ステファニーは死んだはずの男の名を繰り返し呟き、何度も恨み言を吐く。
フレデリックはジェレクが死んだと知っている。親の代からそう聞いて育ったのだ。ジェレクはエレノアが殺した、と。
しかし、目の前にはジェレクがいる。
彼は状況を理解できなかった。
「なぜ生きている……?」
「お前達虫けらには分からぬ、フォースの技だ。っ……!!」
そこで、ジェレクは発作なのか胸元を押さえて、膝をつく。フレデリックにはジェレクの姿が揺らめいて見え、その隙にブラスターを撃とうと懐に手を伸ばした。ところが、そう簡単にはいかず、ジェレクは彼にフォース・プッシュする。
だが、ジェレクは相変わらず胸を押さえて苦しんでいる。
その様子に、フレデリックはジェレクの現状を理解した。
「なるほどな……エレノアが必要なのは、その苦痛を取り除く為か。」
フレデリックは起き上がりながら、ジェレクを嘲笑う。
「そのままくたばっていれば良かったんだ。」
「貴様……!」
「俺だって、エレノアが何て呼ばれていたか知っている。」
「戯れ言をっ!!!」
「お前は、子供時代のエレノアにすら及ばない。」
「この……!!」
ジェレクは腕を伸ばし、フレデリックをフォース・チョークする。
彼は首を絞められながらも、ステファニーに手を伸ばそうとする。ステファニーは意識朦朧としていて、フレデリックが見えていない。増援もない中、彼はひたすら妻の名を呼ぶ。
「ステフ、起きてくれ……!」
その時、誰かがジェレクの手下を吹っ飛ばした。
「やぁ、偽ヴェイダー。」
先に降りてきたエドワードの後ろから、初老の男がゆっくり降りてくる。
ジェレクは、その男を知っていた。
「ユグノ・ソール………」
男の名を呟くと、ジェレクはフレデリックを乱暴に離した。フレデリックは咳き込みながらユグノを見上げ、次いでジェレクを見る。倒れた彼にエドワードが駆け寄り、フレデリックを起こす。
フレデリックは、無謀とも言えるユグノの出立ちにエドワードに止めるように言う。
「心配ない。あの人には後ろ盾がある。」
「後ろ盾………?」
ユグノは醜くなったジェレクを見つめて、鼻で笑う。
「落ちぶれたもんだな。どうやって生き返った?」
「それは俺の台詞だ。貴様は皇帝陛下に殺されただろう。」
「僕はエレノアからの贈り物だ。ステフにな。」
そう言って、ユグノはステファニーを微笑ましく見る。
「貴様……ユグノ・ソールではないな?」
「僕はユグノ・ソール本人だ。遥か昔にエレノアに救われ、お転婆娘に振り回された男だ。数奇な運命だろ?僕は始まりから終わりまで、エレノアと関わり続けている。」
「だが、貴様は普通の人間だ。俺が殺せば簡単に死ぬ。」
ジェレクはライトセーバーを起動させ、ユグノに迫る。
ジェレクの言っていることは正しい。ライトセーバーで貫かれれば、ユグノは呆気なく死ぬ。フォース感応力もなく、抗うことは不可能だ。
2人の様子に、フレデリックの背に嫌な汗が流れる。
「殺したければ殺せばいい。でもな、今のお前じゃ楽に死ねないぞ?」
「この女といい、お前といい、楽に死ぬ?死ぬのは貴様らだ。」
「分かってないな。お前は“ダース・ルシル”に呪われている。」
ライトセーバーを首に添えられても尚、ユグノは冷静に言葉を続ける。
「歴代シスは、お前をシスと認めていない。」
「だからなんだ!?」
「ステフにはシスの力がある。ステフを敵に回すということは、シスを敵に回すことと同義だ。さて、シスの亡霊達はお前をどうするかな?」
「何………?」
その瞬間、ユグノの口から多くのシスの亡霊が飛び出してくる。
亡霊の絶叫に、エドワードとフレデリックは耳を塞ぐ。
シスの亡霊達はジェレクを捕らえ、跪かせる。ジェレクは抵抗を試みるものの、ライトセーバーを破壊され、亡霊の1人に首を掴まれてしまった。その亡霊は、人の形となり口を開く。
『シスの成り損ない、ジェレク。お前に罰を課す。』
「離せっ!!!」
『何も変わってない。力を持っただけでは、シスにはなれない。お前はシスじゃない。私達はお前を許さない。』
「まさか貴様、」
『シスの名を騙ることは許されない。その死を以て贖え。』
「ダース・ルシルっ!!!!!!」
エレノアの顔がはっきりと見え、フレデリックだけでなく、エドワードまで驚愕する。
“ダース・ルシル”はステファニーに手を向け、彼女を縛る術を吸い上げる。その術は毒と化し、ダース・ルシルの手の平で転がった。それをジェレクの口に捩じ込み、彼女は歪んだ笑みを浮かべる。
「っ…!ぐ…クソ……!!」
『楽には死なせない。苦しんで死ね。』
フレデリックは、私怨も入っているのではと思った。愛娘を痛め付けられて、エレノアが黙っているはずがない。そう考えると、彼はやはり私怨があるのではと思ってしまった。
「そんな……!俺の身体が……!!!」
ジェレクの身体は急激に老いていき、あり得ないスピードで干からびていく。やがてジェレクは断末魔を上げ、最後には肉体が風化してしまった。
「ダース・ルシル」
ユグノの呼びかけに、彼女は振り返る。
「子供達に挨拶しないのか?」
『………』
ユグノの言葉に、彼女は何も答えない。だがそれが不満だったのか、ユグノは今度は本名で呼んだ。彼女はその名に、僅かに目を細める。
『今日ここに来たのは、ジェレクを処理する為。何も語ることはない。』
「契約違反だぞ。」
『その契約にお前の意思は関係ない。』
冷たく返す彼女に、ユグノは怒りの表情を見せる。
「なら、なんで僕を甦らせた?橋として、僕を2人の側に置いたんだろ?今さら口を出すなって言うな。」
「ママ………?」
意識を取り戻したステファニーは、亡霊の母を見上げる。
彼女のその目には喜びと、狂気が混じっていた。エレノアが目を背けた理由は、それが原因だった。喜ぶ娘とは反対に、エレノアの瞳は悲しみが満ちていた。
ダース・ルシルは、全てを知っていた。“誰が”ジェレクを“甦らせた”のか?その元凶は、“誰”なのかということも。
この場で真実を知るのは、ただ1人。
エレノア・クラウドだけだ。