと本気出しちゃうか!」
高速移動するキュリオスはGNミサイルで機体を追うブルースカイを撃墜させようとするが、これにカスリとも当たらないブルースカイがインコースを狙いながら徐々に、ほんのちょっとずつキュリオスとの距離を狭めていく。
そして……。
「我がブルースカイの太刀はいくらでも追いつく。故に斬り捨て、御免!」
切れ味抜群のガーベラ・ストレートの刃はキュリオスの胴体を真っ二つに引き裂き、粒子の緑色が辺りに飛散する。残り2機。
「ってか、エクシアおっもっ!」
「ハル!」
「ナツキはデュナメスを! こっちはなんとかする!」
うん、と一言つぶやいて残りの残党処理へと向かうナツキ。
なんとかなるとは到底思ってない。思ってないけど、わたしがやられてもナツキがいるっていう安心感が自分を勇気づける。
ううん。ナツキがいるから、もっと前進しようと思ったんだ。
彼女がわたしを見つけてくれなきゃ、きっと昔のまま今もグーすや眠ってただろうし、趣味に目覚めることなんてなかったし、実は前までの方がちゃんとした睡眠を送ってたかもしれない。
だけど、わたしはかけがえのない友達と出会った。
シライシ・ナツキっていうかけがいのない、まだ面と向かって彼女を友達と言うのが恥ずかしい女の子と。
モミジっていうギャルと、セツっていう幼女と出会った。
昔のままでなんかいられない。いたくない。いてたまるか。そんな思いがファインダーの両手にこもる。
「負けてられない」
負けてられない。
「負けたくない」
負けたくない。
「負けるもんか!」
そうだ。わたしはもう一人ぼっちじゃない。だから……。
とっさに出たのはヘッドカメラによるフラッシュ。カシャリと強烈な光を放ったそれは、一時的にとは言えども、各種センサーを麻痺させる。
でもパワーが緩むことはない。より一層強まった力を、横に避けることで勢いをそらす。そして背後に回り込んだわたしは、ハンドアックスを投げ捨てエクシアの肩を掴み取る。突きつけたのはハンドガンモード。銃口の先はGNドライブのトンガリ。
「だから、落ちろぉおおおおおおお!!!!!」
奇しくもそれは00セカンドシーズンで、ロックオンが放った「1セコンドトランザム」と同様の動き。懐から背後に飛び込み、回避不能になった所をゼロ距離射撃によって破壊する。
蜂の巣となったエクシアは、その役目を終えて爆発する。
「はぁ…………はぁ……」
張っていた気が抜けていたようにガンダムファインダーのトランザム状態が終了する。
【BATTLE END!】
【Mission Success!】
その数秒後に鳴り響いたのは、紛れもなくミッションの終わりを告げるSEだった。
きっと1人じゃ出来なかったこと
◇GNミラージュコロイド
機体全身にGN粒子を付着することによって発動。
使用制限はあれど、基本的には本家と同様の性能を発揮する。
これによって、ある程度手を抜いていたモミジ戦の際に、
気付かれず接近できたという種明かし。
水中や砂塵の中、突風時などは使用できない。
◇ザック・ドローン、ザック・レドーム
ザックりというと、ドローンは発信機の子機。レドームは受信機の親機。
この2つを組み合わせることで、バトルフィールド全域を狙撃できる。
奇しくもやっていることは、
もう一つのビルドダイバーズである『ユーラヴェン・ガンダム』と同じである。