レイの心が泣いている。
レイからとてつもない悲しみを感じる。なぜ悲しむのか理由は分かっているけど、何もしてあげられない。死を選んだのは私で、悲しみを乗り越えるべきはレイ本人なのだから。
優しい言葉もかけてやれない。
大丈夫、そう言ってあげたいけど、私は彼女を突き放さなければならない。
「エレノア、どうして……?」
『未熟なのに、その理由を問うの?』
「やめて……」
『フォースと調和できないくせに。』
「やめて!!」
本心じゃない。
でもこうしなければ、レイは先へ進めない。
「やっぱり貴女は自分勝手よ!」
『自分の為に行動して何が悪いの?』
「だったら、なんで私を鍛えたの?私を信頼してたからじゃないの?」
その言葉に、シディアス卿は笑う。
「レイよ、お前は勘違いをしている。」
「勘違い……?」
「余やネルに、信頼という概念はないのだ。」
『それに関しては合ってる。私はレジスタンスも、あんたもレイアも信頼してない。私の根本は悪人だから。』
シディアス卿は、今まで誰かを利用してきた。私も例外じゃない。ティラナスを利用し、フェラスも利用した。
信頼があれば、対等な存在として手を取り合える。
私が信頼を否定したのは、私自身が悪人だと自覚してるからだ。
『つまり、私はシディアス卿も信頼してなかったの。』
「………」
『分かってたでしょう?そう教えたのはあんただから。』
2人を尻目に、私は口角を上げる。
「エレノア、ステファニーとエディはどうなるの?」
『あの子達も一緒にいられない。』
「置いていくの……?」
『これはあんた達の為でもある。邪魔しないで。』
その時、レイが明後日の方を見つめる。相手はフォース・ダイアドで繋がっている、ベンだ。状況を理解していないのは、シディアス卿だけだ。
「何をしている!?」
「貴方には関係ない。」
そう言って、レイは持っていたライトセーバーを背中へ持っていく。
降ろされたその手には、ヒルトはなかった。
「このライトセーバー、誰のものだと思う?」
レイは別のライトセーバーを見せ、私に問う。
消えたヒルトは、元はアナキンのものだが、ルークのものだ。レイの持つヒルトは、オビ=ワンのライトセーバーに似ている。だけど、オビ=ワンのものじゃない。
『さぁ?』
「レイアのライトセーバーよ。」
『なぜ私に教えるの?』
「レイアが私に預けたのは、貴女の為よ。」
『私の為?』
レイはライトセーバーを起動させ、構える。
「貴女はジェダイを毛嫌いしているけど、ジェダイは貴女の味方よ。」
『ジェダイが味方?私がジェダイを信頼すると思う?』
「いいえ。少なくとも、マスター・スカイウォーカーは貴女を信頼していたわ。だから、私も貴女を信頼してる。」
「信頼だと?あり得ん!なぜこの女を信頼できる?ダース・ルシルは裏切りの代名詞ぞ!」
「“家族”だからよ。」
そう断言して、レイはライトセーバーで私を切る。
「ごめんなさい、エレノア。」
レイの中にあった暗黒面のフォースを、はっきり感じた。
暗黒面に踏み込むことはないけど、レイは暗黒面を恐れていなかった。感じるのは、強い意志。揺るぎない心が、光明面と暗黒面のバランスを保っている。
今のレイに、迷いはなかった。
私は今度こそ絶命して、肉体を操ることもできなくなった。完全な亡霊と化した私は、かつての肉体から離れ、レイとシディアス卿の間に立つ。
「家族だから、貴女を止める。」
レイが誰かを殺すのは、これが最初で最後だろう。
『この瞬間を待ってた。』
「何っ!?」
『シディアス卿、逃がさないよ。』
シディアス卿の精神を掴み、私は精神世界に引き摺り込む。
真っ白な空間に降り立ち、私とシディアス卿はクローン戦争時の服装と身体で向き合う。私は真っ黒なローブ、シディアス卿も真っ黒なローブを着ていた。そして、互いに赤いライトセーバーを持つ。
『これは……』
『私とあんただけの世界。』
『余に何をした!?』
『ちょっと精神世界に引き摺り込んだだけ。大丈夫、この世界と現実の時間の流れは違うから。』
こっちは精神世界。どれだけここで喋ろうが、現実では時間は進んでいない。これは、亡霊したからできたことだ。
『邪魔は入らない。ここは私の精神世界だから、あんたは身動き取れないよ。』
『其方の精神世界だと?愚か者め。私を招き入れたことが大きな間違いぞ。』
『間違い?私は自ら引き摺り込んだ。何も考えてないと思う?』
後ろから現れたもう1人の私に、シディアス卿は動揺する。
『其方は…!?』
『知っているみたいだよ?』
『そりゃそうだよね。』
『ペダムは消滅したはずだ!』
シディアス卿は、ペダムを危惧していた。
私の道を逸らせるのはペダムだけだと、“主”は確信していた。現に、私は本来とは違う人生を歩んだ。ペダムが過去を変えたから。
私の未来が変わったことでペダムは現れなくなり、シディアス卿は私を飼い慣らせると考えた。
だが、目の前にいるのはもう1人の私、もう1人のペダムだ。
『自分の弟子を何て皮肉ったのか忘れた?』
『“シスの奇才”』
『そう言ったのはあんただよ。』
『お前達……!!』
『ここで大人しくしててもらうよ。』
シディアス卿をもう1人の私に引き渡し、私は現実へと戻る。
現実では、私の死体はエクセゴルのラボに横たわっていて、レイとベンが立っている。シディアス卿は糸が切れたように意識がなく、2人はその姿を見て困惑していた。2人に追い付くように、ステファニーとエドワードもラボに駆け込んできて、上空の戦いは地獄と化していた。
4人はライトセーバーを構えて、私に敵意を向ける。
これから私がやろうとしていることを、レイ達はルークやアナキンに聞かされたらしい。でも、私が死んだ時点で何もかも遅い。もうすぐ、私の手で終わる。
楽園と、銀河の為に。
私の穢れた手で、銀河は創り変えられる。