後日、ハンルからの報告で、ヴェントレスが処分されたと聞いた。主の指示らしい。ドゥークー伯爵に切らせたと、グリーヴァスから教えられた。
これは、私への警告だ。
主は、私が失恋したと気付いている。今後シディアス卿の期待に添えなかったら、私も処分される。いくら目を掛けてもらえているとは言っても、シディアス卿の為にならなければ切られる。
もう未練なんてないはずなのに……
「ルシル卿、付近で遭難信号を捉えました。」
「遭難信号?」
「共和国軍モ向カッテイルヨウデス。」
小型シャトルを出して、私は一人で信号の発信源へと向かう。
共和国軍が向かっているなら、要人の可能性もある。こちらが先に取れば、分離派は一歩先へ進める。その為に、私が自ら出向く必要がある。
「遭難信号を受け取った。応答せよ。」
信号の発信源に着いたが、何もなかった。通信も、一切返ってこなかった。確認の為にミスマッチに連絡を取ろうとするけど、ハンル達とも繋がらない。
焦って操作パネルを殴ると、突然ノイズが入った。
「誰?」
やはり応答はない。
その時、何かに引き寄せられ、シャトルは大きく揺れる。舵は言うことを聞かず、ベルトを締めるしかない。背後の背もたれを必死に掴み、揺れに耐える。
次の瞬間、強い光がシャトルを覆い、私は意識を奪われた。
目を覚ますと、シャトルはどこかの惑星に不時着していた。
「何これ………」
外へ出ると、岩が浮いていたり、季節がおかしかったり、変な星に来たみたいだ。何より、そこかしこにフォースが溢れている。探ろうにも、フォースが強くて何も分からなかった。
「こちらクラウド、応答せよ。」
シャトルへ戻ってディスペアーに遭難信号を送ろうとするけど、通信機は使い物にならなかった。
しばらく歩いて、木々が枯れていくエリアに入った。季節的には秋だろう。枯れているというか、葉が色付き始めている。
秋エリアに入ると、共和国軍のシャトルを見つけた。
少し、いや、かなり見覚えのあるシャトルだ。
「動くな。」
起動音と共に、後ろと前からライトセーバーを首に添えられる。
「あら、久しぶり。」
「ネル、これはお前の仕業か?」
前にいるオビ=ワンから、そう問われる。
アナキンの指示で、私のライトセーバーはアソーカに持っていかれた。
「殺すなら早く殺せば?」
「挑発には乗らないぞ。」
「ネル、質問に答えろ。」
「私も不時着だよ。たまたま鉢合わせただけ。」
「たまたま?私達を追っていたんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ。あんた達の相手をする程気楽じゃない。それに、誰かさんのせいで失恋したばかりなのに。」
「僕のことか?」
「他に誰がいるわけ?」
面倒なことになった。
後ろ手に手錠をされ、目隠しもされて同行させられた。オビ=ワンに手錠を引かれて、仕方なく歩く。アナキン達も、ここがどこか知らないらしい。
「なんで目隠しまでするわけ?」
引っ張るオビ=ワンに、目隠しの理由を聞く。
まぁ、想像はできてるけどね。
「生命エネルギーを奪われたら、堪ったもんじゃないからな。」
「へぇ、見て狙ってるってよく分かったね。」
「過去の戦いで、お前の背後にいたトルーパーは無事だった。つまり、視界に入らなければ問題はない。」
「あんた、ほんと気持ち悪い。」
「失礼だぞ!」
対処法を探ってくる時点で、どう考えても気持ち悪いでしょ。
その時、アナキンが急に立ち止まる。
「聞こえましたか?」
「何の話だ?」
「貴方がそうなの?」
オビ=ワン達とは違う声に、私は声の主に素性を問う。
光明面の力を強く感じる。
「私はドーター。貴方が選ばれし者?」
「僕か?」
「そう、スカイウォーカーが選ばれし者。」
「ネル!」
「貴女がエレノアね。掟を破った愚か者。」
「偉そうに……あんたが何を知ってるって言うの?」
オビ=ワンとアナキンが慌てた声が聞こえた後、私の目隠しが外される。目の前にいたのは、美しい娘だった。光明面のフォースが強く、私には息苦しい。
「貴女にはさぞ息が詰まるでしょう。」
「分かりきったことを言うな。」
「なぜ貴女がジェダイ聖堂に連れてこられたか、“私達”は知っています。」
「私達?」
「時間がありません。一緒に来てください。」
ドーターが先に行き、オビ=ワン達は顔を見合わせる。
アナキン達だけならまだしも、今は敵である私がいる。このまま進むことは苛まれるだろう。まず、私には明確な敵意があるのだから。
「ネル」
「何?あとその呼び方はやめてよ、ケノービ。」
「そんなことを言っている場合じゃない。一旦休戦するんだ。」
「分かった。ただし、身の危険を感じたら自分を優先するから。」
「何それ!見捨てるってこと!?」
「当たり前でしょ。味方じゃないもん。」
アソーカに、はっきり敵だと教えてやった。
非常事態だから一緒にいるだけで、仲間だと思われても迷惑だ。私はシスで、アナキン達はジェダイ。手を取り合うなど、本来ならあり得ない。
「アソーカ、ネルはシスだ。宛にするな。」
「はい、マスター……」
「ネル、今回は戦わないと約束してくれ。」
「約束はするけど、保証はできないから。」
「それでいい。」
「じゃあ行こうか。」
私は手錠されたまま、オビ=ワン達とドーターの後を追う。ドーターは山を登っていき、私達もそれに続く。後ろ手にされた錠は、ずっとオビ=ワンに掴まれたままだった。
歩きながら、アナキンは私に話しかけてくる。
「ネル」
「黙って。」
「いいや、黙らないぞ。」
「アナキン、話すだけ無駄だ。」
「でも、」
「うるさい。」
アナキンを黙らせた後、オビ=ワンが辺りを見て不思議そうな声をあげる。
「歩いている間に、何度も季節が変わっているな。」
さっきまでは木々の葉が緑だったのが、今は赤く染まっていたりする。パターンも不規則で、決して定まらない。予測もできないから、私達は驚くことしかできない。
「なぁ君、どこへ連れていく?」
「もちろんファーザーのところです。」
「“もちろん”ね。」
アソーカが呆れたように言う。
「それで君は一体誰なんだ?」
「我らは力の守り手。半ばにして始めであり、終わりです。」
「すごくよく分かる説明だ。」
アナキン、絶対分かってないだろ。
その時、頭上で何かが崩れる音がした。オビ=ワンの声と、アナキンの焦った声の後、私は身を引かれてうつ伏せに倒れ込む。目を瞑って衝撃を待っていると、何も起きなかった。
恐る恐る目を開けると、アナキンが私とドーターを突き飛ばして瓦礫から庇っていた。
ドーターより先に起き、慌ててアナキンを蹴飛ばす。
「彼女はともかく、私を庇うなんて馬鹿じゃないの!?」
「助けてやったんだぞ!?」
「いらない!!だからジェダイなんか嫌いなんだよ!」
「ネル……!」
ドーターも気付いたようで、アナキンに触れるなと怒る。
「きっと兄の仕業です。ここでいてください。絶対に動かないように。」
そう言うと、ドーターは1人でどこかへ行ってしまう。本音を言うと、アナキンと2人きりにしないでほしかった。手錠をされたままの私は、彼に背を向けるしかない。
この意味不明な星から出て、早く帰りたい。
こんなに息苦しく感じたのは初めてだ。