ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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ヴァルガどうでしょう 後編


第15話:どうしようもないような爆弾

 ヴァルガ旅行はまとめ撮りである。

 胴元を一手に請け負っているナツキは最初の最初にこう告げていた。

 何故か。答えは簡単だ。ヴァルガで動画を上げればどういうことになるか。先程身を持って体験したかと思うけれど、撮影しているなら場所だって把握されるだろう。把握された場所では戦争、もといダイバーポイント争奪戦が始まる。混乱に乗じて逃げればいいけれど、モビルワーカーの速度なんてたかが知れている。故に……。

 

「もう懲り懲りなんだけど」

「アハハ! わかるー!」

「セツは楽しいよ!」

「わたしは嫌だって言ってるんだけど」

 

 通算32撃破によって早くもわたしの心はボロボロに砕けつつあった。

 どうして、何故。そう思うごとにため息を吐き出しながらて、天を仰ぐことしかできなくなってしまうわけで。

 

「でもダメだよ、今だって撮影中なんだから」

「っていてもさぁ。世の中には神ゲーとクソゲーの2種類があってね?」

「ハルってあんまりゲームしたことないでしょ」

「わたしだって理不尽には敏感だよ。これはない」

 

 心の底から否定するつもりはない。だけど心がひび割れていくのを感じる。

 わたしはそこまでゲームに詳しいわけでもなく、やった経験も、そんなに多くない。

 VRシエスタゲームなるものには手を出したことがあるけど、あれはバカみたいに電気代がかかるってことで、母親に止められていた。

 そんなわたしでも分かることがある。ヴァルガという地には理不尽がひしめき、チンパンジーたちが床を叩きながらはしゃぐ姿を、同じ人だとは思わないことだ。

 降り注ぐ厄災FOEさんに通りすがりの獄炎のオーガさん。たまたまG-Tube配信していたジャバウォックの怪物など。ハイランカー、トップランカーの化け物たちがたまにお散歩していたり、それを抜いてもヴァルガ民は基本戦闘能力に特化させている。

 あのダイにしろ、他の2人にしろ、あのフィールドから出ればそこそこ優秀なプレイヤーではあったりする。それ故に初心者狩りなんて言うことをしているのが恥だと思うのだが。

 

 話が脱線した。ともかく、そんな魑魅魍魎が跋扈する百鬼夜行にわたしたちは素手で挑んでいるのだ。

 

「あんまし長引くと、飽きちゃうかもよ」

「それも、そうか。あんまり長いシリーズなんて見ないもんね」

 

 人間、動画が長いと作業用にしか見てくれない。それか見ないという選択肢を取る。

 だから内容も最低限で、かつ面白い会話部分だけをカットして編集するつもりらしいけど、元々が長いとやはりだれてくるのは必定。

 

「でも同時に安全な経路も見えてきたよね」

「セツもなんとなく分かってきたよ! こんな感じでしょ?」

 

 32度も撃破されれば、それはもう詳細なマッピングが完成するわけで。

 撃破されてきた経験を生かして、今までの経路をセツがまとめてくれた。

 実際は幾度か目標達成の瞬間はあった。侵入経路さえ間違えてなければ撃墜されることもなく、花を摘み取ってディメンションを離脱。それさえできれば、このゲームはクリアするのだ。

 あの周辺には誰が仕掛けたか、はたまたその初心者ミッションを知ってか、スナイパーが潜伏している。油断したところをコックピットごと撃ち抜いて自分のダイバーポイントとして変換しているのだろう。

 わたしたちもその還元をしてしまったからこそ、今はDランクの最低値。これ以上下がることはないけれど、上がるのも一苦労しそうだ。

 でもちゃんとつかめたのはビームの方向。ハンディカメラを手に持ちながら、指を差した先は岩場の上の方。恐らくここに陣取っているのだという彼女の見解だ。

 

「じゃあ悟られないように、見つからないように花を摘み取らなきゃいけないんだ」

「見つからないようにってのは、私にいい考えがあるよ」

 

 ニタリと口元を光らせながら笑う姿は頼もしかったものの、今までの手荒い運転を思い出して、少しだけ吐き気をもよおした。

 

 ◇

 

「いやー、運がいいよね、私たち」

「どこが! 何さあの爆弾の雨あられ!」

 

 そう、何もFOEさんや獄炎のオーガ、ジャバウォックの怪物だけがヴァルガに襲いかかる天災じゃない。

 奇しくもわたしたちのドライブと同時期に暴れているトップランカー。2桁の怪物が一角。個人ランク76位。黒と紫色を基調としたカラーリングと接近戦機体において、無類の接近戦性能と非常に高い完成度を誇る「ガンダムエクシアtypeC」を駆ける男。名前までは知らないけれど、こう呼ばれているのだけは知っている。

 

「殺戮の天使だっけ、あれ?」

「そーだよ! なんでも昔のゲームが元ネタなんだって!」

「ふーん……。意外と今の映像って貴重なんじゃない?」

「撮っといたら? 写真」

「分かってる」

 

 右手に装備しているGNチェーンソーという刃に回転機構とビーム刃形成機構を加えて、例えナノラミネートアーマーだろうが対ビーム装甲だろうが、上からずたずたに引き裂く驚異の兵器。

 本来GNソードに取り付けられていたライフルモードはオミットして、接近戦で戦おうという気概は、正直気が狂っているとしか思えない。

 

「てか、あれのどこが天使なの? どう見ても悪魔か堕天してるでしょ」

「エクシアが天使って言われてたからじゃなかったっけ。まぁあれ見てたら、天使でも悪魔でも、どっちでも良さあるよね」

 

 周囲を警戒しながらハンドルを握るナツキは、視界の端に殺戮の天使の惨殺シーンを見ながら目的の場所へひた走る。

 使い切り武器であっても、クールタイムが溜まれば再び使用可能になる点から、GN手榴弾の爆風を利用した接近戦。そしてコックピットごとGNチェーンソーで両断し、GN粒子が血のように辺り一面に広がる姿は、やっぱり悪魔だとしか思えなかった。

 どこまでも殺戮者。中の人はとんだサイコ野郎だと想像せざるを得ないだろう。

 

「一気に抜けるよ、掴まって!」

「うぉぉおぉぉおぉお!」

 

 クッションがあってもお尻に痛さは変わらないのでこれいらないんじゃない? とかは言わない。苦労してナツキが装備してくれた物にケチを付けてはいけないからね。

 殺戮の天使が暴れているスキを狙ってわたしたちは目的の花の座標1歩手前に陣取る。

 セツがスコープで覗き、機体の姿をハッキリ視認した。

 

「見つけたよ! ミラージュコロイドで身を隠してたっぽい!」

「サンキュ、ちびっこ。じゃあ、やろうかナツキチ」

 

 いい考えがあると言っていた彼女はいったいどうするつもりなのか。

 答えは、たった1つだけだった。

 その作戦を伝えられたわたしたちは博打と分かっていながら、モビルワーカーへと乗り込んだ。

 

「さぁ、行くよー!」

 

 モビルワーカーのエンジンをフル稼働させる。

 作戦たった1つだけ。それは、迅速に、素早く、確実に花を摘み取って、この場を去ることだ。

 白煙発生機を使用して、居場所の在り処を拡散する。

 

「銃口! ちょっと射線ずれてる!」

「っ! 来るよ」

 

 独特なビーム発射音とともに、すぐ側の崖がビームの熱に焦がされて融解している。ヒェ……。33回目の死亡になるところだった。

 でもそれで止まるほど、わたしたちの覚悟はへこたれてなんていない。

 何度死んでも、何度だって立ち上がる。それは目標のためとも言っていい。けれど、その目標に手を伸ばすことがゲームだと、今のわたしなら分かる気がする。

 

「ハル!」

「うん、採った」

「乗って!」

 

 セツに腕を引っ張られながら、モビルワーカーに乗って白煙発生機で身を隠しながら、隠れる場所を探す。ディメンションからの離脱条件である「相手にターゲッティングされていない状況」を作り出すためだ。

 

『何だこの煙?!』

『見ろ、スナイパーがこっち見てるぞ!』

『ミラージュコロイドか!』

 

 どうやら向こうは不運にもスナイパーの方を見つけてしまったらしい。同時に、わたしたちの方は運がいい。ほぼ無傷でこの場を脱出することが……。

 

「くっ!」

 

 ナツキの声とともに身体全体が左に倒れる。機体自体が急カーブしたのだ。

 何故か。それはたった1つ。先程の「殺戮の天使」のGNクラッカーが降ってきたのだ。

 もう一度言おう。GNクラッカーが、わたしたちの近くに降ってきたのだ。

 

「詰んだね、わたしたち」

「どーしよーもないね、アハハ!」

 

 モミジの諦め100割の笑い声とともに、クラッカーは炸裂した。

 

 ◇

 

「はい、これ」

「お、おう……嬢ちゃんたち、これをクリアしたのか」

「地獄だったよ」

 

 仮にもクリエイトミッション発行者であり、二度と見たくない顔だったはずのダイを呼び出して、花を納品した。これでミッションクリアなんだけど、どっちかと言うと達成感よりも疲労感の方が凄まじく大きかった。

 

「まぁ、なんだ。これでジュースでも買ってくれや」

「あんがと。おじさん、意外と優しいんだね」

「この有様を見てりゃ、誰だってそうなるだろうよ。あとおじさんじゃない」

 

 100BCを受け取ったわたしたちは、ぐったりと肩が地面につくんじゃないかってぐらい疲れた身体をカフェテリアで休めることにした。

 

「にしても、ミッションクリアー!」

「やったね。ホント、マジで疲れたけど」

「おんなじことは二度とやりたくない」

「セツも……」

 

 この100BCではコーヒーも買うことができない。仕方なく自腹を切って、カフェオレを注文した。

 あー、そうだった。そういえば、誰が動画の編集するんだろう。

 

「そこは私に任せてほしいかな。でも、その前に……」

「フォース戦だね。結局5日ぐらい使っちゃったけど、大丈夫なの?」

「大丈夫、じゃないかな」

 

 フォーメーションや追加装備を作るならもう9日しかない。

 わたしも1つ改造案があったりするんだけど、うまく形にできていなくて、助言が必要なところだった。

 

「私は今のままで行くけど、セツちゃんとモミジさんは?」

「セツは今のままー!」

「あたしもかな。つっても、問題はそこじゃなくない?」

「まぁ、そうだよね」

 

 数少ないメンバーでスナイパー2人は非常にバランスが悪い。

 前衛を担うナツキと、戦場の混乱を招くリソースであるセツ。そしてスナイパーが2人。スナイパーでもモミジは敵の探知をしながら、狙撃するのに対して、わたしは接近して戦えるけれど、それなら遊撃手の方がいい。

 

「ハル、機体性能と本人の適正が合ってないよね」

 

 要するにそこなのだ。

 恐らくわたしは格闘戦の方が秀でている。今のガンダムファインダーと致命的に相性が悪いのだ。

 

「あたしも最初は射撃って思ってたけど、よくよく見たら戦闘時にいつも前に出っぱなしだし」

「ほら、私の言ったとおり!」

「そこで威張られても」

「喧嘩しないでよ。今から作るのって、多分時間かかるよね」

「うん。完成度も含めたらかなり」

 

 ガンダムファインダーはわたしとナツキが作ったガンプラだ。故に完成度は人一倍高いほうだが……。

 

「できれば追加装備で済ませたいね」

「「うーん……」」

 

 考えても、仕方ないか。今日のところは解散することにした。

 頭の中の改造案はある。でもこれって本当に可能なことなのか、分からないまま。




今までの戦い方が、全てじゃない


◇「殺戮の天使」
「殺戮の天使」の異名を持つダイバー。個人ランキング76位のツワモノ。
ちゃんと別にダイバーネームはある
その戦い方はまさしく殺人鬼。肉を切らせて骨を断つ戦法が得意で、接近してきた相手はGNチェーンソーで、逃げ惑う相手にはGNクラッカーやGN手榴弾を使って、あぶり出す。

・ガンダムエクシアtypeC
黒と紫色を基調としたカラーリングは変更が行われている機体。
右手に装備するGNチェーンソーはGNソードをベースとして、刃に回転機構とビーム刃形成機構を加えることであらゆる防御装甲を両断する破壊力を得ている。
代償として取り回しに難があり。だがそれ込みで76位ものランクにいるため、並のダイバーでは歯が立たない。また回転機構を取りつける関係でライフルモードはオミットされている。
GNクラッカーやGN手榴弾は使い切りアイテムながら、リキャスト完了後に復活することからよく遠距離戦を仕掛けてくる相手を炙り出している。
左肩、腕にはGNフィールド生成機が装備されており、牙城な壁としても顕現できる。
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