ホンドーの連絡を受けて、私は彼のいる船へ向かう。
チーム“ミスマッチ”は船で待機させ、一人接続部へと歩く。向かった。ホンドーも一人で待っていて、私の姿が見えると抱き締めてくる。私も抱き返し、恋人の温もりに安堵感を得る。
「ホンドー……会いたかった。」
「………」
私の言葉に、ホンドーは無言だった。
いつもと違うホンドーに、私は彼から離れる。ホンドーの表情は悲しげで、嫌なものを感じさせた。思わずどうしたのかと、聞いてしまった。
「ホンドー……?」
「ネル、別れよう。」
「は!?」
「俺はお前さんの期待には応えられねぇ。」
「そんなっ………なんで!!」
突然の宣言に、私は動揺しかない。
「シスの暗黒卿だろうが、ジェダイだろうが、俺は気にしなかった。俺もどっち付かずの海賊だからな。だが、お前の目に俺は映ってねぇんだ。」
「何を言ってるの……?ねぇ、私が恋人を蔑ろにしてると思ってる?私は、」
「エレノア、お前は愛されたいだけだ。確かに、その愛は本物だった。なのに、お前は自分のことしか考えてねぇ。」
愕然とした。
私は本当にホンドーを愛している。恋人である彼を蔑ろにしたつもりはない。フォース・ドレインで集めた生命エネルギーも、彼と私の為に使う気だった。
夢が叶っていたかもしれないのに……
ショックで言葉が出なかった。
「自分のことしか考えてないなんて………そんなわけない。私は仕事の傍ら、夢の為に、」
「スカイウォーカーから、分離派にいたネルのことは聞いたぞ。」
アナキンの名前に、私は口を噤む。
「俺の為に、クローン・トルーパーを手に掛けていたのは知っていた。問題は、お前の行動だ。クローンを殺したのは、お前自身が満足する為でしかねぇ。」
「やめて……」
「恋人の為とはいえ、殺しを愉しむ女を受け入れられると思うか?」
「やめてよ!!」
ホンドーに怒鳴ってしまった。
あり得ない。私が振られるなんて、絶対に認めない。今までずっと、私と彼の為に頑張ってきたのに。
頑張ってきたのは、全部無駄……?
「愛してるのに……!」
「今のネルは愛せねぇ。許してくれ、エレノア。」
「嫌だよ……」
「もう終わりだ。」
別れたくない。やっと理想の恋人に会えたのに。どうして別れなければならないのか、一つも理解できない。
フォース・ドレインを使ってきたのが悪いの?
全て必要な殺生だ。
「ホンドー!」
「考えを改める気はねぇ。悪いな、ネル。」
ホンドーは自分に嘘は吐かない。私はその姿に惚れたんだ。別れるという決意も、変えてくれないだろう。
彼に惚れたのは私なのに、今はホンドーのその性格が恨めしい。
私は何も言えず、自分のシャトルへと足早に戻る。
ハンルにドッキングを解除させ、ミスマッチに操縦など、全て丸投げする。振られたことが辛く悲しくて、エピを抱き締めてひたすら泣いた。恋人に拒絶されたのは初めてだった。
悲しみを乗り越える方法なんて知らない。
心が空っぽになりそうだ。
セレノーへ帰った後、私は部屋に引き篭もった。ドゥークー伯爵や主の通信も遮断。ミスマッチすら部屋に入れなかった。
今は何も考えたくない。
『後悔すると言ったでしょう?』
「黙れ!!」
背後にペダムの幻影が現れ、寝台の上で頭を抱える。
『なぜホンドーが離れたのか、よく考えなさい。』
「お前に何が分かる!?私の理解者はっ……」
理解者は、主しかいない。
ホンドーですら、私を受け入れてくれなかった。私を受け入れてくれたのは、シディアス卿だけだ。シディアス卿は、唯一の理解者だ。
最も私を理解していないのは、目の前のペダムだ。
「シディアス卿……!」
『貴女はシディアスに甘えているだけ。逃げていては、夢は叶わないわよ。』
「うるさい……」
『エレノア。このままいけば、貴女は死ぬわ。』
「え……」
衝撃的なことを告げられて、背筋が凍る。
私が死ぬ?生命エネルギーを集める私が?シスの私に、何が襲うの?
フォース・ドレインを操るのに、なぜ死ぬのか分からない。
「私が死ぬ……?」
『ええ。』
「なんで……」
『自業自得だからよ。周りを見ず、私の言葉を本気にしようとしない。挙げ句の果てに、助けの手を拒んでいる。』
私は助けなんか求めていない。
救済の手は、最初から無いも同然だ。
ペダムを拒むように、サイドテーブルのティーポットを投げ付けた。ティーポットは砕け、床にガラスが散乱する。私は拾いもせず、ペダムを睨み上げる。
「助けは必要ない。」
『貴女が欲を捨てれば、物事は簡単に終わるわ。』
「欲に従うのが、そんなにいけないこと?ジェダイに戻れって言いたいの?」
『そうよ。』
ジェダイには戻りたくない。ジェダイに戻れば、また振り出しだ。今までの我慢が無駄になってしまう。
「嫌だね。」
『そう……もう救いようがないわ。』
あのペダムが泣きそうな声を残して、姿を消した。
最後に残したペダムの感情に、なぜか私まで辛くなった。身に覚えのある感覚だけど、何なのか思い出せない。靄がかかったように、何かが邪魔をしている。
私はペダムを知っているような気がする。
それが失った記憶のせいなのか、何なのか分からない。
私には、何も残っていない。