楽園への序章
〈ホーム・ワン〉のブリッジに、各指導者が集められた。ホスの戦いから1年後のことだった。集められたのは、アナキンやフェラス、パドメを始めとする議員達、数々の戦績を持つ提督や将軍達だ。
たが、その中にレイアとルークはいない。2人はランドの呼び掛けに、タトゥイーンに行っていた。ハン・ソロを取り戻す為である。
モスマが静聴を呼びかけ、司令部は静まり返る。
ブリーフィングが始まり、フェラスにくっついてきたステファニーも口を閉じた。
「以前、第二デス・スターの建造が発覚しました。現在も、ボサンのスパイが位置情報を特定中です。」
「まだ完成していないんだよな?」
「オリン将軍、未完成ですが、楽観視はできません。今回集まっていただいたのは、“クラウド将軍”について話さなければならないからです。」
「ママっ!?」
目を輝かせるステファニーとは裏腹に、先に話を聞いていたパドメは暗い顔をする。モスマはそんなパドメに、ステファニーを連れていくように促した。ブリーフィングが再開され、司令部の面々はモスマの話に耳を傾ける。
「これは、極秘事項です。ボサンのスパイは、彼女のお陰で潜入できたのです。」
「なんだと!?」
「数ヶ月前、ボサンのスパイから暗号通信を受け取りました。第二デス・スターの建造が始まった。ルーシーの手引きで潜入できた、と。」
ルーシーという名前に、誰もが首を傾げる。
「私も暗号部も、最初は誰のことなのか分かりませんでした。ですが、アミダラ議員が真っ先に気付きました。ルーシーは“ルシル”の短縮名です。ボサンのスパイは、彼女の手引きで潜入したのです。」
「だが、ネルの意思はないはずだ。」
アナキンが罠の可能性を指摘する。その可能性は、モスマも懸念したことだった。しかし、フェラスは罠の可能性を否定する。
「エレノアの意思だ。罠なら、ボサンのスパイは死んでいる。皇帝は気付いてない可能性が高い。」
「フェラス、エレノアは……」
「俺はエレノアを信じる。」
「分かりました。彼女を信じましょう。」
モスマの言葉で会議は締められ、指導者達はブリッジを出て行く。
各々が出て行く中、アナキンはモスマに呼び止められる。
「スカイウォーカー将軍、他に懸念でもあるのですか?」
「ないとは言えません。ネルが皇帝に大人しく従うとは思えない………嫌な予感がします。」
「彼女は貴方を信頼しています。私も友人として、“エレノア”を信じています。信じる者が少ないのですから、私達が信じなければ。」
「………はい、議員。」
そこへ、ブリッジの隊員が顔を青ざめさせてモスマを呼ぶ。
「議員、これを……!」
隊員がパネルを操作して、プロジェクターを起動させる。
そこに映ったのは、意外な人物だった。
『ではルシル卿、どうぞ。』
帝国ホロネットの報道官が、“ルシル卿”と呼ばれた女性を呼ぶ。
現れたのは、エレノア・クラウドだった。
アナキンは、その姿に絶句する。その姿はクローン戦争時のルシル卿そのもので、寒気を感じた。彼女の後ろには、4人のシスの隷属が控えている。
しかし、当時とは違う点が1つだけあった。
ルシル卿の奥底に、エレノアの意識が残っていた。
『ありがとう。私は皇帝陛下の言葉を届けに来た。間もなく、銀河帝国に対する反乱活動は停止される。3日間の猶予を与えるから、それまでに覚悟を決めておくように。』
『では、反乱活動を続ける者はどうなるのでしょう?』
『考えるまでもない。』
ルシル卿は、小さく笑う。
『3日後には自由意思はなくなる。』
そう言って、エレノアはホログラムから外れた。
隊員はホロネットを切り、深刻な表情でアナキンとモスマを見上げる。
「自由意思がなくなる?どういう意味だ?」
「あの…」
隊員は恐る恐る声をかける。
「なんだ?」
「ソール大尉、遠慮せず言ってください。」
モスマに促され、ユグノ・ソールは進言する。
「もしかしたら、違う意図があるのでは?」
「違う意図?」
「僕には分かりませんが、スカイウォーカー将軍にしか分からないこともあると思います。」
「僕にしか…?」
アナキンは考え込む。
先ほどの放送で流れたエレノアの言葉を、頭の中で繰り返す。1つ1つ考え、エレノアの狙いを考える。そこでアナキンはブリッジを飛び出し、フェラスの寝ている部屋に駆け込む。
不機嫌マックスのフェラスは、アナキンを睨み付ける。
だが、アナキンが気付いた事実にはフェラスが必要不可欠だった。
「なんだよ?」
「フェラス!ネルの計画を知っているか!?」
「計画?そんなの俺が知るわけないだろ。」
「違う!ネルの夢の計画だ!」
そう言われ、フェラスは一気に目が覚めた。
「ああ、知っている。」
フェラスの返事に、アナキンは確信した。
エレノアは、何かを伝えようとしている。
その数時間後、ボサンのスパイが殺されたと報告が入った。アナキンはその報告とエレノアの言葉を照らし合わせ、行動を開始した。
そして、アナキンとフェラスは反乱軍から姿を消した。
2人の行方を知る者は、誰もいなかった。
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どれだけの日数が経ったのか分からない。
シスの訓練を再開して、私は再び主の僕になった。
シディアス卿が与えた猶予は3日。それまでに、私は主にある術を渡さなければならない。誰にも止められない。私は服従の首輪のせいで逆らえない。
だから、こうするしかなかった。
ホロネットも、最後の懸けだ。
「ルシル卿、跪け。」
「はい、マスター。」
コルサントのインペリアル・パレスにて、私は主の前に跪く。
「覚悟は良いな?」
「はい、永遠にお仕えします。」
主は私の意思を確認すると、第二デス・スターに向かうように指示する。
新しい究極兵器はもうすぐ完成する。スーパーレーザーも、あと3日で稼働できる。本当はもっと早く稼働できたけど、ボサンのスパイを使って極限にまで完成を遅らせてきた。
でも、もう無理だ。
スパイは死に、主は完成を急かしてきた。帝国の完全支配まで、時間がない。シディアス卿に手を貸した私には、償い切れない責任がある。私が止めなければならない。
暗黒面に押しつぶされそうだ。
娘に会いたい。