茶番劇の開幕
コルサント、滞在3日目。
誰が教えたのか、アナキンから嵐の如く通信が来た。もちろん出るわけがない。いや、寧ろコム通信機を壊した。
当たり前だけど、誰とも連絡が取れなくなるわけで、パドメに怒られてしまった。
「ネル、連絡が取れないと貴女を守れないのよ?今の貴女は共和国の信用がないの!」
「じゃあ旦那を何とかしてくれない?」
「それは……ごめんなさい。けど、連絡が取れないのは困るわ。」
わざわざアナクセスから通信してくる、アナキンの気持ちが本当に分からない。まぁ、私と一緒にいるパドメが心配なんだろうけど。
パドメのアパートメントの客室の寝台で寝そべり、通信機を外すとまた怒られた。
「私がどれだけ手を尽くしているか分かってる!?」
「………ごめん。」
そこで、パドメは侍女に呼ばれて客室を出ていった。
ジェダイがここに来ないのも、パドメのお陰だろう。もし来られたら、奴らを殺しかねない。ジェダイなんか大嫌いだから。
紅茶を啜っていると、パドメがリビングへ呼んでくる。
「ネル、ジェダイ………評議会からよ。」
思いっきり嫌な顔をしていたらしい。
どうせただの釘刺しだろ。アミダラ議員に危害を加えるなーとか。耳にタコができそう。
「断っていい?」
「ダメよ。疑いは晴らしてちょうだい。」
「まだ何もしてないじゃん。」
「まだ、ね。それをちゃんと証明して。」
面倒臭ぇと思いながら、仕方なくリビングへ出て行く。
パドメが投影機を立ち上げ、ホログラムでウィンドゥとフィストーが映された。あからさまに嫌な顔をする私に、2人も表情を曇らせる。
「それで、何の用?」
自然と声のトーンが低くなり、ジェダイ2人は口を噤む。
「いつもの忠告なら切らせてもらうよ。」
『今回は違う。』
『エレノア、グリーヴァスが議長の誘拐を目論んでいるという情報を得た。元シスとして、お前の意見を聞きたい。』
その言葉を聞いて、私は思わず爆笑してしまった。
なぜなら、その情報をばら撒いたのは私だ。こんなに共和国の情報収集能力が遅いなんて、私が撒いた意味がない。何も面白くない、つまんない。
そもそも、私が助言なんかするわけないのに。
「私に聞くなんて……お門違いだよ。」
『そうとも限らない。クラウド、お前は我々に見えないものを見ているはずだ。』
「そう単純じゃなさそうだね。」
『お前とて、ジェダイだった。分かるはずだ。』
「あのー、元マスター?仮にそうだとしても、私があんた達に協力する理由はないんだけど?」
私がコルサントにいるのは、パドメの為だ。ジェダイや共和国、議長の為じゃない。勘違い甚だしい。私を丸め込めると思ったら大間違いだ。
『だからこそ、“評議会”が連絡したのだ。』
「………どういう意味?」
『エレノア・クラウド、軍事顧問として手を借りたい。』
「断る。」
『即答か。考える必要もないのか?』
「じゃあ聞くけど、私のことを一度でも認めた?」
2人から答えは返ってこない。
結局、ダークサイドにいる私は認められないんだ。仮に誰かを傷付けたり殺したりしてなくても、ジェダイ評議会やフィストーが認めてくれることはない。あのヨーダも、認めてないだろう。
今更認めてもらおうなんて思わないが、認めてもいないのに手を借りようとするなんて許さない。
「手だけ借りようだなんて、私は許さない。」
『言葉に、』
「言葉に気を付けろ?そっくりそのまま返してやる。手を借りたいなら、その態度を改めることだね。じゃあね!!」
通信を切ってやると、パドメが溜め息を吐く。
「何?」
「手を貸すつもりなら、そう言えばいいじゃない。」
「だってつまんないもん。」
「全く……どうするつもり?」
「そうだねぇ……とりあえず、議長と決着をつけるところからかなぁ。」
何しろ、彼は私を死刑にしようとしたんだ。私の恩を受け取らず、切り捨てた。けじめを付けなければならない。
残っていた紅茶を一気に飲み干し、マントを着る。
「議長に会ってくる。アポ取ってもらえる?」
「構わないわ。でも……」
「私を心配してるの?大丈夫だよ。あと、議員様の護衛はちゃんと続けるから安心して。」
私は私兵全員を呼び、パドメを守るように命令する。彼女はそれを訝し気に見て、私兵の方が不安だと目で訴えてきた。
「貴女の私兵は、ずっとヘルメットしたままよ。素顔も見えない彼らが、貴女の命令を確実に守るの?」
私が連れてきた私兵は皆、ヘルメットとアーマーを着ている。だから素顔は見えず、側から見れば私に従うだけの配下だ。
「そう言うと思ったよ。あんた達、ヘルメットを外して。」
私の命令に、私兵達はヘルメットを外した。次々とヘルメットが外され、素顔が露わになる。その素顔を見て、パドメは驚く。
「バトル・ドロイド!?」
「私のお気に入り達。プログラムを書き換えて、私の言うことだけを聞くようにしてある。だから共和国で暴れることはない。ミスマッチがパドメを守る。」
「ミスマッチ……?」
「お気に入りドロイド達のチーム名。任せたよ、ハンル。」
「ラジャラジャ!」
私兵達、ミスマッチにパドメを任せ、私はアミダラ議員のアパートメントを出る。向かう先は、議長のオフィスだ。
かなり緊張する。
彼と最後に会ったのは、裁判だ。私の挑発に表情を変えたのは、良い思い出だった。だけど、今回は直接会うんだ。緊張しないわけがない。
議長オフィスに辿り着き、私はノックする。
「入りたまえ。」
無言でオフィスの中へ入り、私は議長に連れられてソファーに座らされた。
議長は反対側へ座ると、開口一番、私が生きていたことに感心する言葉を告げる。
「生き延びていたことが、そんなに不思議ですか?」
「ネル、時には厳しい選択も必要なのだよ。」
「ええ、そうですね、“マスター”。」
議長こそ、ジェダイが探しているシスで、倒すべき根源だ。シスの名は、ダース・シディアス。私は、この事実を13年前に知らされた。当時は嬉しかったけど、今は悩みの種だ。
「わざわざ処分されに来たのか?」
「いいえ。一言お伝えしたいことがあって。」
「ほぅ?」
「暗黒面から離れる気はないけど、もう貴方にも従わない。」
「恩は返すが仇は返さん。あれはこういう意味だったのか。」
「悩んでくれて何よりです。」
議長、シディアス卿の表情を窺う。怒ってはいない。怒りはしないけど、危険因子として認識しているだろう。
「しばらくはここに滞在するのかね?」
「そのつもりです。精々頑張ってくださいね。私はどちらにも手を貸しませんから。」
ソファーから立ち上がり、私は議長オフィスを後にする。
表の顔なのに、シディアス卿と向き合うのは緊張した。自分もシスなのに、少し恐怖を感じた。昔受けた折檻のせいもあるけど、まだ手が震えている。
戦況は共和国が優勢だけど、これからどうなるか分からない。シディアス卿次第だ。計画とは、大分変わってきているんだ。
翌日、グリーヴァスはシャク・ティ率いる護衛隊を退け、議長を誘拐した。
それを聞いた私は、心の底から笑った。
つまらない茶番が始まった。