動けず無心になっていると、話し声と足音が聴こえた。数からして、2人。足音の種類を考えれば、1人はヨーダだろう。
ドアが開く音が聴こえた後、2人は私のすぐ近くまで来る。
「久しぶりじゃのう、エレノア。」
ヨーダの声に苛立ちが募り、殴りたくなった。
起き上がれないが、拘束具が音を立てる。
「聖堂からは逃げ出せないぞ。」
「あぁ、もう1人はスカイウォーカーか。」
「ネル……情報をくれれば、酌量できる。頼む、」
「嫌だね。」
「何だと!?」
「私は主を裏切らない。理解のない敵より、理解ある主人の方が良いに決まってるでしょ。」
主には裏切られてもいい。でも、私は裏切りたくない。救われたのは事実なのだから。
あぁ、身体中が酷く痛む。
「裁判なんか待たなくていい。さっさと死刑にすれば?」
「ネル!!」
「許しを得てジェダイに戻るくらいなら、死んだ方がまし。」
好きに生きられないなら、死んだ方がいい。
ジェダイの掟?そんなもの、守る意味はない。私は私の思うがままに生きたい。
自由がないのなら、生きる意味はない。
「本気で言っているのか!?」
「本気だよ。拘束されたからって、私が諦めると思わないで。」
「エレノア、まだ時間はある。よく考えるのじゃ。」
ヨーダの言葉に、思わず鼻で笑ってしまった。
「私に残された時間は少ない。いや、もうないかもね。」
「何を言っているんだ?」
「グランド・マスター・ヨーダ、評議会やスカイウォーカーに私のことを話した?」
「………」
「へぇ、話してないんだ?」
「何のことだ?」
どうやら、私がジェダイになる経緯を説明していないらしい。未来から送られたことや、ペダムのこと、いろいろ話していないようだ。
話してないなら、私から話してあげようじゃないか。
「私、元々未来の人間なんだってさ。」
「何だって!?」
「未来の私が自分を過去へ送って、赤子の私をヨーダが受け取った。しかも、ペダムと名乗る女の亡霊に、私をジェダイにしろと言われた。」
「選択肢って、そういう意味だったのか。マスター、なぜです?」
ヨーダの返答は、時間がかかった。
長い時間をかけてヨーダの口から発せられたのは、たった一言だけ。
「未来の為じゃ。」
「ふぅん?」
「エレノアは未来で暗黒卿だった。ダース・ルシルにさせない為に、ジェダイの道を進ませる必要があったのだ。」
ペダムと未来の私は恐らく、私をジェダイにさせることで未来を変えようとした。それが、過去へ私を送る計画だ。だけど、私は拒んだ。更に暗黒面へと踏み込む結果になった。
「しかし、ジェダイである必要はなかったはずです!ただの人間として、里親に出すこともできた!ネルが暗黒面に堕ちたのは、僕達ジェダイの責任ではないのですか!?」
「スカイウォーカー、ちょっとそれは聞き捨てならない。」
私は堕ちたんじゃない。何度も言うが、踏み込んだのは私の意思だ。自分で選んだんだ。
「堕ちたんじゃなくて、自分で選んだんだけど?」
「堕ちたも同然だ!」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。問題は、私の命。時間がない。」
馬鹿馬鹿しくなって、つい笑ってしまう。
「私は復讐の為に、名のあるシス卿達の力を得た。それには代償が伴ってね、肉体を蝕む。」
「バイタルが下がっていたのはそのせいか。」
「肉体はどうとでもなる。もっと深刻なのは、本来死ぬはずだったのに私が生きているということ。」
本当ならウィンドゥに殺されるはずだった。それなのに、未来の死んだ私はウィンドゥを邪魔した。私は生き延びて、拘束された。
そして、未来は大きく変わった。
このまま終わるはずがない。
「フォースの意志が干渉してくる。何かが変わらない限り、私の死は変わらない。」
「考えは変えないのじゃな?」
「変えない。」
「ネル、僕達はもう手を取り合えないのか?」
「絆なんか期待しないで、スカイウォーカー。あんたと出会ってからオーダーを去るまでの10年、築いてきたものは全部偽物だったの。私を信じてきただろうけど、私はあんたを信じてない。もう放っておいてよ!!」
最後の一言は、声を張り上げてしまった。
どいつもこいつも、私のことを分かってないのに構おうとする。何も知らないくせに、どうして踏み込もうとしてくるのか分からない。知らないまま踏み込まれて、傷付くことになるのは私だけだ。
これ以上、私の心を踏み荒らすな。
「スカイウォーカー、評議会で話し合う必要があるようじゃ。」
「はい、マスター。」
2人が出て行き、やっと静かになる。
私は唇を噛み、殺意を抑えようと必死に堪える。
聖堂にいるという事実が、私を苛立たせる。光明面のフォースが苦しい。戦争でジェダイのフォースが翳っているとはいえ、聖堂の空気は嫌いだ。
また吐き気がする。
「っ!」
その時、誰かがドアを開けて入ってくる。
気配すらなかった。
「彼女と2人で話したい。」
声で誰なのか、すぐに分かった。声の主はテンプル・ガードに指示して、ドアを閉めさせる。部屋は2人きりになり、入ってきた人物は私の側に寄る。
「監視プログラムは切ったぞ。我が僕よ、愚かなことをしたようだ。」
「………申し訳ありません。」
“主”、シディアス卿は、溜め息を吐く。主は表の顔で入ってきたのだろう。私が拘束されているからか、2人きりにさせてもらえたらしい。
「其方から話は聞いていたが、怒りと憎しみに呑まれ、重要なところで判断を誤ったな。」
「仰る通りです。」
「余に黙って復讐を試みて、このザマだ。」
「はい…」
「ルシル卿、死刑は免れないだろう。」
「分かっています………」
ジェダイを何人も殺し、多くの星を侵略し、人々を傷付けてきた。自分の意思でやったことだ。懺悔はしない。
悔いがないことは、ジェダイ評議会も知っているだろうから、死刑は確実だ。
「残念だが、其方を助けてやることはできない。裏切る形になってしまったが……其方は本当によくやってくれた。」
「マスター……?」
いつものシディアス卿じゃない。何かがおかしい。嫌な予感がする。
なぜかシディアス卿が怖ろしい。
「死んでも貴方のことは話しません。」
「問題はそうではない。ルシル卿、其方は強くなりすぎたのだ。いずれ余の存在を脅かすことになりかねん。確実に死んでもらわねば困る。」
「え…」
布が擦れる音がして、シディアス卿は何かの蓋を開ける。
「怒りと憎しみが強い、素晴らしい暗黒面を見せてもらった。だが、其方は余を脅かす秘術を作った。」
身体に何かが這い登り、私は背筋を凍らせる。ヌメヌメとした感触が肌に当たり、蛇だと気付いた。それも、ただの蛇じゃない。
私は殺される。
「余を脅かす僕は不要だ。」
「私、は……脅かす、気、は……」
シディアス卿の怒りを買ってしまった。
夢の為に、私はいろいろやってきた。その内の一つが、シスの秘術の開発だった。それは将来、私と恋人の為に作ったものだ。
新しい術はとても危険で、強力でもある。下手をすれば、シディアス卿にも害を及ぼす。なぜなら、シスの術なのにシスには毒だから。
ホンドーと関係があった頃も使わなかったけど、シディアス卿に報告もしなかった。
ティラナス卿に相談はしていたが、報告しなかった私が悪かった。
私と主の関係を過信していた。
「ルシル卿、余の為に死んでくれ。」
蛇は、シディアス卿の命令を聞いている。
その蛇は毒蛇で、身体からも毒を分泌する。首に巻き付かれ、首筋に咬み付かれる。蛇の身体から出た毒は、私の皮膚を爛れさせる。
「ゔっ…!」
折檻された時より苦しい。
「さらばだ、ネル。」
シディアス卿はそう言って、私の前から去っていく。
命令を受けた毒蛇が離れることはなく、私は次第に体力を奪われていく。
「ごめんなさい……ごめんなさい………」
昔折檻された時と同じように、ひたすら謝る。
主に裏切られたことはいい。ショックだったのが、主にも認めてもらえなかったこと。秘術を覚えたり作ってきたのは、私を救ってくれたシディアス卿に認めてもらう為でもあった。
褒めたりご褒美はくれたりしたけど、認めてはくれなかった。理解はしてくれるのに、認めてもらえない。私がシディアス卿に求められたのは、忠実な僕だけだった。向上心や無駄な欲は、不要だったんだ。
どこにいても、私は異端者だ。
ウィンドゥに殺されなくても、結局は死ぬんだ。
このまま毒死を受け入れよう。
今日早番だと思ったら遅番だったので、夜更かしコースヽ( ゚ 3゚)ノ