ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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かねてより待機していたランカーがついに前に出るので初投稿です。


第47話:エンカウント運がバグってないですか?

 気付けばランクCになっていた。

 メデューサ姉妹や昨日のフォース戦での戦績が高く評価されたのだろう。

 脱初心者と言われるランクCを自慢すべく、ガンスタグラムにその旨のテキストを投下した。

 

 

ハル @Harucamera

Cランクになった

 

エグチキ @***

返信先:@Harucamera

おめでとう

 

メロス @***

返信先:@Harucamera

おめでとう

 

たけのこっくす @***

返信先:@Harucamera

え、今更?!

 

セリヌンティウス @***

返信先:@Harucamera

むしろ今までDランカーだったのか

 

トーマ @***

返信先:@Harucamera

実力派、と言ったところかな?

 

ちの @chino_Wonderland

返信先:@Harucamera

おめでとー!!

今度食べに行こー!

 

金づち @***

返信先:@Harucamera

もうBランクぐらい行ってるもんだと思ってた

 

 

 と、反応は様々である。

 なんでそんなにわたしがCだのBだの言われていたのかは疑問ではあったものの、祝われるというのはとても嬉しいものがある。

 写真を上げれば、何かしらコメントはくれるし、時たまDM上で撮影依頼まで来ることがあったりした。BCでの取引なので、本格的なのは間違いない。

 

「でもなー」

 

 いつものグラスランド・エリアで寝そべりながら、ガンスタグラムを閉じる。

 わたしが欲しいのは名声や富ではなく、たった1人からのお祝い。ナツキからのおめでとう、って言葉だ。

 ナツキもCランクになってるかな。なってたら、また一緒にお祝いできる口実ができる。泊まってくれる用事ができる。

 

「依存しきってるな、わたし」

 

 それがいいか悪いか。多分悪いことなんだとは思うけれど、寄りかかれば、押し返してくれるナツキはまさにわたしが求めているものだった。

 こんなにもそっけないわたしに対して、笑顔を見せて励ましてくれたり、一緒にシワを寄せて考えてくれたり。

 ナツキがいなかったらこんな幸せは訪れてなかっただろうなって。不意にそう思う時がある。

 一人ぼっちで通信障害に陥ってたら。もしかしたらのifを考えても意味ないか。

 身体を起こして、手を合わせてぐぐぐと背を伸ばす。こんなところまでフィードバックしなくてもいいのに、と思う反面現実と同じ気持ちよさを味わえるここに居心地の良さを感じる。

 ガンスタグラムのアイコンに赤い丸が1つ付く。なんだろう、ナツキかな?

 もう一度ウィンドウを開いてみると、ダイレクトメッセージでわたしたちに尋ねるような内容が記載されていた。

 

 ◇

 

「で、集まったわけなんだけど」

「まさかタイルさんからのDMとか思わないって」

 

 いつものカフェテリア。予定時間の5分前に集まったわたしたちはDMの内容を再確認していた。

 内容はこうだ。

 

『私を配信のゲストとして呼んでいただけないだろうか。もちろん面白くする努力はしよう。19時にカフェテリアで待っています』

 

「タイルって、誰さん?」

「個人ランキング76位のランカーさん。私たち一度会ったことあるんだ」

 

 その時はガンプラの指南もしてくれたんだよ? なんて言ってて、少し嫉妬心を抱いたものの、気を取り直して掲示板で調べてみることにしてみた。

 タイル。フォース『タイルドロー』のリーダーにして、『殺戮の天使』という異名をほしいままに所持している怪物だ。

 物騒な二つ名ではあるが、物腰自体は柔らかく、チャンプに似た紳士とも言うべき態度からは少なからずファンが居るみたい。専用スレも立っちゃってるし。

 

「タイル様に刺されたい。タイル様に引き裂かれたい。タイル様に貫かれたい」

「ハルお姉ちゃん、こわい」

「待って。掲示板の話だから!」

 

 そんなプルプルとスライムみたいに震えてもらっても。わたし怖いお姉ちゃんじゃないよ? ぷるぷる。

 セツの冗談とは思えない冗談はさておき、何をするかわからないけれど、とりあえず戦闘のデータなども確認していく。

 基本スタイルはとにかく近接戦闘での攻撃。最近新しい機体である『Dフォールエクシア』というガンプラに乗っているが、そのマニューバはハッキリ言って異常そのものだった。

 身のこなしがあまりにも軽すぎるのだ。地上でバク宙するのはまだ理解できる。三半規管が発達しているのか、360度自由自在に機体を動かしながら、時には爪先のビームサーベルで。ある時は両腕のチェーンソーでバラバラに。さらに別のときにはニードルガンでコックピットを串刺しにしたり。それはもう、やりたい放題だった。

 変態機動。キリング・マニューバなどと評される程度には、彼の動きは明らかに常軌を逸していた。

 

「セツ、この人の動き苦手かも」

「まぁ戦いたくはないわな。あたしがやったら出るもんでてきそー」

「でもガンプラさんは楽しそうにしてる! 戦いたくはないけど」

 

 そんな相手がどうしてわたしたちにDMを送ったのだろうか。

 答えは、いつの間にか机の前に立っていたタイルさんによって明かされることとなった。

 

「やぁ。待たせてすまなかったね」

「いえ、私たちも今来たところだったので」

 

 いつもの席だと4人がけになってしまうので、モミジとセツがそそくさと席を離れる。

 お構いなくとは言っていたものの、やはり大事なお客様だ。失礼があってはいけないと、強引にでも座らせることにした。

 

「ふむ、カフェテリアには久々に来るけど、ソファーの座り心地がいいね」

「あ、あはは……」

 

 わたしも乾いた笑いしか出てこない。

 相手は2桁のトップランカーだ。おいそれと会話していいような相手ではないものの、話が続かないのも逆に失礼だろう。

 わたしはナツキの手をつないで勇気を分け与えて、それを彼女は受け取る。

 

「で、配信のゲスト、でしたっけ」

「あぁ。私もキミたちのファンの1人だ。ある意味ランカー特権を使ってしまったところを詫びよう」

「い、いえ。それで、面白くする努力、というのは……?」

 

 気になっていた内容だ。面白くって、何を? わたしたちの虐待集とか、まさかのヴァルガどうでしょう再開、というのも勘弁していただきたい。

 予想される発想はあれど、恐らく彼が答えようとしている内容を、なんとなく予測できてしまった。

 

「もちろん、4対1の変則バトルさ」

 

 その甘いマスクの裏側に、とんでもない熱意とバトルへの飽くなき欲求が詰め込まれた視線を感じる。さっきからそんな目をしていたんだ。嫌でも分かってしまう。

 この人は噂通りの『戦闘狂』だった。

 肉を切らせて骨を断つ。ガンプラバトルに置いてガンプラ自体が壊れないことを前提として考えられた、戦法の1つだ。

 だが、その戦法を実行する人をあまり見たいことがないのは、単に恐怖と言ってもいいかもしれない。

 思い切りの良さとも言うこの勇気は、紛れもなくたかが外れた獣のようなマニューバが物語っている。

 避けられない攻撃を最低限の肉として、相手に差し出し、食べている間に殺す。それが、彼のやり方だった。

 故に『殺戮の天使』。狂気じみていながら、その実最小限のダメージで叩き抜いてきた天使を、誰が言ったかわからないけどそう呼んだのだ。

 

「で、ですがその。タイルさんは……」

「あぁ、曲がりなりにもランカーだ。キミたち4人がかりでも遅れを取ることはないだろうね。だから、もうひとつ提案させてもらう。こっちは更に面白いと思うよ?」

 

 口元を歪ませながら、アルビノの青年はそう言った。

 

 『ハードコア・ディメンション-ヴァルガで死合おう』と。

 

 ◇

 

 大きなため息が1つ溢れる。

 仮にも配信中であるはずの春夏秋冬チャンネルに流れたのは、この世の終わりみたいな表情と活気づくコメント欄だった。

 

『クソでかため息』

『草』

『(そりゃ)そうよ』

『気持ちはわかる』

 

「えーっと、今から……マジで行くの?」

「今回はタイルさんがいるから……」

 

 タイルさんが言ったのは4対1の変則マッチ。

 通常ならクリエイトミッションを生成して、バトルをするのが普通なのだが、タイルさんはその通常が通じないみたいだった。

 ハンデとして、ヴァルガで戦闘中のタイルと戦うというもので、ダメージを負った状態から4人がかりで倒せれば、それなりに絵になるだろう。という話だった。

 最後に一言。「それでも負けることはないと思うけどね」と自信満々に言ってのけたのは、やはりランカーとしての誇りから来ているのだろう。

 

『前に見た殺戮の天使さんもやばかったな』

『グレードアップしたエクシア楽しみ』

『がんばれー、みんなー』

 

「よし、じゃー行こっか!」

「おっけい」「りょ」「うん!」

 

 それぞれカタパルトに乗ってから、ヴァルガに転送される。

 わたしたちのヴァルガといえば、モビルワーカーでの縦断の旅が記憶に新しいところだ。もう二度とやりたくない理由はここに全て詰まっていた。

 無事に降り立ったわたしたちは歓迎と言わんばかりの狙撃手の攻撃を避け、モミジが1発ヘッドショットを決める。さすがモミジ、やっぱ頼れるなギャルスナイパー。

 

「どこにいるかな」

「周りの岩場じゃまー! セツぶっぱしていい?」

「それより前に、片付けなきゃ行けなさそうなのがいるね……」

 

 センサーの先。レッドアラートが鳴り響く場所にはおおよそ50機の編隊を組んだザクⅢを中心とするガンプラたちが、わたしたちを見つけるやいなや追いかけてきた。

 

『ヒャッハー!』

 

 彼の名前は「モヒー・カーン」。GBNでは初心者狩りとして有名な集団の1つだ。有名と言っても、悪い方で、というのが正しいのだが。

 

「ふひひ、撃っちゃっていいよね! いいよね?!」

「まー、いいんじゃない」

 

 やや呆れがちに了承するモミジ。その様子を肩を震わせながら笑いをこらえているナツキ。ま、いつもどおりか。わたしも便乗して撃っちゃえ。

 チャージビットを8基解放させて、ハンドガンの目の前に待機させる。

 同時にイクスリベイクも両腕のディバイダーを正面に向けてから、収納していたカバーを解放させた。

 

『何が始まるんです?』

『ハルちゃんのチャージビットに、セッちゃんのディバイダー用意……』

『あっ……(察し』

『血の雨が降りそう』

 

「ダブルハモニカ砲、はっしゃー!」

「GNチャージハンドガン、フルファイア!」

 

 一直線に飛ぶ計38本ものビーム砲に加え、1つ1つがビームライフルめいた威力を持つビーム連打に正面からやってきたカーン率いる初心者狩りを貫く。

 集団で行動しているため、逃げる場所などもなく、練習台になるがごとく50機いたガンプラたちはカーンを含めて数機程度しか残らないほどに、塵芥に変わっていた。

 横からさらに狙撃によってまた1人消えた。残り3機。

 

「爽快……」

 

『この幼女、こわい』

『流石火力のELダイバー……』

『エッッッッッ』

 

 艶混じりのセツの声は、少しだけほんの少しだけいやらしいものを感じるものの、それ以外は至って普通なので、スルーしておくことにしよう。

 今、カーン含む残党3機がナツキのガーベラストレートに3枚卸しに切られたので、残りは0機となった。

 しかし、ヴァルガはそれだけでは終わらない。

 カーンを膾斬りにしたナツキに襲いかかってきたのは赤いスサノオ。実体剣の代わりにビームサーベルで斬りかかってきたスサノオをナツキは迎え撃つ。

 

「そういうとこだったね、ここは!」

「固まろう! じゃないとタイルっちに会う前に死ぬわこれ!」

 

 バックパックのサブアームから普段とは違うハイザックの狙撃用ではないビームライフルを取り出したモミジはスサノオへ正確無比な射撃でナツキから引き剥がす。

 バックしたスサノオは今度は新たな敵影によって横から射抜かれて、ダイバーポイントに換算される。

 ここ、もしかして激戦区なのでは?

 

「逃げるよ、ナツキ!」

「おっけい!」

 

 ここが地獄の一丁目ならば、ここの曲がり角にはきっと鬼が存在する。

 なので、ハンドガンで角の方を連射してみる。案の定ヒットしたらしく、ジムストライカーが姿を現す。

 姿を現したが最後、モミジのビームライフルによる三連射撃。全てがヒットしてしまったジムストライカーは爆発四散した。

 

「タイルさんどこ?!」

「結構近い! 上に……え?」

「どうしたん?」

「なんか、FOEさんとタイルさんがバトってる……」

 

 センサー上には2機の機影と、さらに後ろに1機。

 1機はFOEさんのダブルオークアンタを改造したディバインダブルオークアンタ。

 対面しているタイルさんの機体は一見すれば半壊したようなエクシアリペアのようにも見えるが、ちゃんと左腕は付いているし、半壊部分を隠すためのマントが右肩に装備されている。

 極めつけは2本のチェーンソー。タイルさんが殺戮の天使と言われる由縁である、装甲無視の武装は血を啜らんと、音を立てている。

 ガンダムDフォールエクシア。堕天した天使の姿こそが、かの姿だった。

 

 そしてその後ろに陣取っているのはMG1/100ユニコーンガンダムにありとあらゆる武装や装備を無理やり身に付けさせられてしまった合成のキメラ。

 曰く、その頭は複眼の竜頭であった。

 曰く、その両腕は巨人の腕であった。

 曰く、その胴体は白き一角獣の美しき腹部であった。

 曰く、その背には異形の翼が4枚あり、見るものを恐怖に陥れる。

 曰く、継ぎ接ぎの怪物は、こう呼ばれている。

 

『ジャバウォックの怪物……』

『なんだこのギガントエンカウント』

『もはや天元突破級』

『天元突破ガンプラバトル・ネクサス・オンライン』

 

『最近ぶりね。元気してたかしら?』

『まさかキミたちと同時にエンカウントするとは思ってもみなかったよ』

『全くだ。奇遇というのもあるもんだな』

 

 三者三様。ジャバウォックの怪物を操るクオンも、FOEさんと呼ばれているキョウスケも、そして待ち合わせ会場としてここを選んだタイルさんも、反応は違えど面白そうに笑ってみせる。

 フィールドは不気味なまでに静寂としていた。まるで決闘前の静けさのような、ヴァルガではありえない、異様な光景を。

 

「……これ、あたしらいる?」

 

『言ったらおしまい』

『しー!』

『逃げたほうがいいのでは?』

 

「セツたち、タイルお兄ちゃんと約束あるよ?」

「なかったことにしたい」

 

 和気あいあいと繰り広げられている会話ではないのは、この場にいる全員がわかっていた。

 そして誰が予想しただろう。もう2機、この戦域に介入を始めたのは。

 まずは赤い機体。いや、鬼と言った方がいいかも知れない。

 両肩の大型スラスター。背中には2門のバズーカを抱え、両手には巨大な剣が2本。

 ガンダムGP羅刹天。そのガンプラを駆けるパイロットはたった1人だけ。とても厄介な通り名として呼ばれていた。

 3機のいがみ合いに乱入するがごとく、いの一番にDフォールエクシアに斬りかかる。

 その名を、煉獄のオーガ。GBN内では美食家と名高いトップランカーだった。

 

『そのガンプラ、味わう価値がある! 俺に食わせろッ!!』

『嫌なタイミングで出てくるじゃないですか、オーガさんッ!』

『我も忘れてもらっては困るな』

『あ、セッちゃんだー!』

 

「「「「えっ?」」」」

 

 そして最後に現れたのは猫耳を生やしたガンプラでおなじみ。フルドレス・ユニットが光る、ちのだった。

 拡散レーザー砲を周囲にバラまきながら、この地獄と煉獄を窯の中に入れてクッタクタになるまで煮込んだところにハバネロをぶち込んだ戦場は明らかにわたしたちには不釣り合いだ。

 

『来たか、春夏秋冬!』

「できれば気づかないでほしかったなー!」

『おい待て、逃げる気か?!』

『すまないね、私はレディたちとの予定があるんだ』

 

 戦いの幕は切って落とされた。

 ジャバウォックの両手から放たれるメガ粒子砲が。

 ディバインダブルオークアンタのGNバスターライフルの閃光が。

 G-にゃんドレスワルツの全方位殲滅攻撃がわたしたちを標的の1つとして数えられるのには時間がかからなかった。




大乱闘スマッシュダイバーズ、開幕


・ガンダムDフォールエクシア
エクシアtypeCが損傷した、という設定の元、
エクシアリペアを参考に、あえて壊れているような見た目になっている。
だが、性能自体はtypeCより格段に上がっており、見た目で判断すると一瞬で引き裂かれる。

黒と紫色を基調としたカラーリングは変わらず、
右腕にはボロボロのマントが肩から装備されている。
これによって視界を塞ぐようなトリッキーな動きや、GNチェーンソーの挙動を悟られないようにミッションを遂行することができる。


◇FOEさん
出典元:ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ(守次 奏様作)
やべーやつその1。ダイバーネームをキョウスケというらしい。

◇ジャバウォックの怪物
出典元:GBN総合掲示板(青いカンテラ様作)
やべーやつその2。ダイバーネームをクオンというらしい

◇煉獄のオーガ
出典元:ガンダムビルドダイバーズ
やべーやつその3。オーガはオーガだよ
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