これでいい。
何度も自分に言い聞かせた。ジェレクはいつか報いを受ける。私が手を下すまでもない。
できることは全てやった。
後は、その時が来ればいいだけ。
「ルシル卿、奴らが引き下がらなかったらどうする?」
ジェレクは取引を受け入れたけど、これで終わるはずはない。
アナキン達が黙って去らなければ、私の努力は無駄になる。
「私は最善の選択をした。もし戻ってきたら、あんたに任せる。私はもう関与しない。」
「俺が干渉することになるぞ。」
「構わない。警告はしてる。」
「承知した。」
ジェレクはシスの隷属を連れて部屋を出て行き、私は1人になる。
その時、〈ホーム・ワン〉へ向かわせたはずのルークが戻ってくるのを感じた。みんな遠ざけたかったのに、私の努力は無駄に終わったらしい。
「ルシル卿………」
トルーパーが、恐る恐る私に声をかけてくる。
「ハン・ソロの炭素冷凍は終わりました。残りの者達は、貨物船へ向かったようです。本当に逃がすのですか?」
「彼らを追ったら許さない。」
「失礼致しました……!」
ジェレクと取引したお陰で、私にも帝国軍の指揮権が生まれた。利用できるものは利用する。未来を変える為の一手だ。
「後は私と“ヴェイダー卿”が片付ける。帝国軍は艦隊に引き上げて。」
「しかし、」
「巻き添えを食らいたいなら残れば?」
「イエッサー!!」
トルーパーが出て行き、入れ違いでルークが空中都市に侵入してきた。
ジェレクは、真っ先にルークを捕らえに行くはずだ。あの子は従わないから、戦って捩じ伏せるしかない。でも、今のルークじゃジェレクに太刀打ちできない。
赤いライトセーバーを持って、私はダイニング・ルームを飛び出す。
その瞬間、とてつもなく強いフォースを感じた。
「え………?」
アナキン達が、ルークの為に引き返してきた。
でも手遅れだ。アナキン達は間に合わない。ルークはこの戦いで絶望感を味わうことになる。
「ようやく来たか、ルシル卿。」
炭素冷凍装置を通り過ぎ、通気孔へ入るとルークはジェレクに右腕を切られていた。シスの隷属は手を出さず、2人の戦いを見守っている。逃げ場のないルークは、武器ごと腕を落とされて、通路の端で痛みに蹲っていた。
「若きスカイウォーカーよ、貴様に勝機はない。」
「ルーク、今すぐ立ち去りなさい。」
「エレノア……!なぜだ!?」
「最善の選択をしたまでだよ。聞けないって言うなら、私と戦う?私の強さは、あんたがよく分かってるでしょ。」
ルークの訓練をしてきたから、私がどれだけ厄介か分かるはずだ。
「お前達!小僧を殺せ!」
「……」
「どうした!?殺せと言っているだろ!!」
ジェレクはシスの隷属に命令するが、彼らは微動だにしない。
シスの隷属は、尋問官の死体から作った人形だ。人形に意志はない。その術をジェレクに教えたけど、奴は完全に扱えていない。
使い熟せないだろうとは思ったけど、おかしくてつい笑ってしまう。
「下手くそ。」
「何だと!?」
「《我が元に跪け。》」
シスの言葉で命令すると、人形達は従った。古代シス語が分からないジェレクは、その様子に憤る。さらに、私にライトセーバーを向けてくる。
「操る方法を教えろ。」
「私、あんたと違って勉強熱心だったの。オールド・タングが分からないなら、あんたには無理。それに………」
「何を、っ!な、なんだっ……!?」
ジェレクは突然、胸を押さえて膝をつく。
私も昔通った、シスの秘術を使った代償だ。シスの秘術は肉体を蝕む。私は改良をして、あらゆる負荷を相殺する形で侵食を抑えている。
その結果が、肉体を若く保つこと。
何もしなければ、シスの秘術に命を吸われる。
「心臓に負荷がかかるんだよね。あんたにシスの秘術は使えない。」
「さっさと教えろ……!さもないと奴らを攻撃するぞ!」
「………分かった、楽にしてあげるよ。」
私はジェレクに近付き、冷めた目で見下ろす。
こんな奴がシスを名乗っていたなんて、馬鹿らしくて呆れてくる。フォース・ライトニングすら使えない相手に、私は怯えていたんだ。私の方がシスとして強いのに。
私がしようとしていることに気付いたのか、ルークは声を張り上げる。
「エレノア!ダメだ!!」
私はルークの制止を無視して、赤いライトセーバーを起動させる。
赤い刃はジェレクの胸を貫き、私は容赦なくライトセーバーを抜き取った。ジェレクは私がいる方を向き、口を開く。
「貴様……!」
「あんたはシスに相応しくない。」
「マス…ター………」
ジェレクが倒れた瞬間、私は寒気を感じた。気のせいだと自分に言い聞かせて、ルークに向き直る。私は負傷したルークに近付いた。
「エレノア……」
「ルーク、あんたはまだ弱い。」
「え…?」
「次に会う時、私の意志はないと思って。ごめん。」
「エレノア!!嘘だっ!!!!!」
通路の端からルークを突き落とし、私はシャフトに背を向ける。
ルークが通気口に滑り込んだのを確認して、私はその場から離れた。
「さよなら、ルーク。」
脳裏に娘の顔が浮かんだが、すぐに掻き消した。この場にステファニーがいないことが救いだ。フェラスも、こんな残酷な私を知らない。
2人が愛おしい。
そんな気持ちも、皇帝と向き合えば消える。
「《私を殺せ。》」
人形に命令して、その内の1人に懐のナイフを渡す。
シスの秘術は、皇帝に渡せない。私は皇帝の知らないことも知っている。この人形の術もその1つだ。秘密ごと、冥界に持っていく。
シスの隷属2人は私を両側から押さえ、1人は私の身体目掛けてナイフを振り被る。
これで、私は自由だ。