理想主義者は理に縛られない
エクセゴルの戦いから半年後。
レジスタンスを主軸に防衛艦隊が編成され、新共和国が再建された。ファイナル・オーダーも降伏し、それぞれが新しい道を歩み始めていた。
そして今日、とある男女の結婚式が開かれた。
新郎であるフレデリックは祭壇で、新婦であるステファニーがヴァージンロードを歩く姿を見つめる。
レイアやベン、レイまでもが参列していた。マズも参列し、ステファニーを祝福する。途中、ステファニーと目が合ったレイアは、彼女に優しく微笑んだ。
だが、その中にエドワードの姿はなかった。
彼も姉の結婚を祝福しているが、今回はどういうわけか、姿を現さなかった。
代わりに、参列者の中には“ユグノ・ソール”の姿があった。
ユグノはエンドアの第二デス・スターで死に、火葬されたはずだった。しかし、エレノアが銀河に手を加え、やっとの思いで蘇らせたのだ。本人も驚いていたが、誰よりも喜んだのは、ステファニーだった。
彼は父親代わりとして、ステファニーとヴァージンロードを歩いていた。
ユグノが手を離すと、ステファニーはフレデリックの下へ歩く。
誓いの言葉が交わされ、神父はお決まりの台詞を言う。
「では、誓いのキスを。」
フレデリックとステファニーはキスをして、神父から祈りの言葉を捧げられた。
祈祷が終わると、2人は祭壇の前から退き、教会の外へと出て行く。
「ちょっと!フレディ!?」
外へ出た途端、フレデリックはドレス姿のステファニーを抱き上げる。それからランド・スピーダーに乗り込んで彼女を下ろし、彼は運転席に座った。ステファニーはその隣で、フレデリックが運転するのを眺める。
「どこに行くの?」
「未知領域だ。」
「未知領域?なんで?」
「両親に会いたくないのか?」
「会いたいけど……」
ステファニーは無理だと分かっていた。エレノアとフェラスは死んだ上に、フォースの冥界の最奥、地獄にいる。2人に会えるはずがない。
そう思って諦めていた。
「ママ達にはもう会えない。」
「いや、会える。」
「どうしてそう言えるの?」
「一度だけなら叶えられる。エドワードが探してくれた。」
着いた先には、エドワードがシャトルで待っていた。
だが、フレデリックはシャトルに乗らなかった。
「フレディ……?」
「俺は行けない。」
「なんで?一緒に、」
「許されたのはお前だけだ。」
「誰の許し?そんなの……」
「ステフ、行けば分かる。」
フレデリックに諭され、ステファニーはシャトルに乗り込む。
コックピットに入ると、エドワードは姉に声をかけた。
「全部説明する。とりあえず座ってくれ。」
ステファニーは副操縦席に座り、エドワードはシャトルを発進させる。座標は未知領域の惑星。軌道まで上がり、シャトルはハイパースペースへと入った。
それから、エドワードは姉に両親の居場所を明かした。
「母さん達は地獄にいるが、地獄にはいない。」
「どういうこと?」
「母さんは銀河に手を加えただろ。着けば分かる。」
そう言って、エドワードは入力した座標を見るように促す。そこは、ステファニーが知らない座標だった。彼女の記憶違いでなければ、その座標には何もない。
だが、エレノアが手を加えたとなれば別だ。
ハイパースペースを抜けると、そこには赤い恒星を中心に、1つの惑星と、2つの衛星があった。
その星系の惑星こそ、エレノアの作った楽園だった。
2人はその惑星に降り立ち、ゆっくり歩き出す。
「ここは何?」
「母さんと父さんの楽園だ。」
エドワードは淡々と答えるが、内心では動揺していた。動揺しているのは、彼だけではない。ステファニーも、弟と同じように動揺していた。
「何も感じない………」
ステファニーの呟きに、エドワードも頷く。
フォース感応者である2人は、生き物や草花を感じるはずだった。しかし動植物は愚か、フォースさえ感じられなかった。ステファニーはイサラミリがいるのかと、辺りを探したが見つからない。
テレキネシスや認識範囲の拡大もできず、2人は途方に暮れる。
「どうするの……?」
「歩くしかないだろ。」
「何も考えずに来たの!?」
「こうなるとは思わなかったんだよ!」
エドワードは先に歩いていき、ステファニーはそれを追いかける。
やがて、2人は小さな家を見つけた。見つけたのは、最初に入った山の中だった。家は山の傾斜に沿って建てられ、頂上近くにあった。
ステファニーは期待を胸に抱き、そっとドアを開ける。
「え……?」
「どういうことだ?」
2人は家の中を見て唖然とする。
家の中には、何もなかった。文字通り、家具やテーブル、棚もない。中は、空っぽだった。
「そんな……」
ステファニーは落胆し、壁に背を凭れる。
「ステフ!!!」
その瞬間、ステファニーは壁に凭れることなく、擦り抜けて消えてしまった。エドワードは慌てて駆け寄るが、既に姉の姿はなかった。
エドワードが恐る恐る手を触れると、腕は壁を擦り抜ける。家はただの見せかけで、本当の扉は別にあったのだ。
彼は意を決して、ステファニーを追うように一歩踏み出す。エドワードの身体は壁を擦り抜け、未知の扉に目を瞑った。彼は肉体と精神が不安定になるのを感じながら、扉の中へ進む。
そして、向かい風のような空間をようやく抜けた。
エドワードは、相変わらず目を瞑り続けていた。
「エディ、目を開けて。」
姉の声に、彼はゆっくり目を開ける。
すると、そこには2人が会いたかった人がいた。
『この日を待ってた。』
エレノアは、優しく微笑む。
その後ろにはフェラスがいて、彼も子供達2人に穏やかな表情を見せていた。
今日再び、オリン・ファミリーが揃ったのだった。