ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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エメラとロイジーのアトリエ~黄昏の宇宙の錬金術師~


第18話:初めてのようなフォース戦

 2人の空間を散々楽しんだわたしたちの前に現れたのは、フォース「黄昏への探求者」のリーダーロイジーと次席であるエメラであった。

 

「どうやら君たちがバトランダムの相手みたいだからな」

「春夏秋冬のナツキです。今日はよろしくおねがいします」

 

 白髪で吊り目の割にはフレンドリーで紳士的な男性、ロイジーとわたしと同じぐらいの身長とピンク髪を持つ女性エメラ。……どう見ても恋人同士に見えるが、はて。

 

「1時間後が楽しみだ」

「負けませんからね」

「こちらもだ!」

 

 ナツキとロイジーは軽く、そしてバチバチと敵対意識をふくらませる。対抗しているナツキもそうだけど、ロイジーもこれでなかなか好戦的な相手らしい。不敵な笑みを浮かべてから、その場を去っていった。

 緊張感漂うわたしたちのフォースメンバーたち。フォース戦は初陣となる。故に緊張するのも無理はない。だけどわたしはそれよりも……。

 

「やばい、ねむい」

「切れちゃった?」

「切れたね、エナドリパワー」

 

 この1時間後とは言っているけれど、整備や準備の時間も合わせれば恐らく30分ほどしかないだろう。それだけ寝れたら、十分かな。

 

「ナツキー、膝枕して」

「へ?!」

「30分だけ寝る」

「え、あー。はい……」

 

 ロビーの壁を背にする形で横たわると、ちょうどナツキの太ももが頭の後ろを包み込む。

 GBNの感覚フィードバックは偉大で、雑踏の音も、太ももの柔らかさも、ナツキの匂いでさえも感じ取ることができる。やば。楽園かここは。

 まるでみんなが授業を受けている中、わたしたちだけ隔離された空間にいて、ふたりっきりを味わっているような錯覚に陥ってしまう。これは寝てないから? そうだと思ってわたしは目を閉じる。

 

「……こうしてみたら、子供みたい」

「同い年ぐらいの子を子供みたいって言うの、どーなのさ」

「いーなー。セツも膝枕してほしい!」

「こっち見んなちびっこ!」

 

 両手を前に突き出してモミジの後ろを追い回すセツたちの姿もまたてぇてぇと言うやつなのかもしれない。ま、わたしにはナツキの膝枕があるからどーでもいいんだけど。

 そして意識は一瞬にして眠りに落ちていく。強制ログアウトにでもなったら嫌だけど、そうしたらナツキが起こしてくれるかな。

 深夜テンションのわたしは、もう二度と見せることはないと思うが、こうやって流されずに勢いで抗う生き方も、存外悪くないのかな。薄れゆく意識の中で、わたしは30分の幸せに包まれよう。

 

 ◇

 

 情報はすべてを制する。いわば情報を掴み取るものは未来をも制するものだ。

 誰かがそんなことを言った気がするけど、割とどうでもいいのでここで流すことにする。

 

 わたしが寝ている間にモミジとナツキが対戦相手である「黄昏への探求者」を調べていた。

 5人構成のフォースであり、ロイジーを除く全員が女性。実はロイジーのハーレムパーティ何じゃないだろうかとも思ったけれど、引き連れて歩いていることもなかったので、ロイジーはしっかり弁えている人なのかもしれない。

 どうでもいいことはさておき、基本的にはロイジーとシャルロットの2名がメインアタッカーで、他のエメラ、リーシャ、ステラはサポーターと言ったところだ。

 それぞれの機体はユニコーンガンダムの改造機だったり、ガナーザクウォーリアの改造機だとか、様々だ。

 フォースとしては格上。さらにランクも恐らく上のダイバーが多いだろう。だからって引くつもりは毛頭ない。

 

「作戦は始めにセツのハモニカ砲で広域制圧。ロイジーとシャルロットは私とハルで引きつけてるから、スキを見てモミジが狙撃って感じかな」

「ハモニカ砲はりょーうで?」

「片腕だけね」

「うー」

 

 不満を漏らしたい気持ちはわかるが、あなたその両腕使ったらほぼ動けなくなるでしょうが。

 心の中で激しいツッコミを叩き込んでいると、モミジが意見する。

 

「それだと残りの3人がちびっこに集中砲火するかも。だったらちびっこも前衛でかき回してもらった方がいいんじゃね?」

「それもあるかも。でもそれなら居場所の炙り出しとかは……」

「あたしのバトルスキャン、忘れたとは言わせないよ」

「あ……」

 

 先にも言った、情報を掴み取るものは未来をも掴み取るというやつだ。

 比較的広いフィールドであるなら、バトルスキャンでは届かない場所もあるが、それでも広範囲の索敵を可能とする。ならば答えは1つだ。

 

「あたしがこのバトル、支配してやんよ!」

 

 そう言い放ったモミジの顔は、とんでもなく悪い表情をしていた。

 

 ◇

 

 出撃ハッチへと上昇していくカタパルトは未だに慣れる気がしない。

 要するにエレベーターなんだけど、周囲が真っ暗かつモニターで見えている景色が機械機械してるから、見慣れていない。

 それとも緊張しているからだろうか。初めてのフォース戦に戦闘の高揚感とチーム戦特有の足を引っ張ってはいけないという不安。ちゃんと勝てるだろうか、という心配を鍋の中に入れてかき混ぜたような感情の渦潮。

 よく見たら操縦桿を持っているわたしの手は震えていた。

 必死に抑えようとしても、震えは伝播していくだけで、手で抑えても止まらない。

 どうしよう。どうすれば。恐怖の中にいたわたしに通信が入ってくる。

 

「ナツキ……」

「どう? 眠れた?」

「うん、多少はね」

 

 実際はもっと寝足りない。もっと寝ていたかったし、欲を言えばもっとナツキの太ももを味わっていたかった。だけど、四の五の言ってられない。

 

「ハル、頑張ろうね!」

「……うん」

 

 ニコッと、花開いたような笑顔はまさにわたしを元気づけるためのようなものだったと思う。だからそれで十分。それで、わたしは勇気づけられる。

 ガコン、とカタパルトが出撃ハッチにセットされる。

 深く息を吸って、吐く。目標は敵の全滅。そしてわたしたちの誰かが生きていればそれでいい。1機でも多く敵を倒す。期待してくれたナツキのために。

 

「ダイバーハル。ガンダムファインダー・ブレイブ。行くよ」

「ダイバーナツキ。ガンダムアストレイ ブルースカイ。行きます!」

「ダイバーモミジ。ハイザック・バトルスキャン。行っちゃうよー!」

「ダイバーセツ。ガンダムダブルディバイダー! いっくよー!」

 

 前方から後方への多少のGを感じ取りながら、わたしは宇宙空間へと飛び立つ。

 宇宙はまだ慣れないけれど、それでもずっと動いていれば、攻撃が当たることはないと知っている。だから手はず通り、わたしはナツキについていく。

 

「データリンクとバトルスキャンのドローンであぶり出しお願いね!」

「わーってるって。行っちゃって、ザック・ドローン!」

 

 左腰にマウントされたミサイルポッドから3つのドローンが射出され、ブーストを吹かしながら、フィールドの探索を行っていく。

 ドローンは小型のミラージュコロイドが装備されており、戦闘を察知すると姿が消えるように偽装することができる。これでドローン破壊のバッドシナリオは回避できるはずだろう。

 暗闇をかき分けていき、該当のターゲットである敵ダイバー5機を捉えるまで、ドローンは走り続けていく。

 1秒1秒が恐ろしい。マッピングしているドローンとわたしたちは宇宙空間という闇の中をひたすらに突き進んでいっていた。

 

「いないね」

「不気味すぎる」

「もー、心配しすぎだってー」

 

 セツがおちゃらけて、その場の空気を和まそうとした瞬間だった。

 

「2時の方向! 数は2!」

「あれは、ユニコーンとアリオス?」

「絶対突撃部隊じゃん! ナツキ、行くよ!」

「了解!」

 

 エンゲージするのはユニコーンガンダムの改造機、アインツェルガンダムと青く塗装されたアリオスガンダムだった。

 潜航モードで移動しているアリオスはその尖った口を獲物を見つけたトラのように機械の音を歪ませながら花開かせる。

 

『まっぷたつー!』

「やってること怖いんだけど?!」

 

 肩にマウントしていたGNバルカン+ビームハンドガンで牽制するが、これは当たる気配はなく、すぐさまがま口を閉じて視界の端へと潜っていく。

 元々当てるつもりはなかったが、1発ぐらい当たってくれるだろうという希望的観測は無に帰した。流石に格上は違うか。

 

「ナツキ、アリオスは?」

「任された! そっちはいいもん見せちゃって!」

 

 ビームサーベルとガーベラストレートの鍔迫り合いを切り上げて、アインツェルガンダムにキックしながら、その推力を使いブルースカイはハイマットモードへと移行する。

 所謂バトンタッチ。厄介な相手に適切な味方をぶつけるのは、戦いの常套手段だと言っても過言ではないだろう。

 

「んじゃ、行きますか!」

 

 ビームハンドガンを腰にマウントし、肩に装備していたGNバルカンが直列接続される。

 

『なるほど。それが新しい武器ってやつか』

「ビームアックス。いいでしょ、これ」

 

 GN粒子を解放させてトリガーと元銃口をグリップ代わりにして、スコープ部分をビームアックス状の近接武器へと姿を変えると、ビームサーベルと鍔迫り合いを起こす。

 GNバルカン&ビームアックス。ブレイブの新装備でありメインウェポインの1つ。

 折りたたんで発射することができるバルカンモードと、直列させて大型のビームアックスへと姿を変える様子は、まさしくガンプラ特有のギミックとも言えるだろう。

 

『重たいな』

「でしょう?」

『なら、これはどうかな?』

 

 バトルスキャンによるデータリンクから熱源反応を探知。すぐさま切り合いをやめて、その場をブーストを吹かせてバックステップ。

 数秒後、そこを通過するのはビームのエネルギー。これ、もしかして狙撃?!

 

『油断はしない。これを使う』

 

 やや混乱しながらも、冷静さを取り戻したわたしの目の前で構えている武器は、ユニコーンガンダムの主兵器であり、代名詞の1つとも言えるビーム・マグナムだ。

 詳しい説明は省いていたが、ユニコーンと相手するなら、あれをかすってすらいけないという制約まで付けられている代物。

 第六感がささやく。あの銃口の先が、わたしであると。

 

 砲門の先に貯まるのはビームの集合体。スパーク光を帯びながら、狙いは確実にわたしを捉えている。

 すぐさまその場を離脱した先に待っているのは、第二の狙撃。

 右肩に被弾したビーム射撃はGNバルカンのマウント部分を破壊。これで済んだだけ上出来かと思えば、チャージが完了したビーム・マグナムがこちらを見ている。見ている。まずい。

 

 引いたトリガーは、まっすぐに一直線に、わたしの胴元をエグらんと突き進む。

 

 ◇

 

「全機、みっけ」

 

 いつものように狙撃ポイントで待機しながら、マッピングと全機の判明を済ませたところで、自前の狙撃用ビームライフルを膝立ちで持つ。

 今日は前衛ではなく後衛で待機しているサポーターを1人ずつ消していくのが目的だ。

 まさか3人とも狙撃用のライフルを持っているとは思わなかったけれど、それならこっちだってやりようがある。

 撃たれる前に叩く。そうしたいところだったけど、1回目の狙撃がハルに襲いかかっているみたいだ。こりゃ先制失敗したね。でも、ビームの光がどこから出てきたか。それは分かっている。

 

 狙撃ポイントを切り替えているみたいだけど、バレバレだかんね。

 宇宙に風はない。だけど距離は存在する。相手の移動速度と、距離を見定める。

 沸騰した脳内を冷却モジュールで緊急冷却させる。狙いはたった1つ。そこでのんきに移動している、ザクスナイパー。これを、叩き落とす。

 

 カチリと心地がいいトリガーの音ともに、予測狙撃をしたビームが闇を切り裂いて、ザクスナイパーのコックピットへと被弾し、爆発する。

 戦況も相手フォースの数が1人減っていた。ナーイスあたし! ビューティフォー!

 余裕ぶっている場合じゃない。狙撃ポイントを移動して、次を探そう。と言ったところで2発目の狙撃。あれ、ハルやばくない?

 そして3人目もこちらに気付いたのだろう。ビリリとした背筋に走る電撃が銃口をこちらに向けているのだと察知する。

 バレるのはやいなー。ま、いっか。まだ格闘戦じゃない。なら、だいじょーぶ。

 足場にしていた隕石を蹴り出して、その場を離脱すると、綺麗な狙撃があたしのいた場所に命中する。

 ったはー、これは向こうもそこそこの腕だわ。負けてらんないなー、スナイパーとして。

 

 ◇

 

 ワンセコンドトランザム。それは一瞬だけトランザムを起動させて、状況を打破するための戦術の1つだろう。NPD戦でも使ったトランザムを進化したトランザムをわたしはスイッチ式に切り替えて、ビーム・マグナムをなんとか避けることに成功した。

 

「あっぶなー」

『トランザムによるブーストか。なら今度はチャージせずに行く』

「うひーっ!」

 

 かすれば装甲が歪み、腕が取れてもおかしくない攻撃。

 設定ではビームサーベルのような効果があり、触れるものをすべて両断できるらしい。そして並の相手ならかすっただけで即死。

 わたしのファインダー・ブレイブは頑丈にできてはいるものの、そう何発も即死攻撃を撃たれてたまるか!

 ビームアックスをバルカンモードに移行させて、威嚇射撃をしてみるが、相手はその上からIフィールドを展開。ビーム攻撃が無力化される。

 早々に諦めてわたしは回避行動に専念を始めた。

 

「ハル! マグナムは最大5発。それが終わったらリロードが入るからなんとかして!」

「5発ね、了解!」

 

 今、撃ったから残りは3発。あれが0になれば……!

 

『判断が遅い!』

 

 肩にマウントしてたビームサーベルをわたしに向かって投げつける。もちろんサーベルは展開状態で、何がしたいのかはわからないけれど、これを避ける。

 だがアインツェルガンダムはその上を行く。携帯していた予備カートリッジをそのビームサーベルへと向かって投げる。

 

『コンフューズの応用だ。とくと喰らえ』

 

 マグナム・カートリッジにはたくさんのエネルギーが詰まっている。そしてビームサーベルは物体を両断できるという。これが接触すればどうなるか。答えは、明白だった。

 炸裂するのは強烈な光。ビームの拡散が衝撃波となってわたしを、ナツキを、そして味方さえにも襲いかかる。

 とっさに左肩のチャージビットを盾にして防ぐも、その火力は絶大。

 ビーム・コンフューズを応用した攻撃は間違いなくフィールドを焼いていた。

 

『ロイジーさん、ちょっと暴れ過ぎです!』

『お前ならこれぐらい乗りこなせるだろ』

『おかげで相手の機体は止まっちゃいましたけどね!』

「くっ!」

 

 地獄の門への口を開いた青いアリオスはまさしく死神。死へと誘う魔のシザー機構だ。だけど、わたしたちは3人じゃない。忘れていたかもしれないけど、真打ちは遅れてやってくるものだ。

 

「セツも忘れんなー!」

 

 挟み込まれる寸前に両腕のダブルディバイダーによって、シザーを開けたままにするセツ。

 

『はさ、めない!』

『シャルちゃん、引い……キャッ!」

「よそ見はいけないなぁ、お嬢ちゃん」

「これで、両断!」

 

 下から上への上段斬り上げ攻撃は、容赦なくアリオスの装甲を両断していき、出来上がったのはぶつ切りに仕上がった青い魚だった。




Iフィールドは固いけれど、太ももは柔らかい。


◇ガンダムファインダー・ブレイブ
ケルディムガンダムの改造機。
名前の意味はカメラから覗き込むファインダー+勇気を意味するブレイブ
ガンダムファインダーの接近戦用武装にチャージビットを搭載した、
ファインダーの格闘戦仕様

より強く、みんなの役に立ちたいと願ったハルが、
自分で設計し、ナツキの協力の下組み上げた至高の逸品。
よりハルの戦い方に沿うように、改造。
チャージビットはナツキから勧められたGPDの2人組から着想を得て、
形になったシールドビット兼サポートユニット

・武装
GNバルカン&ビームアックス
スナイパーライフルモードをオミット。
代わりに持ち手とスコープ部分にビームアックス生成機を作り、
より接近戦で動ける大型武器へと変貌を遂げている

GNロングビームサーベル「サクラ」
刀の形をしているビームサーベルで、他よりも少し大きい。
マスラオから拝借してるため、切れ味もいい。ビームの色は桜色

GNチャージビット
アサルトモードとディスチャージシステムを組み合わせた、
ガンダムファインダー・ブレイブの新装備。
本来ビーム発射口だったビットに、ビーム攻撃の性能を上げる強化システムを追加
これにより4基一組の行動とはなるが、ビームピストルの連射がガトリングレベルになったり、ビームサーベルが巨大化するなど、状況に応じてあらゆるビームを生み出す。

GNビームハンドガンⅡ
GNヘッドカメラ
GNミラージュコロイド

トランザム・??
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