時間と経験の差は大きいと、誰もが言う。
今ならその言葉の意味が分かる。
その差を埋められたとしても、一時的なものだ。禁忌を冒して力を手に入れた私は、確かに強かった。でもそれは、炎のように一瞬燃え上がっただけ。
勢いを失った炎は、必然的に小さくなる。
私にヨーダは越えられない。
「よく来たのぅ、スカイウォーカー。」
「お久しぶりです、マスター。」
「エレノア………」
「挨拶するほど仲良くもないでしょ。私達はルークを迎えに来ただけだから。」
「ネル!!」
アナキンが諫めてきて、私は視線だけをヨーダに向ける。
やっぱり嫌悪感は拭えない。
「まだわしを許せんようじゃな。」
「あんたを許せていたら、私はとっくにジェダイに戻ってる。」
「あの……どういうことですか?」
ルークが私達の空気に、疑問を投げかけてくる。
「ルーク…シス卿だったことは話したが、まだ話していないことがあるんだ。」
「まだ何か……?」
アナキンは私が未来から送られたことと、ヨーダが私の出生を隠してジェダイにしようとしたことを話した。私はヨーダを信じられず、怒りに駆られてシスになったことも、ルークに明かした。
「そんなことはどうでもいい。ルーク、Xウィングはどこ?」
「実は……」
ルークは言いにくそうに沼を見る。その視線だけで、何が言いたいのか分かった。言いたくなくなるわけだ。
「ルーク………」
「すみません、沼に沈めてしまいました……」
「丁度良いじゃん。訓練で持ち上げたら?」
「ええ!?」
ルークと訓練をしてきたけど、今までインターセプター程のものを持ち上げたことはなかった。持ち上げても、スピーダー・バイク程度だ。
「ルーク、訓練だと思うな。引き上げたら、すぐに〈ホーム・ワン〉に戻れ。」
「できません……」
「ルーク、」
「僕はハンとレイアを助けに行く。」
「未熟なルークじゃ無理だよ。ジェレクには歯が立たない。」
「そう思うか?エレノア、お主も大事なことを見逃しておるぞ。」
ルークを諌める私に、ヨーダが口を挟んでくる。
「あんたには言われたくない。昔から、あんたは何一つ大事なことを教えてくれなかった。」
「わしは全て教えてきた。エレノア、教えられてばかりでは意味がない。自ら学ぶことで、初めて意味を為すのじゃ。」
「………言い訳?」
「どう捉えるか、それはお前の自由。だが、わしはお前を見放したつもりはない。付いてくるのじゃ。秘密の場所へ案内しよう。」
ヨーダが歩いていき、私はアナキンに振り返る。アナキンは頷き、ヨーダを追うように促された。ルークは私達を交互に見て、不安な表情をしていた。
ヨーダの後を付いていくと、次第に強いフォースを感じてきた。
光明面とか暗黒面とか、そんなものは関係ない。ファーザーやドーターと出会ったような星みたいに、フォースが強い。近付くにつれて、心が掻き乱されるようだ。
霧が深い水辺に着くと、ヨーダは立ち止まった。
囁き声が聴こえて、思わず後退ってしまう。
「何ここ……」
「この星で最もフォースが強い場所じゃ。」
「なんでここに…?」
「お前と話をする為じゃよ。」
「あんたと話すことなんてない。」
背を向けて去ろうとすると、聴こえるはずのない声が聴こえた。
『また逃げるつもりか?』
「え……」
現れた“オビ=ワン”に、私は踏み止まってしまった。
だって、あり得ない。確かに、オビ=ワンが死んだのを感じた。デス・スターでジェレクに殺されたはずだ。
「死んだよね……?」
『ああ、死んだよ。』
「そんな……フォースに還ったら自我は………」
人は死ぬと、フォースと一体化する。ジェダイなら誰でも知っている事実だ。私もジェダイだったし、知っている。
もっと言えば、死後は自我を保てないはずだ。
「あんた誰……?」
『私はオビ=ワン・ケノービ。かつて夢を抱いていたお前はどこへ行った、エレノア・“ネル”・クラウド?』
「本当に……」
『目を逸らすな。フォースの意志を聞け。』
ヨーダに視線を向けると、ゆっくり口を開く。
「わしが一度ダゴバに来ているのは、スカイウォーカーから聞いておるじゃろう。わしとオビ=ワンは、フォースの女官からある訓練を受け、死後も自我を保てるのだ。」
『ネル、なぜ暗黒面に近付いている?』
「………」
「何も知らないと思うているのか?」
「あんた達には関係ないでしょ。」
「エレノア、わしは見放していないと言ったはずじゃ。」
だから連れてきた、とヨーダは言う。
見放してくれた方が良かった。罪悪感なく行動したかったのに。今の私は、沼に沈みかけているも同然だ。
『ルークを呼び寄せたのは、お前をここに導く為だ。アナキンが無理矢理連れてきたところで、お前は足掻くだろう。全てはフォースの導きなのだよ、ネル。』
どいつもこいつも………
みんな私の邪魔をする。オビ=ワンも、ヨーダも。結局話を聞いてくれないんだ。
「なんで私の邪魔ばかりするわけ!?」
『同じ間違いをしようとしているからだ。ジェレクに合わせる必要はない。お前はお前の戦い方をするんだ。』
「だから暗黒面に、」
「エレノア・クラウド、跪くのじゃ。」
「は……?」
ヨーダの言葉に、私は間抜けな声を出す。
『ネル』
「オビ=ワン、退いて。」
『なら言う通りにしろ。解放されたいんだろう?』
言い返したい衝動を抑えて、渋々ヨーダの前に跪く。
ヨーダはテレキネシスで私のジェダイ・ライトセーバーを取り、起動させる。そして、刃を私の肩に交互に添え、最後に頭の上に添えた後、刃を引き戻す。
「フォースの意志とジェダイ評議会の決定により、エレノア・クラウド、お前にマスターの称号を与える。」
「ジェダイ・マスター……?」
『そうだ。お前は今からジェダイ・マスターだ。』
この2人の意図が分からない。
解放してくれると言ったはずだ。なのに、マスターの称号を与えられた。ジェダイをやめたはずだったのに、またジェダイに戻された。
「どういうこと!?私はジェダイをやめたのに!!」
『お前は今、現存するジェダイのNo.2だ。ジェレクを討ち倒すには、お前1人では不可能だ。この意味をよく考えろ。』
「私じゃなくてもいいでしょ!?アナキンの方が、ジェダイ・マスターに相応しい!私にはできない!!」
「できないと最初から決め付けではならん。エレノア、これが最後にわしとオビ=ワンにできる唯一のことじゃ。」
その時、ルークがダゴバから離れたのを感じた。アナキンの制止は聞かなかったみたいだ。アナキンも行きたいはずなのに、ルークは冷静さを保たなかった。
「行くのじゃな。」
「止めたって無駄だよ。」
『お前の魂胆は分かっている。だが、お前には“家族”がいる。それを忘れるな。』
「分かってる。」
2人に背を向けて、私はアナキンがいるシャトルへと向かう。
やることはとっくに決まってる。後は、全てを拒む覚悟だけだ。これから考えていることは、誰にも頼れない。
私はあえて、間違った選択をする。
すごく怖いけど、フェラスとステファニーを愛しているからできることだ。
自分で選んだことだけど、心が苦しい。