ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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(果たし状を)叩きつけてやーれ♪


第66話:ドッキリと果たし状と、デュエル

 慌ててちののG-Tubeチャンネルを確認してみると、現在配信中であることともう1つ分かることがあった。

 『セッちゃんを賭けて勝負だギャル!』という、半ば挑戦状めいたタイトル。

 それが今行われている配信の正体であった。

 

「は? どゆこと?」

 

『完全にドッキリのそれ』

『草』

 

「そんな事情もよく分かってなさそうなモミジちゃんにはこちらを」

「う?」

 

 ちのから手渡された封筒には『果たし状』と書かれていた。

 なに。タイルさんと一緒で、最近は果たし状がランカーの中でブームなんだろうか。

 昇格戦する時は確かカウンターから日時と対戦相手を指定するらしいが、その方法がまさかこれだったりしないよね。

 黙読でササーッと読んだモミジは、1つため息をつく。ちのが予め持っていたであろうリスナーにバレバレのカンペを取り出す。読めと言っているようだ。モミジ、更にため息を1つ。

 

「えー、モミジ殿。この度ははるばるGBNへやってきたこと誠に感謝いたす。この度行われるGBNイベント、タッグフォースバーサスにおいてセツを賭けて、ガンプラバトルを挑みたく思う。だってさ」

 

『超棒読みで草』

『やる気のないモミジパイセンマジ好き』

『オタクにもロリにも優しいが親には容赦ないモミジさん好き』

 

「モミジちゃんひっどくない?!」

 

 親であることは認めるんだ。

 まぁいい。わたしはカフェオレをストローで一口飲んでから、モミジに手渡された果たし状を黙読していた。

 内容は簡単で、ガンプラバトルの勝者がセツとタッグを組める、というルール。

 セツを賭けたアンティバトルと言うべきだろう。

 面倒臭すぎてやってられるか、という意味が込められているであろうすごく嫌な顔を向けられたちのは勝手なことをしすぎたと、自分の中の良心と戦っているのか少し胸が痛めている。

 

「そんな顔しないでよ! モミジちゃんがセッちゃんにゾッコンだというのは知ってるけどぉ……」

「別にこいつのことそんな好きじゃないけど」

「え、そうなの……?」

 

 今にも泣き出しそうにふるふると目の奥が揺れ始める。あ、今の完全に地雷だ。

 

『セッちゃんを泣かせるな!』

『ロリにも厳しいギャルになっちゃうぞ!』

『あんなに熱烈な告白したのに……』

『セッちゃんとは遊びだったのね?!』

 

「だーっ! っげーし! 今のはでまかせっつーか、咄嗟の防衛っつーか……」

 

 またコメント欄が荒れだした。

 それもそうか。普段あまりセツに好意を見せないモミジがそんな目線そらしつつ、赤面してるなんてご褒美みたいなものだもんね。

 わたしも珍しく、これがモミセツか。とか思ってたぐらいには珍しい光景。モミジってあんまりいじられるキャラでもないしね。

 

「モミジちゃん、もっと素直になればいいのに」

「なんでちのっちにまで言われなきゃいけんのさ!」

 

『いじられモミジさん、ええな』

『かわいい』

『要するにツンデレか』

『絶妙なツンデレいいぞ!』

 

「まーまー、モミジちゃんのセッちゃん愛は届いたということで」

「うん、届いた!」

 

 さっきまで泣き出しそうだったセツもこれにはご満悦らしい。

 女の涙を武器にするなんて、悪女でもそんなことはしない。純粋無垢なセツだからこそ許されている。わたしがやろとしたら速攻で首を締められて死んでしまうだろう。

 

「モミジちゃん、ちのの挑戦、受けてくれる?」

「別にあたしはやると一言も……」

「じゃあ誰とタッグ組むのさ」

 

 助け舟、というよりもそれを転覆させまいとする大波をわたしは誘き出す。

 まさかの刺客にモミジの黒い目がギョロリと動く。悪いけど、今回のわたしは敵だ。

 ナツキと一緒に参加できないという悲しみと、絶対面白くなりそうだというG-Tuberとしての勘が囁いているのだ。このビッグウェーブに乗り遅れるわけにはいかないと。

 

『裏切りは草』

『春夏秋冬の争い』

『戦え……戦え……』

 

「い、いや! あたしはハルと組むし!」

「ごめん、その席は私のものなんだよね」

「あ、あんた! さっきはやる気ないみたいなこと言ってたじゃんか!」

「それとこれとは別ー」

 

 先程までとは打って変わって、晴れやかな笑顔でわたしと顔を見合わせるナツキ。

 あー、今日もナツキはかわいいなー。わたしも便乗して慣れない笑顔でニッコリと突き合わせる。

 

『ナツハルてぇてぇ』

『今日も壁のシミがよう騒いどる』

『やってることは仲間を陥れてるだけっていうな』

 

「この裏切り者……」

 

 心底恨みを込めて呟かれたモミジの怨嗟の声に内心ビクビクしながら、わたしは誘導するように今の対立状況を説明する。

 モミジサイドは誰もおらず、ちのサイドにはわたしとナツキ。セツはちょっと特殊だから数えられないけど、これはこれは面白い構図すぎて少し涙が出そうになる。もちろん笑えるという意味での涙だ。

 

「こんなのありかよぉ!」

「どーする、モミジちゃぁん?」

 

『これはお嬢』

『元ヤンですわ』

『煽り方がヤのそれ』

 

「元ヤンじゃないし、ヤのつく自由業じゃないやい!」

 

 ただ少しいじりすぎたのか、あのモミジがややげっそりとした顔をしている。

 まぁ相手はランカーだし、ワンチャンスはあるだろうけど、望みはたったそれだけ。だったら参加しない、というのが普通なんだけど。

 見かねたセツがちょいちょい、とモミジの服を引っ張る。

 

「お姉ちゃん、セツのせいで無理してる? だったらセツ、ちのお姉ちゃんのこと断って、でかお姉ちゃんと遊びたい!」

「ちびっこ……」

「ぐはっ!!」

 

 ちのが血反吐を吐きながら、胸を抑えて倒れ込んでしまった。なってこったい。

 モミセツのあまりの破壊力に、耐えきれずに自壊してしまったみたいだ。というか溺愛している子供が他所様の、しかも年上の女に取られてたらそうもなるか。

 

「分かったよ。ただし、あんま期待すんなよ?」

「うん!」

 

『このすでに勝負に負けた感じ』

『お嬢は俺らの光やぞ』

『それはそれとして、ちのちゃんのかわいそうなところ見てみたい』

 

「絶っっっったい負けないから!」

「あー、まぁ。うん」

 

 彼女は適当に返事をしていたけれど、こうしてモミジVSちののフレンドマッチが決まってしまった。

 ちのはやる気に満ち溢れているけれど、モミジはやっぱり少し面倒くさそうだった。

 

 ◇

 

 スナイパーを見つけたら、鬼の首を取ったよう追い回せ。

 GBNでよく言われている、ひょっとしたらFPS界隈でもよく言われているであろう言葉だ。

 何せあたしはスナイパー。どこへ言ってもだいたいそんな言葉を言われるので、一度は追われる身にもなって欲しいところ。

 何故そんな話から始めたのか。そんなの決まっている。たった今追われているからだ。

 

「だーから! おとなしくお縄に頂戴して!」

「嫌だ! こんな殺意マシマシの女に撃墜されてたまるかっつーの!」

 

 事態は数分前に遡る。

 先程何故か決められたあたしとちのっちのフレンドマッチを全世界に生中継するところから始まる。

 ちのっちがどれだけマジなのか、定かではないものの、センサー外からの狙撃一発でケリを付けられるだろうと考えていた。

 

「でかお姉ちゃんも、ちのお姉ちゃんも頑張ってね!」

「あぁ~! 今日もセッちゃんはかわいいなぁ!」

 

『きも』

『キモいな』

『ヲ嬢』

『世界よ、これが日本のロリコンだ』

 

「じゃああたしはお先」

 

 作戦はさっきパパっと考えておいた。

 あたしのやれることなんて狙撃による奇襲。加えてリフレクタービットによる跳弾狙いだ。というかそれしかちのっちに与えられるダメージソースがない。

 だから1発でGNドライブを撃ち抜き、2発目で誘導。3発目でコックピットを狙いゲームセットが望ましいところ。

 相手は背中と肩のツインドライブ。フルドレスによるレーザー照射と、ソードビットによる炙り出しをしてくるに違いない。だからその前に決着をつける。あたしの勝ち筋はこれしかない。

 

「モミジ、ハイザック・バトルスキャン! 行くよ!」

 

 フィールドは森の中。状況としては身を隠しやすい場所ではある。

 だが、ちのっちはこの森を焼き払うつもりだ。障害物がなければスナイパーなんてただの木偶の坊に過ぎないのだから。

 相手よりも先手を突くため、ドローンの射出とレドームの起動。そしてリフレクタービットの仕込み。リフレクタービットが配置につき次第、あたしは作戦を遂行するつもりだけど、どうも相手の挙動が少しおかしい。

 

 ――まるで、配置を待っているかのような……?

 

『よし、そろそろかな。モミジちゃん、聞こえてるんでしょ?』

 

 ドローンから傍受した回線から声が聞こえてくる。この声、間違いない。ちのっちだ。

 確かにドローンなら通信の傍受ぐらいできる。だがそれはドローンたちが配置につかないと成立しないことで、完全にイニシアチブを握っていたはずのあたしの作戦が筒抜けなわけ……。

 

『モミジちゃん、人っていうのはランダムに設置しようとしても、癖というのはどうしても出てしまうんだ』

 

 ゾクリ。嫌な予感を感じる。リフレクタービット1基を手元に持ってきて、不気味なまでに静かで、冷静なる狩人の話を聞く。

 

『モミジちゃんだってそう。ドローンは見えなくても、癖である程度分かっちゃう。そして、絶望的なまでにちのと相性が悪いってことも!』

 

 ソードビットが上を向いたGNバスターライフルの射線上に円になって展開される。

 GN粒子のパワーゲートがフィールドに表示。出力を上げながらバスターライフルの銃口が光を帯びていく。

 もしかして、経験則と勘だけでドローン全機がバレてるとでも言うの?!

 

『GN拡散バスターライフル! 照射!』

 

 カチリと、指先のトリガーを引き抜くと、直上に展開されていたパワーゲートを介して、バスターライフルが拡散。エネルギーのシャワーが文字通り降り注ぐ。

 それは天災。火力を極めたものにこそ似合う嵐。当たろうものなら装甲を溶かし、関節を焼き切り、地上を焼き払う死の雨。

 それが今、目の前に降り注ごうとしているのだ。

 リフレクタービットを盾にして、洪水のように押し寄せるビームの雨を受け止めるが、やはりリフレクタービット1基では明らかに力不足。本体がオーバーヒートして爆発する前にすぐさま回避行動を始める。

 ハイザックは元々スラスターが優秀にできている。だから多少の無茶な運動にも考慮されているのだが、これはあまりにも乱雑すぎる。

 木に生えた葉を燃やす。

 木の幹が熱に溶かされる。

 大地は炎に包み込まれ、ドローンは全機反応なし。リフレクタービットだって生きているけれど、ほぼ大破寸前だ。つまり……。

 

『みぃつけた』

 

 パワーゲートを作り出していたソードビットの矛先が一気にあたしの進路へと向ける。

 GN粒子の今は耳障りな音を聞きながら、バックパックにマウントしているビームライフルをサブアームから手に取り、撃ち放つ。

 速度は速いけれど、撃ち抜けないほどではない。が、いかんせん数が多すぎる。

 1基ずつ削ろうにも、オールレンジ攻撃にはもちろんも、高火力相手にもあいにく相性が悪い。1基落とした瞬間に、ビームライフルがバスターライフルによって融解、爆発を引き起こす。

 

「くそっ!」

 

 今のでレドームが機能を失った。こうなっては索敵機能ほぼ皆無。だったらレドームをフリスビーみたいにして、なんとか時間稼いでやる!

 左手で無理やりレドームを引きちぎり、ブーメランのように腕を横にスライド、目標であるちのっちのG-にゃんドレスワルツへと投げつける。

 もちろんものの数秒でソードビットに破壊されるが、このスキにあたしは新たに対艦ライフルを手に持っている。

 姿勢制御をしつつ、未だ生きているリフレクタービットに向かって、1発弾丸を発射する。

 

『撃ち漏らしが……ッ! きゃあ!』

 

 都合のいいリフレクタービットは愛している。だって爆発してくれるから。

 近くにいたちのっちが爆発に巻き込まれ被弾。

 報復と言わんばかりにソードビットが襲いかかる。

 弾丸をリロードしている間にやられかねない。だったらこのライフルは捨てる。

 

「持ってけぇ!」

 

 追ってくるソードビットに被弾した対艦ライフルはその場で飛散。フレームの破片や弾丸の火薬に着火して大きな爆発を引き起こす。

 今の爆発でソードビット、半壊してほしかったけれどそう都合よくは行かない。

 残り2基となったビットは更にあたしに襲いかかる。ビームランチャーは最後の一手だ。ここで失えば、最後は近接戦闘を行う羽目になる。そしてちのっちに近接戦闘で勝てる見込みはゼロ。

 あたしの武器リソースは残りビームランチャーとビームサーベルだけ。だったら、やってやるしかない。

 まだ怖い。過去のあのリンチにも似た光景を思い出すだけで、恐怖が湧き上がってくる。

 でも、ちびっこに、セツに胸を張れるような大人じゃないと、きっとあいつはあたしに幻滅する。

 あいつだって変われたんだ。だったら、今度はあたしが変わる番だ。

 肩から生えているビームサーベルを1本引き抜くと、桃色の閃光が斬撃の形となって出現する。怖い。でも、やるしかない。

 

 追い詰められてからが、あたしの本番だ!

 右手に携えた剣を手に、あたしはソードビットへと攻撃を開始した。




右手に勇気を、左手には恐怖を
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