慌ててユグノに駆け寄ると、もう虫の息だった。
ただの人間であるユグノに、ライトニングは耐えられない。ユグノは死んでしまう。残っている生命エネルギーは僅か。少ないエネルギーでは、助けることはできない。
「ユグノ」
声をかける間もなく、ユグノは静かに息絶えた。
心臓の音が喧しくなり、頭の中が滅茶苦茶になりそうだ。
ユグノを死なせるつもりはなかった。私とシディアス卿の下らない戦いを終わらせようとしただけなのに。関係ないユグノまで巻き込んだ。
私がつまらない夢を見なければ、シディアス卿はここまで力を付けなかったんだ。
全ての元凶は私だ。
「エレノア………?」
リアクターの淵に立ち、私は下を見下ろす。
「ネル!」
アナキンの声にも応じず、赤いライトセーバーを分解してリアクターに落とす。
クリスタルも投げ落とし、私はようやく振り返った。
「エレノア!危ない!!」
ルークが私の手を取ろうとするけど、その手を躱してフォース・ライトニングで吹っ飛ばす。
突然のことに、フェラスは声を張り上げた。
「何をしているんだ!?」
「近寄らないで!!」
フェラスを拒絶し、私は殺気を撒き散らす。
考えていることを読んだのか、アナキンが苦しそうな表情をする。
シディアス卿は死んだ。シスは滅びたんだ。ダース・ルシルである私も、一緒に消えるべきだ。
「シスは存在すべきじゃない。」
「お前まで消えることはないだろ!!」
「ネル!!」
「ダース・ルシルは必ず戻ってくる。だから消えるべきなんだよ。」
それでも近付く2人に、ナイフを取り出す。
この距離だと、飛び降りてもアナキンとフェラスが私を助ける。仮に手が届かなくても、2人はテレキネシスを使う。どうしても、助けられる道しかない。
ルークも起き上がり、状況は更に複雑になった。
誰も私の話を聞いてくれない。
「君はジェダイだ!マスター・ヨーダがいない今、ネルがジェダイの、」
「やめてよ!!」
私がジェダイ?私はジェダイになりたくない。
どうしても、ジェダイ・オーダーを許せない。
「ジェダイを嫌うシスの私が、静かにできると思う?」
「………」
「それに再建される共和国は、私を野放しにはしない。」
今まで自由だったのは、反乱同盟軍にいたからだ。共和国が再建されて、今後の脅威に目を向けるとしたら、まず私に向けられる。共和国とジェダイと敵対して、止むを得ないとはいえ反乱同盟軍も敵に回した。
私は裏切りの代名詞と化したんだ。
誰も庇護できない。
「っ!!」
シールドが解除され、反乱軍の本格的な攻撃が始まっている。アナキン達は衝撃にバランスを崩しそうになり、私は両手で柵に掴まる。
「よせ!!」
基地の揺れに身を委ねると、フェラスが叫んで走ってくる。私は背中からリアクターに傾き、倒れていく。
「エレノア!!」
手を伸ばすフェラスに、私はナイフを心臓目掛けて飛ばした。
この光景は、ビジョンで何度も見ている。私がフェラスを殺すことも、ルークがアナキンを止めることも、予期している。
あとは、私が落ちるだけだ。
「させる、か……!」
「フェラス…!?」
フェラスは身を捻ってナイフを肩に受け、私の腕を掴む。それも、ナイフが刺さった方の腕で掴んだ。勢いを無くした私の身体は壁に叩き付けられ、その振動でフェラスも呻く。
「間に合った…!」
「私の予期と違う!!」
「そうだな。なら、これも違ったか?」
フェラスの後ろから、ステファニーが泣きながら手を伸ばしてくる。
「ステフ!?」
「ママおいてかないでっ!!」
大泣きしながら、ステファニーはフォースを使う。
「ママぁぁぁっ!!」
さすがにこれはみんな驚いた。フォースを使うなんて、そんな予兆もなかったのに。1年離れていたけど、フォースの覚醒には驚くばかりだ。
娘は弱々しくも、テレキネシスで私とフェラスをゆっくり引き上げる。床に近付いたところで、ルークとアナキンが私とフェラスを確保した。
ステファニーは集中力が力尽き、気を失って倒れる。
「ちょっと!離して!!」
男3人掛かりで後ろ手に錠をかけられ、玉座の間を連れ出される。ステファニーはルークに抱かれて、ユグノの遺体はアナキンが抱えた。
他のトルーパーや将校が逃げ出し、私達もシャトルに乗り込む。
「いい加減にしてよ!」
ルークが急いでエンジンを立ち上がる中、私はフォース・ライトニングで手錠を壊そうとする。
「その手錠、どこにあったと思う?」
「どうでもいい!あんたなんか殺してやる!!」
「前にも同じ台詞を言われたな。その手錠だが、皇帝の部屋にあったものだ。」
からかうアナキンは一転して、真剣な表情になる。
皇帝の部屋にあったということは、シディアス卿は本当に私を解放する気はなかったということだ。
「馬鹿馬鹿しい………」
私がそう呟いた後、第二デス・スターは爆発した。
これで、帝国は終わった。あとは、共和国を建て直すだけ。それは、モスマやレイア、反乱軍の幹部達の仕事だ。
私には、獄中生活が待っている。
「アニー、自分の立場を忘れたわけじゃないよね?あんたと私は、正反対の位置にいるんだよ。」
「何の話だ?」
この会話を理解できるのは、私とアナキンだけだ。
「ジェダイ・マスターなら、アナキンにマスターの称号を与えることができる。私がシス・マスターで………アナキンはジェダイ・マスターだよ。」
私はクラウド・シティで、アナキンを強引にジェダイ・マスターにした。私がシスになったら、近い未来ジェダイ・マスターがいなくなる。
そう、私が選んだのはジェダイの存続。
私が消えた後、再び現れたシスに対処できるように。
これが、私の選択だ。