第二デス・スター、とある部屋で、私はシスの隷属に向き合っていた。
隷属達は黙ったまま私を囲うように、無言で跪いている。
「《間もなく、主が到着する。》」
発言を許可すると、隷属達は口々に呟き始める。
「《時が来た……》」
「《シスの為に……》」
「《血を流せ………》」
「《我らはシスと共に……》」
虚なシスの隷属は、不気味に呟き続ける。
以前作った人形とは違い、今回は人格のある人形を作った。私の命令を聞くけど、刃向かうこともできる。とても危険な代物だ。
しかも、この隷属は私1人じゃなくて、シディアス卿の力も加わっている。私の命令だけでなく、主の命令も聞く。
どうしようもなかった。逆らえないから、私は作るしか選択肢がなかった。自分の首を絞める僕なんか、本当は作りたくなかったんだ。
「失礼しま、ヒッ…!?」
入ってきた将校が、寒気に立ち止まる。
「何?」
「っ……皇帝陛下が到着しました!」
「すぐに向かう。」
将校が出て行き、私は隷属を従えてハンガーベイへ向かう。
私達が歩くと、帝国軍の者達は恐怖で通路の端に避ける。私はそれに構うことなく、通路を歩き続ける。皇帝の人形である私に何かすれば、自分が消される。だから、誰も私に手を出す者はいない。
「もう時間切れか……」
猶予まで、あと24時間。
24時間後には、スーパーレーザーを稼働させなければならない。私自身は何もできないことに、苛立ってしまう。
ハンガーベイに入ると、帝国シャトルが到着した。
ハッチが下り、まずインペリアル・ガードが降りてきて、その後に皇帝が杖をついて出てくる。トルーパーは敬礼して、私とシスの隷属、将校は跪いて出迎えた。
「立て、ルシル卿。」
「はい、陛下。」
私は主と2人、ハンガーベイの出口に向かって歩く。
「残り24時間だ、ルシル卿。」
「………」
「“ネル”」
「私はダース・ルシルです、マスター。」
「愛称で呼ぶのは気に入らんようだな、友よ。」
「私を縛ったのは貴方で、っ……!」
首に緑色の炎が走り、気道が絞められる。殺気を向けたのが、気に入らなかったらしい。息苦しさに、私は膝をついてしまった。
非常事態だと思った将校、ジャージャロッドは慌てて私に駆け寄ろうとする。
だが、それを主が止めた。
「司令官、心配は無用ぞ。これは“躾”なのだ。」
「はい、陛下………」
主は、わざと彼の前で術を使った。
近頃では、統合本部の中にも不満を持つ者がいる。ジャージャロッドもその1人だ。見せしめに、わざと彼の前で私を折檻したんだ。
ジャージャロッドは私達の前から離れ、司令部へ戻っていく。
ようやく解放され、私は吐き気に蹲る。
「ルシル卿」
蹲る私に、主は声をかける。
「其方は余の言う通りに生きれば良いのだ。」
「貴方は……私の夢を肯定してくれたはずです。それなのに、なんで私を解放しないんですか……?」
「簡単なことだ。1つ目の夢を叶えてやっただろう。」
「恩は返した!まだ足りないわけ!?」
その瞬間、私は強いフォース・プッシュを食らう。
ガラクタの中に倒れ、口の中が切れて血の味がした。左手の平も、鈍い痛みを感じて見れば切れていた。手の平の傷を治し、私はふらつきながらも立ち上がる。
「ルシル卿、最早シスが勝ったも同然。其方の夢も叶うのだぞ。」
「私の本当の夢も知らないくせに!っ…!?」
また術を使われ、今度は容赦なく首を絞められた。意識が落ちる寸前まで絞められ、気絶する前に離された。
だけど精神的にもダメージは大きく、気を失ってしまった。
目を覚ましたら、部屋で寝かされていた。
時計を見れば、猶予まで残り20時間を切っていた。
「失礼します!ルシル卿!」
「入って。」
ジャージャロッドを中に促し、私は気持ちを切り替える。
私は暗黒卿だ。狼狽えるな。隙を見せれば、全て無駄になる。
「何か用?」
「2パーセク離れた宙域で、子供を連れた反乱軍の男を捕らえました。」
「なぜ私に?」
「それが……男は付き添いだと言い張っておりまして、子供はステファニー・オリンだと名乗っています。フェラス・オリンの子供でしょうか……?」
子供のことは、皇帝しか知らない。ラストネームから、フェラスの娘と捉えられたみたいだ。あくまでフェラスの娘で、私の娘という認識はないらしい。
「男の名は?」
「男の方は口を割らなくて……とりあえずデス・スターに移送させています。」
「男に手荒な真似はしないで。私が直接尋問する。」
「しかし、っ…!?あああああっ……!」
彼の足を赤いライトセーバーで突き刺し、もう一度同じことを言う。
「私が尋問する。余計なことはするな。下がれ。」
「し…承知しましたっ……」
ジャージャロッドが出て行き、私はライトセーバーを壁に投げ付ける。ヒルトはショートして、煙を上げて壊れた。折れたライトセーバーに構わず、私は寝台に座って頭を抱える。
将校を脅したのは、もう何度目か分からない。
私だって、あんな真似はしたくなかった。でもそうしなければ、将校に嘗められる。皇帝に無理矢理従わされるシス卿では、帝国軍は動かせない。
冷酷無慈悲なルシル卿でなければ、帝国軍は動かない。
「ステフ……」
こんな私を、娘に見られたくない。会いたいのに、会える状態じゃない。今の私を見て、ステファニーに泣いてほしくない。
落ちたライトセーバーをそのままに、私は部屋を出て行く。
私の自由も、残り19時間だ。
その時、遠い星でヨーダがフォースに還ったのを感じた。
「うるさい……」
聴こえてきた声を払うように、そう呟く。
「うるさい……うるさいうるさいうるさい!!」
尚も聴こえる声に、反論する。
「分かってるよ!全部私のせいって!他に道はないんだよ!!」
感情のままに叫ぶと、声は聴こえなくなった。
知ってる。
自分の為に、ジェダイを滅ぼそうとした。私を縛るジェダイ・オーダーが邪魔だったんだ。掟さえなければ、私は自由だ。
言われなくても分かってる。
夢の為に、シスに力を与えたのは私だ。私がシスと手を組まなければ、クローン戦争はなかった。帝国も誕生しない。
全部私のせいだ。
愛を求めてはいけなかったんだ。
もう、生きた心地がしない。