Aウィングに戻ると、レジスタンス艦隊からメッセージが入っていた。
これ以上の時間稼ぎは不可能。もうすぐ燃料が切れ、ファースト・オーダーに追い付かれることだろう。そうメッセージが残されていた。
送り主は、最後に謝罪の言葉を述べていた。
だけど、時間稼ぎはもう充分だ。私がやるべきことは終わった。あとは時を待つだけ。
気が付くと天気が崩れ、私は雨の中、最低限のメンテナンスをする。
「エレノア………?」
荷支度をしていたら、レイが私に声をかけてきた。
「艦隊に戻るの?」
「戻るよ。レイ、どうしたの?」
レイの様子がおかしい。無意識に私の心を読んだのか、苦しそうな表情をする。レイの悲しみが伝わってくるけど、私の考えは変わることはない。
「………レジスタンスを助ける気はないのね。」
「………」
私の考えに気付いてしまったらしい。
レイは優しいから、私の本音を認めたくないだろう。
「どうして……?」
「どうして?私の目的を知ってるでしょ?」
私の目的はスノークを殺すことで、レジスタンスを助けることじゃない。
レジスタンスを助けるつもりなら、私はここにいない。
「自分さえ良ければいいの?」
「私と、子供達の為だよ。」
「違うわ。貴女はステファニーやエディを理由にしているだけよ。マスター・オリンが帰ってこないと分かってても、結局自分の憎しみを晴らしたいだけなのよ。」
「レイ、」
「エディとステファニーだけ助けたとして、レイアはどうなるの?チューイは?レイアは今もレジスタンスで戦っているわ。」
雨が強くなり、風も強くなってくる。
まるで、レイの怒りを現しているみたいだった。
彼女の感情に、思わず心が揺らいでしまった。レイの言っていることは正論だ。でも認めてしまったら、私は復讐を果たせなくなる。
「聞いてくれないなら、私はスノークのところに行くわ。」
「は…?」
「ベンに聞いたわ。貴女は卑怯よ。ベンを弟子にして、スノークと戦わせようとしている。そうはさせないわ。」
「私の邪魔をする気?」
「先に卑怯な手を使ったのは貴女よ、エレノア。」
そう言って、レイは背を向ける。
私はフォースを使い、レイのクォータースタッフを奪い取った。そのクォータースタッフで彼女の足を払い、気絶させようとする。しかしそれは受け止められ、レイは自分の腕を支柱にクォータースタッフで私を殴り飛ばした。
バランスを崩され、レイが馬乗りになり胸倉を掴んでくる。
「どこまで自分勝手なの!?貴女が変わらないように、私も変わらないわ!マスター・オリンではなくて、貴女が殺されたらもっと平和だったのに!!」
「言われなくても分かってる!誰よりも、私が私自身を憎んでる!この私がフェラスを殺したんだから!!」
「そんな……」
「これで満足!?そんなにベンを助けたいなら、早く行きなよ!全部を守ろうなんて、無理だと思い知ればいい!」
レイを突き飛ばし、私はAウィングに乗り込む。すぐにエンジンを立ち上げ、座標を入力する。突き飛ばしたレイは、私を止めようとはしなかった。
フェラスを殺したことを、私は初めて他人に教えた。
どうしようもなかった。フェラスがそうさせたんだ。フェラスが、私を生き延びさせたんだ。
殺したくて殺したんじゃない。
元凶はスノークだけど、私自身を許せない。
あのまま死ねば良かったんだ。
「っ……」
ハイパースペースに入った後、無言で脇にあるブルーワインのボトルを殴る。
ガラスの破片が手の甲に刺さり、傷口から血が流れる。鉄の臭いとアルコールの臭いが混合して吐き気がした。
吐き気に思わず頭を抱え、何度もスノークへの憎しみを心の中で繰り返した。
スノークを殺すまで、私の復讐は終わらない。
私の予期通りに進んでいるのに、なぜか胸が苦しい。
ハイパースペースを出ると、〈ラダス〉は追撃され続けていた。
私が戻ってきたことをスノークが感知したのか、〈スプレマシー〉はAウィングを撃ってこなかった。
「エレノア…!?」
着艦すると、レイアが私を見て驚きの声を上げる。
その時、誰かが走ってきて赤いライトセーバーで切りかかってきた。
「ステフ!やめなさい!」
レイアの制止を聞かず、ステファニーは私に殺意を向ける。
私はライトセーバーを使わず、テレキネシスで娘の刃を止めた。
「ママの臆病者!絶対に許さない!!」
「ステフ!!」
「レイア、止めなくていいよ。」
「けど、」
「私の過去を覗いたんだね。」
「ママのせいで人生最悪だよ!大っ嫌い!!」
昔の私を見ているようだった。私が皇帝に影響されたように、ステファニーもスノークに影響を受けている。これは私のせいだ。
そんなステファニーが私の過去を見れば、軽蔑するに決まってる。
「ステフ、振り回してごめんね。でも、私はあんたとエディを愛してる。それだけは忘れないで。」
「ママ………?」
娘の額にキスをして、レイアを除くレジスタンス全員が輸送船に乗り込むのを見届ける。
ステファニーも輸送船に乗せて、私はレイアとホルド提督に向き合う。
「時間稼ぎありがとう。」
「ルシル卿」
ホルド提督は、嫌悪の目を向けながら口を開く。
「レイアが貴女を信じているので従いましたが、私は貴女を信用していません。」
「それでいいよ。シスに信頼関係はないから。」
「そうだとしても、私は“エレノア・クラウド”も信用してません。きっと、貴女の最期は孤独でしょう。貴女にお似合いの人生だわ。」
ホルド提督の判断は間違っていない。私は信用に値しない人間だ。シスだからじゃない。私はずるい人間だからだ。
「私がどういう人間か、私が一番知ってる。だから償う気も、悔いる気もない。私はただ、進むだけ。ありのままの私でね。」
良心の呵責は、善人がすることだ。私は善人じゃない。なぜなら、私に良心はないから。
「エレノア、そろそろ………」
「ホルド提督、あんたも輸送船へ。」
「お断りします。誰が〈ラダス〉を動かすのですか?」
「………」
これでは計画が違う。
本来なら、私が〈ラダス〉を操縦する計画なのに。
「………ありがとう。」
「言ったはずです。貴女を信用できない、と。」
「フォースと共にあらんことを、ホルド提督。」
「フォースと共に、ルシル卿。」
私は輸送船に乗り込まず、レイア達を見送る。
輸送船は惑星クレイトへ降りていき、私は窓からそれを見下ろした。
ホルド提督はブリッジへ向かい、私はAウィングに積んであるエピを下ろす。
「起きて、エピ。」
スイッチを入れると、エピは電源が入って立ち上がった。
「エレノア様!ひどいです!」
「エピ、最後の仕事だよ。」
「え……?」
エピは戸惑いながらも、ドロイドらしく私の命令を待つ。
その瞬間、スノークが死んだのを感じた。
目的は果たされた。あとは、エピに仕事をしてもらうだけ。これで、私は安心して消えることができる。
復讐劇は、もうお終い。