ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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色ウッウが出ないので初投稿です。


第55話:いきなりオフ会ってありですか?

「ハル。オフ会をしよう」

「え、なんで」

 

 翌朝。ナツキが名案を思いついたと言わんばかりに超がつくほどの真面目な顔でアホなことを言い始めていた。

 

「私は気付いたの。エクシアリペアの腕を加工するならちのちゃん含めて全員を招集して、作り上げればいいって」

「な、なるほどぉ?」

 

 ナツキの言いたいこととはこうだった。

 フルスクラッチ経験のあるちのやモミジを集めて、わたしに手ほどきをしながらエクシアリペアⅣの左腕、ならぬ新ガンプラの新しい右腕を作ってしまおう、ということを。

 確かにそれならナツキだけの知識ではなく、ちのやモミジの技術も加わって、より完璧で強靭な右腕に仕上がることだろう。

 問題があるとすれば、該当のちの、なんだけど。

 

「ちのってどこに住んでるの?」

「さぁ」

 

 いきなり計画が破綻仕掛けているんだけど。

 手のひらを天井に向けてお手上げのポーズをしてみせるナツキに対して、わたしはその手をはたき落とす。

 

「な、なにするの!?」

「住まい分かんないんじゃどうすればいいのさ!」

「……どーしよ。聞いてみる?」

 

 そんな簡単に「君どこ住み? てかLINEやってる?」みたいなことを言われたって、ちのが答えるわけ……。

 

「あ、来たよ。市内だってさ」

「……マジで」

 

 縁というのは実に奇妙なものだ。まさかわたしたちのフォースメンバーが全員市内在住だったとは。

 ここって政令指定都市ではあるけど、比較的小さくて人もそれほどいないような場所だったはず。はずだよね?

 だいたい、こんな雪が降る辺鄙な都市なのに、ナツキもモミジも、そしてちのやセツまでいるなんて、正直どうかしてる。どんな運なんだ……。

 

「週末会えないかって言ってみたら、行けるって。やったねハル!」

「いや、うん……。まぁいっか」

 

 奇妙な運の良さに思わず天井を仰いでしまう。

 みんながみんな首都在住ではなかったことに少しだけ嬉しさを感じるけど、今年はじめから運を使ってしまったんじゃないかと、わずかに心配になってしまうわけでして。

 今週末が楽しみなのは間違いないんだけどね。

 わたしたちは急遽決まったオフ会のために、描いていた案を整理しなおすことにした。

 

 ◇

 

 時は巡って週末。

 待ち合わせ場所であるガンダムベースにやってきたわたしはスマホで時間を確認する。

 20分前だけど、少し早く来すぎてしまっただろうか。楽しみすぎて、とは嫌でも口には出さないけれど、昨晩はあまり眠れなかったのだ。故に先程からあくびが止まらない。

 しばらく壁に寄りかかって目を閉じてもいいかな。

 壁に体を預けて、徐々に睡魔が脳内を侵食していく。これでもどこでも寝れる体質なのだ。だから教室の机だって、ガンダムベースの壁だってそこに眠いわたしがいれば、いつでもベッドになり得るのだ。

 

 意識を失って何分が経過しただろうか。暗闇の空間からわずかに聞こえる雑踏をかき分けて、聞こえるのは1つの突風。

 耳元に吹きかけられた吐息とともに、脳内はスリープモードから起動状態に移行する。

 な、なに?! どこから……! 耳を塞いで風の吹いた方向を見れば、そこにはナツキとこの前見かけたモミジのリアルがいた。

 

「おはよ。いい夢見れた?」

「……ナツキのせいで寝起き最悪だったけど」

「おもしろ。あ、ごめん笑っちゃって」

「いいよ。この前のモミジのリアルだっけ?」

 

 女性はそうであることを示してから、自分の名前を言った。

 本名をアサカ・アキナ。多分ダイバーネームの由来はアキナの秋を紅葉に変換して、と言ったところだろう。安直ではあるものの、本名まんまのわたしたちよりはマシか。

 

「……なんか調子狂う」

「そうかな? やっぱりギャル語使ったほうがいい?」

「あー、でも……」

 

 ロールプレイはその見た目だからこそ成立するものだ。

 ダイバー時のモミジは赤く着色された髪の毛が印象的だったからこそ、ギャルで通じるものの、今のモミジは、その。くたびれている。

 仕事に疲れたOLが休日の日がやってきて、でかけたものの目の下のクマが化粧では隠せないぐらいに濃いし、なにより髪の毛が普段から手入れされていないように見える。

 正直に言おう。女子として、もういくらか終わっているタイプであると。

 

「あたしがこの見た目でロープレするのがイケないと?」

「いや、そんなことは……」

「これでも学生時代は結構ギャルとしてブイブイ言わせてたんだけどなー。あれもこれも全部ユカリっちのせいだわ」

 

 ユカリ。聞いたことのない名前だけども、きっと友達なのだろう。

 聞いている感じではギャル友ではないと思うけど、そんなに悪態を付けられるのなら、親しい仲であることは間違いない。

 聞くのも野暮だろうし、また自然とこぼれた際にでも拾うことにしよう。

 

「それにしてもちびっこのやつ、遅いな」

「ELダイバーだし、その辺厳しいのかもね」

「そっか。リアルじゃプラスチックの身体なんだっけ」

 

 ELダイバーを調べているときに目にしたことを思い出す。

 彼女たちは基本的にはGBN内で生活しているものの、定期オンラインメンテナンスやアップデートの際には一旦リアルの身体に戻らなければならない。

 でないとデータとしての自分の意識が崩壊して、取り返しのつかないことになるらしい。

 詳しいことはわからないけれど、ビルドデカールというものを発行してもらい、それをリアルの素体『モビルドール』に貼っ付けることで、意識をリアルへと持ってくることができるとのことだ。

 ただリアルで活動するための鱗のようなプラネットコーティングを定期的に塗る必要があるらしく、そのための資金は国から提供されているらしい。

 なんだか小説のような話だけども、事実は小説よりも奇なりという言葉もある。そういう事があっても不思議ではない。

 

「あと後見人がちのちゃんだし」

「あー……」

「そこ納得するんだ」

 

 可愛いことに目がなさそうなあの人なら、ちょっとオシャレしてオフ会に行こうだなんて言ってもおかしいことはない。

 故に、目の前で深めの落ち着いた桃色のアウターにコートとマフラーを身に付けた女性と、そのマフラーの合間からゴスロリコーデで着飾った小さなプラモデルが手を振ってきた時は少し驚いた。

 

「やーやー、待たせたね」

「待たせたね!」

「ちっちゃ……」

 

 思わずモミジがマフラーの間に挟まっているゴスロリの、セツの顔を見てそう言い放った。

 

「ち、ちびじゃないもん! みんなこんな感じだもん!」

「いや、それにしたって……ちびじゃん」

「うぅー! だからちびじゃないもん!」

「まーまー。せっかく会えたんだし、とりあえず制作ブース、行こ!」

 

 モミジとセツの間に挟まったちのが困り顔ながらも笑顔を傾けながら、提案をする。

 このままだとガンダムベースの販売スペースで騒ぐ羽目になっただろうし、ちのの提案には大歓迎の3文字で対応した。

 室内は暖かいので首元に巻いているマフラーを取って、一段落する。セツもマフラーからその身を抜けると、テーブルの上に着地した。

 

「へー、セツちゃんゴスロリなんだ!」

「うん! チエお姉ちゃんがこれ着てけって」

「ちの、そんな趣味が……」

「違いますー! 私は可愛いと思ったものを着せただけですしー!」

 

 だからってゴスロリはないだろうて。

 危うく口に出しそうになったツッコミを喉の奥の方で止めると、モミジがその飲み込んだツッコミをそのまま口にしていた。

 

「え。セツ、変なの?」

「……フヒューヒュー」

「ちのちゃん、口笛吹けてない」

「だって! 少しでもオシャレしていこうって言ったから、手元にあるドール用の服を片っ端から持ってきたんだけど、どれもこれもゴスロリかドレスしかなくって! もうこうなったらゴスロリでいっか。ってことでこちらの姿に」

 

 唖然としていた。ちょくちょくちのは何かずれているとは思っていたものの、可愛いものを着せる、ということに関してどうやらフリフリが可愛いという思考が先にくるタイプみたいだ。

 気持ちはわからんでもない。わたしもフリフリのダイバールックを身に着けているから。でもそれを実際に着せるっていうのは、少しいかがなものかと。

 

「だって可愛いじゃん! モミジちゃんだってそんな見た目してるけど、実際は可愛いもの好きだよね?!」

「う、うん。まぁ……」

「だよねー! じゃあセッちゃんにだって着せてもいい! はい解決!! フルスクしよう!」

 

 半ば気圧されているモミジ。

 確かにそこまで言われたらお好きにどうぞしか言えなくなってしまう。

 かわいそうにモミジ。焼いた骨は土に埋めてあげるよ。

 

「そ、そうだよね。結局ハルはどんなのが作りたいの?」

「こんな感じの。わたしが作りたいのはこの右腕の部分」

 

 わたしの予測完成図を見せると、ちのは感心するように、モミジは少し唸るように反応していた。

 

「これ、ハルちゃんが?」

「ナツキと一緒にね。左腕のワイヤークローはシュヴァルベ・グレイズから拝借して盾にもできるように改造するつもり」

「てことはクロー自体を閉じたり開いたりする感じかな?」

「そう! ハルの考えなんだよ!」

 

 自分の子供を自慢するみたいに、ナツキがわたしの頭を撫でる。

 感触はそう悪いものでもないのだけど、子供扱いされること自体がすごくもやっとしてしまう。だってわたしはナツキの恋人なわけだし。

 だから撫でている手を押しのけるようにして、頭をひねらせた。

 ナツキは申し訳無さそうに手を引っ込めてしまったけど、そう悪い感覚でもなかったので、また今度『ふたりっきりのタイミング』でおねだりすることにしよう。

 

「この羽根みたいになってるのはホルスタービット?」

「うん。腰のバインダーから接続してたけど、ちょっとオリジナリティが欲しくて」

「私とお揃いみたいで、少し嬉しいんだよね」

「ナツキ、暴走しすぎ」

「そうかなー! えへへ」

 

 このファインダー・ブレイブ(改造図)を見せた途端これが始まったから、この子はどんだけわたしの事を自慢したかったんだろうと、少し呆れた気持ちになってしまう。

 わたしなんか、そんなに褒められるような人間でもないんだけどなぁ。

 

「ホント、ナツキちゃんたちは仲がいいよねー」

「ヒューヒュー!」

「セッちゃん、どこでそれ覚えたの?!」

「んー? マギーお姉さんところのみんなからー!」

「今度会ったら覚悟しておけよ……」

「この後見人こわ」

 

 未だ見たことのないちのの怒り方を目の当たりにしつつ、わたしたちはとりあえず、問わんばかりにかばんから資材一式をテーブルの上に置いてみる。

 軽く調べた結果、プラ板とプラ棒、それからポリエステルパテを買っておいて損はない、と言われたので買ってきた次第。

 大まかに、盛って削って、盛って削ってを繰り返して、自分だけのオリジナル武装を完成させる作業工程になっている。

 

「セッちゃんはそこで見ててねー」

「手伝いたかった……」

「セツちゃんが手伝っても、大変なことにしかならなさそうだもんね……」

「セッちゃんにチアガールの衣装を着せればよかったかな」

「ちの、マジやべぇよそれ。オタクの発想じゃん」

 

 分担はちのが関節部分。モミジが肩から二の腕にかけて、残りの前腕から手にかけてをわたしたちが担当することとなった。

 なんか緊張してきた。こういうのって失敗したら終わりな気がしてるから、余計に作業が滞りそう。

 そんな表情が伝わったのだろう。ナツキが肩をポン、と叩き一言。

 

「失敗してもまた盛ればいいんだよ!」

 

 な、なんという心強いお言葉! よ、よし。この際消費するポリパテの量なんて気にせずにやってやるしかない!

 

「んじゃ、頑張ろー!」

「「「おー!」」」

 

 こうして、わたしたちのオフ会、と言う名の右腕制作会が始まった。




腕の錬金術師
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