最悪な状況に、追い討ちはよくあることだ。
私が侵入者に手を焼いている間に、共和国クルーザーが私のシャトルに気付いてしまった。
「アル!ディン!遭難信号出して!」
「ラジャラジャ!」
「直ちに!」
ドゥークー伯爵が助けてくれるとは思ってない。遭難信号を出したのは、注意喚起の為だ。共和国軍の動きを知らせれば、“ティラナス卿”は対策できる。
侵入者は私一人で対処するつもりだ。
「ルシル卿、システムの一部が復旧しました!」
「船内モニターは?」
「映ります。」
「出して。」
ホログラム記録には、女の賞金稼ぎが映っていた。
彼女は確か、ホンドーの元恋人だ。
オーラ・シング、人間より少し寿命の長い近人間種族で、フォース感応力がある。厄介な賞金稼ぎだ。かなり名の知れた殺し屋でもある。
そんなオーラが、なんでこんなところに?
「私、殺されるのかな?」
「冗談はやめてください!」
「冗談じゃない。あんた達、壊されたくないから電源落とすね。」
「ルシル卿、そ…ンナ………」
アルとディンの電源を落とし、赤いライトセーバーを構えてオーラを待つ。
オーラの目的が分からない以上、戦いを想定しなければならない。それに、もし私が殺されるなら、シディアス卿に迷惑をかけないようにしないといけないんだ。最悪の場合、自害も視野に入れている。
捕虜になって連合軍を困らせるくらいなら、自害を選ぶ。
そして、ドアのロックが解除された。
「おや、腹を括ったのかい?」
オーラは電源の落ちたアルとディンを見て、おかしそうに言う。
誰のせいで電源落とす羽目になったと思ってんだ。
「壊されたくないから電源切ったの!」
「こんなくだらないドロイドを?お前、馬鹿なのか?」
「初対面の相手に失礼すぎない!?」
赤いライトセーバーを構え、オーラに牽制をかける。
オーラは真っ直ぐブラスターを撃ってきて、私はライトセーバーでレーザー弾を偏向させる。彼女も返された弾を避け、オーラはその勢いで壁を踏み台に回し蹴りをしてきた。辛うじてそれを避け、フォース・プッシュで強引に押し返した。
オーラは受け身を取り、口端を吊り上げる。
「あんたの相手をしてる暇はない。」
「共和国クルーザーのことかい?好都合だね。お前を引き渡せば、あたしは賞金をたんまり貰える。大人しく降伏すれば、痛い目に遭わなくて済むよ?」
「痛い目に遭うのはあんただよ。“暗黒卿”に手を出したことを後悔させてやる。」
「暗黒卿?ますますお前の価値は上がるねぇ。」
あまりに腹が立って、オーラにフォース・チョークをかける。窒息に足掻きながらも、彼女の顔から笑みは消えなかった。首を絞められても隙を探すオーラには、かなり驚いた。
困惑した一瞬の隙を狙われ、オーラに肩を撃たれる。
突然の痛みに彼女を離してしまい、私は右肩を押さえて、再び撃ってこようとする彼女をテレキネシスで止める。
「この……!」
「っ……」
オーラは強引に身体を捻り、何かを撃ってきた。レーザー弾ではないようで、首元にチクリとした痛みを感じる。一瞬のことに手をやると、首にあったのは小さなダートだった。
これは、まずい。
視界がぼやけてきた。
「言っただろう?痛い目に遭う、と。」
「この……クソ女………」
「こりゃあホンドーも苦労するねぇ。」
その言葉を最後に、私は意識を失った。
次に目を覚ました時、スタンカフを嵌められ、どこかの檻に入れられていた。カフは取れず、檻の格子には電流が走っている。
計画的すぎる拘束に、私は敗北を認めざるを得なかった。
「ようやくお目覚めかい?」
「あんた………」
「そこで大人しくしてな。お次はジェダイだからね。」
こういう時、賞金稼ぎはずるいと思う。
どちらにも付かず、金の為だけに動く。自分に損があれば相手を裏切り、得があれば言うことを聞く。何より、この戦争を利用している。
この戦争は“私達”の為のものなのに。
賞金稼ぎは戦場を嗅ぎ回るずるい奴らだ。
オーラは格納庫を出ていき、私は一人にされた。
「捕まえておいて放置は良くないよねぇ。」
フォース・ライトニングでスタンカフをショートさせ、手錠を外す。
こんなオモチャ、私には無意味だ。
「お次は………」
フォースを駆使して、檻の鍵も壊す。
こんな小技、誰に教わったかって?
ドゥークー伯爵とシディアス卿だ。シスが捕まるなんて、あってはならないことだ。その為の小技である。
扉を開けると、何とも言えない違和感を感じた。
振り向くと、フードを被った誰かが立っていた。
正体不明のその者は小柄で、身体が透けている。本物でもなければ、ホログラムでもないらしい。殺気を丸出しにして素性を問うと、相手は静かに答えた。
『はじめまして、エレノア。』
「……誰?」
『落ち着いて。私は敵ではないわ。』
声は女性で、どことなく遠く、何かの術を使っているみたいだった。微かに暗黒面の力を感じる。だけど、暗黒面の力を使っているのは彼女じゃない。
「私の名前を知っているってことは、敵でしかない。何者?」
『訂正するわ。味方でもない。ただの亡霊よ。』
「名前を言え。」
『それが人に物を聞く態度かしら?そうね、ペダムと名乗っておくわ。エレノア、まだ遅くないわ。暗黒面から手を引いて。』
「見ず知らずの敵の話を聞くとでも?お断りだよ。」
幻影を通過すると、また呼び止められた。
『後悔するわよ。』
「後悔なんてしない。」
『では、予言するわ。惑星ライロスは手に入らない。』
「は?」
『私は忠告した。気を付けて。』
「余計なお世話!じゃあね、ペダム。」
格納庫を出ていき、ペダムの視線を断つ。
彼女が誰なのかは分からないけど、邪魔するならペダムの正体を暴いて殺してやる。
私は間違っていない。
彼女の予言が本当だと当たったのは、数ヶ月後のことだった。
この時私は、彼女に間違った感情を向けていたのだと知る由もなかった。