多くのジェダイが倒れ、生き残ったジェダイはアリーナの中心に追い詰められていく。
バトル・ドロイドは、相変わらず私を避けている。
「ネル!!」
向かってくるB2ドロイドに抵抗せず、私は棒立ちになる。そのドロイドはアナキンが倒し、反撃しなかった私に恐ろしい程の剣幕で怒鳴ってきた。
「何をしているんだ!?」
「何も。」
そこで突然、ドロイドの攻撃が止んだ。
「何のつもり……?」
私の呟きが聴こえたのか、オビ=ワンが見てくる。
「ジェダイの歴史に名を留める、見事な戦いだ。」
止めたのはマスター・ドゥークー、彼だった。
「だが、もう終わりだ。降伏しろ。命だけは助けてやる。」
パドメやマスターが、アリーナの中心に小突かれる。
ふと、ドゥークー“伯爵”と目が合う。彼は真っ直ぐ私を見下ろし、笑みを浮かべる。それが私の知るマスター・ドゥークーで、なぜか安堵した。
「交渉の為の人質にはならないぞ!」
ジェダイは人質にならない。
ジェダイは平和の守護者で、兵士じゃない。平和の守護者が人質になれば、ジェダイの存在意義はないからだ。それは、オビ=ワンやマスター・フィストー、マスター・ウィンドゥも同様だ。
ドゥークー伯爵は、心底残念そうな顔をする。
「そうか……残念だ、古き友よ。だが、その前に……エレノア・クラウド。」
伯爵は、私の名前を呼ぶ。
「ジェダイのまま死ぬつもりか?」
「ネル……?」
パドメの不安そうな声に、彼女の顔を見ることができなかった。
ドゥークー伯爵の言葉の意味に気付き、私はライトセーバーを収める。“彼”が私を呼んでいる。拒むような真似はしない。
一歩踏み出した私を、アナキンが腕を掴んで止める。
「行くな!!」
「………ごめん。」
アナキンの手を振り払い、ゆっくり前に出る。
全てと決別するように、私は一歩、また一歩とドロイドの包囲へと歩く。ドロイドは、先程と同じように撃ってこない。寧ろ、私の為に道を開ける始末だ。
「さっさと仮面を取れ、我が友よ。」
「言われなくても……」
私は口を閉じて、ドロイドの包囲を何事もなかったかのように抜ける。
その行動に、ジェダイ達の表情が歪んだのが見えた。ジェダイであるはずの私が、バトル・ドロイドに撃たれず包囲を抜けた。それが、裏切りの証だった。
追いかけてこようとするパドメを、アナキンが辛うじて止める。このまま私を追えば、彼女は撃たれていた。アナキンの判断は正しい。
「ネル!なぜなの!?」
叫ぶパドメに、私は穏やかに答える。
ジェダイを裏切ることは何とも思わないのに、パドメの気持ちを裏切ったことはちょっとだけ後悔した。彼女は議員であって、ジェダイでもシスでもない。私の友人だった。
友達がいなくなることは、少し残念に思う。
「私の為。私の望みは、ジェダイのままじゃ叶えられない。」
「だから奴らに加担するのか!?」
「必要なら何でもする。」
アナキンの張り上げた声に、静かに返す。
オビ=ワン達の冷たい視線が、背に刺さる。彼らの心に、失望と悲しみを感じた。パドメだけは、はっきり拒絶したのにまだ私を信じている。
もう以前の私じゃない。
私はジェダイじゃない、ただのエレノア・クラウドだ。
パドメが信じたジェダイの私は存在しない。
「憧れていた頃の私はもういない。望みは自分で叶える。」
「エレノア!!」
今は、マスターの声すら疎ましかった。
マスター、もといキット・フィストーはいつも私を否定した。ありのままの私を認めてくれなかった。弟子を認めてくれない師なんていらない。
認めてくれないなら、マスターは敵だ。
雑音を振り払うように、アリーナを後にする。
貴賓席に入ると、ドゥークー伯爵は楽しそうに私を見る。アリーナでは、オビ=ワン達が殺されようとしていた。バトル・ドロイドは、ブラスターを構える。
「さよなら。」
その時、アリーナにガンシップが降りてきて、生き残ったジェダイを取り囲む。
「援軍……」
ガンシップを睨み付けていると、ドゥークー伯爵に貴賓席から離れるように指示された。
「こっちだ。」
バトル・ドロイドの攻撃は当たらず、白い兵達がジェダイを援護する。クローン達を連れてきたのは、マスター・ヨーダだった。私はドゥークー伯爵に連れられ、ガンレイ総督や大公達のいる指令センターへと入る。
戦況コンピューターのホログラムには、多くのクローンが映っていた。
分離派のバトル・ドロイドより、クローンの方が圧倒的に数が多い。
「クラウド、この状況をどう読む?」
「撤退一択。無理に戦う必要はない。」
「なぜお前が偉そうな口を叩く!?」
「ガンレイ総督、もう少し見る目を養ったら?」
「っ…!」
「総督、クラウドの言葉は正しい。ここは撤退しようではないか。」
ガンレイとハーコは、撤退の為に通商連合の母船へと向かう。
事は、順調に進んでいる。
バトル・ドロイドの数が足りないけど、大した問題じゃない。問題は、ジェダイの方だ。ここでジェダイに分離派を捕らえられたら、私の夢も消える。
絶対に邪魔はさせない。
夢を叶える為には、大切なものを手放すことも必要だ。
「クラウド」
「何?」
「躊躇ってくれるな、友よ。」
「………分かってる。」
些細な忠告だ。
これは、二度目の警告でもある。要約すれば、裏切るな。そう言われている。“シス”を裏切れば、命はない。
裏切る気なんて、これっぽっちもないけど。
私は自分の為にジェダイをやめた。シスの為じゃない。願いを叶える為にシスと手を組んだけど、暗黒面に踏み込んだのは自分だけの為だ。
道は自分の意志で選ぶ。