音楽が流れ始め、私はアナキンに合わせてステップを踏む。
外から見れば息が合っているけど、全然そんなことはない。時折腕を早く引かれるし、アナキンの足を踏むし、散々だ。ドゥークー伯爵が教えてくれた通りにやっているのに、ギスギスしたダンスになっている。
「ねぇ、ちゃんと踊ってくれる?」
「そういうネルこそ、っ……、足を踏むな。」
「あ、これはわざと。」
「何…!?っ!ネル!!」
ドレスのスカートで足元が見えないって、とても最高だわ。
「その呼び方はやめてよ。」
「君こそ、僕を名前で呼ばないじゃないか。」
ターンをした後、腕を強く引かれて片腕を背中で押さえられる。意図的なものだと分かった私は抵抗するけど、アナキンは離そうとしなかった。その体勢のままステップを踏み、身体の向きを変えられる。
「名前で呼ばないのは、僕も殺すからか?」
「残念だけど、あんたもパドメも例外じゃない。」
またくるりと回されるけど、アナキンは手首を掴んだままだった。
まるで隙がない。
「なぜ人を殺す?」
「夢の為だよ。」
「その為に、自ら暗黒面に踏み込む必要はないだろ。」
夢の為に、犠牲は必要だ。その犠牲がクローンやジェダイだっただけ。夢を叶える為なら、何とも思わない。
「必要なものだから踏み込んだの。私の夢を、主が叶えてくれる。」
「主だって?」
「主は私の為に動いてくれてる。だから私は、恩返しをしているだけ。」
「人を殺して恩返しか。」
「それが主の命令だからね。っ……離してよ。」
「ダメだ。」
分離派の議員がいる中で、フォース・ドレインやライトニングは使えない。アナキンは私が動けないことを読んで、押さえ込んでいる。薄々ながら、アナキンがここに来た理由が分かった。
意地でも捕まえる気らしい。
いくら元友達でも、捕まってあげるもんか。
「私が動けないと思ってる?」
「違いないだろう?」
「私はシスだよ?他人なんてどうでもいい。巻き込まれたくなかったら、その手を離せ。」
アナキンはそれでも離さない。
ステップを踏みながら、私は徐々に外へ連れられていく。公の場で、表立った動きはできない。屋敷の外をフォースで探ると、クローンの気配を感じた。
ここで私が逃げても、クローンが立ち塞がる。
「ネル、最後のチャンスなんだ。大人しくしてくれ。」
「チャンス?チャンスを与えたのは私だから。」
屋敷の外へ出た瞬間、アナキンに組み伏せられて、クローン・トルーパーが駆け付けてくる。
仕方ない、やるしかない。
「後悔しないでよ、アニー。」
シスの術を使い、辺りにいる人間の肉体を崩壊させる。
アナキンは近くのクローンを連れて、私から離れる。フォースで防御されたせいか、アナキンと彼といるクローンは倒れなかった。その代わり、私の周りにいた他のクローンは崩壊して死んだ。
範囲を広げようとすると、アナキンがライトセーバーで切りかかってくる。
それを赤いライトセーバーで防御すると、アナキンが悲痛な声で私を呼ぶ。
「ネル!!!」
「後悔しないでって言ったじゃん。」
「なぜ彼らを殺したっ…!!」
「私の邪魔をするから。邪魔したら、例えあんたでも殺す。私の願いを知ってるでしょ?」
「どうしたら降伏してくれる?僕は君を、」
「あんたは嫌でも、私はいつでもあんたを殺せる。躊躇なんてしないからね。」
ライトセーバーが離れ、私はドレスのスカートを破る。
ヒルトを強く握り、溜め息を吐く。
「こんなんじゃ和平交渉なんて無理だね。」
「………」
「まぁ、分離派は休戦なんてしないだろうけど。」
「どういう意味だ?」
「なんで交渉に応じたと思うの?戦争を始めたのは“私達”だよ。」
私の言葉に、アナキンは副官を走らせる。
だけど、もう遅い。私はアナキンの気を引く為に、下らないダンスに付き合っただけだ。外へ連れ出されたのは想定外だったけど、結果オーライだ。
“シス”が主導権を握る。
「マスター・フィストーが嘆くわけだ。」
「奴の名前を出さないで。」
「何度だって言ってやるさ。君は暗黒面に呑まれたんだ。自分で踏み込んだんじゃない。堕ちた、」
「うるさい!!!」
ライトニングを放ち、辺りのクローンを薙ぎ倒す。
怒りのままにライトセーバーを抜き、アナキンに切りかかる。フォームⅡを使い、力で押していく。私の怒りに圧されたアナキンは、少しずつ後退する。
この流れなら、選ばれし者を殺せる。
「ジェダイになんか!なりたくなかったの!」
「だったらシスになる必要はないだろ!」
「あんたはいいかもね!マスター・クワイ=ガンに付いていくかどうか選べたんだから!私は物心つく前から聖堂にいたんだよ!!」
私に選択肢なんてなかった。
記憶を失う前の私が、私を過去へ送ったんだ。ジェダイにして、未来を変える為に。ジェダイ以外の道は許されなかったんだ。
ヨーダは最初からそれを知っていた。
ジェダイ・オーダーは、どこまで私を束縛すれば気が済む?
あんな組織、共和国と一緒に全部消えてしまえばいい。
「やはりそうか。君は苦しんでいる。」
「でも、この苦痛が力になる。」
「力の使い方を間違えるな。」
「間違いかどうかは私が決める。指図しないで。」
アナキンにフォース・チョークをかけて、気道を絞める。
このままアナキンが死ねば、私の迷いも消えてくれるはずだ。この違和感がなくなれば、暗黒面の力が更に手に入る。もっと力が欲しい。アナキンやヨーダにも負けない、強い力を。
抵抗しようとするアナキンを押さえ付け、憎しみの力を増幅させる。
私はシス、ジェダイのエレノアじゃない。