ナイフで刺されて、私は死んだはずだった。
ところが、目覚めると私はどこかで拘束されていた。尋問台に乗せられて、四肢を固定されている。刺された腹部はバクタ・パッドが貼ってあり、治療されていた。
辺りを見渡すと、私がいるのは見覚えのある建物だった。
「よくぞ戻った、ルシル卿。」
狂気じみた声に、私は背筋が凍った。
私が乗せられている尋問台の横に、シディアス卿が立っていた。
「全て余の予期通りだ。」
「結局、あんたの手の平の上だったんだね……私も、ジェレクも………」
「左様。ジェレクは確かに強かった。努力が足りなかったのだ。だが、其方は我が下から離れた後も、暗黒面を極めた。実に素晴らしい。」
「一度切り捨てたくせに。」
「其方が苦痛を忘れたからだ。シスに苦痛は不可欠。ルシル卿、かつての苦痛を思い出せ。」
シディアス卿のフォース・ライトニングを浴びて、私は思わず絶叫する。
腹の傷口が開きそうだけど、痛みの方が勝っている。身体中が痛くて、動けないのに苦痛から逃れようと身を捩る。気を失えば、何をされるか分からない。意識を必死に保ち、ライトニングに耐え続けた。
「うっ……」
フォース・ライトニングを止め、シディアス卿は私の頬を撫でる。
「まだ思い出せぬようだな。」
「嫌です……」
「ルシル卿……いや、ネル。其方がアナキンを余から奪ったのだ。ルーク・スカイウォーカーも余のものにはならん。其方が代わりになるのだ。永遠に、余の操り人形としてな。」
シディアス卿は、トルーパーにタトゥーマシンを用意させる。ペン先を私の首に近付け、シディアス卿は笑みを浮かべた。その恐ろしい笑みに、嫌な予感がした。
「やめて……!」
「ダース・ルシルは、二度と反抗できぬ。」
「嫌っ……!」
頭を固定され、私は首にオールド・タングを彫られる。
これは私が開発した術の1つで、唯一シディアス卿に渡したものだ。まさか自分に使われるなんて、想定していなかった。あの頃の自分を、馬鹿だと言って殴りたい。
でも、もう何をしても手遅れだ。
首には、オールド・タングで奴隷の言葉が彫られた。
「《汝、
「っ……」
タトゥーから緑色の炎が燃え上がり、火は首輪となって私の首に吸い込まれていく。もし逆らったり、シディアス卿を殺そうとすれば、私はこの見えない首輪に殺される。逃げようとしても同じだ。
「さて……」
シディアス卿は私の拘束を外す。
「跪け、ルシル卿。」
「っ…!」
「逃げられないのは承知しているはずだ。」
私は膝をつき、息苦しさに踞る。逃げることを諦めた瞬間、呼吸ができるようになった。無気力状態になっていると、顎を掴まれ顔を上げさせられる。
「其方の意思を奪うことも可能なのだぞ。それが嫌なら、余の為に尽くすのだ。愚かな反乱者共を葬れ。銀河はシスのものぞ。」
「はい……マスター………」
シディアス卿は尋問室を出て行き、私はふらつきながらも立ち上がる。
覚束ない足で尋問室の外へ出ると、笑いが止まらなかった。
「あはははっ!!………私こんなところにいたんだ………ふふっ、あはははっ!!」
道理で見覚えがあるはずだ。
建物の外へ出ると、私が見ている景色は子供の頃に見た景色と同じだった。だけど振り返ると、当時とは違う建物がある。正確には、造り替えられた建物だ。
そう、ここはインペリアル・パレス。
かつてのジェダイ聖堂だった建物を、インペリアル・パレスに改築したんだ。
「………」
一頻り笑った後、溜め息を吐く。
改築したところで、私は今も昔もこの場所が嫌いだ。結局、私を縛り付けるんだから。“主”だって変わらない。
ジェダイもシスも、私を逃がしてくれない。
自由になりたい。
こんなこと、望んでない。
────────
数日後、新たな恐怖が生まれた。
“ダース・ルシル”
反乱軍の中に、衝撃が走った。エレノアの改心を、受け入れようとしていた矢先のことだった。エレノア・クラウドはシスに与して、反乱軍と戦い始めた。
問題を重く見たモスマは、司令部にアナキンとフェラスを呼び出す。
「スカイウォーカー将軍、説明してください。なぜエレノア・クラウドは、シス卿として脅威になったのか。」
「申し訳ありません。僕が止めるべきでした。」
アナキンは、後悔していた。エレノアに同意せず、残って戦えば良かった、と。だが時既に遅し。今のエレノアに、彼女の意思はない。
「アナキン、お前は悪くない。エレノアが決めたことだ。議員、アナキンを責めないでくれ。〈ホーム・ワン〉に残った俺が悪いんだ。」
「私は責めているのではありません。彼女の改心は知っています。私は、なぜ彼女が皇帝に従ったのか知りたいのです。」
アナキンとフェラスは、モスマにシスの秘術の存在を教える。エレノアはその分野で、シスに奇才と呼ばれることも。そして、シスの秘術を教えたのは皇帝だということも。
「もし人を操る術があるなら、エレノアは操られていることになる。」
「では、彼女の意思ではないと?」
「はい。」
「尋問官の死体を操れるんだ。人を操れても不思議じゃない。」
「分かりました。では、スカイウォーカー将軍、オリン将軍、貴方達に“お願い”があります。彼女を救う方法を探してください。」
アナキン達は司令部を出て、会話もなく歩く。
その時、パドメが2人を呼び止めた。彼女の腕にはステファニーが眠っている。2人の深刻な顔を見て、パドメは心配した。
「2人共、少しは寝たら?」
「ああ…」
「ルークは?」
「相当ショックみたい……」
ルークはハンを連れて行かれて、エレノアに拒まれたことがショックだった。ステファニーが声をかけても虚で、上の空だ。
「僕が話してくる。」
「アニー」
ルークの下へ行こうとするアナキンを、パドメが呼び止める。
「レイアは大丈夫よ。」
「そうか…良かった……」
「貴方も休んで。」
「ありがとう、パドメ。」
再び背を向けるアナキンに、パドメとフェラスは静かに見送った。
「フェラス、ネルは強いわ。」
「分かっている。」
「娘がいるのよ。ネルを信じましょう。」
「ああ。」
アナウンスが流れ、2人はミレニアム・ファルコンが離れていくのを見る。
「ママ……?」
側に母親がいないことを悟ったステファニーは、寂しさに号泣する。パドメは必死にあやすが、しばらく泣き止むことはなかった。フェラスは娘を見て、エレノアも孤独だと気付き、彼女を救う方法を見つけると誓った。
パドメは、ステファニーが母親を忘れる前に、無事に再会できることを祈った。
彼女は泣き疲れまた眠ったステファニーに、人知れず謝っていた。