翌日。
私はトライアルを終えて、無事ナイトへ昇格した。トライアルが終わってすぐ、私は最高議長のオフィスへ訪れた。そこで聞かされたのは、議長の秘密だった。現段階で知っているのは、私だけ。
これが、パルパティーン議長のプレゼントだ。
私の口元に、自然と笑みが浮かぶ。
「………ありがとうございます。」
「期待しているよ、エレノア・クラウド。」
「はい、議長。」
議長オフィスを出て、私は迷わず聖堂へと戻った。
その日から、私の毎日が変わった。いや、変えたという方が合っている。真摯に任務を遂行して、印象を変えた。
マスター・フィストーを見習って、常に笑顔を心掛けた。心のままに友情を育み、他者を敬った。それに加えて、私は誰一人拒むことはない。
私は、理想のジェダイを目指した。
ジェダイ・トライアルを乗り越えたことで、誰も疑わなかった。
「ネル!」
「あ、アニー!」
評議会の承認を得て、オビ=ワンからの訓練を始めたアナキンとすれ違った。
私とアナキンは、お互いを愛称で呼び合うまで仲良くなった。アナキンに、私の夢を話す程だ。彼は普通の人の概念も持っているからか、否定はしなかった。ジェダイの中で、唯一私を否定しないのが、アニーだ。
そんなアナキンは、任務前の私に声をかけてきた。
「ネル、任務だって聞いたよ。それも、今回は危険な任務って……」
「心配してくれてるの?」
「当たり前だろ!僕達は友達じゃないか!」
「そうだね……ありがとう、アニー。でも大丈夫だよ。任務は私一人じゃないから。」
今回の任務は、私とマスター・ビラバの2人で向かう。
任務内容は至って単純、平和の守護者としてとある惑星の独裁者を止めに行くだけ。ジェダイが必要とされたから、ジェダイが派遣される。たったそれだけだ。
ジェダイ・マスターもいるし、私一人よりは上手く対処できるだろう。
「でも、本当に気を付けて。」
「うん、ありがとアニー。」
「行ってらっしゃい!」
「行ってきます。」
アナキンと別れて、私はシャトルへと乗り込む。
コックピットには、既にマスター・ビラバがいる。シャトルは発進して、コルサントの軌道へと出る。マスター・ビラバが座標を入力して、ハイパースペースへと突入した。
私は未だに、結婚願望を諦めていない。
マスター達は気付いているはずだ。私は、諦めが悪い。つまり、執着しているんだ。
だけど、未来の為に保留にした。諦めたわけじゃない。夢を叶える為には、黙っていることも必要だと学んだ。
嘘を吐くのは簡単。
問題は、その嘘を貫き続けられるかどうか。
罪悪感なんて、欠片もない。
────────
数日後、コルサントのジェダイ聖堂にて。
ヨーダと、エレノアのマスターであるフィストーが向かい合って話をしていた。
「ナイトに昇格してから、エレノアの様子はどうじゃ?」
「ネルは変わりました。しかし、良い変化とは思えません。それに……」
「言うてみよ。」
「………ネルの心が分からない。」
その言葉で、ヨーダはフィストーの懸念を察した。
“暗黒面の帳”
ヨーダの脳裏に、その考えが浮かんだ。エレノアは、暗黒面へと踏み込み出した。それは掟に反することであり、彼女を破滅させることを意味する。
フィストーも、その事実に嘆いていた。
「キット」
「はい、マスター」
「エレノアから目を離すでないぞ。」
フィストーは頷く。
部屋から退室して、彼は弟子の下へと向かう。
彼の心の中には、失望よりも悲しみが溢れていた。エレノアが暗黒面に手を出している。誰よりも素直な彼女を知っているフィストーは、エレノアの現状に嘆くしかなかった。
弟子の部屋に着いてノックすると、エレノアは笑顔でドアを開けた。
フィストーはその笑顔に、虚しさを感じる。
「どうしたんですか?」
「エレノア、気分はどうだ?」
「変わりないですよ。」
「そうか。久しぶりに組み手をやらないか?」
「遠慮します。それに、マスターには新しい弟子がいるじゃないですか。」
フィストーはエレノアがパダワンを卒業してから、新しい弟子を迎えていた。新しいパダワンの名は、モン・カラマリのナダール・ヴェブ。
エレノアはその事実を述べ、フィストーの誘いを断る。
「ナダールに稽古をつけてあげてください。私はもうナイトなので、マスターの手を煩わせる気はありません。」
「分かった。ナダールの下へ行くとしよう。」
「はい。」
「……ネル」
背を向けるエレノアに、フィストーはようやく愛称で彼女を呼び止める。
振り向いた彼女は、また笑顔を見せる。
「何でしょう?」
「お前を信じている。」
「マスター」
そう言って踵を返すフィストーを、エレノアが呼び止めた。
「感謝します。」
「また会おう、ネル。」
フィストーは、今度こそ部屋を後にする。
去り行く師を見るエレノアは、恐ろしい程に無表情だった。先程の笑顔は見る影もなく、まるで別人だ。彼女の心にあるのは、嫌悪。
エレノアは、師の疑心に気付いていた。
そう、彼女は文字通り、過去の自分と決別していた。
巨大な闇は、エレノアを飲み込む。
これから起こることなど、誰も気付くことはなかった。
短いですが、次回よりエピソード2編に入ります。
ネルの本領は、エピソード2編とクローンウォーズ 編です笑