「Ricorda」などで春夏秋冬がお邪魔させていただいてます。
感謝カンゲキ雨嵐です。
G-Tuber「ちの」はG-Tubeを中心に活動する配信者である。
ELダイバーセツの後見人でもあり、あのバカみたいな発想の塊であるガンダムダブルディバイダーを組み上げた張本人。
自身もG-にゃんドレスワルツを駆ける個人ランキング316位のツワモノだ。
と、これだけ聞けば完璧超人のようにも見えるその実態は……。
極度のセツラブのロリコンであることだ。
「あー、今日もセッちゃんは可愛いなぁ!」
「……あのさ、これがちびっこの?」
「うん、こーけんにん!」
モミジ、わたしたちの方に振り向かないでほしい。わたしだって目の前で登録者数もビルダー、ファイターとしての実力でさえも上の人間が、仮にも子供の見た目をしているセツにほっぺをスリスリしているのだから。
よく見たら服装だってセツの色違いだし、いろいろとその、残念なお人だ。
わたし、ちゃんと動画を見て予習してきたんだけどな。ちのがどんな人で、どういう活動をしているかとか。
わたしの中でのイメージはアイドル、と言っても過言ではない。
キラキラ輝いて、周囲に笑顔を振りまくそんな憧れの少女。
たまに恐ろしくドスが効いた低い声で相手を威嚇したり、持ち前のガンプラで相手を圧殺したり。物騒な部分がいくつもある。
だけどそれも魅力の1つであり、あまり動画を見てないわたしでも推せるG-Tuberとして紹介できるくらいだ。
でも。でもだ。
アイドルはセツの恐らく成長途中であろう平べったい胸にほっぺをスリスリしない。
アイドルはセツを抱き寄せて、頭をなでたりしない。
アイドルはセツがこんなに好きってことはない。
それは幻想だったようで。
「すぅー……はぁ……」
「うわぁ……」
わたしたち3人を代表してモミジが心底ドン引きしているという声を心の奥底から吐き出した。うん、わたしだってそうなる。
とは言え、向こうは登録者数多く抱えているG-Tuberだ。失礼な真似はできない。
……ごめん、もう手遅れだった。
「ちびっこ、今すぐそいつから離れた方がよくない?」
「お姉ちゃんが離してくれないんだもん」
「モミジちゃんはセッちゃんのなんなの!」
それはそれは愛の深い一言を賜ったモミジはさらに困惑する。
何故そんなことを言われなくてはいけないのか。
別にあたしとセツはそんな大した関係でもないんだけど。そんな心の声がアバターのポリゴンを通して伝わってくる。ちのだって、それは分かっている。だから続け様にこう告げるのだ。
「ちのはセッちゃんをGBN一。ううん。世界一のELダイバーにしたいの!」
「えーっと、それは個ラン1位的な?」
「アイドルで世界一よ!」
このぽへっとして何事にも無頓着そうな無邪気な顔の隣でこの人は何を言っているんだろうか。
確かにセツは可愛い。それは認める。実際バカルテット、もとい春夏秋冬のマスコット的立ち位置として掲示板ではそれなりに人気みたいだ。
ちょっと舌っ足らずな元気の良さ。その割にはちょっと遠慮がちというか、ワガママを言わない素直さ。純情なダイバー諸君はお気づきだろうが、彼女は恐らくオタクくんが最も可愛がるタイプの子供だろう。
個人の趣味は分からないけれど、万人受けしそうな可愛さ、というべきか。
可愛い。可愛いんだけど、世界一のアイドルって、それはもう飛躍しすぎではないだろうか。わたしには分からない。ナツキも笑顔がひきつっている。処理能力の限界なんだと思う。
とにかく動かなくてはそのうちガード機に通報されかねない。
ナツキの肩をつついてシャットダウンしていた脳を再起動させた。
「あっ! 私がフォースのリーダーをしてる……」
「ナツキちゃんだよね! そっちがハルちゃん」
「憶えていてくださり光栄です!」
「敬語とかいらないよ! ちのもカタいの嫌だし」
「じゃあ今日はよろしくね、ちのちゃん!」
「うん、よろしく!」
セツを傍らにナツキと握手する姿はなかなか奇妙キテレツなものだった。
◇
「2部構成で、1部はトワイライト巡り。2部は軽くフォース戦ってことでどうかな?」
ちのが提案したのはわたしたち、春夏秋冬チャンネルのための動画と、ちの・イン・ワンダーランドとしての生放送の2種類を撮影することだった。
後者はフォース戦。ちのを含めた4名とわたしたち4人での殲滅戦。
どちらかが全滅させた方が勝ち、というシンプルな戦いだ。だからフォース戦のデフォルトに指定されているのだろう。
個人ランキング316位という、俗に言う3桁の英傑の胸を借りられるので、いい試合にしたいと思っている。
ただ、問題があるとすれば、前者の方だ。
「トワイライト巡りって、やってることあれと同じだよね」
「そうだよ。いつかやってみたかったんだよねー」
何故このナツキという女はこんなにノリノリなんだろう。
ディメンション・トワイライトとは四季や時間帯などから切り離された荒涼とした大地が広がるディメンションだ。
それなりに不人気なディメンションとして有名なのだが、最近はバンデット・レースと呼ばれる何でもありのスピードデュエルの会場が作られたりと、盛り上がりを見せているらしい。
あとは環境がヨーロッパの端の方。ノルウェーやフィンランドなどの北極圏に近いことから、トワイライト巡りと呼ばれるエリアを巡る人たちがいるとのことだ。そして、それがとても過酷だとも有名だ。
「極圏エリアの海は渡れないから最北端とか目指すだけかなって」
「あたしらいつから体張った芸人になったのさ」
「しなやすだよ、モミジちゃん!」
死んでもリスポーンするのはロビーであって、モビルワーカーの中じゃないんだけどな。無粋なことを言っても、その上を行く回答が出てくるだろうから、言わないが。
ということで、わたしたちは5人でモビルワーカーに乗ってトワイライト巡りをすることとなった。
「カメラ回すよー」
「うんー!」
そしてわたしたちを映すカメラが、回りだしたのだった。
◇
【ちのちゃんは】ちのについて語るスレpart12【今日もかわいいなぁ】
1:名無しの従業員
ここは配信者ちのについて語るスレです。ルールを守って楽しく語りましょう。
ちの以外の配信者については、別スレで語るようお願いします。
Q.ちのって誰?
A.GBN動画配信サービス「G-Tube」で、主にガンプラバトルや参加型のフォース戦を配信しているG-Tuberです。愛称はお嬢
Q.なんでお嬢?
A.キレた時のドスの利いた声が怖いからヤの付く自由業みたいだと言う理由から
Q.ちのちゃんとガンプラバトルをしたいなぁ
A.凸戦争に勝ってください
ちのの配信アーカイブはこちらから!
【URL】
◇
73:名無しの従業員
【速報】春夏秋冬チャンネルとコラボ
74:名無しの従業員
マジィ?
75:名無しの従業員
うっせやろ
76:名無しの従業員
ソースは?
77:名無しの従業員
お嬢のガンスタグラム
あとコラボ相手のナツキちゃんもつぶやいてる
78:名無しの従業員
大泉のとことコラボか
79:名無しの従業員
あのヴァルガ旅行してた?
80:名無しの従業員
そうやで。
期待の新人
81:名無しの従業員
自己紹介動画、ホームビデオっぽかったけどな
82:名無しの従業員
第1弾は動画で、春夏秋冬チャンネルで配信。
第2弾は生放送でフォース戦だってよ。
83:名無しの従業員
マジか。春夏秋冬フォローしとこ
84:名無しの従業員
待てよ。コラボ相手ってセッちゃんじゃね?
85:名無しの従業員
噂の?
86:名無しの従業員
例の?
87:名無しの従業員
お嬢が溺愛してる?
88:名無しの従業員
調べた。やっぱ居る
89:名無しの従業員
ロリコンお嬢が降臨なさるぞー!
90:名無しの従業員
もしもしガード機?
91:名無しの従業員
やめろぉ!
92:名無しの従業員
あれ、セッちゃんってメデューサ姉妹んとこじゃなかったっけ?
93:名無しの従業員
あいつらの名前出すなよ。
まぁ、抜けたんだろ
94:名無しの従業員
悪い評判しか聞かないしな
95:名無しの従業員
セッちゃんって、ちのちゃんが後見人してるELダイバーだっけ?
96:名無しの従業員
そう。
お嬢が言うには「火力が好き」という感情から生まれたELダイバー
97:名無しの従業員
何その物騒な好き
98:名無しの従業員
お金がアリだから、火力もアリなんだろ
99:名無しの従業員
奇しくもどちらもロリである
100:名無しの従業員
向こうは銭ゲバだけどな
101:名無しの従業員
フォース:春夏秋冬構成員
リーダー兼切り込み役:ナツキ
ぼやき女大泉:ハル
ギャルスナイパー:モミジ
お嬢の推し:セツ
一応フォース戦のデータもあったわ。
【URL】
102:名無しの従業員
ナツキちゃんがブルーフレームとフリーダムのミキシング
ハルちゃんはケルディムの接近戦仕様。
モミジちゃんはハイザック・カスタムかこれ。
セッちゃんはダブルディバイダー……
103:名無しの従業員
流石、G-Tubeスレでバカルテットって言われないわ
104:名無しの従業員
理論的には確かに火力高そうだけど、エネルギー残量どうなるの
105:名無しの従業員
核エンジンとか特殊エンジン積んでないと、ダブルハモニカ砲で消し飛ぶな
106:名無しの従業員
サテライトシステム積んでないから、相当厳しいだろうな
107:名無しの従業員
でもセッちゃんが場をかき乱すキーパーソンでもあるだろうな
108:名無しの従業員
このハイザックもやべぇな。
レドームとドローンで索敵範囲めちゃくちゃ広いぞ!
109:名無しの従業員
スナイパーだからその辺1人でカバーできるようにしてるのか
110:名無しの従業員
狙撃の腕も普通にいい。
本人Dランクだけど、実際はAランクぐらいか、それ以上の腕だな
111:名無しの従業員
ケルディムの接近戦仕様も普通に面白そうだな
今度作ってみようかな
112:名無しの従業員
なんにしても楽しみだわ。
どんな動画に仕上がるか、生配信になるか。
◇
「ねぇ。マジで狭いんだけど」
「分かるー。ちのがカメラ変わるからそっち乗せて」
「ダメー! あたしがカメラマンだしー」
「セツだってここから出たいのにー!」
荒涼な大地をただただモビルワーカーが走っていく。
そんな様子は端から見たら美しくて綺麗な景色と思うだろう。
だがそんなのは外からの様子だ。わたしたちは今、中の様子を映しているのだ。
後部座席は2人でさえギュウギュウ詰めなのにも関わらず、ちのも加えて3人が乗っている状況。膝にセツを乗せて、無理やり場所を取るぐらいしかないのだ。
狭い。そして寒い。エイハブ・リアクター稼働の熱で少しは暖かいけれど、外の環境には敵わない。
「そういえば、なんか話題とかないの?」
「話題?」
「ほら、ミスターMさんとかがやってる質問とか。一応私コラボ相手だよ?」
「あ、そうだっけ。そんな気してなかった」
「酷くない?!」
いやだって、妙に馴染みすぎといいますか。
実は春夏秋冬5人目のメンバーなんじゃないかって言われても、納得してしまうくらい自然に立ち振る舞っている。これが有名G-Tuberの貫禄か。心の中で考えていたし、ちょどいい。実際に声に出してみることにした。
「ちのって、緊張してないの?」
「ん? そんな事ないけど」
「結構自然にわたしとかモミジとかと会話してたけど」
「ちのは凸待ちしてるからさ。知らない人とかでも緊張を隠してるの」
「えー、それヤバくない?」
「……それってどういうヤバい?」
「すげーって意味」
わたしも一瞬分からなかった。でもモミジの言うことも分かる。
確かにヤバい。緊張を悟られないようにするって、難しいことだと思うし。そんな事ができたら小学生の頃の作文発表も失敗せずに済んだだろう。
「あはは! ちのは場数踏んでるからかな。一応2年近くはG-Tuberやってるし」
「2年?!」
「すごいね。わたしだったら3日と経たずやめてるかも」
「普通はそんなもんじゃないかな。ちのはみんなに支えられてるだけだし」
えへへ、と褒められ慣れてないのか少し照れ気味に笑ってみせる彼女は少し可愛らしい。アイドルと呼ばれているのもそう間違いではないのだろう。
ならやっぱり一般人集団であるわたしたちは場違いなのでは。どうしよう、今更緊張してきた。
「でもみんなもすごいよね、ヴァルガ旅行だなんて」
「そ、そう?」
「ナツキちゃんのドラテクもそうだし、ハルちゃんの飽きさせないトークも好きだし」
「今日ってそんな感じの企画だっけ?」
「ちのはそのつもりで来たけど」
この人どんだけ聖人なんだ。勝手なイメージ、G-Tuberはどこかしら頭がおかしいイメージが合ったし、この人も実際そうなんだけど、それ以外の点でかなり好印象を持てる相手だ。
ちょっとロリコンで、セツ好きのところだって愛嬌と親しみやすさ向上で人気があるのもうなずける。
「ま、一番はセッちゃんを世界一のELダイバーにすることなんだけどね!」
「ちのお姉ちゃんいっつもそれー」
「だってー、セッちゃん可愛いんだもーん」
頭をワシャワシャかき撫でて、セツを可愛がる姿は、どちらかと言うと姉妹のようにも見えて。
ふと気付けばカメラマンのギャルが少し寂しそうな顔を見つけてしまった。これは、いじりざるを得ない……!
「あれ、モミジなんか寂しそうだね」
「は、はぁ?! そんなことねーし!」
「あれあれ~? モミジちゃんも混ぜてほしいの~?」
「そ、そんなわけないじゃん! 別に。そんなちびっこ好きじゃねーし」
「セツはでかお姉ちゃんのこと好きだよ?」
「そーいうんじゃないんだっての!」
おぉ、予想は当たるものだ。モミジは攻撃力が高くても防御力が低いように見受けられる。
ELダイバーのことを告白された時はちょっと不穏な雰囲気を漂わせてたけど、モミジが今みたいなテンションを維持出来ているのであれば、些細な問題だったのかな。
「別に、そんなんじゃ……」
あれ、なんかテンション下がってきた。
こころなしかカメラの角度も少し下がってる気がするし、これちょっとまずい気がする。
「モミジちゃん、テンション! きゃるーん!」
「……あっ。きゃ、きゃるーん!」
「ぶふっ!」
「ちょっ! ナツキ?!」
ガタガタっと一瞬だけ転倒しそうになったモビルワーカーをなんとか立て直して、また大地を走らせる。
「ごめん、ちょっと笑っちゃって」
「今のは撮れ高ポイント高いな」
「ちのお姉ちゃん、撮れ高って?」
「JAPANディメンションでは撮れ高の神様っていうのがいてね?」
「嘘教えないでよ!」
「アハハハハ!」
「ナツキ! 運転!」
またもや転けそうになったモビルワーカーが一時的に停止。事故って全員ロビーに転送させられるところだった。危ない。
前から思っていたけど、ナツキって若干笑い上戸みたいなところがある気がしてる。出会ったばかりの頃からずっと笑ってた気がするし。でも運転中にお腹を抱えて笑い出すのは勘弁してほしい。
「今のも撮れ高ポイント高かったね!」
「も、もう!」
モミジもさっきまでの様子が嘘だったかのように笑ってるし、ちのは気を使ってくれたのかな。だとしたらお礼を言いたいところだけど、今言ったら流石に流れぶった切っちゃうし、カメラが回らないところでひっそりということにしよう。
こうしてやってることは過酷だけど、会話してる内容はゆるいトワイライト巡りが始まったのだった。
撮れ高の神様に今日も初詣