ガンダムビルドダイバーズ レンズインスカイ   作:二葉ベス

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個人的に見ていたガンダムAGEを完走したので初投稿です。


第78話:壮絶なる親子対決

「ふー、あっぶなかった」

 

 リミッター解除とは言え、この6倍トランザムについてこられる人がいるなんて思わなかった。

 いや、それぐらい普通にいるか。恐らくタイルさんだってついてこられるはずなんだから。

 自販機の前でジュース缶を一口飲んで先程のバトルの反省会を行う。

 ナツキがあの場で後方支援のダガーLを倒しに行っていたからいいものの、倒せてなかったらそれこそ面倒なことになっていたと言わざるを得ない。ナツキには感謝しなくちゃ。

 

「ありがとね、ナツキ」

「ううん。私の必殺技も出てきたし、よかったよかった」

 

 やっぱあれって、わたしたちの愛の重さで生まれた必殺技なのだろうか。

 ジューンブライドって6月の結婚という意味があったはずだ。確かに将来的には結婚したいとも思ってるけど、それはそれとして見ず知らずの相手に自分たちのバカップル度をひけらかすって、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

 

「ナツキは、あれでよかったの?」

「ん?」

「必殺技。例のごとく2人1つの必殺技でしょ?」

 

 肯定の返事が飛んでくると、わたしの元にナツキの必殺技の概要が表記されたウィンドウが譲渡される。

 内容は単純なエネルギー攻撃。よくチャンプが使用しているEXカリバーや『ビルドダイバーズのリク』が使用している必殺技によく似ている。

 そこに性質の違いがあるとすれば、それは3段階の変形と、2人一組でしか発動できないこと。

 巨大な剣をケーキ入刀のように振り下ろすブレイドモード。

 巨大な弓からエネルギーを放つシュートモード。

 そして分散してエネルギーの剣をそれぞれに持たせるツインズモード。

 どれも強力ではあるものの、6倍トランザムと同様に2人一組でしか使用できない。その候補は基本的には……。

 

「ハルも言ってくれたでしょ? 私もハル相手にしか使いたくない」

 

 まぁそうなっちゃうよね。内心安堵と愛されている実感を得ながら、ジュース缶をまた一口。先程より甘くなっている気がするのは気のせいだろうか。

 甘味料はないけど、身体から溢れ出てる愛情が甘さに乗っているんだって思えば、なんとなく辻褄は合う。

 

「さて、次の試合も……」

 

 次のバトルに向かおうとした瞬間だった。男の声がわたしたちの耳に入ってくる。

 誰だろ、わたしたちを呼ぶ声は。振り返ってみれば、勇者の格好をしたアバターと和風の、大正ロマンめいた着物と袴を着た少女がこちらにやってきていた。

 この見た目、妙に見覚えがあった。それはいつか、なんて野暮なことは言わない。さっき見たよ。バルバトスの改造機、ガンダムティターンを駆ける色合いと見た目、そして中のパイロットの声色そっくりだ。

 

「あなたは……」

 

 だから自然と声は出ていた。間違いない、さっきのプレイヤーだった。

 

「ありがとうな、さっきは本気で戦ってくれて!」

「あ、はい……」

 

 男ではなく人間に耐性がないわたしは男の圧に対してそんなことしか言えないけれど、れっきとしたお礼を受け取って嬉しい気持ちはある。

 と、そんなわたしが怯えている様子が見えてしまったのだろう。隣りにいる少女がツンツンと男を突いて耳を貸せと伝えてくる。

 不思議に思った男はなんだ? と口走りながら少女の口元に耳を寄せ、そして……。

 

「あんまり浮気してると、またベッドの上で酷い目に合わせますよ?」

「なっ?!」

「「へ?!」」

 

 ひそひそ話のはずが、こっちにまで聞こえてきてしまって、さぁ大変。

 今なんて言った? ベッドの上? って、2人そういう関係なの。見た目すごく犯罪臭がするんだけど、通報した方がいいかな。

 少女は切り替えして、頭を下げて謝罪する。

 

「すみません、このせんぱいが変なこと言って」

「い、いえ……」

 

 それしか言えないって、さっきの衝撃的な話を聞いてしまったら!

 彼女たちは軽く自己紹介を始めた。先程頭を下げていた方が『ユメ』で、勇者っぽい格好をしているのが『ユウシ』というダイバーネームだとのことだ。

 わたしたちも軽く自己紹介すれば、ユウシの方から反応が帰ってきた。

 

「ハルとナツキっつったら、開会式の時にタイルが言ってた2人か!」

「まぁ、そういうことに」

「あれはタイルさんが勝手に言ってただけなんだけどね」

「すごいなお前ら! 俺たちもなんかすべきか?」

「……別にー。それよりせんぱいは、私なんかよりJKの方が好みなんですかぁ?」

「はぁ?!」

 

 ナツキと顔を見合わせて感じてしまった。このユメって人、わたしたちに嫉妬してしまってるみたいだ。

 まぁ、リアルとダイバールックの見た目はそんなに変えてないし、そう見えてしまうのは無理もないんだけど、わたしたちも真実を告げるべきだろう。ユメがいるとしても、突然出会った男性を警戒しない方が無理な話なのだから。

 

「私たちこう見えても付き合ってるので、お誘いはお断りですよ」

 

 ユメの意外な声と、ユウシのぎょっとした目が同時に響き渡る。

 そういえば対面で言ったことなかったっけ。配信では言ってた覚えがあるけど、それでもあまり公言はしてこなかった。大学生になったらもうちょっと自由になるだろうし、ガンスタグラム辺りで言ってもいいかな。

 

「へ、へー。あるもんなんですね」

「俺も初めて見たからびっくりしたぜ」

 

 反応がいいけど、少し引き気味なのは気のせいだろうか。こんなこと突然暴露されてもしょうがないってのは分かってるんだけどさ。

 

「でしたら、私とせんぱいも同じですね!」

「お、おい!」

 

 ユメはユウシの腕に抱きついて、顔を腕に埋める。あ、やっぱりそういう関係だったんだ。

 お互いカップル同士ってことでユメの嫉妬は丸く収まった形になった。

 その後なにかの縁、ということでお互いにフレンド交換してから、ユウシとユメの2人は新たなる戦場を求めてミッションカウンターへと消えていった。

 なんというか大変なんだな、付き合うって。どっと疲れてしまった。

 

「ねぇ、ハル」

「ん?」

「今夜、ハルの家に泊まってもいいかな?」

「……まぁ、いいんじゃない」

 

 もう最近はもっぱらわたしの家で泊まっているナツキがわざわざ公言しているってことは、つまりそういうことだよね。どんだけ堪え性がないんだか。

 まぁ、わたしもそんな気分だったし、今日の夜ね。うん、覚えておく。

 

「そういえばモミジさんとセツちゃん、どうしてるかな」

「モニターは……ちょうど始まるところっぽいよ」

「ホント?! 相手は?」

「……ちの」

 

 ナツキが驚愕の声を漏らす。そう、今モニターで起こっているのは、モミセツVSちののガンプラバトルであった。

 

 ◇

 

「マジで当たるとか思わんじゃん」

 

 目の前のランダムマッチングシステムにあたしは酷い怒りを禁じ得なかった。

 なんで当たっちゃうの? ランカー相手じゃん。バランス調整してしっかりしてよ!

 という八つ当たりめいたことを心の中でぼやきながら、苦笑いしていた。

 一応開発サイドの理由を述べるのであれば、ランクの合計値を合わせて、÷2した値を実力として換算しているため、らしい。知らんがなもう。開発に文句を言ってやりたいところだ。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「え? んまぁな」

 

 ちびっこに心配をかけさせまいと、頭をワシャワシャと揺らしながら、物思いに耽る。

 確かに相手は強敵だ。だけど付け入るスキがないわけではない。あたし1人だけならダメだっただろうけど、セツと2人でなら。

 

「ちびっこ、今から作戦を伝えるけどいい感じ?」

「うん! 打倒ちのお姉ちゃんだもんね!」

 

 実際にマッチングするとは思っていなかったが、あたしたちの目標は勝数をちのっちよりも多くすることだった。たった今ちのっちに勝つことに話は変わったのはさておき。

 彼女の弱点は2つ。1つは格闘戦に弱いということ。

 もちろん高いランクでの格闘戦を行わなければいけない関係上、ハルやナツキがいてくれればと、願ってしまってしまう。

 だけど弱点を攻めれる機会に何もしないわけにはいかない。だからこそやるべきことの1つだった。

 そしてもう1つはアドリブに弱いこと。

 最近徐々にその弱点は解消されていきつつも、根が真面目な性格だ。そう簡単に反応速度が上がるとは限らない。

 もちろんこれも練度の高いアドリブが必要になってくる。

 これを踏まえて、何をすべきか。あたしなりに考えて1つの結論にたどり着いた。

 

「ちびっこ、ちのっちと格闘戦やれる自信ある?」

 

 あたしの作戦は単純な話、セツとちのとの一騎打ちをさせることだった。

 出力が上がったセツのイクスリベイクとモビルドール形態なら恐らくちのと互角まで行かないでも、それなりに格闘戦できるはずだ。

 問題はソードビット。これが何よりも厄介極まりないものだった。

 だからどうするか。答えは決まっている。

 

「ちのっちに思考の誘導をさせる。最初に相方を撃ち抜けば、ちのっちは間違いなくソードビットをあたしに回させて、ちびっこはフルドレスユニットとバスターライフルの雨を掻い潜って、接敵」

「それ、大丈夫なの?」

 

 我ながら無茶な作戦だと思う。

 狙撃が避けられたらおしまいだし、セツはセツであの弾幕をくぐっていかなければいけない。要するに真正面からちのを倒すことにほかならないのだ。

 でも勝利への算段がこれしかない。これを逃せば一方的にちのに蹂躙させられるのだ。だったら分の悪い賭けでもなんでも、乗るしかない。

 

「正直あたしも不安。だけど、なんとかするのがファイターってもんっしょ」

「でかお姉ちゃん……」

「怖いだろうけど、ちのっちへの接敵、任せたよ」

「しょーがないなー! 頑張るよ、お姉ちゃん!」

 

 見ればセツが手のひらをあたしに向けている。そうだ、あたしたちの関係はそれでいい。信頼。友達。それ故に絆。

 パチンと手のひら同士を叩きあってハイタッチ。

 うし、一発やってやろうじゃんか!

 

「モミジ、ハイザック・バトルスキャン!」

「セツ、ガンダムイクスリベイク フルディバイダー!」

「「チームモミセツ、行くよ!」」

 

 ◇

 

 戦闘エリアは宇宙。広大なフィールドではあるが、場所は完全に把握している。マッパーの実力を舐めないことだ。

 G-にゃんドレスワルツ1機と、GNアーチャー1機。恐らくサポートメインで参加したのだろう。これがヴァーチェとかセラヴィーなどのGNフィールド展開機だった場合詰んでいたかもしれない。そういった意味ではちのっちのリスナーには感謝だ。

 

「高熱源反応を確認。ちびっこ、方向はわかるな?」

「うん! こっちもスタンバイしてる」

「よし、思いっきり、ぶちかましてやれ!!」

 

 ちのが先手でチャージバスターライフルを撃ってくることは予想できた。

 あのドローンの展開タイミングを見抜いた彼女も、それを読まれていると感じているはずだ。

 だから今回は拡散砲でドローンごと全滅させるつもりだろう。だけどそうは問屋が卸さない。こっちだって、そのぐらい予想はしている。

 作戦は至ってシンプル。バスターライフルに、ハモニカ砲をぶつける!

 

「クアドラプルハモニカ砲、はっしゃー!」

『GNチャージバスターライフル、ファイア!』

 

 暗い宇宙の中に1つ煌く星が生まれ、黄色い流星がこちら側へと迫ってきている。

 何も恐れることなく、何も恐れる理由がなく、ただ9方向に拡散するビーム砲郡。

 狙いがドローンだということは分かっている。だから今回はあえて1基を発射させないようにした。ドローンは1基あればそれなりに機能する。精度は高望みできないものではあるが、それでもレドームと組み合わせれば、相手の居場所を特定することぐらいは容易い。

 そして狙いがために1発1発の威力は確実に低下する。そこでクアドラプルハモニカ砲だ。

 76門の火力郡は真っ直ぐにゃんドレスワルツの方へと向かっていく。桃色の流星群は無重力空間をかき分けて、真っ直ぐ黄色い流星と衝突した。

 瞬時に巻き起こる爆発。同時にやられるドローンたち。だけど、狙いは覚えている。

 最初の一発。この弾丸がすべてを変える。

 乾いた唇を舐めながら、狙いを定めるのはGNアーチャー。構えるのは狙撃用ビームランチャー。

 集中。必中。感応。その全てを自身の自信へと変えて、今、引き金を引く。

 混乱に乗じた一発。真っ直ぐ真っ直ぐ突き進んでいき、爆煙をも気にすることなく突き進み、それはついに接触する。

 桃色の光線はGNアーチャーのコックピットを確実に射止め、フィールド上から赤い点が1つ消滅した。

 

『シロウくん!』

「よっし! 行け、セツ!」

「うん! イクスリベイク、最大出力!」

 

 両腕のディバイダーを手にしながら、スラスターは一気に加速を始めた。

 行ってらっしゃい、ちびっこ。後で必ず会うから、今は頑張っていけ!

 

『そういうこと。だったら、こっちも全力で踊ってあげるよ!』

「やれるもんなら、やってみろ!」

 

 リフレクタービットにドローン、ビームライフルとサーベルを手にあたしたちは臨戦態勢を整える。

 これよりは下剋上。ランカー狩りの始まりだ!




親VS娘&親友
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