一方その頃………
〈ラダス〉はファースト・オーダーに攻撃され、辛うじて生き延びたレイアが昏睡状態に陥っていた。
艦隊に残ったステファニーは、レジスタンス司令部と共に脱出作戦を練っていた。しかしレイアを含めた司令部と、ステファニー以外は作戦を知らず、エドワードには知らされなかった。
やがてエドワードは、逃げ続けるレジスタンスに限界を感じ始める。
その最中、フィンがローズ・ティコと船を抜け出し、エドワードは更に憤りを覚えた。
「………もう待てない。」
エドワードもインターセプターに乗ろうとするが、ステファニーがブラスターで機を壊してまで止める。
「ステフ!!!」
姉の暴挙に、エドワードは激昂する。
「行かせないよ。」
「なんでだよ!このまま黙って見てろって言うのか!?」
「頭を冷やして。あんた1人行ったところで、多勢に無勢。ファースト・オーダーに一矢報いることすらできないよ。」
「じゃあ何か作戦はあるのか?ないだろ!逃げるだけ!それが作戦か!?」
「あんたは黙って従えばいいの。」
ステファニーが後ろを向くと、エドワードはヘルメットを投げ付けた。ステファニーの真横を通り、ヘルメットはコンテナに当たって床に落ちる。彼女はそれを見下ろし、静かに弟を見据える。
「ママが戦いに手を出すなって言ったの。」
「どういうことだ?」
「知らない。」
「知らないって、」
「エディ、提案があるの。」
ステファニーは、弟に危険な作戦を持ち掛ける。
姉の提案に、エドワードは顔を青ざめさせた。
「冗談だろ……銀河を壊す気か!?」
「平気だよ。あ、ママには言わないでよ。ママは教えてくれなかったものだから。」
「尚更ダメってことだろ!!」
「ママは何か隠してる。ママならスノークを殺せるのに、どうして殺さないのか理解できない。」
「殺しはやめたんだろ?」
「いいから行くよ!ほら!こっち来て!!」
ステファニーはエドワードを強引に連れていき、人気のないエリアへと向かう。
彼女は見様見真似で、シスの秘術の魔法陣を描く。ステファニーは反対側に弟を座らせ、彼女は向かい合うように座った。それから、2人は瞑想を始める。
「この術は何の意味があるんだ?」
「過去を覗くの。」
「はぁ!?母さんを疑うのか!?」
「集中して。」
「っ…!!」
ステファニーの声が、エドワードの中で木霊する。
やがて、2人の意識はどこかの寺院に辿り着いた。
その寺院は破壊され、木造部は燃え上がっている。B1バトル・ドロイドやB2バトル・ドロイドが辺りに倒れていて、寺院の前にはマントを着た2人の男女がいた。女の方は倒れていて、男は瀕死の女を抱き締めている。
ステファニーとエドワードは、2人の顔に見覚えがあった。
なぜなら、2人は、
『エレノア!目を開けろ!意識を保て!エレノア!!』
ステファニーとエドワードの、父と母だった。
エレノアは腹部をナイフで刺され、呼吸も弱くなっていた。刺したのは、ファースト・オーダーの最高指導者、スノークだ。スノークはフォースでナイフを操り、エレノアの背後から刺していた。彼女の腹部はナイフで貫通し、穴が空いている。
『ステフ…!』
『黙って。』
エドワードは、シスであるエレノアが倒れるはずがないと思っていた。だが、今回はフェラスがいる。愛する夫が枷となり、エレノアに死の危機が襲ったのだ。
フェラスはエレノアを起こそうと、必死に呼び掛ける。
『小賢しい奴め。“ダース・ルシル”の時代は終わったのだ。フェラス・オリン、無駄な足掻きだ。クラウドは二度と目覚めぬ。』
『黙れ…!』
フェラスはスノークに怒鳴り返し、エレノアを呼び続ける。
やがて、エレノアは弱々しいながらも薄っすらと口を開いた。
『フェ……ラス……………』
『エレノア!』
『何…!?』
『俺の生命エネルギーを使え!!』
フェラスの言葉に、エレノアの口は無音で“NO”と言う。
エレノアは、必要な時でなければフォース・ドレインは使わないと決めていた。止むなく使う場合もあったが、彼女はほとんど使わなかった。家族の生命エネルギーなど、論外だ。
だが、このままではエレノアは死ぬ。
『させるか!始末しろ!!』
ストーム・トルーパーは、エレノアとフェラスにブラスターを向ける。
『エレノア!俺とお前2人が死ねば、“奴”の思う壺だ!お前が生きて、全てを終わらせるんだ!エレノア!!』
『やめ……て………!』
フェラスはエレノアを守るように抱き締め、スノークに背を向けた。
その瞬間、フェラスの生命エネルギーのほとんどをエレノアが吸い取り、彼女は古代シス語を吐く。
『《苦しみ、足掻き、後悔しろ!》お前ら全員殺してやるっ!!!』
そう叫び、エレノアはフェラスを寝かせて立ち上がった。
異変を察知したスノークは、トルーパー数人とウォーカーの中に逃げ込む。
エレノアはシスの秘術で毒煙を作り、ファースト・オーダーに向けて拡大させる。
取り残されたストーム・トルーパーはシスの毒煙を吸い込み、もがき苦しんで倒れていく。辺りは断末魔が溢れ、ウォーカーは撤退していく。生き残ったトルーパーや、辛うじて生き延びたトルーパーも、スノークの後を追うように逃げていった。
残されたエレノアは膝をつき、彼女は涙を流す。
そして、倒れたフェラスの胸に踞り、エレノアは何度も謝り続ける。
『フェラス…ごめん……私のせいで……ごめん………!』
『お前のせいじゃない……』
『フェラス……』
『ネル…復讐でスノークを殺すな…いい……な………』
フェラスは息絶え、エレノアは声にならない嗚咽を漏らす。
悲しみに沈む母を見た2人は、とてつもない喪失感に襲われた。何より、エレノアは罪悪感と孤独感に呑まれつつある。ステファニーとエドワードは、それを感じていた。
思わぬ真実を知った2人は、胸を締め付けられるような思いだった。
エドワードは、姉が暗黒面に呑まれていくのを感じる。
『ダメだ!ステフ!』
エドワードがステファニーの意識を捉えた瞬間、2人は現実に戻ってきた。
しかし、ステファニーはすぐに立ち上がって部屋を出て行こうとする。
「ステフ!」
「ママがパパを殺したんだよ!!」
「さっきの光景を思い出せよ!父さんが母さんにやらせたんだ!誰も悪くない!」
「なんで!?ママは側にいないんだよ!私達の存在は必要ないの!スノークの言う通りでしょ!?」
「スノークだと!?」
エドワードは姉の言葉に、腕を掴んで引き留める。
「スノークの言葉を聞くのか!?」
「だってそうでしょ!いつもいつも!私はママが必要なのに、ママには私達が必要ないんだよ!」
「母さんを悲しませるなよ!俺達のことはちゃんと愛してくれているだろ!」
「私は昔から、ママとパパを困らせてばかりだった。でも、あんたは違う。エディは良い子に育った。もう置いていかれるのはウンザリなの!!!」
ステファニーはそう言って部屋を出て行く。
エドワードは、去り行く姉を心配そうに見送った。
誰が見ても、エレノアはステファニーとエドワードを愛している。今この瞬間も、エレノアは我が子の為に行動している。それは、レイアも同じだ。
全てを得ることはできない。
エレノアはそれを分かっているから、自らの良心を捨てた。
復讐の序章は、まだ始まったばかりだ。