エドワード達と合流したレイとフィンは、まずソーガンを訪ねる。
彼らがクリル農民の村に入ると、どことなく空気が悪かった。
「なんだ……?」
「話を聞きましょう。」
レイの言葉に、フレデリックは農民の1人に話しかける。
「なぁ、この女性を見たことないか?」
「あぁ、彼女か……」
フレデリックはステファニーの顔写真を見せて、情報を求める。だが得られたのは、ベンの持つ共和国の情報と同じものだけだった。農民はステファニーの姿を見ただけで、接触は多くない。エドワード達にとって、これ以上の収穫は悲観的だった。
「ねぇお姉さん達!」
子供の声に彼らが振り返ると、2、3人の子供がいた。
「そのお姉さんを探してるの?」
「ああ。何か知っているのか?」
「そのお姉さんの大好きな人ってどれ?」
「どれじゃなくて“だれ”な。」
子供の言葉に、エドワードらはフレデリックを見る。
「俺だ。そのお姉さんと俺は夫婦だ。」
フレデリックは子供達の前に屈み込み、居場所を問う。
そこで子供達は何かを話し合い、フレデリックに伝言があると言う。
「お姉さんが、来ないでって。」
「………は?」
「巻き込みたくないんだって。」
「お兄さんが大好きだから。」
「どこに行ったか知ってるのか?」
「知ってるよ。」
子供達は、みんな頷く。
エドワードは、暗黒面に呑まれたものだと思っていた。だが、姉はちゃんと自分の意思で行動している。それが分かり、彼は安堵した。
「なぜ大人達に言わない?」
ベンは子供達に詰問する。
彼の問いに、レイ達はようやく気付く。
本来なら、子供は大人に言って、大人が問題を対処する。しかし農民の子供達は、大人には言わなかった。子供達は秘密を守り、大人達を信用しなかった。
「大人は秘密を守れないもん。」
「お姉さんが“奴ら”に見つかったのだって、パパ達が喋ったせいだ。」
子供達の言い分は間違っていない。ステファニーは隠れていたのに、大人が話したことで居所が漏れたのだ。子供は村の大人に失望してしまったのだった。
ただ、子供達は知らない。
大人が漏らした相手が、共和国に潜り込んだスパイだと言うことを。
レイ達がそれを知ったのは、農民に聞き込みをしていた、つい先ほどのことだ。
「君達、俺の奥さんがどこ行ったか教えてくれ。」
フレデリックは子供達に耳打ちされ、ようやく居所を掴んだ。
彼はレイ達を連れて、すぐにソーガンを発った。
子供達から居所を聞いたフレデリックは、焦る気持ちを抑える。
何かあったことは間違いない。だが、これはステファニーが意図したものだ。フレデリックはそう気付き、冷静さを保つ。
彼はただ、ステファニーの無事を祈り続けた。
────────
同じ頃、暗い部屋で金髪の女性が椅子に拘束されていた。
「《平和は偽りだ、情熱があるのみ。情熱を通じて強さを得る。強さを通じて力を得る。》」
「おい、黙れ。」
「《力を通じて勝利を得る。勝利を通じて私の鎖はちぎれる。フォースは私を自由にする。》」
「黙れって言ってるだろ!」
「………《平和は偽りだ。》」
男がスイッチを押すと、電流が彼女の身体に走った。
しかし彼女は物ともせず、スイッチを切られるとクスクスと笑う。
「シス・コード。知らないの?」
「何だと……?」
「シスを崇拝してるくせに、シス・コード知らないんだ?」
「このっ…!!」
「やめろ。」
彼女を殴ろうとした男は、誰かに腕を掴まれ止められる。
止めた男は、彼の主人で、彼は仕方なく拳を下ろした。
「遊ばれるな。」
「申し訳ありません……」
「ステファニー・オリン、俺を知っているか?」
彼女、ステファニーは男の顔を見てにっこり笑う。
「ママから聞いてるよ。初対面は私がママのお腹にいた時だっけ?」
男はフォースで、ステファニーの気道を絞める。
ところが、彼女は何事もなかったかのように笑い続ける。
「無駄だよ。」
「貴様……」
男は苛立ちを抑え、下僕を連れて部屋を出て行く。
そこでステファニーは笑みを消し、2人の背中に怒鳴り声を浴びせる。
「私を敵に回したことを後悔するよ!」
「………」
「私だけが敵じゃないからね!」
2人は立ち止まり、下僕の男は不安そうにステファニーを見る。彼はその顔を見て恐怖を抱く。まるで道化だと、彼は思ってしまった。
「楽に死ねるといいねぇ?」
ステファニーは優しく、憐れむように囁く。
彼女は拘束されながらも、これから起こることを楽しみにしていた。
同時に良心も失いかけていると、本人は気付いていない。