ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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タイル戦も決着がつくので初投稿です。


第59話:あなたは勝利を望みますか?

 振り上げた左腕から数々の花火玉が空中に広がる。

 噴水のようでもありながら、よくよく見てしまえばその花火玉はGNクラッカーや手榴弾など、物騒極まりない爆弾であった。

 

『さぁ、楽しもうかッ!!』

 

 左手首に隠されていたニードルガンを起動させ、GNクラッカーに、GN手榴弾に起動のパスワードを入力させる。起爆のキーワードは文字通り衝撃の二文字である。

 

「くっ!」

「やばっ! ハル、後退して!」

 

 炸裂した2つの爆弾が装甲に傷をつける。

 まずい。爆発したことによって爆風がDフォールエクシアを隠すようにしているため、次の行動が全く見えない。

 急いで爆風の中から後退するものの、それが罠であることをわたしはまだ知らない。

 突き抜くようにして煙の中から現れたのはタイルさん。だが、その行き先は以前変わらずイニシアチブを握っているモミジだった。

 これは意図的に分散させられた罠だ。

 

『キミは厄介だからね。早めに始末させてもらう!』

「こなくそっ!」

 

 ビームライフルによる射撃も全てが虚空へとすり抜けていく。

 モミジの射撃テクニックを持ってしても、避けられる姿は明らかに異常であり、これがランカーなのだと認識するには十分な資料だった。

 だがそんな事をに気を取られている暇はない。

 予め出しておいたビット3種類でモミジを覆い隠すようにしてタイルさんの行く手を阻む。

 パワービットもチャージビットもそのチェーンソーで難なく斬り伏せ、ニードルガンによってビームビットの射撃を牽制する。

 頭の処理どうにかしているんじゃないか、って心の中で突っ込まざるを得なかったけど、今は目的を果たそう。

 無事に離脱したモミジさんと入れ替わるようにしてナツキが戦線に介入する。

 シールドビットに扮したパワービット2組が横に割れると、滑り込むようにしてガーベラ・ストレートの刃がタイルさんに襲いかかった。

 その成果はマントの切れ端を斬り裂く程度で、本体には傷一つ与えられていない。

 

『ダメじゃないか、本気で殺しにかからなきゃ!』

 

 つま先を失っていてもその足の癖は治らない。

 空中で縦一回転しながら、右足で振り下ろされたガーベラ・ストレートを打ち上げる。

 くるくると回転し、空中を闊歩する愛刀に気を取られている間に、下から上へとチェーンソーの唸り声がお腹の奥底から響く。

 だが、ただ黙っているだけのナツキなど、このGBN世界には存在しない。

 羽ばたくようにして後方にバックステップしたナツキの腹部にチェーンソーがかすめる。

 斬り裂かれたのは光の翼で作り出した残像。恐らく判断が少し遅れていればそこにいたのは紛れもなくナツキなわけで。

 

「この人、スキがなさすぎる!」

「だったら2人がかりで!」

 

 体勢を立て直したナツキがビームブーメランを、ビット攻撃を駆使しながらわたしは手持ちのソードガンで牽制しながら接近する。

 ブーメランはチェーンソーによって相殺。ビット攻撃の一つ一つが丁寧に避けられ、ソードガンのビームはGNフィールドによって阻まれる。

 反撃と言わんばかりにばらまかれたGNクラッカーがビームに貫かれ飛散、さらに装甲値を削っていく。

 

 接近すれば明らかな変態マニューバによってスキを生み出されて、ゲームオーバー。

 かと言って射撃攻撃は当たらず、代わりにボムによる反撃が始まる。

 スキがない。明確で、明らかなスキがなさすぎる。

 

『キミたちから死合わないのなら、こちらから行かせてもらう!』

「セツの方来た?!」

 

 赤き雷をコントレイルにしながら、次の標的をチェーンソーでにらみながら接敵する。

 その機動力によって距離を取ってあわよくば1機撃墜。それがタイルさんのプランニングみたいだ。

 してやられた。攻撃を続けていれば、じきに集中力も切れるかも知れなかった。

 だけど実際に訪れているのは殺意と言う名の天然のプレッシャー。

 タイルさんの、タイルさんたる所以。

 

「セツだって!」

 

 クロスダインを前に突き出し、自慢のスラスターで突撃攻撃を仕掛ける。

 だが、あまりにも直線的であり、鋭角な雷を思わせる機動とは明らかに不利だ。

 高速ながらも、避けられないわけではない一撃を、タイルさんは難なく避けてみせる。

 わたしたちの方にやってきたセツを加えて、相手の損傷は未だに左腕チェーンソーと右足のつま先。

 その他傷はあっても、わたしたち4人に対してあまりにも無傷すぎた。

 作戦は瓦解。もはや誘導など意味もないほど、ボロボロの街を眺める。

 どうすればいい。どうしたらあれを地につけることができる。いくら考えても、導き出される答えは、きっと1つだけだった。

 

「切り札、切るしかないよね」

「そうなっちゃうよねー」

 

 トランザムを切ることで、恐らくタイルさんと同等まではいかなくても追い詰めることはできるだろう。

 この4分間で決着を付けられなかった時が一番問題なんだけど。

 

「待って。ちょっと試してみたいことがある」

 

 モミジが提案と言わんばかりに、極秘回線で作戦の提案を進める。

 これはもはや戦略ではなくて戦術に近いだろう。ミラージュコロイドで見えないリフレクタービットを思い浮かべながら、確かにその方法なら追い詰めることはできると確信する。

 

「それ、わたしたちに死ねと言っている?」

「大丈夫だと思って言ってんの。ファイルムとオーバースカイの機動性なら避けれるし、あたしの必殺技をデータリンクできれば、もっと簡単よ」

「やってみる価値は、ありそうだね」

 

 息を吸って、吐く。正直怖いし、少しでも被弾すれば恐らくこの戦いはわたしたちの負けだろう。

 だけど、やらずに後悔するぐらいなら、わたしはやって後悔がしたい。

 亡き父と妹の名を冠したビームサーベル2本を手に、ファイルムの破壊天使のような三叉スラスターを起動させる。

 

『特攻。いや、違いますね』

 

 残りのビームビットは4基。その4基全てをモミジの作戦へと譲渡する。

 ナツキはガーベラ・ストレートを拾い上げてから突撃を開始。もちろんその際の残像は忘れていない。

 わたしたちが何をしたいのか。それは後ろにいるセツが体現していた。

 ハモニカ砲を1門こちらに向けつつ、残り3門がタイルさんではない方向へと向く。

 何故か。その答えは1つだけだ。

 

「プロトゼロ、起動!」

「クアドラプルリフレクトハモニカ砲、はっしゃー!」

 

 明後日の方向に発射したハモニカ砲がどこへ行くか。その先にはリフレクタービットが点在していた。

 ミラージュコロイドを振りまくように回転しながら、リフレクタービットが57門のビーム郡を拡散させてる。

 まさに厄災。振りまかれた死の灰はわたしたちとタイルさんめがけて飛んでいくが、モミジの必殺技である『プロトゼロ』のデータリンクによって死の線が赤いレーダーとして見える。

 プロトゼロはいわゆるゼロシステムの限定使用にほかならない。

 予測線による照準サポートは天才的な射撃センスを有しているモミジにとっては無用の産物ではあるものの、反射を加味したこのでたらめな攻撃ならば、この必殺技は優位に働く。

 赤いレーダーとして張り巡らされる57+4基+1本の槍はわたしたちが避ける分には十分なほどの予測線だった。

 見えているならば当たらない。わたしたちは無傷で接近し、タイルさんは57本の光を避けなければならない。

 加えて真っ直ぐに飛ぶハモニカと1本の狙撃。ビームの波状攻撃を受け止めるにはGNフィールドを起動させるしかない。

 

『フフゥフフフフフ! これではGNフィールドの飽和は避けられない』

 

 左肘に装備されていたジェネレーターが故障を訴えるべく黒い煙を吐き出す。

 これでGNフィールドという守りの札は切った。残りはチェーンソーだけ。

 土煙が上がる中、パシャリとヘッドカメラを起動させ、こちらに振り向かせる。

 わたしは囮だ。本命は、他でもないナツキなんだから!

 予め左右に展開したナツキとわたしは土煙に便乗してタイルさんの背後を狙う。GNドライブさえ破壊すれば地面に落ちざるを得ないのだから。

 こちらにはデータリンクによるマッピングもある。完全に捉えた。そう認識した瞬間だった。

 

『キリング・トランザム』

 

 ガーベラ・ストレートの斬撃が赤い閃光によって阻まれる。

 いや、元々そこにいなかったかのように、雷はナツキの背後に周り、片翼をチェーンソーで両断した。

 

「やられたっ!」

『さぁ、解体ショーの始まりですよ!』

 

 続く二撃目を避けるべく、もう片方の翼のスラスターを全開にするものの、それを読んでいたかのように、横一閃にナツキの翼を傷つける。

 

「こんのぉっ!」

 

 下から上へのかかと上げも予知していたのだろう。バックステップしながらチェーンソーが左脚部を縦に引き裂き、爆発させる。

 ナツキはほぼほぼ再起不能なほどに傷つけられている。GNドライブがまだ生きている以上、まだ戦線は維持できるものの恐らく6倍トランザムはもう使用できない。

 だとしても。ここでナツキがやられれば切り札の奥の手を失う。だいたいナツキがやられて、わたしが黙っていられるか!

 

「ナツキから離れろッ!」

『その殺意。実に興奮するッ!!」

 

 ビームサーベルとチェーンソーが激突する。ビームならずたずたに引き裂かれる心配はないはずだが、チェーンソーには粒子変換機能があるらしく、ビームの刃がどんどん削れていく。

 ギュィイイイイイインと不快すぎる音を立てながら、ビームサーベルを両断しようとしているけれど、わたしだってここでやられるわけにはいかないんだ。

 左腕のワイヤーブレイドをクローモードに変形させてから射出する。目的は右腕の両断。それができればタイルさんはメインウェポンを失うんだ。

 その読みは正しかった。無理やり体を捻らせたタイルさんは、その場で横に回転する。ワイヤーブレイドはそのまま建物に激突し、タイルさんに明らかなスキを与えることとなってしまう。

 翻すように回転したチェーンソーが右側から襲いかかる。

 させてたまるか。トランザム七分咲きを起動させて、出力を増したロング・ビーム・サーベルでチェーンソーと鍔迫り合いを起こす。

 バチバチと火花を散らしながら、それでも戦況が膠着することはない。

 いつの間にか左手にはビームダガーを手にしており、トランザム起動中の右腕の関節部分を両断。

 圧縮されたGN粒子が爆発を起こし、わたしを後方に吹き飛ばす。

 そのスキを、タイルさんが見逃すわけがない。チェーンソーを突き立て、目指す場所は胸部のコックピット。

 ギリギリと迫る音から逃げるようにスラスターを起動。同時に掴んだワイヤーブレイドを回収するためにその方向へと全力で回避する。

 

『逃しません!』

 

 身体を翻し、左腕から排出されたビームダガーがスラスターにヒット。両断された片翼の先が融解し爆発を引き起こす。

 飛ぶことはできる。だけど6倍トランザムはこれからできるか怪しい。

 恐らく使えば熱を放出しきれずにGNドライブがパンクする。

 どうする。どうすれば……。

 

「ちびっこ、準備は?」

「ばっちし!」

「んなら外すなよ!」

 

 聞こえるのはモミジとセツの通信。未だ土煙が晴れない中、斬り裂くようにリフレクタービットからビームランチャーの一撃がタイルさんに襲いかかる。

 これを回避し、手榴弾を投げリフレクタービットを破壊。

 次なるリフレクタービットからの一撃もクラッカーによって、行動不能状態へと陥る。

 最後の1基も避けて回避するが、それは文字通り誘導。セツの新たなる武装の真の力を見せるための餌に過ぎない。

 

「ダインスレイヴ砲、はっしゃー!」

 

 槍先が展開され、クロスボウが出来上がる。

 セツの新武装、クロスダインは近接及び超高火力レールガン、ダインスレイヴの併用装備である。対クオン戦において突破口の見出だせなかったセツの新たなる答えの1つであり、隠されたダインスレイヴは絶大な火力を誇っていることは、鉄血のオルフェンズ本編からも言えることだった。

 プロト・ゼロの支援を受けたセツのダインスレイヴが土煙を抜けて雲を晴らすように発射される。

 水平に真っ直ぐに敵を殺さんとばかりに飛ぶダインスレイヴはタイルさんを捉え、直撃は回避したものの、その風圧とまとった電磁波によって右半身、主にチェーンソーを装備していた右腕が破損した。

 

『満身創痍。だがっ!』

 

 右半身が破壊されようが、その体は止まらない。

 ダインスレイヴ発射後の反動に耐えかねたイクスリベイクのアウターパーツがその場にこぼれ落ちていく。

 それを知ってか知らずか。襲いかかるのはビームダガーによる投擲。

 モビルドール状態の防御が薄いところを的確に突かれ、コックピットにダガーが直撃する。

 

「ごめん。セツ、先に戻ってるね」

 

 これで3対1。セツは頑張った。だからあとで褒めてあげることにしよう。

 

「ナツキ、いける?」

「うん、なんとか。タイルさんのメインウェポンはなくなった。畳み掛けるなら、今しかない」

「分かった。どうなるかわからないけど」

「やるしかない!」

 

 そうだ。この絶好の機会にやるしかないんだ。

 例えオーバースカイのスラスターが半壊していようと、ファイルムの耐久値が地上スレスレになっていようと、この戦いに勝つためにはわたしの奥の手を切るしかない。

 わたしは特殊スロットから『FINAL MODE 01』を選択。その必殺技を高らかに宣言する。

 

「「トランザム・コネクティブ!」」

 

 機体全体が濃い桃色へと色を染め上げる。

 通称6倍トランザム。ナツキのGNドライブと同調させた3倍の2倍の出力。

 前回は振り回されっぱなしだったけど、今なら、2人で特訓したわたしとナツキでなら扱うことができる。

 

『それと、やりあいたかった!!』

 

 赤と桜色。そして空色が土煙の中で激突する。

 向こうも限界時間は近いはず。ならば、ここで叩き込むしかない。

 左腕のショートビームサーベルを手にして、ワイヤーブレイドを盾にしながら、突撃をする。

 斬り結ばれるのは左腕のビームダガー。出力ならこちらが上だと言わんばかりにその鍔迫り合いを制するためにぎりぎりと地面へと叩きつけようとする。

 ナツキも同じでガーベラ・ストレートを手に、タイルさんのつま先に収納されていたビームサーベルで対抗する。

 

『本来なら斬り結ぶこと自体拒まれることなんですがね。楽しいんですよ、キミたちと戦うことが!』

 

 タイルさんが絶体絶命ながらも、奥底からこみ上げてくる笑いがわたしたちに恐怖を与える。

 同時に、本当に楽しそうだと感じさせてくれる少年のような感情が心をくすぐる。

 

『GBNはこうでなくてはいけない。ランクやフォースなどどうでもいい。原点は遊びであり、真剣に、本気になれる者こそが真の勝者だッ!!!』

「同感だけど、それはそれとしてっ!」

「負けてたまるかぁああああああああああ!!!!!!」

 

 思いが呼応するように機体全体の出力が上がった気がする。

 実際には上がっていないが、ガンプラへ込めた思いが生命を生み出したというのなら、この勝ちたいという気持ちもガンプラが答えてくれるに違いない。

 

『キミたちは遊びに本気で取り組んでいる。ELダイバー奪還戦にG-Tuber活動。そして日々の姿。若いものの熱こそ、このGBNを動かす原動力であり、未来を掴み取るキーカードになる!』

 

 オーバーブーストモードを起動させて、地面への接着を少しでも防ごうとする。

 粒子残量が心もとない。わずかに脳裏に宿るのはこのままトランザムを解除して、相手のトランザム切れを狙うこと。

 だけどこの勝負に日和ったら負けだ。負けるぐらいなら、このチキンレース、いくらでも付き合ってあげる!

 

『キミたちが掴み取る未来を私は見たい。その先にある楽しいという感情を味わうためにッ!!!!』

「「落ちろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおッッ!!!!!!」」

 

 スラスターが破裂した。これ以上ブーストできない。

 左腕が軋みを上げている。頑張って。ここで負けたくないんだ。

 メインカメラが故障している。だけどまだデータリンクは生きている。

 負けたくない。負けてられない。元々なかったはずの負けず嫌いという感情が火を吹き始める。

 

 今までは勝ち負けなんかどうでもよかった。

 勝ったら嬉しい。負けたら次やればいい。そんなことを適当に考えながら流されてきた。

 でも今は違う。今は、この人に勝ちたい。自分の持ちうる全力で戦って、その懐にある勝利をもぎ取りたい。

 それが楽しいってことに繋がるなら、わたしは喜んで手をのばす。

 勝利を手にして、笑うのはこのわたしたちだッ!

 

 突如衝撃が走る。周りには土煙の気配。倒壊するビルの衝撃が機体全体を包み込む。

 そして、先程までとは打って変わって優しい男の、微笑みに塗れた一言で、わたしたちがどういう状況になっていたのか理解した。

 

『おめでとう。キミたちの勝利だ』

 

【MISSION SUCCESS!】

 

 無機質な電子音とともに、わたしたちが勝利したのだと、真っ白になった頭でそう漠然と理解していた。

 

 ◇

 

『流石殺戮の天使だったわ』

『被弾してからの動きやばい』

『変態マニューバ気持ち悪かった(褒め言葉』

『食い下がった春夏秋冬もすごいわ』

『火力の妖精がまた新しい火力装備手に入れてる……』

『リフレクトハモニカ砲とかいう鬼畜ゲー』

『タイル相手に接近戦挑むとか度胸あるわ』

『致命傷だけは避けていたの、ホントギリギリの戦いって感じ』

 

「あー、うん。ありがと……」

 

 目の前に広がっているのは死屍累々。

 もはや立ち上がれないほどに集中力を消費した女子力の欠片もない女子たち4人である。

 いつものカフェテリアで6人用の席を占拠し、わたしたちは思う存分力尽きていた。

 

『そしてこの死体たちである』

『あれだけの事したもんな……』

『その割にツヤッツヤのタイル』

『美少女4人相手にして、元気にしてる男』

 

「流石にやめてほしいかな。2組の間に挟まるつもりもないですから」

 

 やっぱり認識してるんだなー。燃え尽きた頭を横に返して、口にしてみた。

 

「そりゃ私もキミたちのファンだからね。それぐらいは理解しているつもりですよ」

 

『その割には容赦のないファン』

『忖度とかいう言葉なさそう』

 

「ある程度手は抜いていたけど、最後はオーバーブーストまで使ったんだ。本気と言っていいだろうね」

 

 トップランカーを本気にさせた、なんて言ったらみんな驚くだろうけど、本気にさせたわたしたちは力尽きてもう何も言えなかった。

 もうホント、疲れたようん。

 

「今度はヴァルガ観光とかもしたいね」

 

『ヴァルガどうでしょうの始まりですか』

『楽しみだなぁ』

『またジャバウォックやFOEさんに粉微塵にされそう』

 

「あはは、考えとく……」

 

 満身創痍のわたしたちにはそんな言葉はもう響かない。

 疲れた、という理由でその場は配信を終了することにした。

 

「まぁなんにせよ、また呼んでほしいな。今度はバカみたいな企画で、ね」

「じゃあ、また今度ね。ガンスタグラムで次配信の告知はするから、チャンネル登録とガンスタグラムのフォロー。それから高評価もらったら嬉しいです」

 

『おつハル~』

『おつキ』

『おつモミ』

『セツかれさまでしたー』

 

「相変わらず統一性ないなぁ」

 

 うちの別れの挨拶はみんな推しの名前を入れて好き勝手言う、みたいな形式をとっているけど、その辺をツッコミだすと疲れるので、わたしはここで眠りにつくことにしよう。

 疲れたけど、楽しかったなぁ……。




真の勝者は紛れもなくその場にいた全員なのかもしれない
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