監房ブロックを出てすぐ、エンドアの基地から連絡があった。
『反乱軍と思われる男を捕らえました。』
次から次に、無謀な真似をしてきて……
ホロ通信の相手、大尉に私が向かうと告げる。これがもし反乱軍の要人なら、隠蔽しなければならない。誰にも邪魔はさせない。
「トルーパー、シャトルを出して。」
「イエッサー!」
シャトルに乗り込み、私はエンドアの緑の月へと向かう。
向かう間、私は1人瞑想をする。
フォースを通じて、あらゆる可能性を予期する。良い可能性も、悪い可能性も、未来の1つだ。良いことばかりなんて、絶対にあり得ない。
暗黒面の牢獄は、とても深い。
気が付いた頃には、エンドアの基地に着いていた。
「ようこそ、ルシル卿。捕虜はこちらです。」
基地の中に入ると、心臓が高鳴った。
手錠されたルークが、連行されてきた。ルークの新しいヒルトが私に手渡されても尚、彼は私から目を逸らさない。
ユグノと同じだ。
誰も私が裏切ったと信じてくれていない。
「大尉、すぐに離陸準備を。」
「しかし捕虜が、」
「捕虜は丸腰だから問題ない。早くして。」
「了解しました。」
大尉とトルーパー分隊はエントランスを出て行き、私はルークと2人になる。
ルークに名前を呼ばれるけど、私は振り向けなかった。
「ルシル卿、ユグノが来ているはずだ。」
シスの名で呼ばれて、私はようやく振り向く。
「あんたも捕虜だよ。」
「分かっている。貴女は今もエレノア・クラウドだ。」
「エレノア・クラウド最後の言葉を忘れたの?もうエレノアの意志はない。」
そう言えば、ルークは私に背を向ける。
ルークから、悲しみの感情が伝わってくる。悲鳴のようだった。その悲鳴が、私の心を深く抉ってくる。
あえて凍らせた心を、温かく溶かすように。
「………1人で終わらせる気なんでしょう?」
「あんたやレイアに、重荷を背負わせたくない。私が“銀河”を滅ぼすきっかけを、主に与えてしまった。私の責任だから、私が終わらせる。」
「だから全て拒むと?ステフはどうなる?マスター・オリンも悲しむ。」
「私が自分から欲しがったものは、全部奪われていく。それなら、最初から捨てる。」
アナキンやフェラスが消えたところで、私の考えは変わらない。
もう何も奪われたくない。シディアス卿は望みを持つことは許すけど、手に入れることは許さない。手に入れてしまえば、飢えもそれまでだからだ。
私は生きることを許されているだけだ。
命にリードを付けられた私は、主に従うしかない。
「最初から諦めては、叶うものも叶わない。エレノア、貴女は今まで何を経験してきたんだ?僕より、叶えられるものは多いはずだ。」
「そんなもの、皇帝の前では意味を為さない。」
私の言葉に、ルークは怒りの表情を見せる。
「だから何もかも諦めるのか!?皇帝に逆らう方法を探そうともしていないじゃないか!」
「本当にないんだよ。私の意思は関係ない。私は皇帝に忠誠を誓った。もう戻れない。」
そこで大尉が降りてきて、ルークはトルーパーに両脇を固められる。
尚も私を見つめるルークに、心が締め付けられた。
「ここに来たのが運の尽き。私は単なる餌。“皇帝陛下”が本当に欲しいのは、私じゃない。」
「エレノア………?」
「ごめんなさい、ルーク。」
ルークが連れて行かれ、私はエントランスの隅に座り込む。
強い吐き気に、口元を手の平で覆った。込み上げてきたものに、私は吐き出してしまう。手の平を見ると、赤い液体が鉄の臭いを出していた。
手を汚した血を懐のハンカチで拭いて、ふらふらと立ち上がった。
ひどい貧血に、思わず頭を抱える。
「視界が………」
しばらく壁に寄り掛かっていると、すぐに視界が戻った。
「ルシル卿!大丈夫ですか!?」
「問題ない……」
私の異変に気付いたトルーパーが、わざわざ駆け寄ってくる。
「トルーパー、このことは誰にも言うな。」
「ですが、貴女は、」
「これは命令だ。もし漏らせば、命の保証はしない。」
「申し訳ありません…!」
トルーパーがシャトルへ入っていき、私も後を追って乗り込んだ。
その後、私は個室に入り、指先を少し切って方陣を描く。
毒に毒を重ねることになるが、弱った身体を治す為だ。シスの秘術で、心臓と肺を修復する。胸の痛みが消え、呼吸は穏やかになった。
これは、私の復讐だ。
「失礼します!」
「何?」
苛立ちながらも、トルーパーの声にドアを開ける。
「軌道上に、反乱軍の艦隊が現れました!」
ついに来た。
この戦いで、全てが変わる。私だけじゃない。皇帝も、アナキン達も、ステファニーも。
「提督に待機と伝えて。」
「しかし、」
「これは皇帝陛下のご指示だよ。」
「承知致しました……」
トルーパーは仕方なく了承する。
皇帝の命令は、誰も拒めない。皇帝の考えなんて、ただのストーム・トルーパーには分からない。トルーパーは黙って命令を聞くしかない。
再び1人になり、私はいつもの服と、帝国のシンボルマークが入ったマントを羽織る。1年で長く伸びた金髪はライトセーバーで切り落とした。
切った髪を洗面器にヒラヒラと落として、水道のスイッチを押す。
己の理性を消すように、水と一緒に髪を流した。
私はダース・ルシル。
私の夢は、正しい方法で叶える。