身体が乗っ取られている為、自由が利かない。
もう一人の私は、ウィンドゥに鋭く咎める。
『エピが子供の私に助けるように言ったよね?』
「子供!?」
『私から見れば子供だよ。それで、マスター・ウィンドゥ。どうするの?』
「クラウドを拘束する。」
『よろしい。』
“私”に手を後ろ手に持っていかれ、ウィンドゥに手錠を着けられる。拘束具を外そうと試みるけど、一度着けられた手錠は壊せなかった。
だけど、解せない。
シスの術に憑依する術はないはずだ。
「そんなに私を止めたいなら殺せばいい!」
『それじゃあ未来は変わらない。』
「未来だと……?」
『マスター・ウィンドゥ、私が止めなければ手を下していたはず。私はそのせいで死んだの。』
ああ、そういうことか。
私は死の運命にあり、ウィンドゥが私を殺して、もう一人の私も死んでいることになる。ここで私が生き延びれば、“彼女”も生存できる。
時間軸は繋がっている。
未来の私が憑依できたのは、シスの秘術ではなく、死んで肉体がなかったから。自分で自分を過去に送った結果が、死というしっぺ返しか。私を過去に送った“私”はもう存在しないとは言え、“私”の思惑が透けて見えるようだ。
如何にも私らしい計画だ。
「だからって、普通自分に干渉する?」
『自分の為だけに干渉したんじゃない。あんたが生きれば、全てを変えられる。』
「もう良いか?クラウドは聖堂へ連行する。」
「嫌だ!戻りたくない!」
『絶対に逃がさないで。考えを改めたとしても、簡単に解放してはダメ。』
「言われるまでもない。」
未来の私が身体から抜けた瞬間、再び胸に痛みが走る。後ろ手に手錠をされたまま踞り、身体を支えきれず倒れ込む。ウィンドゥは慌てて私を抱え、身体が薄くなっていく未来の私に説明を求めた。
「何が起きている!?」
『貴方も知っているはず。暗黒面の力には代償が伴う。』
「先程クラウドがふらついたのもそのせいか。」
『その通り。一刻も早くコルサントへ。』
そう言って、未来の私は消えた。
息ができず、私の視界は次第にぼやけていく。ウィンドゥに抱えられ、私はシャトルへ運ばれていった。
行きたくないのに、身体は動かず、反論の声すら出ない。私は完全に無力だった。意識は、次第に遠退いていく。
気が付くと、私は椅子の前に立っていた。
斜め前には、真っ黒な装束を着て不気味な程今の私にそっくりな私と、先程憑依してきた未来の私が座っていた。
『座って、ネル。』
未来の私がそう促して、言われた通りに座る。
『紹介するね。彼女はダース・ルシル。あんたを過去に送った張本人だよ。』
『つまり、私……?』
『記憶を失う前のね。』
『なぜ私を過去へ送ったの?』
『根本から歴史を変える為だよ。私がジェダイに戻れば、多くを変えられる。』
ダース・ルシルは、希望を求めて自分を過去へ飛ばしたらしい。
だけど、私は暗黒面の深淵へと沈んだ。アナキンやパドメも届かない深淵の底へ。誰も私を救えなかった。
ところが、変化が生まれた。
『ペダムが干渉したことで更に暗黒面と強く繋がり、新しい時間軸を生み出した。それで生まれたのが私。』
エレノアは、自分を指差す。
現に私はシス卿達の力を得て、隙を作ってしまい殺されかけた。しかし、その死はエレノアが止めた為に回避し、また違う未来を生み出した。
2人のエレノア・クラウドには繋がらない、新しい時間軸ができたんだ。
『つまり、ペダムはあんた達のどちらでもないと?』
『ええ。』
『ならあいつは誰?』
私の嫌悪感なんてお構いなしに、エレノアは言葉を続ける。
『これはタイムパラドックスの前兆でもある。本来なら“私達”は、会うことはない。それが壊れつつある。』
『質問に答えてよ。』
『ネル、集めた生命エネルギーを手放しなさい。』
『………断る。』
『あんたの苦しむ理由が、シス卿達の力だけだと思ってるの?違うね。過剰な生命エネルギーを持つから。心臓が堪え切れないのはそのせいだよ。』
『せっかく集めたのに……!』
夢の為に集めた。多くの命を奪い、踏み台にしてきた。“主”と私、最愛の人の為に集めたんだ。
いや、違う。恋人はもういない。
夢を追う意味はないんだ。
『ここで、あんたの生死が決まる。』
『けど……』
『目が覚めた時に苦しむのはあんただよ。』
ダース・ルシルは、視線を逸らす私を射抜くように見てくる。
『もう恋人はいない。私には主しか……』
『主は、いつかあんたを切り捨てる。』
エレノアの言葉に、私は顔を上げる。
『あの方は私を理解してくれてる!私を切り捨てるはずがない!』
『理解しているふりをしてるだけ。近い内に、思い知ることになる。私やペダムは、ただ暗黒面から離れろって言ってきたわけじゃない。シディアス卿に力を与えない為に、ずっと干渉してた。もう手遅れみたいだけどね。』
『待って、どういう意味?』
2人のエレノアは、ただ悲しい顔をするだけだった。
私の問いには答えず、ダース・ルシルとエレノアは立ち上がる。
『私達とはこれが最後だよ。』
『ねぇ待ってよ!肝心なことを聞いてない!ペダムは誰!?あんた達じゃないなら誰なの!?』
『あんたは彼女をよく知ってる。』
『もう時間切れ。』
2人は背を向け、空間からいなくなった。
私は恨み言を溢しながら、空間から弾き出される。
意識が引き戻され、現実に帰ってきた。身体中の痛みと、四肢を抑える拘束具が、現実だと思い知らされる。視界は真っ黒、目隠しをされ、動けないことに苛立ちが増した。
唯一良かったことは、呼吸がいくらかましになっていたくらいだ。
見えなくても分かる。こんなに気持ち悪い場所は、一つしかない。良い子ちゃんしてた自分を思い出すと、吐き気がする。
私は、ジェダイ聖堂で拘束されている。
もう死んでしまいたい。
せめて違う場所で拘束してほしかった。
1時間後には仕事………
泣きそう。