命は尽き、私はミディ=クロリアンを通じてエクセゴルへ訪れた。
私は今、生と死の狭間にいる。ベンに撃たれたけど、生き続けることもなく、完全に死んだわけでもない。私は、怒りと憎しみを糧に甦った亡霊だ。
肉体は、既に死んでいる。
今の私は、自らの屍を支配しているだけだ。
『〜〜♪』
古代シス語を口遊み、シディアス卿がいるラボへ向かう。
『マスター、深淵の底から舞い戻ってきましたよ。』
師弟の絆を使い、私はかつてのシス・マスターに話しかける。
シス・エターナルの信奉者達がブラスターを撃ってくるが、私は両手を上げて武器を取り上げた。更にシスの秘術を使い、信奉者達を地獄の炎で捕らえ、全員焼き殺す。丸焦げになった者達を落として、私はラボの中へと進んだ。
出迎えたのは、機械に繋がれたシディアス卿だった。
「ネル……!」
『懐かしいですね、“議長”。』
「余は銀河帝国の皇帝!パルパティーンぞ!」
『昔の話だよね。』
丁寧な口調をやめて、私は嘲笑った。
『忘れたとは言わせない。“ここ”は私の為に作ったもの。この楽園と、あの玉座は私のものだよ。』
雷鳴が響き、闇の玉座に光が当たった。
私は夢の通りに、闇の玉座に座る。その所作が気に入らないシディアス卿は、私を睨む。だが、それは私の反抗心を強くさせるだけ。
「自らの命を捨ててまで、余を葬りたいのか!?」
『私の基盤を作ったのは貴方ですよ、マスター。』
「戯言を…!其方は余だけではなく、レジスタンスも敵に回すのだぞ!」
『敵に回すも何も、最初からレジスタンスと手を組んだつもりはない。』
本当のことは言わない。フェラスを奪ったシディアス卿に、そこまで教えてやる義理もない。言ったところで、シディアス卿に私の気持ちは理解できないだろう。
『あ、そーだ。懐かしい人に会いたくない?』
「何だと……?」
手を叩くと、とあるシス卿が私の斜め後ろに立った。
『ほら、懐かしいでしょ?』
「ダース・プレイガス……!」
『愚かな弟子よ…シスの奇才を敵に回したのが運の尽きだ。ダース・ルシルを手放さなければ、銀河はシスが支配していたというのに……』
「ネルっ!!!」
『まだまだこれからだよ。』
私とシディアス卿の周りに、次々とシス卿の亡霊が現れる。
シスの誰もが、シディアス卿を許していない。いや、許す気はない。この私さえも。
「っ…!!」
『シディアス卿、ユグノ・ソールを知ってる?』
「何……?」
『憶えてないよね。息子であるクローンの名前すら知らないもんね?』
「今何と言った………?」
思った通り、シディアス卿は私の言葉に反応した。
クローンの息子とは、シディアス卿が乗り移るはずだった肉体だ。だけど、シディアス卿の強い力に耐えられる肉体ではなくて、彼は失敗作の烙印を押された。
失敗作とされた彼はその後、出会った女性と結ばれて、娘であるレイを授かった。
『貴方が私をよく知るように、私も貴方のことはよく知ってる。なぜ私がシスの道に留まったと思う?』
「フェラス・オリンの為だろう?」
『やっぱり分かってない。これは私とフェラスで決めたこと。“あんた”には理解できない。』
私がシスの道に留まったのは、子供達を守る為だ。その上でどうすればいいのか、考えに考えた結果が、生への執着を捨てること。シディアス卿は、生へ執着する私しか知らない。
『私、気付いたんだよね。なんで私が生き残って、ユグノが死ぬことになったのか。答えは簡単だったよ。』
「馬鹿な真似を、」
『ミディ=クロリアンを操作できるのは、あんただけじゃない。』
私に応えるように、ダース・プレイガスは不気味に笑う。それだけで、シディアス卿は怒りを抱いた。これで、疑念が確信に変わった。
『噂をすれば、レイが来たよ。』
エクセゴルの大気圏にレイがレッド5に乗ってきたのを感じた。それと同時に、ベンの気配も感じた。更に、レイを追ってレジスタンスもエクセゴルに来るだろう。
これは、私とシディアス卿のゲームだ。
例えレイといえど、横槍は困る。
『さて、始めよう。レイや子供達に邪魔される前にね。』
「ネル……!!」
シディアス卿が信奉者に指示して、私を取り囲む。
刹那、間髪入れずに彼らはブラスターを撃ってきた。
「殺せ!!!」
シディアス卿の焦った声が聴こえる。
レーザー弾は私の身体をすり抜け、信奉者達は同士討ちする。それを見た他の信奉者達は、今度はエレクトロスタッフで襲いかかってきた。当然、私は反撃をする。
エレクトロスタッフをフォースで捕らえ、一番近い信奉者の首を掴む。
『答えろ。私に従うか、逆らうか。』
「い…嫌だ!!」
『そう、残念。』
考える間もなく、私はシスの秘術を使った。掴んだ首から毒が侵食していき、信奉者の身体は徐々に腐っていく。完全に腐敗して、私はようやくその死体から手を離した。
「エレノア!!」
その声に、私はゆっくり振り向く。
ラボに辿り着いたレイは、息を切らせていた。レイは私の姿を見て、絶句する。そんな彼女に、私は笑みを浮かべた。
『エクセゴルへようこそ、レイ。』
私の囁きに、レイは一筋の涙を流す。
レイやベン、ステファニーやエドワードは可愛い。大切な存在だ。だからこそ、突き放さないといけない。堕ちるのは、私だけでいい。
暗闇は怖いけど、静かで落ち着くんだ。
フェラスという温もりさえあれば、私は暗闇に留まり続ける。