ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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初戦闘と、初交流


第5話:「戦いにダメもクソもあるかッ!!」

 わたしは今、死地にいる。いや、いさせられている。

 

『ヒャッハー! 初狩りは最高だぜぇ!!!』

「こいつらぁ!」

 

 よく分かっていないけど、ナツキの話によればスーパーカスタムザクF2000と呼ばれる、重装甲に重装甲を重ねたバカみたいな機体を中心にザク系の機体2機と、後方支援のハイザック・カスタムが1機。

 予め改造していたガンダムファインダーのGNビームハンドガンをハンドアックスモードに変えて、接近戦を繰り広げている。が……。

 

『こちとらF2000の倍の倍! スーパーカスタムザクF2千兆なんだよぉ! んなザッコい攻撃届くかッ!!!』

 

 防戦一方。援護射撃のハイザック・カスタムが容赦なくわたしたちを狙い撃ち、ザク2機がナツキの足止め。そして大ボスである2千兆をよりにもよって初心者であるわたしが相手していた。

 

 グラスランド・エリア。花と草が支配するTHE・平和ディメンションで、これほどまでの不利を強いられているのか。

 時は数十分前に遡る。

 

 ◇

 

 わたしたちはマギーさんのお誘いで、ダイバーが自分で自作することができるクリエイトミッションをプレイしている。

 GBNの動きに慣れながら空を滑空する気分は悪くはない。ナツキのブルースカイも白い飛行機雲のようなコントレイルを青い翼の先端から吐き出しながら、空を舞っている。

 わたしもいろいろ試して前後に動いたり、回転したりしながら飛んでいる。見る人から見れば妖精のフェアリーダンスと言ってもいいかもしれない。見た目が巨大なガンプラであることを除けば。

 

「ハル、調子はどう?」

「悪くないよ。全然悲鳴をあげないし」

 

 元々ナツキと協力して改良を施したケルディムガンダムだ。

 分からなかった問題点を洗い出して、パチリと言うまでハメたり、サーフェイサーを塗ってから塗装したのだ。そう簡単には落ちたりしないぐらいには強度を増したと思われる。

 それに初期装備であったケルディムのGNビームピストルの可変部分の強度を増し、ハンドアックスとしても使用可能にした、ビームハンドガンは可変時の衝撃にも耐えられる仕様になっている。

 あとは対人戦してみて、どこまで頑丈になるか、かな。

 

「ハルの場合、初心者だしちょっと練習しないとね」

「ナツキは? GBN始めたてでしょ?」

「あはは。わたしはちょっと、ガンプラ武道に心得があるから」

「何ガンプラ武道って」

「私も分かんないや。あはは!」

 

 そんな感じで、経験はあるから気にしなくていい、という話をこのミッションを始めてからずーっとしている。

 別に経験があるって隠さなくていいと思うんだけどなぁ。

 あっちこっち行きながらも、座標の地点は近づいている。別に急ぐ理由もないけれど、遅延するのはミッション発行者であるマギーさんを待たせるので失礼だろう。

 試験運転もそこそこに、わたしたちは花が咲いている座標地点へと飛んでいく。

 

 座標が近づいていると同時に、赤い点が4機、座標を取り囲むように陣取っているのをモニター上から確認する。

 のんきに質問してみるわたしに帰ってきた返事は戦闘準備の合図だった。

 

「多分、誰か待ち伏せしてる」

「待ち伏せって、このゲーム、バトルは任意じゃなかったっけ?」

「他のMMOとかでもいるんだよ、ミッションの邪魔をしてバトルに誘導する迷惑ダイバーが」

 

 2人はまだ知らないが、ハードコアディメンション・ヴァルガではお互いの同意を介することなく奇襲や挟撃してもいいことになっている。それはそういうディメンションだからしょうがないが、他のディメンションでは同じようなことができない。

 だから迷惑ダイバーは知恵を絞った。1人ではなく2人。2人ではなく3人。迷惑ダイバーが集まれば、それだけ矢の強度も増えていく。3人寄れば文殊の知恵というが、それが10人、30人、50人ともなれば、自ずと答えが出てくるわけで。

 ミッションを盗み見て、クリア条件の邪魔をする。

 単純明快でありながら、悪逆非道なやり方に親指を下に立ててブーイング行為をせざるを得ないだろう。最も、迷惑ダイバーなら、これを褒め言葉として受け取るが。

 他にもミッション中にクリア条件であるNPDを倒すとかもあるが、それは今は置いておく。

 

 要するにわたしたち2人は、見ず知らずの相手に因縁をつけられたらしい。

 座標の場所に降りてみると、そこにはガチガチに装備された鎧に、大型のヒートアックスを携えたスーパーカスタムザクF2000の改造機。加えてザクⅡのスパイクアーマーを更に刺々しくした、ザクⅡ世紀末仕様。最後にシールドの代わりにレドームを装備し、機体全体をオレンジ色に塗装した、他と比べて明らかにガンプラの出来が良いハイザック・カスタムが花の周囲を囲んでいた。

 

「……邪魔なんだけど」

「邪魔しに来たからな!」「「そーだそーだ!」」

 

 こうまで堂々と邪魔しにきたと言われたら、そうですかとスルーしてしまいそうになってしまう。

 けれどここは流されてはいけない場面。なのでいつもよりも強く自分の意志を持って、立ち退きを要求してみた。

 

「わたしたち、後ろのお花に興味あったりするんだよね」

「俺たちはお前たちみたいな花に興味があるぜ」

「あの、口説き文句なら見た目どうにかしたらどう?」

 

 スキンヘッドに世紀末仕様衣服。そして筋肉もりもりマッチョマンの上半身。間違いない、さっきわたしたちを騙そうとしていたダイバー『ダイ』だ。

 後ろの取り巻きは知らないし、なんだったら奥の方で退屈そうにこちらを見ている赤毛のローポニーテールの女性は助け舟の欠片も出さない。

 

「っかー! これだから小娘は嫌いなんだよ! モミジさんみたいな大人の女性の方が俺は好みだね!」

「……つーか、やめてくれない。傭兵のあたしを、あんたたちの一員に数えるの」

「すいませんしたー!」

 

 ダイというダイバーは意外と腰が低いのかもしれない。リアルの詮索はしたくないが、本職はサラリーマンとか中間管理職とかなのかもしれない。胃が痛そうだ。

 

「つーことだ。どいて欲しけりゃ、俺たちと戦いな。バトルだ!」

 

 ダイはそう言うと、バトル承認ボタンをこちらに譲渡してくる。

 わたしもナツキも大変嫌そうな顔をしている。そもそもわたしに至っては対戦自体が初めてなわけで。初めてのミッションで初めてのバトル。そして初めての敗北。

 いやいや、そんな訳はないと思っても、相手のランクはDランクが2人にEランクが2人。明らかに格上で劣勢だった。

 でもこれと戦わないと後ろの花は撮れないし、なんだったらミッションクリアできずにトボトボ帰宅してマギーさんに慰められるまでがセットだ。

 わたしの数少ないプライドとして、それは許せなかった。

 

「ナツキ……」

 

 とは言え、不安の方が大きい。もし負けたらどうなるんだろうか。

 デスゲームの舞台ではないから死にやしないし、実際問題エントランスに再転送されるだけだ。だけど、やっぱり……。

 

「私もなんとかするけど、ハルも頑張って」

「……うん」

 

 それは一見突き放したような言葉かもしれない。

 だけど逆を取れば、それは信頼しているという意味でもあると解釈する。

 期待に答えたい。例え初めてだったとしても、負けそうな戦いだったとしても、そんな信頼を口に出されたら、やりたくなっちゃうじゃないか。

 

 『YES』のボタンを押して、わたしたちは圧倒的に劣勢なバトルを始めたのだ。

 

 ◇

 

「だからってこれはダメでしょ!」

『戦いにダメもクソもあるかッ!!』

 

 近づけば巨大ヒートアックスで一刀両断。

 遠ざかればミサイルとビームの連射がわたしを蜂の巣にせんと、縦横無尽に空をかける。

 重量級だからか、固定砲台もいいところだけど、わたしが打ち込もうとするタイミングで、後ろのハイザック・カスタムが牽制射撃として狙撃型のビームライフルを向ける。

 ナツキも2対1をしているけど、こっちも2対1の状況は変わらない。

 向こうは得意の高機動形態『ハイマットモード』で応戦しているものの、Eランカーが仮にも2人襲いかかるのだ。苦戦は必死だろう。

 

 やっぱり接近戦しかない。あの装甲を撃ち抜くのはきっとゼロ距離射撃しかない。わたしの装備がそう言っている気がするんだから、そうに決まってる。

 ミサイルとビームの霰たちを回避行動とGNシールドビットによって防ぐが、マウントしていたシールドビットのいくつかは破壊されて地面に転がっている。

 

『そんな貧弱な装備なんかで、俺のF2千兆を突破できるかよぉ!!』

 

 ミサイルの雨をくぐり抜ければ今度は体長よりも大きな、巨大ヒートアックスがわたしを真っ二つにするべく、横に振りかぶる。若干の迷いとともに上を選択して上空に飛び上がる。

 だがそれは間違い。ハンドガンで連射しようとした瞬間、ハイザック・カスタムのビームライフルが左肩に被弾。爆発して、地面に叩き伏せられてしまう。

 

『サンキュー姉さん!』

『そういうのいいし。それよりトドメさしたら』

『吹けよブースト! 叩くは俺のハルバード! 行くぜ俺の2千兆!』

「うっそでしょ?!」

 

 数秒かかって点火されたF2千兆の巨大ブースターは遅いながらも、確実に驚異として迫る。あれ動かないと思ってたのに、全然違うじゃん。バリバリ巨体が突進してくるし!

 

『ハルッ!』

『ギャー!』

 

 ナツキはと言えば、最後の1機をガーベラ・ストレートの錆にした後、スカートのレールガンと背部ウイングのプラズマビーム砲を展開。フルバーストモードとして撃ち放つ。

 確実に直撃したそれはその巨体の装甲を溶かすまでは行かずとも、足止めぐらいはできるはずだった。

 文字通りその身で受け止めた4本のビームは装甲で飛散していく。

 

『俺の装甲はナノラミネートアーマー! ビームなんざノンノンだぜぇ!』

『鉄血装甲ってふざけないで!』

 

 徐々にだが、確実に迫るその機体にわたしはどうすればいいか。

 普段眠たくて、今は8割ぐらい恐怖で跪きそうな頭を残り2割でフル回転させる。

 どうする。どうすれば防げる。いや、防ぐんじゃダメだ、明らかに物量過多で圧殺される。なら避ける? 避けるなら推力が必要。今そんなものを持ち合わせていない。だけどその時間が稼げるなら……。

 1秒後には消えるかもしれない命を必死に繋ぎ止める手段を探し出す。埋まって見えないアサリを見つけるような、感覚。時間制限までに手探りで掘って、掘って、掘って。そして、見つけ出した。

 

 上段に構えた巨大ヒートアックスの刃の先はわたしのコックピット。もちろん斜線上にはガンダムファインダーのメインカメラがその時を待つように首を差し出している。

 だけど、それこそが最大の過ち。縦振りじゃなくて横振りだったら間違いなく真っ二つに引き裂かれていた。

 わたしが作り上げた結論は、ガンダムファインダーのヘッドカメラからのフラッシュの点火だった。

 

『クソッ、メインカメラが。だがッ!!!』

 

 本来写真に使うはずだったフラッシュ機能の転用。突発的で強烈な光は至近距離でならMSのカメラを一時的に麻痺させることができる。

 一瞬だけ判断が遅れた攻撃はどこにも当たらず、草原の土へと叩き込まれる。そこにわたしはいない。

 

『カメラがッ!』

『スキありぃいいいいいい!!!!!』

 

 普段のナツキからは到底出てこないような声を発しながら、ガーベラ・ストレートを突き立て、頭部とコックピットの間である、人間で言うところの鎖骨部分に刃を叩きつける。

 鎖骨の先は肺や心臓などの呼吸器であり、命でもある心臓がある場所。いくら装甲が固くて、ビームを弾き返すようなナノラミネートアーマーだったとしても、フレームの隙間であれば、どんな刃も通すしかない。ロボットの最大の弱点は装甲の隙間だと相場が決まっている。

 

『俺はぁあああああ!!!!』

 

 捨て台詞を吐かせることなく、ただ無残にも爆発するF2千兆を尻目に、わたしは最後の1体であるハイザック・カスタムの背中を取っていた。

 

『すごいじゃん、気付かなかったよ。どうやったの?』

「ちょっとしたギミックかな。お姉さんこそ、射撃の腕前すごいね」

『っ……。そう。じゃ、あたしのコーサンー』

 

 ハイザック・カスタムのポツダム宣言の数秒後、バトル機能が停止。辺りに散らばる破片はそのままに、わたしたちはダイバールックへと姿を変えていた。

 

「はぁ……勝ったぁ……」

「すごいよ、ハル! ハルの初勝利だね!」

「それを言うならナツキもでしょ」

「あー……そうだね!」

 

 気が抜けて腰が抜けて。へたへたと倒れ込んだわたしは、先程の赤毛のローポニーテールの女性に手を差し伸べられる。

 

「すごかったじゃん。見た所初戦闘っしょ? あたしの期待値も上がるわー」

「……お姉さん、意外とフランクだね」

 

 ギャルと言っても過言ではないのだけれど、あの傭兵まがいをしていたようなきっついお姉さんではなく、目の前にいるのはフランキーお姉さんだった。

 ナツキも警戒しているみたいだったけど、お姉さんのオタクでも優しそうに接してくれる姿に自然とこの人はいい人、というシールを貼っつけていた。

 

「あたしはモミジね。ごめんねぇ、BCなくって泣く泣く傭兵稼業してたら、運悪く初狩りとブッキングしちゃってさぁ。でももう大丈夫。あたし足洗ったから!」

 

 濃いな、この人。いい人ではあるけど味が濃い。

 マギーさんほどではないにしろ、胃もたれしそうだった。

 

「まぁ、うん。ミッション目的達成してこよ」

「そだね」

「あれれ~? なんか塩っぽくなーい? あ、フレコしよ? これもなにかの縁っつーことで」

「あー、うん」

 

 流される人生とは、流されてはいけない場面以外は割とどうでもいい。

 なので、こうやって1番目にフレンド交換したナツキの下にはモミジというギャルの文字が刻まれていた。

 

「んじゃ、そんなわけで! 今後もよろ~」

「よ、よろ~」「よろ~」

 

 ハイザック・カスタム改め、ハイザック・バトルスキャンに搭乗した彼女は遠くへと飛び去っていった。

 なんというか、嵐みたいな人だったな。




◇ダイ
英語の『DIE』から名前を付けた初心者狩りのハゲ。カマセ
手下はテッシーとタッパー。どちらもザクⅡを改造している世紀末仕様。
彼が駆ける機体は『スーパーカスタムザクF20000000000000000』(2千兆)
なにげにエイハブ・リアクターを内蔵しており、その鎧はナノラミネートアーマー。
ブルースカイのフルバーストモード相手でもびくともしない超装甲。
最近の悩みはそろそろ繁忙期が近づいていること。


◇モミジ
性別:女
身長:161cm
年齢:22歳

機体名:ハイザック・バトルスキャン
赤髪のローポニーテール。割とボサボサの髪の毛
逆三角形のフェイスペイントがほっぺたに付いている
結構美人系。胸はBぐらいで、スレンダーな体格

◇ハイザック・バトルスキャン
ハイザック・カスタムの改造機
名前の由来は、ハイザック+バトルスキャンと書いて支配
主に索敵で敵を発見し、遠距離戦で戦う。

基本装備はハイザック・カスタムと変わらず、
狙撃用ビーム・ランチャーを手にしている
最大の特徴は、肩部分のシールドを外してレドームを装着。
さらに左腰部分に3門のミサイルポッドと言う名のドローンを装備。
これによって広範囲の索敵が可能となっている。
モミジはこれを《支配》(バトルスキャン)と呼んでいる。

・武装
狙撃用ビーム・ランチャー
ビームサーベル
ザック・レドーム
ザック・ドローン


ガンダムファインダーについては、
基本的にはケルディムと同じ装備です。『基本的には』
解説はその特殊ギミックが出てからということで
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