数週間後、私とエピはアウター・リムの温暖な惑星にいた。この惑星には知覚種族は住んでいない。私にとって好都合な星だった。
この惑星はナブーのような環境で、海もある。私はその浜辺でビーチベッドを広げて、海風で涼む。夜の風は気持ち良いんだ。
誰が何と言おうと、私は休職中だ。仕事はしてないけど。主に切られたんだから、休職も同然だ。いや、退職か。
一身上の都合……いや、違うわ。解雇だ。ということは、転職先が必要だ。ヴェントレスみたいに賞金稼ぎやろうかな。
エピ?あのドロイドは給仕役をさせています。
「エレノア様、カクテルどうぞ。」
「ありが………エピ。」
「ハイ?」
「アルコール強すぎ。」
「酒豪がなーに言ってんで、あ、ちょっと!やめてえええええええっ!?」
腹が立って、エピが勝手に買ったオイルを、焚き火の中にボトルのまま放り投げる。火は一瞬燃え上がり、また元の大きさに戻る。ボトルが燃える臭いだけ残るが、気は晴れた。
そもそも、私の金で何買ってんだ。
「勝手に買うから悪い。」
「そもそもあのお金は盗んだもので、」
「喧しい!」
盗んだんじゃない。違法に得られたクレジットを少しもらっただけだ。タブーなものだから、私が盗んだところで問題はない。
“パ”が付くシンジケートからもらったけど、向こうは私を見つけることはできないし、トラブルは絶対に起きない。
「じゃあエピ、私は寝るから。見張りよろしく。」
「ドロイド使いの荒い方だ……」
「何か言った?」
「いえ、何も!」
「そう、良かった。おやすみ。」
シャトルに戻り、私は個室に入る。
寝台に横になろうと思ったが、違和感を覚えて立ち止まってしまった。この感覚を知っているけど、はっきりとは思い出せない。そう、私がまだ未熟だった頃のことだ。
次の瞬間、私は侵入者に胸倉を掴まれ、壁に押し付けられた。
「ようやく見つけたぞ、エレノア・クラウド。」
真っ赤な顔に、頭にいくつも突き出るツノ、金色の瞳、そして暗黒面のフォース。
この姿を見て、すぐに思い出した。
「ダース・モール、会えて嬉しいよ。」
オビ=ワンに倒されたモール卿は生きていて、弟と一緒にジェダイとシス、両方に復讐しようとしていたらしい。聞いた話では、シディアス卿に幽閉されていたモール卿をデス・ウォッチが助けたとか。いろいろ話があるが、真偽はともかく、今はどうでもいい。
モール卿はライトセーバーを起動させ、私の首に添える。
「嬉しいだと?約束を破るつもりか?」
「まさか!約束は憶えてるよ、モール卿。」
「今はただのモールだ。」
約束とは、モールがオビ=ワンに負け、その際に意識が繋がった時のことだ。その内容は、私の愛情の要求。
愛情は、シスが強くなる一因にもなる。愛が強ければ強いほど、失った時に憎しみになり、それが大きな力となる。ダーク・サイダーの利点だ。
モールは私の夢を知り、その愛情を欲した。
私にもモールにも、メリットになる。断る理由はなかった。
「丁度愛に飢えてたんだよね。」
「では、取引成立だな。」
「そうだね、っ!?ちょっと!!」
いきなりキスをされ、モールを突き飛ばす。
「愛を深め合おうとしただけだ。何か問題でもあるか?」
「あんた何も分かってないじゃん!愛情はそんなに単純じゃないから!」
「ほぅ?ならお前はさぞかし経験があるんだろうな?」
「あるよ!ちゃんと恋愛してきたからね!」
いつからかと言うと、モールが死んだ翌年からだ。
掟なんて、破るものだ。守る方が馬鹿げてる。
「では、お手並みを拝見しようじゃないか。」
「全く……それで?どうやってここへ?」
「まさか………気付いてないのか?」
「え?何が?」
「呆れた奴め。お前といるあのバトル・ドロイド、何も仕込まれていないと思っているのか?」
「えっ」
エピを呼び、いつかのように問い詰めると白状した。共和国軍に位置情報を送信していたらしい。モールはそれを追ってきたようだ。
しかし、共和国軍は一度も来ていない。
いや、今はエピの問題が先だ。
「エピ、次はないって言ったよね?」
「そうですが……これはエレノア様の為で………」
「私の為私の為って、どこが私の為なの?あんたはずっと共和国軍に手を貸してる。説明できるなら、許してあげる。」
「分かりました。怒らないって約束してもらえます?」
「いいよ。怒らない。」
エピは、少しずつ話し出す。
「実は未来のエレノア様が消えた後、ペダムと名乗る女性が現れまして……」
「………今なんて?」
「ペダム、です。」
「ペダム……まさか、また正体を知ってるわけ?」
「………」
「エピ大嫌い。」
私さえ知らないペダムの素性を、B1バトル・ドロイドが知ってるなんて……
ドロイド相手に、嫉妬で狂いそうだ。
「ペダム?何のことだ?」
「未来から干渉してくる、迷惑なお節介のことだよ。」
モールにそう教え、私は溜め息を吐く。
「エピ、ペダムは何て言ってたの?」
「ジェダイとエレノア様の繋がりを切るな、と。因みにですが、ペダムがそろそろ現れるはず……ほら。」
エピが指差す方には、お節介を始めた頃と同じペダムが立っていた。相変わらず姿は亡霊のようで、マントを被っているけど、今回は気配をしっかり感じ取れた。目の前にいるのはペダムだが、その奥には未来の私の意識を感じる。
これで、はっきりした。
ペダムの意識を送っているのは未来の私で、暗黒面の力を使っている。
『久しぶりね、エレノア。』
「ペダム、もう現れないかと思ってたよ。私の未来は変わった。まだ何かあるの?」
『ええ。最後のお節介よ。』
ペダムはモールに視線を向け、次いで私へと視線を移す。
『これで、私の言葉は正しいと分かったでしょう?』
「本題は?」
『貴女はモール卿と、』
「モールだ。」
『モールと約束をした。けれど、貴女の伴侶にはならないわ。』
「おい、余計なことを言うな。」
『互いを利用するのは結構よ。それが、互いの破滅に繋がるとしたら?』
つまり、私はモールといるべきじゃない。ペダムは言葉でもはっきりそう言った。一番に反発したのは私ではなく、モールだった。
ただ、ペダムを信じられる理由が私にはない。
「私とモールを離れさせたいのは分かった。でも、あんたを信じる確証はない。あんたは誰?」
『私は最初からヒントを与えたのに、まだ分からないのね。』
「答えろ。」
「ペダムとやら。エレノアが珍しく怒っているぞ。答えた方が身の為だ。」
『分かったわ。“ペダム”という名前のスペルを並べ替えて。それが答えよ。』
「………は?」
答えが出た。
まさか、彼女が?私に向けられた感情が気に入らなかったのも、心配されていたから?鬱陶しがっていたペダムが、彼女なの?
『“ペダム”は、“パドメ”のアナグラムよ。』
ペダム、いや、未来のパドメはそう言って、フードを下ろす。
「やっと繋がった。道理で私に詳しいはずだわ。」
「これがあのアミダラか。」
『ええ。これで、私の言葉を聞いてくれる?』
少し考え、私は承諾する。
だけど、モールは断った。
「ふざけるな!1時間で別れる男女がどこにいる!?」
「ここにいる。聞いて、モール。私の夢を聞いてくれたあんたを、巻き込みたくない。生き延びるのがシスでしょ?」
「………」
「いつかシディアス卿を超えれば、私達の望みは叶う。今すぐに約束を果たす必要はない。」
モールは、渋々了承してくれた。
生きていれば、また会うこともある。私とモールはフォース感応者だ。フォースに導かれる日が来るかもしれない。その日まで、楽しみにしていよう。
彼は、苛立ちながらも黙って背を向ける。
「アミダラ、俺からの忠告だ。ダース・シディアスを甘く見るな。」
『承知してるわ。』
その言葉を聞いたモールは、颯爽と去っていった。
未来のパドメは私の名前を呼び、笑みを浮かべる。
『今度こそお別れよ。“ネル”、本当に気を付けて。』
「………うん。」
素っ気ない私に構わず、パドメの姿が消え始める。
今度は私がパドメに声をかけた。
「パドメ、ありがとう。」
『そう思ってくれるなら、この時代の私を信じて。さよなら、ネル。』
未来のパドメは、ついに消えてしまった。
やることは決まった。私は、ジェダイともシスとも手を組まない。私1人で、やるべきことをやる。
エピを連れ、私は行動を開始した。
自分の未来の為に、まずは障害を壊さなきゃ。
クローンウォーズ編は次が最後になります!
てか、最後にしたいw