エンドアの戦いから、数えること1年。
ジャクーに帝国艦隊が集まり、いつでも戦える準備が整ったみたいだった。対する新共和国軍も、戦闘準備はできている。
しかし、叶うなら戦いを避ける選択肢が欲しい。
私は人払いをして、〈ホーム・ワン〉の広い食堂で正座する。
「────────」
チョークで床にオールド・タングを書き、私はその中心に座っている。シスの秘術を使う為にに、フォースに集中するからだ。
暗黒面のフォースに繋がり、シスの聖地であるモラバンドに意識を送る。
凍るような冷気が身を包み、術式から緑色の炎が燃え上がる。
『着いた。』
瞬きすると、私はモラバンドに立っていた。
モラバンドのシス寺院に踏み込み、暗黒面のフォースが強い空間へと入る。
『何者だ?』
突如、低い声が聴こえた。
『エレノア・クラウド』
『シスの名があるはずだ。さぁ、名乗れ。』
黒い靄が辺りを包み込み、私の周囲を飛び交う。
『ダース・ルシル。シスの怨霊達よ、力を寄越せ。』
『何だと……?』
『私に力を寄越せ!!』
フォース・ドレインを使い、シスの怨霊達の力に手を伸ばす。
『っ……』
心臓に痛みを感じるけど、気にしている暇はない。
ラックスは、何かを狙っている。ジャクーに帝国軍と新共和国軍が集まるのに、何か起きないはずはない。これから起こる大惨事を知るには、私1人の力では無理だ。
大惨事を予期する為には、暗黒面の強い力が必要だ。
『もう少し……!』
奪い取った力で、ジャクーのフォースと深く繋がる。
その瞬間、多くの情報が私の中に流れ込んできて、いくつものヴィジョンが一気に見えた。一度に全てを認識できず、途切れ途切れに景色が流れていくようだった。
感覚もリアルになっていき、ジャクーの大惨事の悲鳴に呑まれそうになる。
『ダース・ルシル』
どこかで聴いたことがある声が、シスの私を呼ぶ。
『こっちだ。』
今度は嗄れた声が聴こえる。
2人の声に導かれ、声のする方へ歩く。何もない空間だけど、歩き続けて、辿り着いたのはどこかの地下施設だった。
私はこの施設を知っている。
皇帝は銀河を支配した後、外縁部まで支配域を広げた。次に手を出したのは、未知領域だった。その為の施設が、観測所だ。
皇帝が死んで使命を失ったけど、施設はそのまま残っている。
『これが観測所………』
皇帝の統治に興味がなかった私は、一度も観測所に入ったことがない。
だけど、今は観測所がどんなものか分かる。
観測所は地中深く掘られたところにある。もしこの施設が破壊されれば、惑星ジャクーは崩壊する。その結果、新共和国軍も帝国軍も壊滅する。正に共倒れだ。
これから起こるのは、想像を絶する大惨事だ。
『抜かりないな、ほんと。』
もしかしたら、皇帝はラックスの行動も予期していたのかもしれない。抜け目のない人だ。普通は、自分の死後まで予期しない。
私の狙いは皇帝の死までだったから、ある意味では皇帝の方が上手だ。
“ダース・シディアス”は私をシスの奇才と呼んだけど、今となっては皮肉にしか聞こえない。
『エレノア』
嗄れた声に案内され、私は先へ進む。
次に見えたのは、帝国軍TIEファイターの分隊。それから、レイ・スローネ提督だった。今の帝国軍を表立って指揮しているのが、レイ・スローネだ。彼女が、私の指示だと明言したという。
そのスローネが、どう関係しているのか分からない。
『ネル!!!』
その声と共に肩を引かれ、私は食堂の給湯器に背中をぶつけて現実に戻ってきた。
床で呻いていると、パドメが私に駆け寄ってくる。
「ネル!!」
「大丈夫。それより………」
まだ見たいものがあったのに、現実に戻されてしまった。
パドメの視線の先を見ると、アナキンが倒れていた。
「アニー!?」
「ネル…っ……馬鹿なのか?」
「はぁ!?」
それは私の台詞だ!!
シスの秘術を使っている時に手を出してくるなんて、馬鹿はアナキンだ。
「その言葉そのまま返してやる!なんで邪魔したの!?シスの秘術を使ってたのに!」
「ネル、今の君がどういう状態か分かっているのか?」
「どういう状態かだって?シスの私がよく分かってるよ!」
「いいや分かってない!もう少しで死ぬところだったんだぞ!」
「そんなわけないでしょ!無茶なんかしてないし!」
睨み合っていると、パドメが溜め息を吐いて間に入ってくる。
どうして辛そうな顔をしているのか、理由が分からない。
「ネル、本当よ。」
「パドメ……」
「モールとティラナス卿が、貴女を助けたのよ。」
そう言われて、闇の中で聴いた声を思い出す。あれは、モールとティラナスだったのか。私は、迷わないように手を引かれていたらしい。
彼らは、私の味方だ。いや、私達シスに敵も味方もない。“ダース・シディアス”という共通の敵がいるから、手を貸してくれるだけだ。
感謝も恩もない。
「2人は私を助けたわけじゃない。」
「けど、」
「私達シスに信用はあっても、信頼はないの。彼らはシディアス卿の企みを阻止する為に、手を貸したに過ぎない。」
「そうだ。パドメ、ネルの言う通りだ。だがネル、君はもう少し自分の足元を見てくれ。」
アナキンは私にブランデーを渡すと、背を向けて出て行く。パドメがそれを追って、私は1人になった。
文字通り足元を見ると、私の身体は傷だらけだった。
パドメが悲しそうな顔をしていたのが、理由が分かった。
私はまた、間違ったことをしてしまった。