幻影の戯れ言なんか無視して、私は船の制御パネルを開く。
自分がどこにいるのか調べると、改造されたシャトルにいることが分かった。私がいたのは格納庫ではなく監房で、賞金首である私を捕える為の改造みたいだった。さらに船内見取り図を調べると、もう一人、ジェダイが捕まっていた。
癪だけど、ジェダイを逃がしてオーラを撹乱させるか。
「って、あんたか。」
「悪いか!?」
「別に?」
ジェダイがいる監房へ行くと、捕まっているのはヴェブだった。
共和国軍のクルーザーはヴェブがオーラに拘束された時点で、私のいるシャトルの拿捕をやめたらしい。しかも、彼を捕まえたのは私だと思われているようだ。何せ、私はフィストーの元弟子で、ヴェブの姉弟子でもある。疑われても仕方ない。
だけど、私の眼中にヴェブは入らない。
「お前の仕業だな!」
「私じゃない。あんたを捕まえたのはオーラ・シング。」
「オーラ・シングだと!?信じられるか!」
「信じなくてもいい。でも、これだけは言わせて。あんたなんかに興味はない。」
そう言って、盗んだブラスターで磁気発生装置を壊す。ヴェブが解放された後、私はブラスターを捨てて監房を出ようと彼に背を向ける。
ところが、それをヴェブに止められた。
彼の手には、私が捨てたブラスターがある。
「なぜ助けた?」
「助けたことに理由は必要?」
「答えろ!!」
「あんたにオーラの相手をさせたいだけ。私は帰りたいから。善意で助けるわけないでしょ。」
吐き捨てるように言えば、ヴェブは足元にブラスターを撃ってくる。
冷たく見返し、私は彼に向かって一歩ずつ歩み寄る。一歩、また一歩と、ゆっくり。チョークされた経験からか、ヴェブは警戒して私から距離を取ろうと退がる。
「ナダール・ヴェブ、ダース・ルシルは自由に生きる。ナイトになりたてのジェダイなんて障害じゃない。あんたに私の相手は務まらない。」
「その過信がお前を滅ぼすぞ。」
「過信じゃない。事実だよ。私を殺したければ、ブラスターで撃てばいい。あんたに度胸があればね。」
また背を向けるけど、ヴェブは撃ってこなかった。
ヴェブは掟が邪魔をして、丸腰の私は殺せない。ジェダイは必要な時に手を下せない。それが、ジェダイであるヴェブの敗因だ。私が丸腰になれば、彼は何もできない。
元ジェダイだからこそ、私はジェダイをあしらえる。
皮肉な話だ。
「さて、と。」
ハンガーへ入るとアルとディンが回収されていて、私は2体の電源を入れる。
アルとディンが起きると、自分達が捕まっていることにパニックになる。
「ルシル卿!!」
「逃げるよー」
2体を連れて、オーラのシャトルからコックピットを切り離す選択をした。
アルにドアを見張らせて、ディンにシステムを解除させる。プログラムはすぐに実行され、コックピットのドアをロックして、シャトルから切り離される。ミニ脱出ポッドと化したコックピットはハイパードライブが搭載されていて、ディンはハイパードライブを起動させる。
光速空間に入り、私達は一息吐く。
「これで一安心ですね!」
「ルシル卿、どうされました?」
「何でもない。」
ペダムの存在を忘れようとしても、どうしても忘れられなかった。彼女の言葉が、なぜか引っ掛かる。訳の分からない忠告が、ずっと頭に残っている。
後悔なんてしない。
暗黒面に踏み込んだのは、私自身の意思だ。シディアス卿でも、ティラナス卿でもない。私が自分で選んだ道だ。
私が、自ら望んだんだ。
後悔はしていない。そう、私は間違っていない。他人を気にするな。私は私の為に暗黒面に手を出したんだ。後悔するな、エレノア。
「ルシル卿、シディアス卿からの通信です。」
「っ!!………出して。」
アルに通信を繋げてもらうと、プロジェクターが黒いマントを着てフードを被った人物を映す。私の主、シディアス卿だ。私はホログラムの前に跪き、頭を下げる。
『顔を上げよ、ルシル卿。』
「はい、シディアス卿。」
『浮かない顔をしているな。』
「申し訳ありません。ヴェブと遭遇しました。」
『逃したのか?』
「撹乱の為です。いつでも奴を殺せます。」
本当だ、ヴェブはいつでも殺せる。
彼が拘束されていた時も、私が背を向けた時も、殺そうと思えばヴェブを殺せた。躊躇いなんてない。私はシスなのだから。
『承知しておる。其方はルシル卿。ナイトに昇格したばかりのジェダイなど、敵ではなかろう。なぜ暗い顔をする?』
「ジェダイは皆、私が誘惑されて暗黒面に踏み込んだと思っています。違うのに、フィストーも信じようとしません。意思表明は散々したのに……」
『では、違うアプローチをしよう。一先ず、ラクサスへ戻るのだ。次の任務を待て。』
「仰せのままに。」
そう返すと、通信が切れてホログラムが消える。
跪いたまま、私は顔を上げられなかった。
「ルシル卿、具合でも、」
「大丈夫。」
私は何事もなかったかのように立ち、ドロイド達に操縦を任せて補助シートに横になる。
アルとディンのプログラムが私の疲れを認識したのかブランケットをかけてくれて、自然と眠りに落ちていった。
今は全て忘れたい。