ルールは破る為にある
ナブーの侵略事件から、約10年の月日が経った。
私は順調に、ジェダイの道を歩いている。
近頃、共和国では武力的な争いが起ころうとしていた。共和国の体裁に不満を持つ派閥が、分離主義派と称して共和国から離れていく。それを必死に食い止めようとしているのが、パドメだった。
ナイトになった後、パドメがアミダラ女王だったとアナキンから教えられた。
つまり、私はアミダラ“議員”と友達だということになる。
そしてジェダイ・オーダーも、各地の問題に対処が追い付いていなかった。
もし分離派が武力を行使してきたら、戦争は免れない。その為、元老院では共和国軍設立の声が上がっていた。その最もたる原因は、ジェダイ・オーダーにもある。
ジェダイは兵士じゃない。平和の守護者だ。兵士ではないから、何もできないんだ。
私も各地の任務に駆り出され、共和国に貢献した。
だけど、フォースの流れが変わりそうな気がする。
「ネル!」
回廊で、アナキンに呼び止められた。
10年程経ち、アナキンは逞しくなった。5年過ぎた頃には身長も越され、8年過ぎたら組み手で先手を取られることも増えた。“選ばれし者”は、確実に成長している。もう10年したら、私なんか足元に及ばなくなる。
置いていかれるようで、少し悔しい。
「アニー、久しぶり。これから任務?」
「ああ。10年ぶりにパド……アミダラ議員に会うんだ。」
周りの目を気にしたのか、アニーは言い直す。
少し前、アミダラ議員のシャトルが爆破され、パドメの影武者が亡くなったという。パドメはパイロットに扮していた為、運良く無傷だった。事態を重く見たパルパティーン最高議長は、オビ=ワンとアナキンにパドメを護衛するように命じた。
「ネルも任務なのか?」
「んー、任務ではないかなぁ。」
「え?」
「友達に会いに行くんだ。」
「友達?」
「うん、友達。」
ジェダイだからと言って、友達がいないわけじゃない。
パドメやアニー以外に、他に数人友達がいても問題ないよね。
「随分楽しそうだな。」
「まぁね。じゃあ、またね。」
「ネルも気を付けて。」
「うん。アニーも頑張って。」
アナキンと別れて、私はマントのフードを深く被ってアンダーワールドへ向かう。
気配を消して、密会相手が待つスラム街へと入った。壁を背に寄り掛かり、静かに待つ。時折ならず者達が声をかけようとしてくるが、殺気を見せると逃げていった。
待ち合わせに着いて数分後、遣いのプロトコル・ドロイドが現れる。
なぜドロイドと待ち合わせたかと言えば、直接会うとフォースの流れが変わってしまう。流れに逆らわないように、私はドロイドを介してやりとりしている。これは、“相手”の案だった。
「大変お待たせしました。」
「特別な指示は?」
「特にありません。ですが、一つだけ。」
「何?」
「まだその時ではない、と。」
その一言で、何をするべきか分かった。
10年続いた密会も、これまでだ。長い道のりだった。そろそろ流れが変わる。
「ドロイド」
「はい、何でしょう?」
「“主”に承知した、と。それだけ伝えて。」
「畏まりました。」
それだけ言って、私はスラム街を後にする。
次に向かったのは、アンダーワールドの中階層だった。
目的の建物に入り、数あるドアの内の一つをノックする。住人はすぐに出てきて、私を中に招き入れた。出てきたのは賞金稼ぎのウィークウェイ、オラン・クルム。
オランは、私の“恋人”だ。
彼は、私がジェダイだと知っている。
「遅かったな。」
「ジェダイの目を誤魔化すのは大変なんだよ。ごめんね?」
キスをすれば、オランの心が穏やかになったのが分かった。
今更だけど、愛情を抱くことは掟で禁じられている。でも、私はオランと恋人関係を築いている。掟破りなんて、今に始まったことじゃない。
「いつになったら動くんだ?」
「まだ早い。それに、オランと別れなきゃいけない。」
「何だと!?」
オランは、分離主義派に手を貸す賞金稼ぎだ。分離派は、彼を切りたがっている。ところがオランは日に日に態度が大きくなり、我が物顔で仕事をするようになった。
もう私でも助けられない。
このままでは、私も巻き込まれる。
彼との関係も、薄っぺらいものだったと分かった。
「俺達の愛はそんなものじゃねぇだろ!」
「オラン、ここで引き下がって。充分楽しんだでしょ?」
「ふざけるな!!」
ブラスター・ピストルを取り出し、オランは迷わず撃ってくる。
彼も、私の存在はそれだけの価値だったということだ。私を心から愛しているなら、撃ちはしない。あるいは、私だけが冷めていたのかもしれない。恋人を撃つことができる理由は、その2択だ。
どちらにせよ、私は彼を受け入れることができなくなった。
撃たれたレーザー弾をライトセーバーで偏向させ、弾かれた弾は全てオランに返った。致命傷を負った彼は仰向けに倒れ、息絶え絶えに私を見上げる。苦しそうにしながらも、オランは恨み言を吐く。
彼の頬に触れると、睨み上げられた。
「て…てめぇ……!呪って…や…る……!」
「ごめんね。でも、これが私の決断だから。」
「エレ…ノア………」
オランは、息絶える。
恋人が目の前で死んだというのに、私は何も感じなかった。答えは、私の気持ちが冷めていたからだ。心に残っていたのは、恋愛に対する失望。
涙すら出なかった。
焦ることはない。オランとは相性が悪かっただけ。本当に相性の良い恋人は、きっと現れる。
愛って難しい。
※オラン・クルムは完全なるオリキャラです。