ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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あけましておめでとうございます。
今年もお付き合いいただければ幸いです。


第20話:企みのような可愛がり

 動画編集とは、大変時間がかかるものだと考えている。

 手動で動画をカットしたり、字幕をつけてみたり、エフェクトをかけてみたり。

 どれもこれもが時間のかかる代物で、そんな困難を乗り越えた者たちを、人は投稿者と呼ぶのだろう。

 

 例に漏れず、ナツキは動画編集に四苦八苦している。

 最近ではAIがエフェクトや字幕をつけたりする機能が導入され、GBN内でもある程度高品質な動画を作ることが可能になっている。

 だが、カットだけは別だ。

 試しに最初、AIによるカットを行ってみたところ、ものの見事にカットしなくてもいい場所まで消えているという大惨事が起こった。

 慌てて戻るボタンで動画を戻したのは言うまでもないだろう。

 

 さて、ここで誰が編集すると言いだいたのか。

 もちろんこの目の前で今もミッションやフォース戦をほっぽりだして、カフェテリアで編集しているナツキだ。今現在、彼女は動画に唸りながらあーでもないこーでもないとぼやき続けている。正直怖い。

 

「ナツキ、休憩したら?」

「んー、そうする」

 

 一段落ついたのか。集中力が切れたのか。それとも一旦諦めの境地に行ったのか。

 どんな理由にしろ、わたしが目の前にいるのに会話もせず、ずっと編集画面を見ているのは少しいただけない。

 ちょっとした意地悪がてら、創作者に言ってはならない一言を言ってみた。

 

「進捗どう?」

「……知らない」

「進捗どう?」

「知らない」

「進捗……」

「あーもう! こんなんだったら私が引き受けるんじゃなかったー!」

 

 細長くてサラサラとした青い髪の毛を両手で抱えてヘッドバッドしてみせるナツキは、だいぶ参っているようだった。

 手伝ってあげたいけど、フォースリーダー様の命令は絶対なので、手伝えない2割。面倒そうだから手伝いたくない8割。心境の割合は今、そんなところだった。

 

「ポテト食べる?」

「食べさせて」

「はい口開けて」

「あー、ん」

 

 さながら小鳥に餌を上げる親鳥の気分だった。

 机に突っ伏している彼女の口に忙しなくポテトを投函していく。

 ふふ、かわいい。口には出さないでも、表情筋が死んでいるわたしの口元がわずかに上に上がるのを感じる。友達って、味わったことなかったけど、こんな感じなのかな。

 

「そういえばさ。掲示板見た?」

「あー、うん。新人スレとG-Tubeスレだっけ」

 

 ヴァルガ観光記の動画を上げてからしばらく。何故だかG-Tubeスレに補足されて、動画の再生数が初心者ながらも1万を超える自体になっていた。

 これにはわたしもナツキも、モミジやセツの全員で驚いた。確かに伸びる要素はあった、バカみたいな動画だとも思ってたし。だからってこんなに伸びるとは想定してなくて。

 後ろ指を差されるわけでもないが、あれからチラホラとわたしたちを見る目が変わったのは確かだ。文字通りバカ4人組という形で。

 動画のコメント欄も大体『バカジャネーノ』とか『愛されるバカ』とか、そんなんばかりだ。

 バカも休み休み言ってほしい。あ、今のはバカをかけたわけではなくて、ってそうじゃない。でも、よく考えたらヴァルガを観光気分でモビルワーカーに乗って駆け回るって、バカじゃなかったら蛮勇だとか、怖いもの知らずとか、そういうレッテルを貼られるのだろう。だったらバカでもいいか。

 

「だからって自己紹介動画作れって、言われるとは思ってもなかったけど」

「だねー。もうさながらG-Tuber路線まっしぐらだよ」

 

 ガンスタグラムとかではすでに自己紹介と言うか、こんな事してますって言いながら、撮った写真を公開してる。だが、それだけでは足りないと。生の声が聞きたいということで、この後ロケハンしてから自己紹介動画の撮影、みたいなことをする。

 ぶっちゃけグラスランド・エリアとか、10億の夜景や走り屋たちのペリシアと名高いシュバルツシュルトや北極や南極をモデルにしたトワイライトでもいい気がしていた。だけど……。

 

「動画取るなら、一番はフォースネストかなぁ」

「うん。やっぱ欲しいよ。私たちBCないし」

 

 フォースネスト。それはフォース1組につき1つ確保することができるシェアハウスみたいなもの。元を辿ればギルドホームと言っていいかもしれない。

 ただ、フォースネストもタダではない。BC、お金がどうしてもかかってしまうのだ。

 お金を稼ぎたい。でも早く自己紹介動画も撮影したい。あとミッションだってやりたいし、フォース戦もたまにならいい。つまり時間が足りないのだ。

 たった今、モミジとセツがそれぞれでお金を稼いではいるのだが、いかんせんフォースは思った以上に高かった。

 だからもうやけくそになってしまったのだろう。今思えば、これもバカな撮影だと思ったんだ。

 

「もうモビルワーカーでやらない?」

「……やっぱハル天才」

 

 ◇

 

 春夏秋冬モビルワーカー「スーパー四季」。その中はちょっと狭い車と同じような感覚だ。

 座席があって、後部座席もあり、荷物を置くスペースもある。何より元となった鉄華団モビルワーカーにはクッションがないが、これがあることで、お尻と背中の安全性が保たれる。

 あの後改良されたスーパー四季に乗って、わたしたちは録画を開始した。

 

「えーっと。おはようございます?」

「っば、動画の挨拶考えるの忘れてたわ! 草」

「台本とかないのー?」

「セツちゃん、台本とか言っちゃダメ!」

「でもないんでしょ?」

 

 初っ端からグダグダである。ただ、これがわたしたちらしいと言えば、らしいのだが。

 

「春夏秋冬チャンネルです。皆さんに自己紹介動画撮れって言われたので、撮ります」

「ハル、固くない?」

「いつもどおり雑いけどねー」

「うるさい。というか、なんでわたしが進行してるの。こういうのはフォースリーダー様であるナツキがすべきだと思うんだけど」

「そういうボヤキが出るからだよ」

「どうゆうこと?」

「ハル知らない? 掲示板で大泉って呼ばれてるの」

「なんでさ!」

 

 なんでよりにもよってあんな天パの北国のスターと一緒されなくてはいけないんだ。

 わたしはそんなにぼやいてないつもりだよ。ほんとだよ?

 

「じゃーわたしから、行くね」

「どぞー」

「えーっと。ハル、です。よろしく」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 辺りに沈黙が走る。外ではガンプラが空を泳いでいるのか飛行音がモビルワーカー上部に鳴り響いた。

 え。スベった、もしかして。

 

「ハルさぁ、クラスの自己紹介でもそれやってたよね」

「覚えてたの。てかリアルの話し出さないでくれる?」

「あたし、2人がリア友とか初めて知ったんだけど」

「セツもー!」

「あれ言ってなかったっけ?」

「やたら距離ちけー! とか思ってたけどねー。いやはやまさかまさか……」

 

 そんなつもりはないのだけど、距離近いかな。わたしは友達とかそういうのよく分かってないから、これが普通なんだと思ってたんだけど。

 はてなマークのエフェクトを出しながら、それでもカメラは回っているので、次のセツに順番を回した。

 

「セツです! お兄ちゃんもお姉ちゃんも、よろしくね!」

「はいでたー。あざとムーブー!」

「でかお姉ちゃんなんかむかつく!」

「ちびっこがちびっこらしいムーブしてるから悪いんじゃん」

「むー! でかお姉ちゃんだって、オタクムーブしたことないのに!」

「あたしはロープレ勢だしー」

 

 この2人のキャットファイトはどこか和んでしまうのは気のせいなのだろうか。

 何かとお互いに突っかかる間柄は、セツがELダイバーであることを暴露した時を思い出す度に違和感が出る。

 モミジ、ロールプレイ勢らしいから、人に何かを隠すってことが得意なんじゃないだろうか。人に悟られず、ひっそりと自分の中で抱えて、溶けるのを待っている。

 

 いや、シリアスは一旦置いておこう。今は撮影中だ。

 それに。どっちかと言えばモミジのギャルムーブってロールプレイだったって方がショックだ。

 

「はいつぎー! ナツキチ!」

「初めまして! 私はナツキって言います! 夢はハルと2人でGBNの空を飛ぶことです。よろしくおねがいします!」

 

 バッチリかよ。言われて思い出すけど、この人そういえばスクールカースト最上位の美女兼コミュ強だったわ。圧倒的光。圧倒的パワー。目が眩しい。わたしがおいそれと友達といってしまって良かったのか、また心配になってきた。

 

「ナツキチ、猫かぶってない?」

「そんなことないよ?」

「んー、まぁいいか。あとはカメラマンのあたしね」

「ほんとはわたしが撮りたいんだけど」

「ハルは大泉だからダメだよ」

「なんでよ」

 

 モミジはその典型的なギャルの自己紹介を簡単に終えると、カメラを車内へと向けた。

 未だにゴテゴテはしているけれど、それでも車らしくはあるだろう。ナツキの技術には脱帽だ。

 

「これがあたしらのモビルワーカー「スーパー四季」ね」

「でもやっぱせまーい」

「分かる。こんなとこじゃ寝れない」

「ワガママ言ってくれるなー、君たち……」

「今も割とギュウギュウ詰めなの、チョーウケる」

 

 そんなところで笑いの沸点を下げられても困るのだけど。

 でも実際にこの車は狭い。ヴァルガ旅行のときも、何度か天井に頭をぶつけていたくらいだ。一応戦車相当の大きさではあるらしいけど、それでも2人用だ。4人が乗る想定を一切していない。

 だから最低限座れるようにナツキも改造したんだろうけど、最低限だから狭いのだ。

 

「やっぱバギーとか買った方がいいかなー」

「BCの投げ銭できるんだっけ、G-Tubeって」

「一応ね。でもそれはもっと伸びなきゃダメっぽい」

 

 このG-Tubeにも投げ銭機能というのが存在する。あくまでもBCだけであり、実際の円や$を使うことが出来ない点は安心できる点だ。

 収益化というものをして、初めて使える機能なので、追々、その内としか言えない。

 

「そういえばペリシアにはバギーだけだっけ」

「そーだよ! 多分モビルワーカーもダメ!」

「武装してないんだけどね、これ」

 

 たははと笑いながら、そういえばこれってカメラ回していたなということに気付くわたし。もう手遅れだったか。

 

「じゃあ自己紹介動画はこんなところで」

「んじゃ、また次会おう! またねー!」

 

 ◇

 

【星々の輝き】G-Tuberについて語るスレ part243【Gチューバー】

 

1:名無しの視聴者

ここはGTuberについて語るスレです。

節度とルールを守って楽しく語りましょう。

 

Q.GTuberって?

A.G-Tubeで活躍している配信者ダイバーのこと

運営公認のG-Tuberがいたりと、今結構熱いジャンル

 

 ◇

 

539:名無しの視聴者

バカは来る!

 

【動画】

 

540:名無しの視聴者

デレレデレレデレレデレレデッデデッデ!

 

541:名無しの視聴者

春夏秋冬チャンネルっっっっっっじゃーーーーーん

 

542:名無しの視聴者

またの名をバカルテット

 

543:名無しの視聴者

自己紹介動画だぞ。よかったなお前ら

 

544:名無しの視聴者

このモビルワーカー、マジでイカれた改造してるな

 

545:名無しの視聴者

ガンスタグラムで作成したってナツキちゃんが言ってたから、

あの子は恐らくやばめのビルダーやぞ

 

546:名無しの視聴者

元々2席だったモビルワーカーを4席に増やしたんだろ?

明らかにヤバいですね!

 

547:名無しの視聴者

ナノラミネートならエイハブリアクターも搭載済みか。

厄祭戦勝てんじゃね?

 

548:名無しの視聴者

勝てるわきゃねぇだろぉおおおお!!!

 

549:名無しの視聴者

そういやハルちゃんの二つ名、大泉でいいの?

 

550:名無しの視聴者

ハルちゃん泣きそう

 

551:名無しの視聴者

あまりにも可愛そう

 

552:名無しの視聴者

フォース戦でかなり活躍してたから許してあげて

 

553:名無しの視聴者

でもナツキちゃんは認知してるんだね

 

554:名無しの視聴者

友達に大泉って呼ばれるの、正直きつい

 

555:名無しの視聴者

本名じゃなかったら、泣いていい

 

556:名無しの視聴者

ってか、グッダグダだな

 

557:名無しの視聴者

いかにも初心者が作ったホームビデオ

 

558:名無しの視聴者

そこがまたいい

 

559:名無しの視聴者

視聴者は前より選ぶだろうけどな。

だけど俺はこっちが好きだぞ

 

560:名無しの視聴者

分かる。百合はいいぞ

 

561:名無しの視聴者

百合はいいぞ

 

562:名無しの視聴者

百合はいいぞ

 

563:名無しの視聴者

ナツハルもいいけど、モミセツも悪くない

 

564:名無しの視聴者

ケンカップルはどの時代に置いても最強

 

565:名無しの視聴者

GBNにてチャンプは最強……

 

566:名無しの視聴者

それはそう

 

567:名無しの視聴者

あんな奴に勝てるかバカ!

 

568:名無しの視聴者

バカ野郎俺はやるぞお前!

 

569:名無しの視聴者

骨は拾ってやる

 

570:名無しの視聴者

骨すら残らんかもしれない

 

571:名無しの視聴者

塵にもならん

 

572:名無しの視聴者

あ、そのギャルってロールプレイだったんだ

 

573:名無しの視聴者

正直知りたくなかった

 

574:名無しの視聴者

でもオタクに優しいギャルも存在するし、オタクに優しい偽ギャルも存在する

 

575:名無しの視聴者

オタクくんに優しければそれでええのんか

 

576:名無しの視聴者

ええよ

 

577:名無しの視聴者

ええんやで

 

578:名無しの視聴者

それはそれであり

 

 ◇

 

 たまたま掲示板で見かけた自己紹介動画を覗いてみれば、見知った顔が映っていた。

 私の前では見せない元気そうな顔は、やっと彼女は彼女の居場所を見つけたんじゃないかなと、切なくも嬉しくも思う。

 

「……ふふ。共有しちゃおっと」

 

 いつもの手付きでガンスタグラムにログインしてから、春夏秋冬チャンネルの動画を共有する。

 そうすると従業員たちやガンスタグラムを見てくれた人たちがいいねを押したり、お互いに共有したり、コメントを残したりと様々だ。

 そうだ。そうすれば。そうすれば私の可愛いセッちゃんがみんなの注目を浴びる。

 

「ふふふ。あはは……あはははは!」

 

 別にセッちゃんが注目を浴びることで何か悪いことを企もうとはしていない。ほんとだよ?

 私はただ、愛しい愛しいELダイバーセツをみんなの人気者にしたいのだ。

 この活動だってそのための布石。そして時は来た。

 

「えーっと。今度、コラボ配信してみませんか?」

 

 ――ちの。

 

 G-Tuberなら割と知っている名前であり、個人ランキング316位の私、ちのがセッちゃんをもっともっと人気者にしてあげるからね!

 

「ふふふ……やば、笑いが止まらない」

「チエお姉ちゃん何してるの?」

「うわっぷ!」

 

 いつの間にかログアウトしてきた彼女が動いているのを確認して、椅子をひっくり返してしまう。

 痛た。頭の下にガンプラのパーツとか散らかってなくてよかった。やっぱ掃除はしておくものだね。

 

「だいじょーぶ、チエお姉ちゃん!」

「ダイジョブダイジョブ。それより……」

 

 指を差すのはスマホの画面。送信済みと表示された先は春夏秋冬チャンネルの主であり、フォースリーダーであるナツキちゃん。

 

「こらぼ? えぇ?! セツとチエお姉ちゃん、コラボするの?!」

 

 ダイバーネームちの。本名ヤマグチ・チエは、ELダイバーセツの後見人であり、G-Tuberでもある。

 活動している理由はただ一点。セッちゃんを、世界一のELダイバーにすることだ。




ロリコン、次回襲来


名前:ちの / ヤマグチ・チエ
性別:女
身長:151cm

フォース「ちの・イン・ワンダーランド」の支配人……フォースリーダー。
またG-Tuberとして配信活動も行っているSランクの女性ダイバー。
リスナーからは「お嬢」と呼ばれることが多い。
理由は取り分け簡単で、ドスの利いた声がヤの付く自由業に似ているため。
本人はセツが可愛いと言われる為に活動しているのにと、悩みのタネになっているとか

バトルスタイルは冷静沈着で、制圧射撃の腕はピカイチだが『アドリブに弱い』
予想の斜め上の行動をされると途端に崩されるため、
なかなか個人ランク316位からなかなか上がらない。
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