身体の調子が戻ってきた頃、私はジェダイ聖堂の独房へ移された。それと同時期に、アナキンのパダワンがジェダイ・オーダーを去ることになったと聞いた。その元凶は、バリス・オフィーという、ルミナーラのパダワンだ。詳細はどうでもいいから聞き流したけど、これも戦争が引き起こした影響だと思う。
戦争は、全てを変える。
「クラウド、面会だ。」
テンプル・ガードがロックを解除して、誰かを通した。
あれから私は目隠しをされなかった。ヨーダは、私が何かをする気はないと分かっているのだろう。間違いはないけど、かと言ってジェダイを許す気もない。
入ってきたのは、アナキンのパダワン、アソーカだった。
「何か用?」
「貴女に聞きたいことがあって……」
「何?」
「シスにならなくても、オーダーを去るだけの選択もあったはずでしょう?どうしてシスになったの?」
そうか、この子はジェダイが暗黒面に堕ちる理由を知りたいのか。ドゥークー伯爵に次ぐ、闇に堕ちたジェダイの私なら、答えてくれると思ったんだろう。
「ジェダイを滅ぼしたかったから。」
そう冷たく言えば、彼女はすごく嫌そうな顔をする。
「貴女もジェダイだったわ。」
「それは昔の話。」
寝台に寝そべり、彼女に出て行くように促す。
私が話すメリットはない。
「私はジェダイをやめる。だから、最後に教えてほしいの。」
「………」
「ヴェントレスが言っていたわ。貴女はシスに向いていないって。」
「ジェダイにも向いていない。分かってるよ。私は1人じゃ目的を達成できない。言われたことにベストを尽くすだけ。ジェダイでも、シスでもそうだった。」
ヴェントレスは、私がシスの一角になっていることを否定していた。シスは孤独でこそ、力を発揮する。仲間意識はないに等しい。あるとしても、シス・マスターに従い、共通の目的を為すだけ。それなのに私は結婚という下らない夢を見て、シスに降った。
私は誰よりもシスに向いていない。
「でも、これだけは言える。貴女はヴェントレスと同じで相手を尊重できる。」
「あぁ、私の考えてたことが分かったみたいだね。」
「不本意だけど………そうよ。」
今のジェダイは、相手を軽んじる。自身の力を過信している。その結果が、この戦争だ。戦争を仕掛けたのは私達シスだけど、戦争を始めたのはジェダイだ。
「パダワン・タノ、時間だ。」
「待って、もう少し。」
テンプル・ガードに促されるけど、彼女は延長を要求した。
私としても、早く出て行ってほしいんだけどなぁ。
「ねぇ、本当に酌量は必要ないと思ってる?」
「なんで?」
「貴女を心配する人がいるのよ。」
「………いらない。」
「私にもちゃんといるわ。アナキンとアミダラ議員がそうよ。特に議員は、貴女を心配していたの。このまま死刑を待つつもり?」
私に味方はいない。誰も必要ない。だから1人になりたいんだ。
だけど、彼女はそれを否定した。
「自分に嘘を吐くのは簡単よ。でも、友達に嘘を吐くのは難しいわ。それを忘れないで。アミダラ議員は、貴女の嘘を知ってる。」
「………」
「さよなら、“マスター・クラウド”。」
そう言って、彼女は独房を出て行く。あれだけ嫌がっていたのに、アソーカは私をジェダイとして呼んだ。どうやら私の怒りを掻き立てたいらしい。
ドアが閉まり、私はまた1人になる。
誰も彼も、私がジェダイとして戻ってくるのを待っている。シスと手を切ることが、最も望まれることだ。一番あり得ない選択だ。
私がまたジェダイに?マジであり得ない。馬鹿げてる。
私は私だ。
「どうせ死ぬなら、派手に暴れてやる。」
口元に笑みを浮かべ、ドアに近付く。
テンプル・ガードが気付き、中に入ってきて私を組み伏せた。
「クラウド!血迷ったか!?」
「脱走は不可能だと分かっているだろ!」
組み伏せられた後、私はまた鎮静剤を打たれる。
意識を失うというのに笑う私に、テンプル・ガードは恐怖を抱いたのを感じた。恐怖を抱きつつも、テンプル・ガードは私を寝台に寝かせる。
2人のガードが厳重にロックをしたところで、私は完全に意識を手放した。
さて、私の運命を試す時だ。
────────
同時刻、報告を受けたヨーダとオビ=ワンは頭を抱える。
「憔悴しているかと思えば、今度は脱走未遂か。ネルは何がしたいんだ……」
「状況が悪くなったのは確実じゃ。酌量する間も無く、裁判が始まる。」
「議長は何と?」
「酌量の余地なし。裁判はすぐ決行されることになる。」
その時、アミダラ議員が通信をしてきて、2人は応答する。
ホログラムが立ち上がり、ヨーダとオビ=ワンはアミダラ議員に向き合う。
『マスター・ジェダイ、ネルが脱走を図ったと聞きましたが、本当ですか?』
「本当です。ネルは鎮静剤を打たれ、目覚めた後にすぐ裁判が行われます。」
「アミダラ議員、このままではエレノアの死刑は確定じゃ。議長を足止めできんかのぅ?」
『議長の決意は固いので………難しいです。』
一同は最悪の事態に、口を噤むしかなかった。
しかし、そこでアミダラ議員があることに気付く。
『もし、裁判の前倒しが目的だとしたら……?』
「自分で死刑を早めて、どうするつもりでしょう?」
「いいや、議員の言う通りかもしれん。アミダラ議員、何か思い当たる節でも?」
アミダラ議員は、ある話をする。アミダラ議員、パドメはエレノアの似たような行動を見ていた。今回の行動はその予兆に近く、何かの前触れのようでもあった。
ジェダイ達はその話を聞き、納得する。
「議員の予感通りなら、ネルは何か行動を起こすはずです。」
『馬鹿な真似をしなければいいのですが……』
「警戒はするに越したことはない。オビ=ワン、エレノアから目を離してはならんぞ。」
「はい、マスター。」
ヨーダとオビ=ワンは、隠密に準備を進める。
そして翌日、エレノアの裁判が始まった。
エレノアは連行され、テンプル・ガードが監視をしたまま開始される。当の本人は無表情だった。
罪人は、心の中で笑みを浮かべる。
賽は投げられた。