私がこの時代に未来から送られたのは、よくわか分かった。目的も理解した。だけど、何を変えようとしているのか分からない。
あと、2つの問いが残っている。
私が愛に“飢える”理由。とは何か?
なぜジェダイとして育てられたのか?
民間人の家に預ければ、私は何も知らないフォース感応力のある子供として育ったはずだ。あえて育てたことには、理由があるだろう。私が望んだということは、単純な理由では収まらない。
何か裏があると読まないと、自分で自分を追い詰めていることになる。
「っ!!」
その時、外から共和国軍が来た気配を感じた。
時間がない。
「いや……足止めされたのか。」
「正解だ。全ての答えを見つける前に、お前には罰を受けてもらわねばならない。」
「罰なんか受けない。ジェダイに捕まる気はないから。」
「そうか。ならば、強引にでも止めさせてもらおう。」
番人は黄色いライトセーバーを起動して、私も赤いライトセーバーを起動して、フォームⅡで構える。
空気が変わり、寺院が私を敵視しているように感じた。
「逃げ果せると思うか?」
「あんた1人なら何とかなる。」
「誰が私1人だと言った?」
背後でライトセーバーの起動音が鳴り、振り向くと番人がもう1人いた。
「怒りを増幅させたところで、この寺院には無意味だ。」
「うるさい!!」
更に2人増え、私は完全に包囲される。
「降伏しろ。お前に選択肢はない。」
「この………黙れっ!!」
四対一でライトセーバー戦は、かなりきつい。しかも、相手は寺院の番人だ。勝てるわけがない。
全力でフォース・ライトニングを四方に放つ。ライトニングはライトセーバーで受け止められ、怒りを増幅させて番人を押し返そうと足掻く。それでも退がらない番人達に苛立ち、狙いを変えた。
上にライトニングを放って、天井を壊す。
崩れた天井は私だけでなく番人にも落ちて、瓦礫が行手を阻んだ。
「クラウド!!」
番人の制止を無視して、一番近い通路に飛び込む。
私は後先考えず、ひたすら走った。
寺院は逃がす気がないようで、私は何度も同じ部屋に戻ってくる。フォースで探っても無駄だった。あの番人共にとって、私はトゥーカも同然。
足を止めて、無言で壁を殴る。
フォースでコントロールもせず殴ったせいで壁は無傷、手の甲には血が流れていた。
手の甲の微かな痛みが、私に現実だと思い知らせる。
『エレノア』
こんな時に、亡霊を見ている場合じゃない。
「幻影は引っ込んでて。」
『幻影じゃないわ。私は確かに存在している。』
ペダムの声が、いつもとは違ってはっきり聴こえる。
「今回近くに感じるのはなぜ?」
『貴女が寺院にいるからよ。私は寺院から貴女とコンタクトを取っている。ジェダイ寺院が、私と貴女の繋がりを強くしているの。』
「へぇ。じゃああんたはジェダイなの?私にジェダイの友達はいないんだけど?」
いたとしても、過去形でアナキンだけだ。彼は男だ。ジェダイの女友達なんていない。
『いいえ。』
「ならフォース感応者?」
『いいえ。』
「親がジェダイ?」
『いいえ。全くの見当違いよ。』
「あんたは誰?」
『エレノア、答えが遠ざかっているわ。』
もうすぐ寺院に、ジェダイが入ってくる。私を捕らえる為に。早く進まないと、逃げられなくなる。
「だったら、こうしよう。正体を黙っているつもりなら、あんたが現れる毎に元老院議員を襲う。」
『………』
「まずパドメからでもいい。過去とサヨナラするならちょうどいい。」
『ジェダイだったことを恥じているの?』
「汚点でしかないね。」
ペダムに背を向け、私は反対方向に歩き出す。
『私は貴女の未来を知っているわ。』
「未来………」
そこで、私はやっと気付いた。
どうして気付かなかったんだろう。ペダムは最初から、答えの一部を言っているも同然だったのに。彼女の正体は、大方予想ができる。
『やっと気付いたのね。』
「あんたは未来の人間。そりゃあ正体が分からないわけだよね。未来の人間なんだから。現在の寺院にはいない。寺院で探そうとしても無駄って分かったよ。」
最初、未来を予測したのだと思っていた。ところがペダムの予言は当たり、先程は知っていると言った。つまり、ペダムは過去を教えているだけ。
そんなことができるのは、未来の人間だけだ。
「ようやくあんたの正体が掴めたよ。」
『でも、私の素性を見抜けていないわ。』
「………」
ペダムの言う通りだ。私はまだ彼女の素性が分からない。だけど、ヒントは得た。
あとは、ペダムの過去を紐解くしかない。
『時間切れね。また会いましょう、エレノア。』
「クラウド!投降しろ!」
ジェダイの声がすぐに聴こえ、振り向かずに逃げる。
寺院は引き止めるのを諦めたのか、もう道は塞がれなかった。寺院の外に飛び出すと、クローン・トルーパーが待ち構えていた。手を前に突き出し、道を開くように粗方のクローンを薙ぎ倒す。
まだ立っているクローンが撃ってきて、私はフォースを駆使して近くの木々まで駆けた。
木々の向こうに崖があるのは分かっている。
スピードを落とさず走り続け、私は崖から飛び降りた。
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クローン・コマンダーが崖淵に追い着き、下に落ちたエレノアを見つめる。その後ろから、エージェン・コーラーとヨーダが崖下を見下ろす。崖下の森が邪魔で、エレノアの姿は見えなかった。
寺院の中でエレノアを追っていたのは、エージェン・コーラーだった。
ジェダイ寺院を守っていたジェダイ・ナイトとパダワンが殺され、ヨーダはジェダイ・マスターを派遣することに決めたのだった。エージェンと共に地上に降り、寺院の助力でエレノアを追ったものの、また逃亡を許してしまった。その事実に、ヨーダは目を伏せるしかなかった。
「マスター・ヨーダ………」
「エレノアは生きておる。必ずや、我らの前に再び現れるじゃろう。」
「将軍方、彼女を追いますか?」
「いや、追うな。」
「今追えば、犠牲者が増えるだけじゃ。」
「イエッサー。」
クローン・コマンダーが下がり、エージェンは口を開く。
「なぜクラウドをジェダイに戻したがるんですか?彼女はもう暗黒面に呑まれている。間に合うはずがありません。」
「エージェン、エレノアがジェダイとして改心すれば、未来は変わる。スカイウォーカーと同じ希望なのじゃ。あの子が早い段階でジェダイに戻れば、戦争を早く終わらせることもできよう。」
「それは……不可能に近いことです。彼女を改心させるより、ドゥークー伯爵を捕らえる方が解決できます。」
「うぅむ……」
エージェンは悲しそうな表情で、ガンシップへと戻っていく。
ヨーダはエージェンを先に戻らせ、一人崖下を見る。
グランド・マスター・ヨーダの脳裏に浮かんだのは、エレノアを預かった日のことだった。
「ペダム、お前の言う希望は絶望に変わりつつあるぞ。」
呟かれた言葉は、風に掻き消される。
ヨーダは、未だにエレノアを信じていた。彼女の改心が叶わなくても、信じることをやめなかった。それが最善だと、ヨーダは考えた。
エレノアを信じ続けることが枷だと、グランド・マスターは知っている。
その枷がエレノアの足を掴んでいるのだ、と。
風が、悲鳴の如く響く。