元老院ビル、元はシャンドリラの議事堂だった建物に入り、真っ直ぐ議長オフィスへと向かう。
私の到着が知らされていたのか、難なく通してもらえた。
エレベーターに乗り込もうとすると、多くの視線を感じた。疑い、嫌悪、恐怖など、様々なものが伝わってくる。今の私にとっては何とも思わないけど、かなり鬱陶しい。
議長オフィスをノックすると、待たされることなくドアが開けられた。
「来てやったよ。」
「遥々お越しいただいて早々申し訳ないのですが、すぐにでも一緒に会議場へ来てください。事態は芳しくありません。」
モスマ議長の顔色が悪い。
会議場へ向かいながら、帝国軍の現状を問う。
5時間前、アンティリーズ隊員がアキヴァで帝国の緊急サミットを目撃したという。そこでは、女将校が私、ダース・ルシルの指示だと言っていたらしい。更に、新共和国に復讐するということまで言及していたようだった。
そんなこと、一言も指示していない。
元老院の復讐を疑う声は、ここから来ているみたいだ。
「もし私が指示してるなら、アンティリーズ隊員は死んでるからね。」
「………」
「その目はやめて。殺す気はないよ。」
「………エレノア、貴女は変わりました。」
会議場のドアの前で止まり、モスマ議長はそう言う。
「私は、今の貴女を信じています。」
「それなら見当違いだよ。」
ドアが開き、モスマ議長を先頭にリパルサーポッドへ乗る。
ポッドは上昇していき、会議場の中心で静止する。私の姿を見た議員達は騒めき、モスマ最高議長が静粛を呼びかける。
「皆さん静粛に!」
議会は静まり返り、静寂の中でモスマ議長が口を開く。
「特別議会の招集に応じていただき、感謝致します。エレノア、前へ。」
モスマ議長に促され、私は前へ出る。
「今回は、私の胸の内を明かす為に来た。第二デス・スターが破壊されて以来、私は関与していない。」
「嘘だ!捕虜はお前が戦犯だと言っているぞ!」
「貴方に発言権はありません。静粛に。」
反論した議員を、モスマ議長が諫める。
その議員は、私を殺そうとしたことが確認されている1人だった。モスマ議長はそれを知っていて、他の議員も知っている。もちろん、パドメも知っていることだ。
今回の特別議会では、私を殺そうとした議員達に発言はない。
私は議員を嘲笑する。
「あんた、馬鹿じゃないの?」
「何だと!?」
「私が帝国軍を指揮してたら、真っ先にあんた達議員に軍を送るから。」
「貴様…!無礼だぞ!!」
「私の復讐が怖いんでしょう?だから疑うんだよね?疑いたければ疑えばいい。殺されたくなければ、私をこれ以上刺激しないことだね。」
そう言ってやると、議員は口を噤む。
何もできないくせに、口だけは達者だ。口は災いの元なんて、本当にその通りだ。私に口出ししなければ、何もしないのに。
「新共和国に提案がある。」
「提案、ですか……?」
突然の申し出に、モスマ議長も困惑する。
「どれだけ口で無関係と言っても、あいつみたいな議員は安心できないだろうから。」
ようやくナブーの議員席を見上げると、パドメは私に頷く。私の考えを見透かして、これから言おうとしていることに同意してくれた。
エンドアでは口を聞いてくれなかったけど、彼女は今でも親友だ。
後でちゃんと向き合おう。
「今回だけ、私は積極的に新共和国に手を貸す。その代わり、防衛軍は私のいる星に一切近付かないで。」
「異議あり!それでは貴女が優位な話だ!」
「勘違いしないで。これは提案であって、取引でも、協定でもない。私が優位で当たり前。その気になれば、ここにいる者全員を殺せるんだよ。」
これでも譲歩している方だ。あまり下手に出たら、多くの議員が調子に乗る。最後には私が完全不利になってしまう。
だから遠慮はしない。
「まぁ、それでも不安だろうからちゃんと決めようと思う。今後私が新共和国に害を及ばせたら、ジェダイなり何なり送り込めばいい。私からは絶対に関わることはないから。これ以上は譲らない。是か否か、あんた達が大好きな投票で決めて。」
「ふざけるな!」
「何が投票だ!そんなもので安心できるか!」
当然、議員達は反発する。議員達からすれば、今すぐ私を監獄に送りたいだろう。彼らにとって、私は悪夢なのだから。
さて、そろそろ黙らせよう。
「黙れ。」
私の怒りの声に、会議場は静かになった。
「モスマ議長」
「エレノア・クラウドの自由は、一度元老院で認めています。今回は、帝国軍との無関係を明らかにする為の特別議会です。彼女の提案を受け入れるべきと考える者は、ポッドの点灯で示してください。」
モスマ議長の声に、穏健派の議員達のポッドがポツポツと点灯していく。
その中でも、真っ先に点灯したのはナブーのポッドだった。
「議長、発言よろしいでしょうか?」
「許可します。」
声を上げたのは、旧共和国時代に元々分離派だった議員だ。彼は私と面識があり、分離派の中でも発言力のある議員だ。彼は立ち上がり、私の方を見ながら話し始める。
「私は、彼女を知っています。自らの安全を差し出すと言っているのです。これは彼女なりの誠意なのに、皆はなぜ否定するのですか?我々は、民主主義に基づいて新共和国に加入したはずです。今や一般市民と化した彼女の譲歩を、どうして拒めるのですか?」
彼の発言に、点灯が増えていく。
最後まで点灯しなかったのは、私を暗殺しようとした議員達だけだ。
「私はエレノア・クラウドを支持します。」
「私も。」
「我々もだ!」
別のところで声が上がり始め、モスマ議長は号令をかけた。
「ほぼ全てのポッドが点灯されました。これより、エレノア・クラウドと新共和国に盟約が成立しました。両者、この盟約が破られた場合は権限を剥奪の上、強制的に監獄への収容が執行されます。」
つまり、何か起きるまで私は自由が保証されたということだ。
これで、“新共和国”との問題は解決した。
「ここにいる我々全員盟約の証人です。では、閉会致します。」
特別議会は終了し、議長のポッドは降下していく。
後は、帝国軍をどうにかするだけだ。名指しで私が指揮していると言われているなら、誰かが私の名前を利用している。若しくは、私のせいにしたいのかもしれない。
何にせよ、私を巻き込む気なら徹底的に潰してやる。
会議場を出ようとすると、モスマ議長が声をかけてくる。
「何か必要なことがあれば、何でも言ってください。今回の件を解決する為に、新共和国は全力を尽くします。」
「ありがとう、モスマ議長。」
会議場を出ながら、私とモスマ議長は議長オフィスへ向かう。
もしかしたら戦いになるかもしれない。戦いの可能性を危惧するなら、準備が必要だ。これは私1人の問題じゃない。
その時、よく知る声が私を呼び止めた。
「ネル!!」
振り向いたと同時に、私はパドメに抱き締められた。
私は勢いに負けて、されるがまま強く抱き締められる。パドメは顔を見せてくれず、突っ伏したままだった。何度声をかけても、全く動かない。
「パドメ………」
肩が湿ったのを感じて、パドメが泣いているのだと分かった。
パドメを悲しませてしまった。
「パドメ、ごめん………」
「すごく心配したのよ!」
「ごめんなさい……」
ようやく顔を上げてくれたパドメの顔は、安心したような表情をしていた。3人で議長オフィスに入った後、モスマ議長は私とパドメの2人にしてくれた。
もう二度と、パドメを悲しませたりしない。
ずっと信じてくれた、パドメの為に。