ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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セッちゃんの機体が完成したので初投稿です。


第46話:年末にハモニカ砲はいかがですか?

 メロスは困惑した。

 必ず、かの邪智暴虐のメデューサ姉妹を除いた春夏秋冬と戦ってみたいと。

 メロスには百合の間に挟まる感覚がわからぬ。

 メロスは、最近Bランクに上がったダイバーである。

 ロビーの壁のシミになり、百合を眺めて暮して来た。

 だからこそ最近知り合った『ポーク』なる美食家に対しては、人一倍に理解不能であった。

 

 彼女は百合の間にあえて挟まり、自分という壁を超えた先にある百合が見たいと言っていたのだ。

 メロスには無い発想。関心はしたが、理解はできなかった。

 そのために、1度経験してみるのも手だろう。そう考えたメロスは運が良かった。

 春夏秋冬が生配信で凸待ちフォース戦をすると知ったためだ。

 早速フォースのメンツと一緒に凸して、参加券を勝ち取った。

 

 フォース『文豪ストレングス』はそれなりに力をつけていたはずだった。

 それこそ邪智暴虐のメデューサ姉妹ではなくとも、そこそこのフォースだったと自覚している。

 もしかしたら春夏秋冬のメンバーを1人撃墜させることができるかも知れない。

 そう考えた、メロスは自分が愚かだったと自覚したのだった。

 

「なんだ、これは……」

 

 セリヌンティウスも困惑した。

 それはあまりにも一方的な鏖殺。8人いたメンバーが今や半分の4人となってしまっていたのだ。

 それもこれも、時刻は数十分前に遡ることとなる。

 

 ◇

 

『始まった』

『初見』

『ヴァルガどうでしょうの時間だー!』

『ナツハルを見に』

『13km狙撃を見に』

 

「……これ読まなきゃダメ?」

「さ、はーやーく!」

 

 前にも言った気がするが、挨拶というのは大事だ。

 人にいい印象をつけるのも、悪い印象を付けるのも常にこれがつきまとっていると言っていい。

 挨拶は重要。そう古事記にも書いてあるほどである。

 だから挨拶という名の掴みは印象に残る方がいい。そう、わたしには絶対にありえない、かわいこぶるという事をしなくては印象に残ることはないのだ。

 

「ハ、ハル」

「ナツ!」

「アキ!」

「フユ!」

「あー、合わせて、春夏秋冬……です……」

 

『草』

『草』

『かわいい』

『棒読みは草』

 

 いやだって、生配信やるとは聞いていたけれど、まさかこんな事をするとは微塵も思ってないじゃん。

 G-Tuberらしい挨拶というのは『おはよう』とか『こんにちは』では印象が薄い。

 覚えてもらうには最初の挨拶が重要だとさっきも言ったけど、こんな事をしてまで人気になりたいとは到底思わない。

 わたしがしたいのはGBNの景色をファインダーに収めて、ガンスタグラムに投稿する、っていうことぐらい。あとのバトルや配信活動は、言ってしまえば副産物に過ぎないのだ。

 

『そういえばダゴン水泳部の写真めっちゃよかった』

 

 でもこういう風にガンスタグラムに上げた写真の反応があると、嬉しくなるのも確かだ。

 リアルタイムで声が聞こえるというのは、新鮮で悪くないのかもしれない。

 

「さて、ガンスタでも言ったけど、今回は凸待ちフォース戦をしようって思ってます!」

 

 軽いルール説明と今回のバトルはフラッグ戦であることを告げると、格納庫エリアへと移動する。

 フラッグ戦とは殲滅戦とは違って、フラッグ、マーカーが付いているダイバーを撃墜すれば勝利。他が生き残っていたとしてもフラッグ機が破壊された時点で勝敗が決定するというフォース戦の勝敗方法の1つだ。

 というのも、わたしたちは言ってしまえば数が少ない。

 殲滅戦ともなると、数で圧倒的に上回られるとそのまま押しつぶされてゲームオーバーということになりかねない。

 多くの人数と公平なバトルがしたい。という観点からフラッグ戦を選択したのだ。

 

「そういや、ちびっこ。なにあれ」

「ん? セツのガンプラだよ!」

 

『あんなんでしたっけ?』

『なんかゴツくなってる』

『白いグシオンリベイク?』

『いや、ガンダムXディバイダーも入ってるぞ』

 

 もうひとつ。今回フォース戦をしようと思ったきっかけが、セツの新しいガンプラであった。

 名前を『ガンダムイクスリベイク フルディバイダー』。

 それまでセツのガンプラだったガンダムダブルディバイダーの燃費問題を解決する名目で、ちのがオーバーホール。さらに魔改造を遂げたガンダムXディバイダーだったものである。

 モビルドールセツのアウターパーツであるこの装甲の一番の難点はやはり38門のハモニカ砲を撃つと、すぐさま燃料不足になってしまう点だろう。

 それを解決するために、グシオンリベイクフルシティのバックパックにツインエイハブリアクターを搭載。これをコアであるモビルドールセツを介して、全身にエネルギーを循環させることで、それまでの問題を解決したのだ。

 だがちのは頭が悪いのか、それともセツが要求したのか。

 バックパックには追加で2枚のディバイダーまで付属されていた。

 計4枚、76門のビーム砲群。それがフルディバイダーという名前の由来だった。

 

「えへへー、いいでしょ!」

「お、おう……」

 

『セッちゃんは今日もかわいいなぁ……』

『流石火力の妖精』

『重量過多だろこれ』

 

「てことで、セツちゃんのイクスリベイクの試運転も兼ねて、いざ出撃!」

 

 それぞれがガンプラに乗り込むと、ルームマッチのようにパスワードを指定したフォースの凸を待つ。数秒も経たずにマッチングする辺り、みんな暇人かわたしたちとバトルしたかったのか、どちらかなのだろう。

 

「あ、ゴースティングはなしだかんな?」

 

『りょ』

『了解』

『おらんやろwww』

 

「えーっと、相手は文豪ストレングス、か」

 

『文豪ストレングス?!』

『おうおう、マジか』

 

 コメントの様子がややおかしい事に気づいた。

 なんだ、有名なフォースなのかな、わたしは知らないんだけど。

 試しにナツキやモミジに聞いてみたところ、2人も知らないらしい。

 となるとわたしたちが知らないだけという線。もしくはリスナー間で盛り上がるような相手、ということとなる。

 まぁ、戦ってみればいいか。勝っても負けても、GBNの死はリアルの死じゃない。だよね、タイガさん。

 

「ハル、ガンダムファインダー・ブレイブ!」

「ナツキ、ガンダムアストレイ オーバースカイ!」

「モミジ、ハイザック・バトルスキャン!」

「セツ、ガンダムイクスリベイク フルディバイダー!」

 

「「フォース春夏秋冬、行きます!」」

 

 カタパルトに乗ったわたしたちが射出され、該当のバトルフィールドへと移動する。

 この出撃もだいぶ慣れてきた。一周回って楽しい瞬間の一つと言っても過言ではなかった。

 

 転送されたフィールドは宇宙空間。つまり四方八方からの攻撃に備えなくてはならない。こりゃまたモミジのドローン頼りになっちゃうけど、頼りになるから別にいいよね。

 6基の見えないドローンを射出したハイザックは大きな隕石の岩場に隠れる。

 データリンクによってマップの状況は常に更新されていく。隕石の数。デブリの破片。そして、突撃してくる3機の機影。

 

『ケント、ナツハルはもらっていくからな!』

『フラッグはナツキ機じゃなかったか?』

『俺はナツハルの間に挟まる!』

『お、おう。メロスがそういうなら……』

 

「なんか不穏な通信が入ってきたんだけど」

 

『メロス、お前……』

『壁のシミどころか宇宙の鉄くずになりそうな発言』

『ワイ氏、メロスの死を望む』

 

 襲ってきたのは雷をモチーフにしたであろう白と金色で塗装されたガッデスと通常色のガッデスだろうか。後はガ系の頭と脱出型コックピットが特徴的な緑色のアヘッド。見た目からしてサキガケに近いだろう。

 その3機が真っ直ぐにナツキの方へと走っていく。

 

「先手は向こうって感じか」

「セツ、撃っていい?!」

「ワクワクじゃんちびっこ。いいよ。4枚解放しちゃって!」

「はーい!」

 

 目的は後衛に潜む残り5機との分断。そして76連装ビーム砲の威力の試運転だ。

 イクスリベイクはバックパックのサブアームを起動して、装備されていたディバイダー2枚をガッチリと掴み、前へ突き出す。

 両腕に装備されたディバイダーもしっかり平行になるようにして、横に並べる。

 普段は盾となるディバイダーの外装が中身をむき出しに。

 

 ――それはまるで地獄の門を開くような感覚。

 

 4枚ものディバイダーをオープンさせれば、そこに現れるのは1枚19門のビーム砲が並んでいるハモニカ砲。これを単純に4倍しているので、計算すれば76門ものビーム砲群が後列に控える敵を睨む。

 チャージのために一瞬光ったかと思えば、充填が完了したハモニカ砲が火を吹く。

 

「クアドラプルハモニカ砲、はっしゃー!」

 

 つかの間の光。閃光。度重なる光が光り輝いたと思えば、そこに結ばれるのは76本のビームの束。

 襲いかかるハモニカ砲を雷ガッデスとアヘッドは避けるが、残りのガッデスが被弾し爆破。さらに襲いかかるビーム砲は戦場を赤色の粒子で彩った。

 

『は?』

『なにこれ』

『戦略兵器か何か?』

『これがバカルテットのマスコット……』

『殺意高すぎ問題』

 

「3機げきはー!」

 

 セツはそうやって場を和ませるが、実際にやってることは、戦略兵器のそれである。

 オーバーフローしたエネルギーを噴射口から排熱する。

 ちのへ。セツがお世話になっております。早速ですが、このガンプラ、殺意高すぎです。

 などと苦情の手紙を出してしまいかねないほどの火力だった。えげつなー。

 

「セツ、まだまだ動ける! かっ飛ばすよ!」

 

 サブアームに装備していたディバイダーをバックパックに収納した後、ディバイダーをスラスターモードとして展開させ、後衛組みに突撃を仕掛け始める。その速度は、重装甲であるイクスリベイクにしては素早すぎるものだった。

 

『ツッコんでくるぞ!』

『任せたまえ。GNメガランチャー。フルオープン』

 

 黒いガデッサが万年筆に似たGNメガランチャーを展開するも、それを見逃すはずのないのがモミジというスナイパーである。

 すかさずメガランチャーのチャージを妨害するように、一筋の閃光が万年筆を貫く。

 

『くそっ!』

『トーマ! 言ってる場合じゃない、前! 前!!』

『ぐおっ!!』

 

 突撃してきたイクスリベイクの手に持つのは鉄血のオルフェンズでガンダムバルバトス第6形態が持っていたレンチメイス。

 もうひとつの地獄の門を開きながら、枝分かれしたレンチの先に拘束されたガデッサはメリメリと音を立てながら、その装甲がレンチによって潰れていく。

 

『今助ける! ファンネル!』

 

 アヘッドにファンネルを乗せた機体はビットを解放するも、その1基が突然爆発をする。

 

『な、なんだ?!』

「2個目ー」

 

 宇宙空間を駆ける閃光が2基目のファンネルビットを撃ち抜く。

 助け出そうにも、前門のセツ。後門のモミジ。逃げられるわけもなく、ファンネルビットが次々と撃ち抜かれていった。

 

『なんだ、これは……』

 

 セリヌンティウスは困惑した。

 かの邪智暴虐のメデューサ姉妹を除いたフォースがこんなにも強いと認識した。

 

『ぎゃぁあああああ!!!!』

 

 メロスは爆発した。

 かのナツハルに斬り裂かれて宇宙のシミとなった。

 

 目の前ではレンチに挟まれて握りつぶされたトーマの姿。

 後ろではファンネルを全機叩き落として、残ったフラッグ機である自分を見ている銃口。

 セリヌンティウスは感じた。

 メロスに後で文句を付けよう。

 

 ◇

 

「文豪ストレングスの方々、ありがと!」

 

『メロスは壁のシミとなった……』

『本人反省してるっぽくて草』

 

「その人が誰かは知らないけど、まぁなら何よりなんじゃないかな」

 

 やたら00のガ系が多かった印象の文豪ストレングスだったが、戦い自体は有意義なものだった。

 まさかセツのイクスリベイクがあんなに強いだなんて思ってもなかったし、モミジは相変わらずだったし。

 わたしたちもちゃんとキルスコアは稼いでいたんだけど、格闘戦である以上近づいた相手しか倒せない。モミジやセツみたいに遠距離から一方的になぶるなんて芸当はわたしたちにはできないのだ。

 

「じゃあ次は30分ぐらいから始めるね」

 

 生配信は滞りなく続いて、4戦した辺りで配信を終了することにした。流石に疲れたのもあるし。

 

「はーつかれた」

「お疲れーい! ちびっこ、エグくない?」

「あのガンプラさん、癖が強すぎー!」

 

 4戦だけで終わったのは原因があった。

 セツのイクスリベイクは一見強力なパワー型だと言っても過言ではないが、それ故にガンプラに振り回されてしまう。イクスリベイクが発するGにセツの身体はグロッキー状態になっており、モミジの膝の上で頭をおいて横になっている。

 なんか、わたしのトランザム訓練を思い出す様子だった。

 要するに慣れなんだけど、慣れるまでが難しい。それまでは我慢だ、セツ。

 

「わたしも眠いかも」

「配信って疲れちゃうもんね。私もかも」

 

 カフェテリアの椅子に深く腰掛けるようにわたしとナツキは肩を貸し合っていた。

 ナツキの匂いと柔らかさが直に伝わってくる。はぁ、いい匂い。なんかこのまま寝てしまいそうなぐらい心地がいい。

 

「ナツキー、今日ウチ来る?」

「今日はお母さんに顔を見せろって言われてるからダメっぽい」

「そっかー」

 

 あの夜以来ナツキはよくうちで泊まるようになっていた。

 それはきっとわたしのせいなんだろうと思う反面、わたしのせいなんだ、と黒い独占欲のようなものが心の中を満たしているみたいで心地よかった。

 でも今日はナツキいないのか。久々に早めに寝ておこうかな。最近夜ふかし過ぎた。

 

「……何だこの会話」

「でかお姉ちゃんどーしたの?」

「い、いや、なんも……」

 

 言い淀んだモミジの言葉は置いておくことにした。多分触れたら危険な類だ。

 まぁ、膝枕してるモミジも大概だし、わたしがこれ以上何かを言うこともないだろう。

 なので、ナツキの匂いに包まれながら、小休憩と言わんばかりに目を閉じるのだった。

 

 ◇

 

「あの時の少女たちはここまで成長したか」

 

 G-Tubeの配信画面を閉じると、男は両手を合わせて上に向けてから思いっきり伸びをした。

 もうすぐ30代ともなると、ずっと動かないというのは案外苦痛と言わざるを得ない。固まる身体をほぐすために肩を回して、凝り固まった筋肉を慰める。

 

「そろそろ、頃合いかもしれないな」

 

 男は引き出しからとある手紙を取り出す。

 このご時世、メッセージ1通で終わるような会話も、こうして " 果たし状 " という形にすれば、らしさというものはより一層強まる。

 ふふ。男は軽く笑ってから、白いスーツの中に果たし状を忍ばせた。

 

「タイルさん、どこか行くんですか?」

「あぁ。少し交渉でもしようかなとね」

 

 男の名前はタイル。『殺戮の天使』という二つ名を有する個人ランキング76位の魔物。

 彼の標的。それは先程まで配信を行っていた春夏秋冬に他ならなかった。




魔物、動く。


◇ガンダムイクスリベイク フルディバイダー
ガンダムダブルディバイダーにさらに火力を加えるため、
ガンダムグシオンリベイクフルシティのバックパックを身に着けた
モビルドールセツの外部装甲
火力。火力こそが正義。というコンセプトをより強化。
加えて難点であったエネルギー効率を解決するためにツインエイハブリアクターを搭載
バックパックにも2枚のディバイダーを付属。
両腕に加えて、サブアームも含めた全4枚ものディバイダーはそれまでの火力の比ではない。
バックパックのディバイダーは大型スラスターとして展開も可能
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