遥か昔………
1人の少女が、ノートランのジェダイに優しく諭されていた。
「ネル、掟を忘れるな。」
「では、ジェダイをやめることは……?」
「不可能ではない。だが一人になれば、苦痛がお前を襲うだろう。」
夢見る少女に、ジェダイ、キット・フィストーは心配そうに声をかける。
「エレノア・クラウド、私はお前が心配だ。」
「分かってますよ、マスター。掟に従います。」
結婚式では、新婦と新郎が幸せそうに笑っていた。人々は2人を祝福して、拍手が鳴り響く。少女は頷きながらも、羨ましそうに結婚式を見る。
「ネル、行くぞ。」
「はーい。」
結婚式場を離れ、2人はシャトルに乗り込む。
2人は格納庫で訓練を始め、鍛練に興味のないエレノアは集中力が欠けてしまう。
「集中力が足りないぞ、ネル。」
「だって、楽しくないんですもん。」
「物は考え様だ。楽しくないのは、お前が娯楽を求めるからだ。執着すれば、暗黒面に呑まれてしまう。」
「はい、マスター。」
鍛練が終わる頃、シャトルはハイパースペースを抜け、コルサントの軌道へ飛び出していた。
ジェダイ聖堂に戻ったフィストーは最高評議会へ、エレノアは回廊を歩くオビ=ワンを追いかける。
「ねぇオビ=ワン、マンダロアに行くんでしょ?」
「ああ。」
「私も行きたい。」
オビ=ワンはこれから、惑星マンダロアのサティーン・クライズの護衛任務に向かうところだった。マスターであるクワイ=ガン・ジンの待つシャトルに乗ろうと、格納庫へ向かっていた。
「ダメだ。」
「なんでよ!」
当然、オビ=ワンは同行を拒んだ。
怒られるのはオビ=ワン本人だ。尊敬するマスターを怒らせたくはない。オビ=ワンはそう思い、溜め息を吐く。
「なら聞くが、評議会の指示か?」
「そんなわけないじゃん。」
「じゃあダメだ。」
「えー、いいじゃん!お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い、」
「あーもう分かったよ!勝手にしろ!その代わり、マスター・クワイ=ガンには見つかるなよ!私は無関係だからな!」
半ば投げやりになりながら、オビ=ワンは同行を許してしまった。
エレノアは喜び、隙を狙ってシャトルへと乗り込んでいく。このことを知っているのは、オビ=ワンのみ。クワイ=ガンはパダワンが密航しているとは知らず、そのままマンダロアへ向かった。
マンダロアに着き、クワイ=ガン達は任務へ行き、エレノアはひっそりと船を降りる。
彼女がまず向かったのは、教会だった。
「………」
しかし、エレノアは教会を訪れ、憧れと共に絶望もした。
彼女は憧れたが、自らの心の隅に冷たいものを感じていた。それは、暗黒面だった。エレノアはマスターの言葉を思い出し、叶わないものだと涙を落とす。
そこへ参列者であるムウンの男が通りかかり、エレノアにどうしたのかと声をかけた。
「なぜ泣いている?」
「何でも…ないです……」
「マンダロリアンではないな。服装を見る限り、半人前ジェダイと言ったところか。仲間に置いていかれたか?」
「違う。密航したの……」
エレノアがそう答えると、ムウンの男は笑う。
「危機感がまるでない!世間を知らぬ半人前ジェダイが、1人でどうにかなると思ったか?」
「だって……」
「嘆かわしい。子供は子供らしくいれば良いのだ。来い、普通の暮らしを見せてやろう。」
ムウンの男は、彼女に手を差し出す。エレノアはその手を取り、男に手を引かれて市街地へ入った。
「泣き虫、名前は?」
「泣き虫はやめて。名前はエレノア・クラウド。おじさんは?」
“おじさん”と言われ、男は少しムッとする。
「失礼な小娘だな。ヒーゴだ。」
「ラストネームは?」
「教えられん。」
「ふこーへー!」
「現実は甘くないぞ。」
エレノアもヒーゴと同じように、ムッとした顔になる。
だがジェダイの掟に縛られる自分と、そうじゃないヒーゴを比べて、彼女は納得する。
「そりゃそーか。」
「金はあるか?」
「持ってると思う?」
「ジェダイは金を持たせんのか。」
呆れつつ、ヒーゴは奢ってやるとエレノアを食堂へ連れていく。
その様子を、赤髪の男が離れたところから見ていた。彼は少女が暗黒面を燻らせていることに気付き、目を離せなかった。同時に、様々な考えが脳裏を過る。
その後、エレノアはヒーゴと逸れた際に、任務を終えたクワイ=ガンに見つかり、ジェダイ聖堂へ連れ戻された。
エレノアはヒーゴの素性を知ることなく、やがて彼のことやマンダロアでのことは完全に忘れた。“ヒーゴ・ダマスク”、もとい“ダース・プレイガス”は、そんな未熟なジェダイの未来を楽しみに、殺すことをやめたのだった。
全て“ダース・ルシル”の思惑だと、誰も知る由はなかった。