もう少し。
あと少しで、私は解放される。
そう思った瞬間、後ろから敵意を感じて咄嗟に防御する。レーザー弾をライトセーバーで防ぎ、アナキンを逃がしてしまった。フォース・プッシュされて受け身を取り、私は攻撃してきた相手を探す。
ブラスターを撃ったのは、パドメだった。
「彼を殺そうとしたわね。」
「私達は敵同士です。」
「随分と他人行儀ね。」
「“他人”ですから。」
そう、今の私とパドメは友人じゃない。彼女は共和国側、私は分離派に付いている。仲良くはできない。
「アミダラ議員、貴女は護衛される立場では?」
「自分の身は自分で守れます。」
「軽率ですね。スカイウォーカーは手負い、貴女の相手はシスの私。無事でいられるとお思いで?」
「貴女は私を殺せないわ。」
「分かりました。では、試してみましょう。」
懐のブラスター・ピストルを取り出し、パドメに向ける。彼女に未練はない。パドメを殺して、アナキンも殺して、早く楽になろう。
「やめろ!!!」
声と同時に、ライトセーバーで左肩を切られる。
パドメが血相を変えて近付いてくるのをフォース・プッシュで止め、傷を右手で押さえる。とてつもない痛みに、憎悪が心を埋め尽くした。私は闇雲にライトニングを放ち、ライトセーバーを起動させたまま投げた。アナキンはそのライトセーバーを避け、真っ直ぐ私に向かって走ってくる。
刹那、フォース・パンチで横っ面を殴られた。
「っ……!」
口の中に血の味がして、私は倒れ込む。
「立つな、ネル。」
「殺してやる………」
恨み言を呟き、立ち上がってアナキンに殴りかかる。お互いの襟を掴んで、私が押すように横へ引っ張り、2人一緒に倒れた。地面で揉み合い、アナキンが馬乗りする形で見下ろしてくる。
息を荒くしながら、アナキンが口を開く。
「続けるのか?」
「これで私が諦めると思うな!」
「分かってるだろ?君は負けたも同然だ。」
「まだ終わってない!!」
叫んだら、突然身体を抱えられた。アナキンやバトル・ドロイドでもない。顔を上げると、私を抱き上げたのは意外な人だった。
馬乗りになっているアナキンは、ドゥークー伯爵にフォースで押し飛ばされていた。
「ドゥークー伯爵……!」
パドメがその人の名を呼ぶ。
ドゥークー伯爵はバトル・ドロイドを引き連れて、アナキンを牽制する。会場がどうなっているか聞いたけど、ドゥークー伯爵は答えてくれなかった。
恐らく分離派の議員は逃げて、共和国軍は連合軍と戦うことになるだろう。
ボコボコにされた私は、ただ力を抜くしかない。
「引き時だ。」
「ごめんなさい……」
「気にすることではない。」
「ドゥークー!!」
「ネルを手放すはずがないだろう、愚か者が。アミダラ議員、今回の交渉はなしだ。クローンがいては、公平の話し合いは不可能だからな。」
ドゥークー伯爵はアナキン達に背を向け、私を抱き上げたままプラットフォームへ向かう。ミスマッチが迎えに来てくれて、フレイに渡され医療カプセルへと入る。
運ばれる途中、アナキンに対する憎しみが沸き上がっていた。
力を手に入れたと思ったのに、アナキンを殺せなかった。もっと強い力がなければ、アナキンは殺せない。私一人では、選ばれし者には勝てない。
どうしたらいいんだろう。
「後は任せろ。」
「ありがとう……」
ドゥークー伯爵が見送り、私はミスマッチが待つシャトルへ運ばれる。
「ルシル卿!!」
「アル、酒が飲みたい……」
「ラジャラジャ!」
アルが酒を取りに行っている間、ハンルが無言で私を見る。
「何?」
「アルコールハ傷ニ障リマス。」
「感覚が麻痺してくれるからいいの。」
「一時的ナモノデス。程々ニシテクダサイ。」
「分かったよ。」
「お待たせしましたルシル卿!」
「ありがとう、アル。」
医療カプセルに入ったまま手を伸ばし、ボトルの酒を一気に煽る。ハンルとアルはフリーズして、固まってしまった。一気飲みした私は視界が回り、意識が強制的に遠退く。
最後に憶えているのは、ミスマッチと医療ドロイドが慌てる姿だった。
酒は全部忘れられるから良い。
────────
気が付くと、私はセレノーの屋敷の一室にいた。傍らでは、ディンとベイがスリープモードになっている。部屋は物が散乱して、汚いとしか言い様がない。
地獄絵図だ。
何があったんだ。
「ねぇ、ベイ、起きて。」
ベイをスリープモードから起こし、状況を問う。
「ヒィ!」
「なんでよ!」
「あ、ルシル卿……お願いですから暴れないで………」
「え、私暴れたの?」
「それはもう、かなり………」
「ごめん………」
アナキンとパドメに会って、溜まっていた感情が爆発したらしい。
舞踏会でやらかさなくて良かった。
「ルシル卿、ホンドー様からメッセージを預かっております。」
「ホンドーから?」
「はい。連絡が欲しいとのことです。」
「分かった、後で連絡する。」
状況は伝えてあったのに、どうしたんだろう。
ホンドーの方から連絡なんて珍しい。いつもは私から連絡するのに。いつもと違う気がする。
恋人なのに、ホンドーに連絡したくない。
嫌な予感がする。