意識が朦朧としてきた頃、また誰かが来た。
毒蛇に殺されかけている私を見たのか、入ってきた女性は悲鳴を上げる。
「ネル!」
アナキンが同伴してきたようで、彼は慌てて私に駆け寄ろうとする。しかし、女性とアナキンは蛇に威嚇され近付けず、足止めを食らう。ライトセーバーで応戦するも、この毒蛇はプラズマの刃が効かず弾き返される。
「この…!」
ふと腕を動かすと、さっきより動けることに気付いた。溶かしたのは私の皮膚だけでなく、拘束具も溶かしたらしい。身体は蛇に絞められ動けないけど、拘束具は外せる。
勢いよく右腕を上げてみると、手枷は引き千切れた。
目隠しを外し、私は毒蛇の頭を掴む。首を絞め上げようとする蛇の首を強く握り、身体から無理矢理剥がした。壁に叩き付けると、蛇は動かなくなった。
息を荒くしながらアナキン達の方を見たら、思わず固まってしまった。
「パドメ………?」
名前で呼んでしまい、慌てて顔を背ける。しかし、時既に遅し。パドメが近寄ってきて、顔を覗き込んでくる。気が抜けて壁に倒れ込むと、パドメも屈み込んできた。
アナキンはパドメの安全の為だと言って、私を後ろ手で手錠をかける。
「大丈夫!?アナキン!ドクターを!」
「もう呼んだ。ネル、安静にしているんだ。」
「離れて………」
「離れないわ。アナキンでは貴女を説得できなかったと聞いたの。死刑が決まる前に、共和国に協力して。」
そんなに戦争を止めたいの?
パドメはナブーの戦いから、話し合いをしようとしてきた。誰も耳を傾けないのに。戦争を始めたシディアス卿やティラナス卿も、戦争を止める気はない。
戦争は、どちらかが倒れるまで終わらない。
「ネル、私達は友達でしょう?」
「友達なら、私のお願いを聞いて。」
「お願い?」
「私を放っておいて。」
「それは、」
「パドメ!!」
アナキンの声に顔を上げると、毒蛇が起き上がりパドメに咬み付く。パドメは声を上げる間もなく倒れた。蛇は、更に彼女を絞めようとする。
私は後ろ手に拘束されていて、蛇を攻撃できない。
だから、できることは一つしかない。
「おい!標的は私だろ!彼女に手を出すな!」
私の声に反応した毒蛇は、パドメを解放する。
あとは、この毒蛇を殺さなきゃ。
「パドメを離して!!」
アナキンに頼んだ瞬間、毒蛇は私に巻き付く。ギリギリと絞め上げ、私を殺そうとしてくる。だけど、視界に入っていれば何とかなる。
「ネル!抵抗するんだ!」
「うるさい!」
意識を集中し、私はフォース・ドレインを使う。蛇も生き物だ。シスのクリーチャーとはいえ、この毒蛇も生命エネルギーを持っている。
毒蛇から生命エネルギーを奪い取り、私は身体の中に取り込む。
長い息を吐くと、蛇は死に、するりと床へと落ちる。
「ネル!パドメが……!」
ハッとしてパドメを見ると、彼女は毒で苦しんでいた。ただの人間であるパドメは毒を制御できず、死ぬしかない。その毒も、普通の毒じゃない。シスの毒だ。薬では解毒できない。
「アナキン、手錠を外して。」
「そんな……できるわけないだろ!」
「早くして!!パドメが死ぬ!間に合わなくなるよ!!」
アナキンは仕方なく、私の手錠を外す。
自由になった私は、震える手でパドメに触れる。
「《───────》」
古代シス語で、私は呪文を唱える。
咬まれた傷跡から、シスの秘術で毒を吸い上げた。その毒は私の身体に入り、今度は私の命を脅かす。
他人が受けた毒を取り込んだことで、痛みを抑えられなくなり、私はまた座り込んでしまった。
「パドメは大丈夫なのか?」
「毒は大丈夫。後は休ませて。」
その言葉を聞くと、アナキンはまた私に手錠をする。
私は抵抗せず、黙って拘束を受け入れた。
「ナイト・スカイウォーカー!」
「ドクター、“アミダラ議員”を頼む。ネルも診てくれ。」
リグ・ネマとヨーダ、フィストーが入ってきて、部屋の惨状に驚く。
「私はいらない。」
「そんなはずないだろ!毒が、」
「本当にうるさいな!放っとけって言ってるでしょ!!殺されたいの!?」
怒りのままに吐き出せば、フィストーが私を宥めてくる。
「もう………最悪。」
「これは……お前を狙ったものじゃな、エレノア。誰の差し金だ?」
「何も教えない。早くアミダラ議員を診察した方がいいと思うけど?」
アナキンはパドメを抱える。
パドメは大したことないけど、毒で体力を消耗しているはずだ。休ませた方がいい。少し眠れば、良くなるだろう。
「ネル」
「何?」
「礼を言う。」
何に対して、とはあえて聞かなかった。聞かなくても分かる。パドメが倒れた時のアナキンは、冷静さを欠いていた。
それがどんな意味を持つのか、愛情を知る私には分かった。
2人は愛し合っている。
アナキンとパドメが羨ましくて、少し嫉妬した。私には叶えられなかったものだ。私は孤独で、誰にも愛されない。主にさえ捨てられた。
アナキンがメディカル・ルームへ向かった後、私はヨーダとフィストーに連れられて別室へと入る。部屋には医療ドロイドが待機していて、私は診台に座らされた。フィストーが私の傷に触れようとして、睨んで止める。
「触らないで。」
「手当てができないぞ。」
「しなくていい。」
「お前が話せる状態でないと困る。」
尋問したいのだろうけど、私は答える気はない。
「私が無傷だとしても、情報は渡さない。」
「先程の毒蛇は、なぜエレノアを殺そうとしたのじゃ?抵抗もせず、苦痛に堪えようともせんかった。察するに、お前は主とやらに切られたのではないのか?」
「………」
「無言は肯定だぞ、ネル。」
「確かに、私は捨てられた。だけど、主は売らない。沈黙で死刑になるなら、それでいい。情報は冥界まで持っていく。」
私が主に捨てられたところで、ジェダイへの恨みは消えない。この先も、憎み続けるだろう。ジェダイが滅びるなら、自分の死刑も利用してやる。
「キット、わしは席を外す。エレノアの手当てを。」
「はい、マスター。」
ヨーダが出て行き、私はフィストーと2人になる。
「ネル、これだけは分かってほしい。私はお前を救いたかったんだ。」
「縛り付けることが救い?聞いて呆れる。私の望みを知って尚、まだ否定するんだね。」
これだからジェダイは嫌なんだ。
悲劇が起これば運命だと言い、良いことが起こればフォースの意志だと言う。ジェダイは、何かに結び付けたがる。私が暗黒面に踏み込んだことも、誰かのせい、と。
そんな話には、もうウンザリだ。
「懺悔なんかしない。ジェダイを殺したことも後悔してない。」
「反省していないのだな。」
「反省?私が反省するわけないでしょ。」
背を向けると、フィストーの悲しみを感じた。
今更助けようとしたって遅い。
「ネル……なぜだ?」
「ジオノーシスの時と答えは変わらない。私は全て捨てた。自由の為にね。」
「暗黒面にいたお前は自由だったのか?」
「………少なくとも、ジェダイだった時より心は満たされた。」
私の言葉を聞いた後、フィストーはシリンジを取り出す。
「身体を休ませろ。裁判が待っている。」
二の腕に鎮静剤を打たれ、私は意識が朦朧とし始める。
虚な意識の中、フィストーを呼び止めた。
「何を言われても考えは変えない。」
「ああ、分かっている。」
そう言って、フィストーは今度こそ部屋を出て行く。
やはり、フィストーは私を認めなかった。いや、ジェダイとしてのフィストーは私を認めていないんだ。ジェダイでは、私を救うことはできない。こんな組織、なくなってしまえばいい。
どの道、ジェダイは滅ぶ。戦争が始まった時点で、ジェダイの滅亡は決まっていた。何もかもが、手遅れだ。
主の計画は、止まることはない。
意識が遠退き、終わりの時が来るのを待った。